アイボリーのニットセーターに、ブラウンのロングスカート。上着として羽織っているコート以外には、キャリーケースを一つのみ引っ提げた志穂さんが玄関にいる。
突然の展開に驚きながらも、俺は前屈みになりながら紳士的な行動を取ることにした。
「あー、取り敢えず中へ。荷物持ちますよ」
「あら、ありがとう」
「すみませんが鍵を閉めてきてください」
キャリーケースを片手で持ち上げると、素早く身を反転させる。今も自己主張の激しい頭隠して尻隠さずな愚息を庇いながら、俺は速やかにリビングへ退避しようとした。
そんな俺の行動を察知してか、志穂さんはすぐに隣に並ぶと何故か腕を組むように抱きついてくる。
「あの……そんなにくっつかれると歩き難いんですが」
柔らかな感触と、甘い香りが五感の二つを奪う。視覚まで奪われないように、俺は腕に当てられる巨乳は見ないことにした。
「こんなおばさんにくっつかれるのは嫌かしら?」
「いえ、とても嬉しいです。本当に人妻なのが残念なくらいですよ」
「あら、やだ」
満更でもない様子で喜ぶ志穂さんを連れてリビングへと戻る。
「もう、遅いわよ。早くしま……しょ……」
俺が戻ってきたことに喜び、発情したメスの顔を見せていた愛理の顔が固まる。その双眼はしっかりと母親の姿を捉えていた。
「お、お母さん!?」
「え、なんでここにっ!?」
驚く姉妹を見て、志穂さんは一言。
「来ちゃった♪」
なんとも軽い感じで挨拶する志穂さん。彼女のキャリーケースをソファーの横に置いて、俺は元いた位置に戻る。
志穂さんが見ていない隙に、都を抱え上げて膝の上に乗せた。
「ちょっ、ゃ、いま触ったら……!」
「ごめん。でも、隠すにはこうするしかないんだ」
収まる様子のない愚息を隠すには、この方法しかない。都のスカートの中だ。
横から見ても広げたスカートの下であれば見える心配はない。問題は布一枚しかない都のお尻に押し付けてしまっていることだが、こうなった責任は都にあるので文句は受け付けない。
「あら、随分と仲がいいのね」
「んっ……!そう、ですね……私とお兄さんは愛し合ってますので」
抱きかかえるように都のお腹に腕を回すと、さらに密着度が上がる。
合法的にあれを押し付けられる状況に、思わずもっといじめたい衝動に駆られたが既のところで堪えた。
「そ、そんなことよりどうしてお母さんがここにいるのよ?」
さっさと母親を帰らせたい愛理が、用件を聞き出そうと躍起になる。
そんな娘に、志穂さんはニコニコと笑顔を浮かべるばかり。対面のソファーへと座った。
「あら、ごめんなさいね。お邪魔しちゃったかしら」
そう言う志穂さんの視線は、彼シャツ下着姿の愛理に固定されている。脱がしたわけではないが、まったく勘違いというわけでもなく、さすがに俺も愛理も言い返せなかった。
「そ、それはそうかもしれないけど……っ」
発情した様子で太ももを擦り合わせ耐える愛理。いますぐにでも可愛がって欲しいのを我慢している様子だ。
「何から話したものかしらね〜」
顎に人差し指を当てながら、考え込むように天井を見つめる。
やがて、それに飽きると一言。
「喧嘩して家出して来ちゃった」
と、簡潔に述べた。
「それがなんでここにくることになるのよ。それなら連絡してくれてもいいじゃない。っていうかなんで場所知ってるの?」
「ちゃんと連絡したわよ。行くって。でも、二人揃って電源切ってるのか連絡つかなくて。だから京介に教えてもらって一人できたのよ」
姉妹は心当たりがあったのか顔を見合わせる。薬を盛ったところから、スマホの電源を切るまで計画通りのようだ。
「最初は実家に帰るつもりで出たんだけど、冷静になって考えたら仕事もあるし、それなら直人君の家に厄介になった方がいいかなーって」
冷静になって家に戻らないあたり、戻る気はないらしい。
志穂さんは私は悪くないとばかりに澄まし顔だ。
「困るんだけど」
「私は気にしないからどうぞ続けて?」
むしろ娘の痴態には興味があると言わんばかりに、志穂さんは微笑みながら続きを促す。
「お母さんの前でできるわけないでしょ!」
「そ、そうですよ……!」
我慢できずに身動ぎをして体を擦り付けてくる都が、なにやら言ってるが俺には戯言にしか聞こえなかった。
「あぁ、そういえば……」
娘の陳情を素知らぬ顔で受け流しながらキャリーケースを漁る。そして綺麗なラッピングされた包みを取り出すと、俺の方に差し出してきた。
「はい、バレンタインチョコ」
「俺にですか?ありがとうございます!」
都を抱えたまま右手を差し出し、包みを受け取る。
手作りのようで、透明な包みにはハート型のものがいくつか入っていた。
「ひゃんっ!」
姉妹から物言いたげな視線を感じたが、膝の上の都はお尻を揉んで黙らせておく。
隣の愛理は腰に腕を回すだけで、何故か赤面して悶えるように身を縮こまらせた。
二人揃ってよっぽど敏感になっているらしい。
つい二人の反応にニヤニヤしてしまう、そんな時であった。
「二人からも貰ったのね」
目敏くテーブルの上に置かれたチョコに気づいた志穂さんが、何を思ったのかそのひとつを摘んで自らの口に放り込む。
「「「あっ…………」」」
その様子を、俺達三人は見ていることしかできなかった。
「あら、これはお酒が入ってるのね。愛理のかしら」
呑気に食レポした志穂さんは、娘の作ったチョコを気に入ったのか二つ目を口に放り込む。
「……志穂さん。一応俺が貰ったものですので、その辺で……」
正直あれを全部食べるのは怖いが、これ以上食べさせるわけにもいかず、俺はなんとか彼女を制止した。
「ごめんなさいね。つい美味しそうだったから」
わざとらしく茶目っ気を見せて、舌を小さく出す志穂さんはとても可愛らしい。可愛らしいが今の俺には猛毒だ。
「身体の中からぽかぽかしてくるわね……ふふっ」
とろんと蕩けるような顔をして、こちらを見つめてくる。
ぎゅっと胸を掻き抱き、襟をぐいっと引っ張れば黒いブラがチラチラと見えた。
「んっ……あついわねぇ」
『暑い』のか、『熱い』のか。
ふらりと立ち上がった志穂さんが、対面から俺の左隣へと移動する。腰がくっつくほど近くに座ると、そのまま胸を押し付けるようにしなだれかかってきた。
「ねぇ、直人君。泊めてくれるわよね?」
あまりの色気に「わぁ、人妻エロい」以外の感想が浮かばない。お薬の効果もあって俺の理性は崩壊寸前だった。
「あの人はもう私の身体に興味なんて示さないけど、これでも体型には気を遣ってるのよ?垂れてきてるかもしれないけど、大きさなら娘には負けないわ」
「ちょっとお母さん何言ってるのよ!?」
娘の慌てた声にも、志穂さんは素知らぬ顔だ。
それどころか俺の手を取って、自らの乳房に押し付けてくる。
大きくて、柔らかくて、温かくて。つい指先が掴むように動いてしまったのは条件反射だ。仕方ない。
「泊めるのはいいですけど。そ、それはさすがにダメでしょう」
親子丼には興味はあるが、人妻である。
手を出したら、それこそ法で裁かれる前に私刑執行されかねない。
下半身の第二の脳とも呼べる器官がやれと言っているが、その指令は都の人肌の温もりによってギリギリキャンセルされていた。
「女子中学生はいいのに、人妻はダメなのかしら」
「女子中学生ともしてませんよ」
「ふ〜ん、私はてっきり毎晩ヤってると思ったんだけど。最近都の成績が下がってきたし、性行為にハマって勉強を疎かにしてるものだと」
「お兄さん全然手を出してくれませんから」
「あら、こんなに可愛いのに」
「手は出してません」
不服そうな都の視線から目を逸らすが逃げ場がない。
それどころか、実の母親がお勧めしてくる。
「別にいいのよ。うちの娘に手を出してくれても。妊娠させられると困るけど、責任を取れるくらいの経済力はあるみたいだし」
「世間一般的にバレたらまずいのでは……」
「親公認だし、バレなきゃ問題ないわよ」
鹿島父の意見は考慮されていないのは、まず間違いない。
「あの人は都と京介を産んでから私のことなんて女として見てないわ。それ以前に淡白でからだの相性も良くないし。私はもっとしたいのに持て余すばかりで勿体無いと思わない?」
それが今までの不満のひとつであったのか、また「バレなければいい」と志穂さんは誘惑してくる。
「……それにあの人、隠してるけどNTR系のAV持ってるのよね」
ぼそりと呟かれた一言は、あまりにも衝撃的だった。脳が一瞬理解を拒否するほどである。
「お、お母さん、直人のこと気に入ってるからって近過ぎじゃないっ」
「少しくらいいいじゃない。直人君って夫と違って筋肉質で何か新鮮なのよね。男の身体っていうか」
ぺたぺたと胸板を触ってくる。服の上からでは満足できなかったのか、瞬く間に服を乱されて前開きになったシャツの隙間から、這うように指先で大胸筋をなぞる。
「よく考えて直人君。未成年と人妻、どっちが罪深いと思う?」
慰謝料で済む不倫の方がいいと言わんばかりに、志穂さんが迫ってくる。ここに親権などが加われば養育費など加算されるが問題はそこではない。
「なんで喧嘩したか知らないけど、直人にちょっかい出すのやめてよね!」
「都はいいの?」
「母親よりはマシよ!」
母親の痴態など見たくない、と言わんばかりに愛理が叫ぶ。
「こんな火照った身体のお母さんを追い出すって言うの?」
「お父さんにでも慰めてもらって!」
「無理よ。もう何年もしてないし、あの人淡白だし」
「知らないわよ!」
「それに今私を放り出したら、またナンパされちゃうかも。今度はホテルに連れ込まれちゃうかもね。名前も知らない男の人に」
志穂さんがテーブルの上のチョコレートを見下ろす。原因はこれだと言わんばかりに。
さすがに放り出して、何かあると困るのか愛理の気勢が削がれる。志穂さんがナンパされるのはよくあるみたいだ。
実際この人がフリーなら、俺も放っておかないだろう。何を差し引いてもあまりにも魅力的なのだから。
「んっ……ふぅ……っ」
膝の上の都があまりにもおとなしいので、様子を窺ってみると苦悶の表情を浮かべている。あまりにも薬が効き過ぎているみたいだ。
「この話は明日にしよう。愛理、風呂行くぞ」
「え?ちょっとお母さんもいるのよ?ま、まさか一緒に入る気!?」
「嫌なら俺は都と二人で入ってくるけど」
そのまま都を抱えて立ち上がる。
「……あ、あの、お兄さん……?」
「尻叩き百回と全身を洗われるのどっちがいい?」
悪戯の罰がまだ終わっていない、と言うと都の顔色が変わる。
「いま尻叩き百回なんてしたらお姉ちゃんみたいなマゾになっちゃいますよ!?」
「ねぇちょっとそれどういう意味よ!」
都は覗いた時に知ったのだろう。俺も乱暴にされて喜ぶのは愛理だけでいいと思う。
「さて、それじゃあ愛理が入らないなら私が直人君と入ろうかしら」
「ダメに決まってるでしょ!それなら私が入るわよ!」
未だ言い争う母娘を置いて、俺は都を連れてリビングを出た。
洗面所で服を脱ぐ。それを赤い顔で見つめる都。
俺が全部脱ぐと、下半身を凝視したまま硬直する。
普段から姉と俺の情事を覗いているが、こんな風に完全戦闘態勢になった愚息を見るのは初めてなのだろう。当然見せつけているわけだが。
「意外にもピュアな反応だなぁ」
前に一緒に風呂に入った時も見ているのに。
俺は硬直したままの彼女にそっと近づいた。
「ぴっ!?」
甲高い悲鳴が脱衣所に響く。
興奮した愚息が、蛇のように鎌首をもたげた。
都の制服に手を掛ける。
「ぬ、脱がしちゃうんですか……?」
「脱がなきゃ風呂に入れないだろ」
「あの……自分で脱ぎますから……」
「残念ながらこれも罰ゲームのひとつだからな」
「私利私欲入ってますよね!?」
抵抗らしい抵抗もなく、セーラー服を脱がす。
スカートのホックとファスナーを外せば、するりと床に落ちた。
シャツのボタンをゆっくりと外す。都の反応を確認しながら、焦らすように。ボタンを全部外し剥ぎ取ると、可愛らしいオレンジ色の下着とニーソのみになり、彼女はより一層羞恥に頰を染める。
「あっ……」
背中に腕を回して、わざと指を這わせながらホックへ。
慣れた手つきで外せば、形の良い乳房がぷるんと揺れた。
肩紐を外し、ブラジャーを剥ぎ取る。
パンツを下ろして、片足ずつ脱がせる。
ニーハイソックスはくるくると丸めるように脱がし、転がすように投げる。
そうして裸になった都を、もう一度抱きかかえた。
「早くお姉ちゃんが助けに来るといいな」
「……私は、別に。このままお兄さんに捧げてもいいんですよ」
もう自分で止めるのは無理だと、僅かに残った理性が囁く。
口では止めて欲しいと言いながら、愛理が止めに来ないことを願い、都を風呂場へと連れ込んだ。
全てをお姉ちゃんに丸投げしました。あとはご想像にお任せします。