TS娘の俺が戦隊モノのピンクをやっているのは、どう考えてもおかしい   作:戦隊モノエアプ

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『こんなの恥ずかしすぎる……!!』

 

 

 

「紅い血潮は焔の如く、純情カレンジャーレッド!」

 

「蒼き精神は大海の如く、純情カレンジャーブルー!」

 

「黄色き魂は月の如く、純情カレンジャーイエロー!」

 

「黒い瞳は闇夜の如く、純情カレンジャーブラック!」

 

「え、えっと……も、桃色の心は青春の如く……純情カレンジャーピンク……」

 

『五人揃って、青春戦隊純情カレンジャー!』

 

 名乗りの最後に、自信の無さそうな「……です」という言葉が付け足され、五人の背後で何かが爆ぜる。

 何処からともなく現れた戦隊スーツを見に纏い、いざ出陣と言わんばかりの狼煙が上がった。

 そのように悠長なことをしているにもかかわらず、目の前の凶悪な怪人は、五人の口上が終わるまで決して手を出してくることもなく、立ちんぼだった。

 

 これが戦隊の御約束なのだということを、私は嫌という程に理解させられていた。

 

 

「こうなったら、合体だ! いくぞ、モモ!」

 

 

 レッドの声を合図に、皆が合体のフォーメーションを始めた。このまま、合体して倒してしまうのだろう。

 またしても、戦隊らしい御約束。ピンチの時は合体で、一人で駄目なら五人で。何とも素晴らしきことではないか。私がその一人でなければなのだけれど……。

 

 

 こ、こんなの……恥ずかしすぎる……!!

 

 

 この世に女の子として生を受け、早十六年。私、鏑木(カブラギ)モモは戦隊の御約束に辟易としていた。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 舞台は移り、更衣室。

 凶悪な怪人は、無事に打ち倒すことができ、帰還した次第である。

 

 各ロッカーに取り付けられた鏡を見れば、自分の風貌が確認出来た。

 

 眩しいほどのショッキングピンクの戦隊スーツに着られている少女。出る所は出て、引っ込む所は引っ込んでいる。起伏の激しい少女の躰は、ピッタリと張り付いたスーツによって、より強調されていた。

 淡い桃色の髪は、ボブほどまでの長さに切り揃えられており、快活そうな印象を与えられる。

 

 男であった時の私が見れば、一目惚れは間違い無し。仮にクラスメイトであったのならば、「アイツの良さを分かっているのは俺だけだろう」と恋い焦がれる程に整った容姿。そういう場合は、大抵彼氏がいるもんであるが割愛。

 

 

「まぁ、自分なんだけど……」

 

 そう、現実を悲観した私はもう一度、自分の格好をまじまじと眺めた。

 

 どう考えても似合っていない。相応しくない。恥ずかしい。コスプレみたいな全身スーツを着ている私。とっても恥ずかしい。

 

 そもそもピンク。ピンクってないだろう。

 TS娘の俺がピンク。

 

 戦隊モノのピンクといえば、言わずもがな。五人の中の紅一点。

 最近では女性隊員が2、3人いる場合もあるらしいが、ピンクは絶対的なヒロインポジション。

 時に格好いい姿を見せ、時にピンチでハレンチに淫らな姿を晒す。視聴者のキッズや大きなお友達もドギマギしてしまう存在。

 

 そういうモノこそが、戦隊モノのピンクに求められる姿だ。

 

 それが、それが……TS娘の俺って……。

 

 

「———どう考えてもおかしいだろ!?」

 

 

 つい、言葉が漏れてしまい、静寂に包まれていた更衣室に響き渡る。

 

 

「どうしたの、モモちゃん?」

 

 

 私が叫んでしまったばかりに、心配そうな顔をして気遣ってくれる少女。

 

 黒澤音恋(クロサワネコ)

 

 今世の私の幼馴染であり、親友。青春戦隊純情カレンジャー(激寒)ではブラックポジションを任されているのが、ネコだ。

 

 宵闇を思わす黒き髪は、サイドアップテールに纏められており、その名前からも窺えるように猫のような人懐っこさを持ち合わせた美少女。

 口を開く度に、八重歯が可愛いらしく輝いた。

 

 失礼だとは分かっているが、私は彼女のことを愛玩動物のような愛い少女と捉え、接していた。

 

 

「なんでもないよ。ちょっと独り言が漏れ出てしまっただけ」

「そうにゃんだ……モモちゃん、もう帰るよね? 一緒に帰ろ♡」

「うん」

 

 

 何やかんやで着替えも終わり、来た時に身につけていた女制服に身を包んだ。初めは苦手だったスカートも、最早慣れてしまっている自分が怖い。

 

 忌々しい戦隊スーツをロッカーの奥底に封じ込め、ネコと一緒に一足先に更衣室を後にすることにする。

 とは言っても、怪人が現れれば何処からともなくやって来て、また身に纏わなけばならないのだが……。

 

 

「な、なあモモ。私も一緒に……」

「———それじゃあ、先輩。ワタシ、モモちゃんと帰りますんで、また」

 

 

 ネコが私の手を引き、千輝(チギラ)先輩の言葉を遮る。

 

 

「……あぁ、そうか。それでは、またな」

 

 

 ところで、私・ネコの他に、青春戦隊純情カレンジャーには女性隊員がもう一人いる。

 

 それが、件の千輝先輩である。

 

 千輝青葉(チギラアオハ)

 

 これまた幼馴染であり、二つ上の先輩。青春戦隊(以下略)では、戦隊ブルーを任されており、文武両道。品行方正。立てば芍薬云々。と評される格好良い自慢の先輩だ。

 藍色の髪を長く伸ばして、三つ編みにし、ポニーテールにしているお洒落さんである。切れ長な瞳がクールで、とても綺麗で美人さんだ。

 

 そんな先輩が、何か私に用があったようなのだけれど。

 

 

「急いで無さそうだし、それ程大事な用事じゃにゃいんじゃない?また今度聞けばいいよ」

「そう、なのかな……?」

 

 

 確かに、ネコが言うように『言っておかなければいけないんだ』という感じは読み取れない。それどころか、私達に別れの言葉を告げた千輝先輩は、顔を俯かせてロッカーを何やら弄っているようであった。

 

 私も気疲れしてしまっているし、急ぎの用でないのならば、またという事にさせてもらおう。

 

 

「それでは、千輝先輩。さようなら」

「……っ!? ……あ、あぁ。またな、モモ」

 

 

 ほらほら、とネコに手を引かれ、青春(以下略)の本拠地の長い廊下を歩いて行く。

 そうして歩みを進めるうちに、奥の方から人影が近付いてきていることに気づいた。

 

 あの大きなシルエットは……。

 

 

「モモ、もう帰りか?」

 

 

やはり、コウガくんであった。

 

 金剛黄雅(コンゴウコウガ)

 

 またしても幼馴染であり、戦隊イエロー。見た目は、チャラチャラとした大男であるが、昔はこうではなかったのだ。

 今は何というか、NTRってきそうな男、という印象を私は受けていた。

 

 金色の髪の毛を今風のツーブロックに仕上げ、強い男を思わせた。

 首も太くて、手足も太い。身体もデカくて、背もデカい。全体的に大き過ぎる。

 

 だからこそ、私はコウガくんのことをNTR漫画の竿役みたいだと喩えているのだ。本人には絶対言えない事である。

 

 

「もう帰るなら、送って行ってやるよ。ネコも一緒に。女二人で夜道をってのも心許無いだろ?」

「はぁ〜〜〜?余計な御世話にゃんですけど?」

 

 

 コウガくんの提案に、ネコが突っ掛かる。二人は、こういう所があった。

 

 犬猿の仲のようでもあるが、嫌よ嫌よも好きのうち。きっと彼女達はツンデレ同士の両片想いなのだろう(大勘違い)。私が恋のキューピッドになってあげようと密かに策略していた。

 

 

「まあまあ、ネコ。コウガくんは善意から言ってくれてるんだ。御言葉に甘えようじゃないか」

「……おう。御言葉に甘えとけ」

「……はぁ。……モモちゃんが言うのなら。精々、女の子二人を侍らせている最低クソ野郎だと思われればいいにゃ」

 

 

 二人は未だ、やいのやいのと言っているが、如何やら三人で帰る方向にシフト出来たようだった。

 

 私が二人を微笑ましく眺めていると、廊下の先、コウガくんが来た方向からもう一人、人影が歩いて来る。

 

 来た……!!

 

 赤く、逆立った髪。ホビーアニメの主人公のようなヘアースタイルは、正しく主人公そのものである。

 普段から希望に満ち溢れた表情は、先程の戦闘が気掛かりなのか、少しばかり暗い。

 

 コウガくん程の大男ではないものの、服の上からでも鍛えていることが分かる程度には筋肉がついている。

 以前、服の下を見せてもらったことがあるが、シックスパックに割れた腹筋は強い男の象徴であった。

 

 私の最後の幼馴染。

 青春戦隊純情カレンジャーレッド。我らがリーダー。

 

 千輝烈斗(チギラレッド)くん。

 

 私は、彼を一目見た時から彼こそがこの世界の主人公なのだと気付かされた。

 元々転生した身。何かしらある世界なのだとは高を括っていたが、彼と出会ったことで、それは確信に変わった。

 

 それから私は、彼と親しくなることに成功し、今に至る。

 

 

「モモ、黒澤、金剛。もう帰るのか?」

 

 

 彼のやけに通る声は、私の耳を抜ける。

 この主人公ボイスが、堪らない。

 

 

「げ。」

「……あぁ、レッドか」

 

 

 二人がレッドくんの声に反応し、イチャイチャ(勘違い)を切り上げる。

 

 二人は何とも言えないような顔をして、レッドくんを見ていた。私達も歳頃。昔のように皆仲良しとはいかないのは分かっているが、仲良くしてほしいものである。

 

 

「レッドくんも、もう帰るの?」

 

 

 私がレッドくんに言葉を投げかける。出会したのだから、どうせなら皆で帰った方がいいと考えたからだ。

 

 

「姉さんは、まだ更衣室にいるのか?」

「うん。何かしてるようだったけど……?」

「それなら俺は、姉さんと帰るよ」

 

 

 千輝と苗字が同じように、千輝先輩とレッドくんは姉弟だ。

 

 用事があって残っている姉と一緒に帰るのが当然だろうと言わんばかりの心優しきレッドくん。報われてほしいものである。

 

 戦隊モノのレッドといえば、不動のエースでありヒーロー。絶対に折れない心を持ち合わせた熱いヤツ。時として、敵であろうと手を差し伸べるような存在でなければならない。

 彼は、そんな戦隊レッド像とピッタリの人物であった。

 

 本当に、彼には報われてほしいものだ。

 

 戦隊レッドなのだから、悪の親玉を打ち倒した果てにはヒロインと結ばれる展開くらいあるはずである。

 

 

 となるとだ……。

 

 ———ネコにはコウガくんがいるから駄目。

 

 ———千輝先輩は実の姉だから駄目。

 

 

 となると、となると……。自分になるわけで。

 

 

 レッドくん、レッドくんと恋愛か……。

 精神年齢三十を越えた私が、男子高校生と……。

 

 

 そんなのやっぱり無理すぎる。私の恋愛対象は、あくまでも女性。

 

 

 でも、レッドくんとなら……。

 やっぱり無理無理。

 レッドくんが望んでくれるなら、私が妥協しても……。

 やっぱり駄目駄目。

 

 ……それに、レッドくんが私なんかを望むわけがない。

 

 

 だから言っているのだ。

 

 

 TS娘の(わたし)が戦隊モノのピンクをやっているのは、どう考えてもおかしい!!って……。

 

 

 

 

 

 

 

 




 ハッピーバレンタイン♪

 まぁ、バレンタインだから投稿したと言うわけではないのですが……。

 今回戦隊モノエアプのくせに戦隊モノを題材に書いてみたわけですが……書いてる時、名乗りのシーン恥ずかしくて仕方なかったのは内緒。

 鏑木モモちゃんのイメージ絵です。素人絵なので見なくてもいいです。

【挿絵表示】



 
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