TS娘の俺が戦隊モノのピンクをやっているのは、どう考えてもおかしい 作:戦隊モノエアプ
そんなこんなで、デート当日。
今日の私は、おめかしいっぱい。ゆめいっぱいだ。
普段であれば別段気にもしないし、ラフな格好でも構わないのだが、誰かの隣を歩く手前そういう訳にもいかなかった。それがレッドくんであれば尚更である。
肝心のコーディネートをネコに頼んだ事は、また別の話だ。
「レッドくんと出掛けるから選んでくれ〜」と言うと、彼女は『ふーん』と興味なさげに嫌々選んでくれたのだった。彼女の時間を使わせて申し訳ない気持ちもある。今度お詫びをしなければいけないだろう。
今日は運良く、快晴のぽかぽかデート日和。
青空の元で待ち合わせをしても、苦にもならない快適な気温。照りつける日射も暑過ぎず、陽気で暢気な休日となること間違い無しであった。
駅の前で待ち合わせる。
レッドくんとは幼馴染であり、家も近いのだし、お家から一緒に〜というのでもよかったのだが、それはムードという奴である。待ち合わせるからいいのだ。知らんけど。
「待たせちゃったかな?」
「いや、待ってないよ」
時刻は十時。駅前の時計台の下、約束通りにレッドくんが居てくれた。
ロングニットカーディガンにワイドパンツがどーのこーの。全体的に白を基調としたコーディネートは、こーでねーと(激寒)という感じの清楚な雰囲気を作り出していた。
「モモは、いつも時間きっかりだな。それにしても……他のみんなは遅刻じゃないか」
「ん? みんな? 私達二人だけだよ? 言ったじゃん、デートだって」
「は!?」
レッドくんは、どうやら勘違いしていたらしい。初めからデートしようと言っておいたというのに、悲しいものであった。
「それじゃあ、きびきび行こうか」
「嘘、だろ……。く、黒澤に殺されないよな……?」
いつまでも立ちすくんでいるものだから、手を引いて歩き出す。
時間は進んでいくばかりである。立ち止まってはいられない。そもそもネコは、ハブったくらいで殺したりしない。彼女にも彼女の時間があるのだ。私達も良き休日を過ごそうではないか。
◆◆◆
デートの舞台は、大型のショッピングモール。
複数のテナントが入っているために、それほどの体力を使わずとも、沢山の店を回れるのは魅力的であった。
そもそも、学生の休日と言えばショッピングモールで過ごすのが無難だ。周りを見れば、同年代の少年少女が行き来しているようだった。
私達も、横並びに歩みを進める。
目的地はゲームセンター。
元々、男友達同士のような関係であった私達。
女の子然としなければいけない、という意識が芽生えたのは最近のことで、それまでは共通の話題を語らう仲だったのだ。近頃の彼は余所余所しい態度であるが、私達も思春期ということであろう。なんて言ったって青春戦隊(激寒)なのだからな。
ゲームはその中の一つだった。
偶の息抜き。折角のデートなのだから、どちらかに合わせるのではなく、二人の好きなことをやる方が良いに決まっているのだ。
私は、逸る気持ちを抑えて、彼に楽しんでもらおうと会話に花を咲かせたのだった。
◆◆◆
「おぉ……」
眩ゆい程の照明に、けたたましいような音響。人によっては耐えられないとすら述べる、頭の悪い空間。
それなのに、私には酷く魅力的に見えて仕方無かった。
まずはクレーンゲームからだろうか。
フィギュアに縫いぐるみ、菓子や玩具など。時にはコンシューマーゲームのソフトが景品になっていたりもするが、取れる気配は無い。
「わぁ、可愛い……」
目を付けたのは、クマかウサギかも解らない縫いぐるみ。ちくはぐな存在なのに、どうしてか惹かれてしまう。
前世であれば、こういう類いのモノには見向きもしなかっただろう。変わっちまったな、と鼻で笑った。
すぐさま五百円硬貨を投入し、六プレイで臨む。
しかし、位置をずらすだけで、その金も虚しく消えてしまった。
「しょんぼり……」
鼻から五百円ぽっちで取れることなど無いというのは分かっていたものの、数分でお金が無になってしまうのは悲しいものだ。
「欲しいのか?」
無言で頷く。
「任せろ」
レッドくんは百円玉を入れると、爽快に、事もなげにボタンを操作する。アームのズレすらも想定されたプレイは、もはや職人のようだった。
間も無くして、ゴトンという音が鳴った。
つまり、百円で取ってしまったのだ。
「すごい……。」
「格好悪いトコは見せられないから内心ヒヤヒヤだったよ。ほら、大事にしてくれよ」
「……ありがとう」
レッドくんが私に縫いぐるみを渡してくれる。かなりのサイズだ。
「クレーンゲーム、得意だっけ?」
「まぁ、暇潰しでやってたら上達しただけだよ。それに、こういうの姉さんに持って帰ると喜んでくれるんだ」
すごいな、格好良いなと思った。どうかその才能を転売とかに使わないように、とも思ったが、彼がそのような愚行を犯すことはないだろう。
「うん、大事にする。レッドくんだと思って大事にするよ」
「え!?」
格好良すぎるな、この男。
意識すればするほどに、心臓が痛い程に速くなった。いったいどの様な表情をしているかも解らない顔を、大きな縫いぐるみに埋めることで見せないで済んだのでした。
◆◆◆
次は、アーケードゲームのエリアにやって来た。
私では、メラメラと燃える闘志を滾らせた、漢達の戦場には少し相応しくないのかも知れない。
とは言っても、格ゲー全盛期なら露知らず、悲しいかな今や閑散としていた。
「久しぶりに
レッドくんと向かい合わせの筐体に座り、真剣勝負を挑んだ。
私がパワータイプ、彼がテクニックタイプのキャラを選ぶ。
何処となくコウガくんに似ている大男である。やはり、一発のダメージが大きいというのは浪漫があった。男なら浪漫を追い求めるものである。今や女の子だけど……。
「……負けたー。」
善戦したは良いものの、最後は呆気なくやられてしまった。以前は五分五分であった実力も、今では差が広がっているように感じる。
「てか、やり慣れてるじゃん」
「まぁな……」
ブランクのある私では、今でもちょこちょこプレイしている様子のレッドくんに勝てないわけだ。普通に悔しい。
「子供の頃は、私の方が強かったのに……」
「小さい頃のモモは、何やらせても人並み以上だったよな」
「それももう昔の話か。十で神童、十五で才子、二十歳過ぎれば只の人。悲しいもんだね」
最近は、前世で培った経験も通用するかしないか程度までに落ち込んでいた。
それもそのはず、私達ももう十六歳。十年以上もの間、ずっと続けて来た人間には勝ちようがない。継続は力なり、ってね。
「うーん、悔しい! また今度、リベンジしてやる」
「あぁ、受けて立つ。まぁそれも、返り討ちだけどな」
レッドくんが意地悪な笑みを浮かべた。
幾ら努力したものが正義だとしても、悔しいものは悔しいのだ。ハングリー精神は忘れてはいけないことだった。
◆◆◆
最後に訪れたのは、プリクラコーナー。
これぞ、女子のゲームセンターの目的地という感じであった。
場違い感を感じているのか、そわそわとした様子のレッドくん。私も私で、プリクラの違いなんて分かってないものだから、二人してキョロキョロしていた。
「……これにしよっか」
指を差して、筐体を示した。
一番人気とポップを掲示していてくれたおかげで、初々しいカップルのようにいそいそしているのも終わりだ。心なしか、周りにも温かい眼差しを向けられていたような気がした。
二人でカーテンを潜り、硬貨を入れて、機械を操作する。予め背景とかポーズを選ばないといけないようだった。
指示に従って、にこりと笑みを浮かべた。
二人とも少しだけぎこちない笑顔だった。
それが、あまりにも可笑しかったものだから、心の底から笑うことが出来た。
最後に盛る。盛って盛って、盛りまくる。
瞳を大きくしたり、白粉使ったみたいに顔を白くしたり……。
そして、出来上がったのがこれ。
「これは……凄いな……」
「何と言うか、面白いモンだね」
思わず笑ってしまうような出来栄え。プリクラなんて初めてだから勝手もわからなかったけれど、男友達と悪ふざけをしながら作ったなら、こういうモノが出来上がるだろうといった感じであった。
「はい、これレッドくんの分。縫いぐるみ取って貰ったから、プリクラは私が。大事にしてよね。なんなら、スマホに貼るのでも可です。自慢しまくろう」
照れを隠すために茶化す。
彼女でもない私とのプリクラをスマホに貼ったりしたら、モテなくなってしまう。彼には幸せになってほしいのだ。私なんかとの関係を疑われてはいけない。
「あぁ、大事にするよ。大事にしまっとく」
「じゃあ、私とレッドくんとの二人だけの思い出だね。今後は二人だけの合言葉に『プリクラ』を使うから」
二人だけの思い出だなんて、嬉しくて堪らなくて、えへへと笑い掛けた。
そうこうしている内に、お昼時。少しでも彼の息抜きになっていれば良いのだけれど……。
この後も二人で楽しい休日を過ごしたのでした。
もうメス堕ちしてない?
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真島柚乃さんのビジュ。見なくてもいいです。舌見せ差分は私だけのモノです。
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