TS娘の俺が戦隊モノのピンクをやっているのは、どう考えてもおかしい   作:戦隊モノエアプ

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『あぁ^〜!性癖の開く音ォ〜!!』

 

 

 私は今、色々なハプニングはあったものの、事なきを得て帰還した次第である。

 

 ネコが猫のように、レッドくんに対して『ふしゃーふしゃー』と威嚇していたことは秘密の話である。生娘の素肌を見るだなんて許せない、という勢力なのかも知れない。もしくは何か勘違いをしているのかも。

 だからこそ、私の着替え時もそそくさと退室するし、怒っているのだろうか。いや、ないか。

 

 なんて、邪推してみたが、結局のところ彼女の真意は不明である。親友だからといって、何でも理解できる訳ではないのだった。

 

 

「ふむふむ……なるほど」

 

 

 今日の出来事を、博士に報告する。

 

 戦隊モノにありがちな、私達を支援し、新技術の開発に勤しむ、そんなサポートキャラ。

 当然、青春戦隊(以下略)にも博士ポジションの人間が居てくれるわけだ。

 

 赤ん坊が器用に二足で立ち、その体躯の何倍もの丈の白衣を身に纏っている。何とも奇妙な光景。双眸なんて互い違いで、何処を向いているのやら解りもしない。

 

 ベビーボイスであるために、男の子か女の子かもわからないのだ。

 

 これが、私達の博士である。この赤ちゃんこそが、私達の頼るべき人物なのだ。

 

 仮初めの姿なのか、将又ガチで言っているのか。もはや考えないようにしていた難題が、ぶり返して来た。頭痛が痛い。

 

 

「その娘……ドゥンケルハイトちゃん?は完全な人型だったんだね? 今までにも人型の怪人は居たけれど、何れも異形混じりの存在だった。擬態ガチ勢なのか。もしくは……」

 

 

 博士は、ブツブツと自分の世界に没入する。

 

 未知の存在の脅威を心配しているというよりは、研究者としての魂が騒いでいる。そのような様子であった。

 

 

「何にしても、人間の社会に紛れ込むことの出来る怪人なんて、危険極まりない。いつ何処で被害が出るか分からないんだ。諸君、いついかなる時でも駆けつけられるようにしておいてくれ給え」

 

 

 その短い手を挙げて、私達に忠告する。

 

 威厳ある言葉であっても、締まらないのが常であった。

 

 戦隊員各々が、博士の言葉を受け止め、噛み砕き、飲み込んだ。誰も彼もが神妙な顔付きをして、自分自身の答えを探す。

 

 ある者は決意だったかも知れない。

 ある者は恐怖だったかも知れない。

 

 それでも、私達は戦わなければならないのだと、皆忘れてはいなかった。

 

 

「そうだ、モモくん。そのドゥンちゃんは、君の名前を知っていたんだったね?」

「はい、博士。その通りです。彼女は、私を純情カレンジャーピンクとして認識していると同時に、その中身のことも知っているようでした」

 

 

 ありのまま先程起こった事を話した。

 

 

「不味い事になったね。敵に君達の正体までバレたのだとしたら、君達の日常までも脅かされる可能性がある」

 

 

 もしも、怪人が学園に現れたら。クラスメイトや学園の生徒達を守る為に戦わなければならない。たくさんの生徒が居る学園で、誰一人として傷つけずに守り抜くことが出来ようか。私達のせいで、彼らに危害が加わるということである。

 

 

「……なんにせよ、いつでも戦えるようにしておいてくれ。躰の話だけではない、ヒーローとしての心構えも大事だと言っているんだよ」

「……。」

 

 

 それは全員に向けた言葉であったが、嫌に私に突き刺さった。喉に刺さってチクチクと蝕む小骨にも、深手を負わす刺傷にも成り得る言葉だったのだ。

 

 私は、目なんてラリっているのに、此方を見据えたような博士の言葉が苦手であった。

 

 

「皆さん、今日は遅いですし、解散と致しましょう。その少女につきましては、私と博士で調べておきますので」

 

 

 今まで、博士の隣に控えていた女性が口を開いた。

 

 真島柚乃(マジマユズノ)さん。

 

 司令室サポーターであり、オペレーターであり、救護員であり、助手であり。まあ、なんだかとても凄い出来る人だということである。

 

 灰色の燻んだ髪の毛は、ボブに切られている。毛先がツンとしているのは、彼女の性格が髪質にも現れたのか。そのようなことは無いのだけれど、そう揶揄する程に生真面目でクールな女性だった。

 キャリアウーマンを想わせるような、リクルートスーツ風の格好は、オペレーターの制服だ。スラリと伸びる長い脚が羨ましく思ってしまうので、極力目にしないようにしている。目に毒なので。私が背が低いからという訳では無い。決して無い。

 

 彼女の解散の合図によって、それぞれが息を吐き、帰宅の用意に取り掛かり始めたようだった。私も着替えてしまおうと、足を更衣室の方に向けたところで声を掛けられる。

 

 

「鏑木さん、待って下さい」

 

 

 件の柚乃さんに呼び止められた。

 

 何か用事があるのか、まだドゥンケルハイト何某かについて訊くことあるのか。

 もう全て話してしまったのだけれど……。

 

 

「先程の戦闘での負傷を診ておきましょう。何かあってからでは遅いですので」

「い、いえ……別に何とも無いので大丈夫ですよ?」

「駄目です」

 

 

 こうして私は、柚乃さんに強引に救護室に運ばれてしまったのであった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「私以外誰も居ませんので、どうぞ捲って下さい」

「うぅ……」

 

 

 言われた通りに衣服を捲る。

 

 その言葉、診療目的でなければ変態みたいだな、なんて馬鹿なことを考える。別に同性だし気にしないのだが、男の時に言われたならばドギマギして狂喜乱舞していたことだろう。

 

 

「本当に何も無いですね……。痛みもないんですか?」

「はい」

「戦隊スーツはボロボロでしたが、全く怪我がありませんね。まるで意図しているというか、毀れモノを扱っているというか。ふむ……」

 

 

 だから何もないと言ったのだが。あの少女も器用なものだ。風穴の一つや二つ覚悟していたというのに、ものの見事に無傷で帰された。

 

 

「し、下も診ましょうか……?」

「それは大丈夫です」

「さいですか。本当に何かあったら言って下さらないと困ります」

 

 

 酷く心配してくれているようであったが、それにも「大丈夫だ」と返した。流石に下まで見られるのは気が引けた。それに、怪我があるならとうに言っていた。

 

 

「困りましたね。何やら物想いに耽ていましたので、怪我を隠しているものかと。貴女はそういう方なので……」

 

 

 勘違いさせてしまって申し訳ないが、そのような顔をしていただろうか。他人にはそう映っていたのだろう。気をつけなければいけないと思った。

 

 

「メンタルケアに移行しましょうか。今日は一人での接敵となってしまいましたが、如何ですか? どうぞ吐き出して下さい」

 

 

 正直な気持ちを打ち明ける。

 

 彼女が気になるとか、自分一人では何も出来なかったとか、させてもらえなかったとか。

 

 心の中の気持ちを、吐き捨てるように言葉にすることで、徐々に軽くなるのがわかった。

 柚乃さんは聞き上手だ。私の欲しい言葉をくれる。彼女になら話してしまおうと思えた。不思議な気分だ。精神的には自分の方が歳を重ねているというのに、不思議だ。

 

 

「御辛い思いを為されたのですね。私に何か出来ることはありませんか?」

「そ、その……舌ピアスをしているって聞いたんですけど、見せてはもらえませんか……?」

 

 

 揶揄い半分の悪戯だった。こんなに泰然自若が服を着て歩いているような女性の反応が見てみたかっただけである。少しだけ見せて欲しい気持ちもあったけれど、本当に少し、小指程度だ。小指と言っても巨人の小指かも知れないが。

 

 

「誰から聞いたんですか?……いえ、あの人しか居ませんね」

「はい。博士が教えてくれたんです」

 

 

 以前、『二人だけの秘密だよ』と博士から耳打ちされたことであった。

 

 

「はぁ……。どうぞ」

「え。」

 

 彼女の赤い舌がペロリと姿を見せる。

 

 本当に見せてくれると思わなかったものだから、少しばかり焦ってしまった。

 

 真っ赤なキャンバスの上に、光り輝く装飾が一つ。クリスマスツリーであれば頂点の星。パフェであればチェリー。

 無いと悲しく、有るのが当然かとも思えるそれは酷く官能的で、扇状的だ。

 

 

「す、すごいです……」

「もうお終いです」

 

 

 私は今、どのような顔をしているのだろうか。いや、自分でもわかるほどに顔が熱い。

 

 お母様。私は今、歳上のお姉さん(精神年齢は歳下)に舌ピアスを見せてもらって赤面しています。

 

 

「モモさんは、ピアスに興味があるんですか? 御自身でも?」

「い、いえ。私は見る専門です。それでも、すごく格好良かったです……」

「さいですか」

 

 

 柚乃さんは、少し嬉しそうに微笑んでくれた。

 

 このような顔も出来る人だったとは知らなかった。堅い人とばかり考えていたのだが、考えを改めることにしよう。

 

 何より、彼女の舌ピアスは素晴らしかった。新たな性癖が開きそうな気がする。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 『まだやる事があるので』、という柚乃さんと別れ、診療室を後にする。

 

 別れが惜しく、嘆息してしまうが、私が悪い訳ではないと思うのだ。あのような経験をしてしまっては普通には生きていけない。

 

 

「モモ、大丈夫だったのか?」

 

 

 扉を抜けると、レッドくんが居た。

 心配してくれていたということが、表情から窺えた。

 

 

「別に、なんにも無かったよ」

「ほ、本当に大丈夫なのか……?」

「うん、大丈夫」

 

 

 泣き出しそうな顔をしていた彼も、私の言葉を聞いて安堵する。本当に優しい子だと思った。

 

 何か私に出来ることはないものだろうかと、思惑する。

 

 

「そうだ、レッドくん。明日私とデートしない?」

「は!?」

 

 

 ドゥンケルハイトちゃんと、博士の言葉のせいで、皆強張らせている。ちょっとくらい息抜きしても構わなかろうと遊びに誘う。

 

 元々、男友達のように馬鹿をし合う関係。可笑しいことはない。

 

 明日は土曜日。丸一日使って、リーダーを癒してあげようではないかと密かに画策するのだった。

 

 

 





 いわゆる箸休め回。タイトルのネタが古過ぎる。

 前話、感想・お気に入り・評価・誤字報告ありがとうございました。執筆の励みになります。お気に召したら是非投げてやって下さい(テンプレ)
 感想goodしか出来てなくて申し訳ないです。好きに書いて下さい。

 千輝青葉先輩の絵。見なくていいです。未だに活躍がない。

【挿絵表示】


 そういえば、興味があったのでアンケします。特に本編を左右する内容ではありません。個人的に嬉しいやつに入れてくれると助かります。


ドゥンケルハイトちゃんは?

  • 女の子
  • 男の娘
  • ふたなり
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