元々某所に別名義で投稿していたものを加筆修正したものになります。
※以下注意事項↓
二次面接後、3嫁TS
ルーデウス→ルーディア
エリス→エリオット
ロキシー→ロキシー♂
シルフィ→シルフィくん
ルーシーとララは生まれてますが特に出番はありません。
北方大地、シャリーアの街は今日も寒い。
マフラーに手袋、耳当てと、防寒グッズを身につけていてもまだ寒い。
最近、ノルンは生徒会長として忙しくしているらしい。
数日前に家に帰ってきた時には、食堂に行く暇もないと零していた。
そんなノルンに、お姉ちゃんの愛情弁当(メイド妹監修)でも食べてもらおうと届けに行った帰り道のことだった。
気まぐれで道具屋を覗いていると、珍しい魔道具を見つけたので買ってみた。
少し大きいものだったが、一緒に来ていたザノバに頼んだところ快く荷運びを引き受けてくれた。流石は安心と信頼のザノバ運輸だ、今後も贔屓にしていこう。
魔道具と合わせて、必要な食材も買った。
嗜好品だし、この世界じゃ少々値の張る買い物になったが、社長から貰った支度金があるから懐は暖かい。甘いもの好きなロキシーあたりはきっと喜んでくれるだろう。
あ、あとアイシャもあれでファンシーなものが好きな節が有るからな。
2人には普段から世話を焼かれっぱなしだから、たまには孝行しないとな、ふふふ。
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「で、これは何なのかな? お姉ちゃん」
家に帰って早速使ってみようと準備をしていると、洗濯物を終えたアイシャが微妙な顔で聞いてきた。まあ、実際に使っている所じゃないとあまり見栄えの良いものでもないもんな。
「よくぞ聞いてくれたねアイシャ。これはそう、チョコレートファウンテンと言って────」
ドヤ顔で説明。するとアイシャはそれがどういうものであるかを一応は理解してくれたようだったが、相変わらず表情は微妙そうなままだった。
あれ? 思ってた反応と違う。
と、そこで台所からリーリャとゼニスがやって来た。
既に家の中に充満している甘い香りの発生源を、大きめのボウルに入れて。
ゼニスは相変わらず無表情だが、今日は少し機嫌が良さそうだ。もしかしなくても、リーリャと一緒にチョコレートを混ぜてくれていたのだろう。
「奥様、ご要望の通り準備できました」
「あ、リーリャさん、母さんも。ありがとうございます」
「いえ、これくらい容易いことです……が、こんなに大量のチョコレート、何に使うのですか?」
リーリャから、湯煎で溶かしてもらった大量のチョコレートを受け取る。生クリームは適当な量を混ぜてもらった。
まあ、百聞は一見にしかずと言うしな。見てもらった方が早いだろう。
「これは、こうするんです」
基部の注ぎ口に液状化した大量のチョコレートを投入して、魔力を込める。
すると魔道具は稼働を始めて、ゆっくりとポンプがチョコを吸い上げた。上まで運ばれたチョコがてっぺんから溢れ出すと、今度は重力に従って、滑らかなカーテンを作りながら再び基部へと落下していく。
そうそうこれこれ。これを見せたかったんだ。
「……ね?」
「うーん……それで、これをどうするの?」
「えっと、さっき買ってきたマシュマロは……」
「奥様、ここに」
「ありがとうリーリャさん。これを、串に刺して……はい。これに入れてごらん?」
「こう?」
「そうそう、上手上手。ほら、これで出来上がり」
「あ、これで終わりなんだ……」
そう言ってチョコでコーティングされたマシュマロを見るアイシャは、やっぱりどこか微妙そうな表情だ。なんでだろう、あんまりお気に召さなかったんだろうか……。
いや、まだだ。食べれば、食べれば気に入ってくれるはず。そう思ってアイシャに食べるよう勧めてみると、素直に食べてくれた。
「うん、おいしい」
「……ね?」
「おいしいけど……チョコを塗るためだけならこんな機械要らなくない? 大っきくて邪魔だし」
「えっ」
「こ、こらアイシャ!」
大っきくて邪魔だし。おっきくて、じゃま……。
「お母さんもそう思うでしょ? 食事の時にはどかさないといけないし」
「そ、それは……」
強く否定しないリーリャの反応が全てを物語っていた。
そうか、これ、邪魔になるのか……。
「毎日使うものじゃないだろうし、手入れするのも私たちだよね? 別にそれが仕事だからいいけどさ、お姉ちゃんは少しそういう所も考えて買い物してくれないと」
「……ごめんなさい」
「アイシャ、言い過ぎです!」
「……じゃあお母さんは、別にあってもなくても困らないような物の手入れをしなきゃいけなくなっても文句はないんだ?」
「うっ……それとこれとは、話が違います!」
「違うくないもん!」
ああ、アイシャとリーリャが言い合ってしまっている。私がただの思い付きでこんなものを買ってきたから……どうしよう。横から慰めるように優しく抱きしめてくれるゼニスが居なかったら、泣いてしまっていたかもしれない。
「何やら良い香りがしますね……何事ですか?」
すると、2階の書斎で仕事をしていたのだろうロキシーがやってきた。今日は授業がない日だから、在宅ワークなのだ。
彼は言い合う2人とチョコファウンテンマシンを順に見やると、喧嘩の仲裁をしようと2人に近づいて……行くかと思いきや、マシンの方へとフラフラと向かっていってしまった。分かってましたよ、先生。私はそんなところが大好きです。
「ルディ、これは?」
「あ、それはチョコレートファウンテンといって、珍しいので買ってきたのですが……マシュマロとかを、こうして食べるための魔道具です」
「ほう、それは素晴らしいですね。どれどれ……」
ロキシーにフォンデュした串を手渡すと、彼は目を輝かせながらそれを頬張った。
そして『!!』と頭上に感動したかのようなマークを飛び出させると、マシュマロを嚥下してから興奮したように口を開いた。
「おいしい、美味しいですよルディ! チョコと合わせただけでこんなにも美味しくなるとは! 味もそうですが、この魔道具は見た目にも楽しいのが良いですね! 流石は僕の弟子です!」
「せ、先生は分かってくださるのですか?」
「分かりますとも!」
流石はロキシーだ、私の欲しかった感想を言ってくれた。それだけで報われた気分になる。
「で、あの2人はどうしたのですか?」
「それが、アイシャにこの魔道具が大っきくて邪魔になると言われてしまって……」
「あっ……な、なるほど……」
説明すると、ロキシーはその一言だけでこの魔道具の問題点を察してくれたようだった。まあ、そうだよね。ロキシーも家事はしないから気付かなかったようだけど、言われてみればって反応をするよね……悲しくなんかないやい。ゼニスが慰めるように優しく頭を撫でてくれていなければ、泣いてしまっていたかもしれない。
「奥様だってそんなことは百も承知のはずです、きっと何か深いお考えがあるのです! 第一、主人に口答えするとは何事ですか!?」
「さっき『珍しいから買ってきた』って言ってたもん! それにお母さんはお姉ちゃんのことを買いかぶりすぎ! お姉ちゃんだって間違うんだから言ってあげないとダメなこともあるんだよ!?」
喧嘩している2人共が私のためを想ってくれているだけに胃が痛い。
どうしよう、どうしよう、考えなしな私のせいだ。
「ただいまー……あれ? どうしたの?」
すると、子供たちを連れて散歩に出掛けていたシルフィとエリオットが帰ってきた。それを迎えたアイシャはぷんすこしながらシルフィに詰め寄った。
「聞いてよシルフィ兄!」
「うん? どうしたのアイシャちゃん」
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アイシャから一通りの事情を聞いたシルフィは、うんうんとまるで小学校の優しい先生みたいに頷くと、少し考えてからこう提案した。
「じゃあ、今日だけはもうチョコフォンデュパーティーにしちゃえば良いんじゃないかな? 使い終わったら別の場所に保管することにして、手入れは毎日しなくても問題ないようにすれば良いよ」
「……まあ、よく考えればそうするのが一番良いよね。買っちゃったものは仕方ないし……。お姉ちゃん、強く言い過ぎてごめんなさい」
「ううん、アイシャは私にも駄目なところがあるって分かってくれてたんだよね。私の方こそ、良く考えずに買っちゃってごめん」
お互いに頭を下げると、さっきまでの気まずい空気はもうなくなっていた。本当にシルフィには頭が上がらないなぁ……。
「じゃあ、せっかくだから今日のお昼はご飯と一緒にこれも楽しんじゃおうか。ルディ、マシュマロ以外だと何が良いかな?」
「えっと、ビスケットにクッキー、ウエハース、バナナとかの果物……あとは、しょっぱいおつまみ系のでも意外と合うと思う」
「では、家にあるものでも大丈夫そうですね。支度をしますので、少々お待ちください……アイシャ、手伝ってくれますね?」
「はぁい」
リーリャとアイシャが連れ立って台所に向かうのを見て、私はホッと胸を撫で下ろした。
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二人が食材の準備をしてくれている間、子供たちの相手をしながらシルフィとロキシーが話していた。シルフィは似たようなものをアスラ王国にいた頃にパーティー会場なんかで見たことがあるらしかったが、アリエルの護衛、『無言のフィッツ』としての威厳を保つためにフォンデュにはありつけ無かったのだとか。ロキシーが先ほどのつまみ食いを自慢すると、「ボクも早く食べたいな」なんて言っていた。
「これ、どうなってるんだ……?」
「あ、エリオットそれ触っちゃダメっ……」
すると、マシンを興味津々といった様子で眺めていたエリオットが、子供の悪戯みたいにチョコレートのカーテンに指を突っ込んだ。私の静止は後一歩で間に合わず、エリオットの人差し指は既にコーティングされてしまっていた。
「ご、ごめんルーディア」
「まあ、今日は家族しか居ないから良いけど……他の人も一緒の時はダメだからね?」
「わ、わかった」
エリオットは叱られた子犬みたいにシュンとしながら、指先についたチョコレートをどうしたものかと眺めていた。
……そうだ、良いことを思いついた。
「エリオット、それちょっと貸してください」
「ん? それってどれのこと……!?!?」
「んむっ……」
エリオットの手をとって、私は隙だらけの指にむしゃぶりついた。
空気に触れて少し固まっているので、何回か舌を這わさないとチョコは中々取れない。甘さの中に、時々エリオットのしょっぱさが混ざっていた。
「ん……、んっ」
「ちょ、ちょっとルーディアそれはっ……!」
「……ふぁい?」
エリオットの焦ったような呼びかけに、わざと指を咥えたままで返事をした。それだけじゃない、くらえ上目遣い。昨晩ベッドでしつこく可愛がってくれたお礼だ。
「……!! ルーディあだっ!?」
エリオットの顔がみるみる赤くなっていったのを見てしてやったりとほくそ笑んでいると、エリオットの頭が激しく揺れた。
見れば、背後から近づいてきていたシルフィの拳が煙を上げていた。
「エリオット……? キミ、昼間のリビングでどういうつもり……?」
「ち、ちがっ、今のはルーディアが!」
「仮にそうだとしても今押し倒そうとしてたろ!? 子供たちもいるのに何考えてるんだお馬鹿!!」
……。わ、私しーらないっ。
シルフィに見つかる前にこっそりと避難すると、そこにはロキシーが居た。
ロキシーは何か悪だくみをするかのような薄ら笑いを浮かべながら、チョコレートファウンテンに指を突っ込んでいた。
「……先生?」
「!? る、ルディ……!
あ、いや、これはその……。
ど、どうぞ?」
そう言って指先を私に差し出したロキシーは、背後から近づいて来ていたゼニスに気付かず、盛大に頭を叩かれていた。
そんなところも大好きですよ、ロキシー先生。
完