【TS】無職転生 ルディ子 単発ss   作:みいけ

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2022冬コミケにて寄稿させていただいてました。
今回は、ルイジェルドさんの本(非TSss)とルディ子本に寄稿させていただいています。
何卒……!

土曜日東Q43b みそハッピー様
https://x.com/mizotadamr/status/1722929145393590381?s=46&t=mXX27DUKdAIdflAUSItTCQ

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ルーデウス→ルーディア



「暖め屋さん」※冬のむしょ本in2022寄稿ss

北方大地の魔法三大国の一つ、ラノア王国。

雪の降り積もる魔法都市シャリーアの郊外には、とある屋敷があった。

屋敷の門には飼い慣らされたトゥレントが巻き付いており、ある時は客人を迎え入れ、またある時は外敵に絡みついて追い払うなどしていた。

 

「おはよう、ビート」

 

さて、そのトゥレントを愛称で呼び、早朝から庭に出てきた女主人がここに一人。三人の妻と二人の母親、一人の妹と平和に暮らす、ルーディア・グレイラットである。

モコモコのダウンコートに毛糸の手袋、帽子、マフラーと完全防寒の装備で出てきた彼女は、それでも寒いと身を縮こまらせながら白い息を吐いた。

 

「うー、さむさむ。……やるか」

 

そう独りごちると、ルーディアは得意の無詠唱魔術で、あるものを作り始めた。

庭に積もった雪をかき集め、大きめの山にして、崩れないように気を付けながら穴を掘る。背丈の低い彼女は時折魔術で踏み台を作りつつ、天井を高めに削り取った。

その作業をものの三十分ほどで終えると、外観と内部の表面をヘラで滑らかに整えた後に土魔術で内部の地面を覆い、座るスペースを広めに用意した。

 

「テーブルも作っちゃうか」

 

そして、これまた土魔術で頑丈なテーブルを作ると、いそいそと屋敷の中へ戻り、取ってきたものをテーブルの上に設置した。最後に、天板を重し代わりに乗せれば完成だ。

 

「よし、できた。……ああ、そうだ」

 

最後に何か思いついたように呟いた彼女は、今しがた拵えたものの傍に立て看板を用意して、満足そうにその中へと入っていった。

 

---

 

シルフィエット・グレイラットの朝は早い。

昨晩は王女アリエルの護衛で夜通し起きていたので早いも何もないのだが、早いと言ったら早いのだ。寝ずの護衛など日常茶飯事な彼女にとってはもはや慣れっこであったが、どうにもシャリーアの冬はいつまで経っても堪えるものだ。

夜の間に降り積もった雪を転ばないように踏みしめつつも、早く暖かい家の中に入って、ルーディアの待つ布団に潜り込んで眠りたい……そう思うと、自然と帰路につく足は早まっていった。

そして、家にたどり着いたシルフィエットが玄関をくぐると、妙なものが目に付いた。

 

「……なにこれ?」

 

そう呟いた先には、雪の山があった。それもただの雪山ではない。表面が滑らかに削られており、綺麗な曲線を描くまんまるな雪山だ。

三日前に出かけた時には、間違いなくこんなものはなかった。そう思い、ほんの僅かに警戒しつつ回り込んでみると、その側には立て看板が設えてあった。そこには、几帳面だが少し気の抜けたような筆跡で、こう書いてあった。

 

「……『暖め屋さん』? 『土足厳禁』……」

 

呟くと同時にさらに回り込むと、シルフィは雪山にぽっかりと空いた穴を見つけた。

そして穴の奥に座る人物を見て警戒を解き、頬を緩ませながら雪山に近づいていく。

 

「早いね、ルディ。こんなところで何してるの?」

「いらっしゃい。ここは暖め屋さんだよ。

外は寒いでしょう、どうぞ中へとお入りください」

「ふふっ、なぁにそれ。じゃあ、ちょっとお邪魔します」

 

どこか事務的な芝居をするルーディアに促されて中に入ると、外とは打って変わって暖かい空気が満たされていた。外観よりも広く感じる内部には布団の生えたテーブルが鎮座しており、その一辺でルーディアは人形を作りながら座っていた。

 

「わ、暖かい……これ、なんていうの?」

「この雪のドームはカマクラっていうんだ。で、私が座ってるのがコタツ。ある国に伝わる冬の風物詩だよ」

「へえ、ボク知らなかったよ……やっぱりルディは物知りだね」

「まあね。さ、そんなことよりここは暖め屋さんだからね。思う存分暖まっていってね」

「ふふ、じゃあ、隣いいかな?」

「隣だなんて他人行儀な。ささ、暖めておきました、冷めないうちにお座りください」

「あはは、悪いねぇ……なんか今の、ちょっと懐かしいなぁ」

 

「わ、これあったかい……気持ち良いね……」

「お気に召して頂けたようで。じゃあ、上の方も暖めていくね」

「上の方って、わっ、ルディ近いよ! ボクお風呂まだだから……」

「暖め屋さんだからね。こうしないと暖められないからね。

それに私、シルフィの匂い、好きだよ」

「……もう、ルディのばか」

 

言葉とは裏腹に緩んだ頬を見て、ルーディアはにんまりと笑うのだった。

 

---

 

エリス・グレイラットの朝も早い。

今日も今日とて日課の鍛錬を行おうと愛剣を片手に庭へと出てきた彼女は、庭先で見つけた雪山に視線が釘付けになっていた。

 

「何よこれ、『暖め屋さん』? えっと……『土足げんきん』?」

 

そう言いながら回り込むと、雪山の穴の中には人形を作るルーディアと、彼女に抱えられるようにして気持ち良さそうに眠るシルフィエットの姿が見えた。

 

「ルーディア、何してるのよ」

「いらっしゃい。ここは暖め屋さんだよ。

外は寒いでしょう、どうぞ中へとお入りください」

「シルフィ、帰ってたのね」

「あ、うん。さっきね。寝てるから、静かにね」

「分かってるわ」

 

言いながらコタツに入ると、エリスは中で足にぶつかったものを確かめるようにして、ちょんちょんと軽く小突いた。

 

「これ、ルーディアの足?」

「ううん、多分シルフィの」

「……これは?」

「あ、うん、私の足」

「……ねぇ、私にもそれ、しなさいよ」

「それって?」

「シルフィにしてるみたいに、後ろから抱きつくやつよ」

「……暖め屋さんだからね。そうしないと暖められないからね。シルフィを起こさないようにして……っと」

 

「暖かいわ、ルーディア」

「暖め屋さんだからね」

「……少ししたら、鍛錬に行かないと。シルフィもちゃんとベッドで寝かさないと風邪をひいちゃうし、連れて行くわ」

「そっか。じゃあ、お願いするよ」

「でも、あと少しだけ……良いわよね?」

 

寄りかかるエリスの体温と重みを感じて、ルーディアはにんまりと笑うのだった。

 

---

 

ロキシー・M・グレイラットの朝は少し遅い。遅いと言ってもエリスと比べてのことなので、グレイラット家の面々が通常起床するのはこのくらいの時間であるのだが。

着替えてから一階に降りていくと、ゼニスの世話をするリーリャと、朝食の準備に取り掛かるアイシャの姿があった。

 

「あ、ロキシー姉、おはようございます!」

「おはようございます、ロキシー様」

「アイシャ、リーリャさん。おはようございます」

「もうすぐ朝食の準備ができるから、お姉ちゃんを呼んできてくれる? お庭に居るから!」

「え? ええ、分かりましたけど、ルディは庭で何を?」

「んー……それは見てのお楽しみ、かな?」

「……? 分かりました、行ってみましょう」

 

 

「いらっしゃい。ここは暖め屋さんだよ。

外は寒いでしょう、どうぞ中へとお入りください」

「……ルディは面白いことを考えますね」

 

そう言って中に入ると、ロキシーは興味深そうにカマクラの中を見渡した。

 

「なるほど、なるほど。これは『アースフォートレス』の応用でしょうか。

この暖かいのは微調整した『バーニングプレイス』ですね。

流石ルディ、器用ですね……」

「すべては先生に快適な空間をお届けするためです。ささ、どうぞコタツの中で暖まってください。アイシャが呼びに来る間だけでも」

「気持ちは嬉しいですが、先に朝食にしましょう。アイシャからルディを呼んでくるように言われましたから」

「……むぅ。それなら仕方ないですね」

 

言葉とは裏腹に、ルーディアはロキシーが迎えに来てくれたことを嬉しく思うのだった。

 

---

 

朝食の時間が終わった頃。

ナナホシは今すぐに試したい転移魔法陣の図面を持って、グレイラット邸へと足を運んでいた。いつも研究に協力してくれる、ルーディアを訪ねてきたのだ。

玄関のベビー・トゥレントが自動的にドアを開けてくれるのももどかしく庭に入ると、ふと、何か甘い匂いがした。それも、どこか懐かしい香りだ。

しかし今はそれよりも魔法陣。最短距離で玄関のドアまで歩みを進めると、ドアノッカーを数度叩いた。

 

「はいはーい、どちら様ですかー」

 

すると、すぐさま開いたドアから姿を表したのは、ルーディアの妹アイシャだった。その手にはボウルを抱えており、なにやら白くて四角いものがゴロゴロと入っていた。

 

「あ、ナナホシさん。こんにちは。お姉ちゃんなら、お庭に居ますよ」

「そ、そう。ありがとう。……あの、それは?」

「お姉ちゃんに言われて作ってみた食材です。今からちょうど食べるところで……ナナホシさん?」

 

 

「いらっしゃい。ここは暖め屋さんだよ。

外は寒いでしょう、どうぞ中へとお入りください」

「うー、寒いよーお姉ちゃん。はい、お餅持ってきたよ。餡子の方はどう?」

「うん、良い感じかな。後はお餅を入れて、っと。

なんだ、ナナホシも来てたのか。とりあえず中に入りなよ。暖め屋さんは来る者拒まずだからね」

「いや、私は魔法陣を……もしかしてそれ、お汁粉?」

「そうだよ。ロキシーに甘いものを食べさせてあげたくてさ」

「それじゃあ私が駄々をこねたみたいじゃないですか……まあ、ルディがどうしてもと言うのならいただきますが」

「どうしてもロキシーに食べてほしいです」

「そ、それなら仕方ないですね。ええ、仕方ありませんとも」

 

ルーディアの膝の上に座りながらコタツで暖まるロキシーは、目の前で煮詰められる餡子に夢中といった様子だったが、それはナナホシも同じことだった。

焦げないようにとかき混ぜられる鍋を見つめながら、コタツに腰を下ろす。

正面にはアイシャが座り、テキパキと食器の準備がされていく。

 

「よし、食べ頃だ」

 

はやる気持ちを抑えながら、ロキシーとナナホシは注がれたお汁粉を口に運ぶのだった。

 

---

 

ここはラノア王国の魔法都市シャリーア。

その郊外にあるグレイラット邸では、冬の間に『暖め屋さん』が現れるのだとか。

 

次に訪れるのは誰でしょう? それはあなたかもしれません。




学校の噂 番外編
『暖め屋さんは人をダメにする』
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