元メスガキさんをお持ち帰りした件   作:黒樹

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検証と鑑賞

 

 

 

午後三時発の電車に乗り、実家近くの駅で降りる。

地元へと久しぶりに帰ってきたが、実家へは寄らず素通りして母校である中学校を目指して歩く。

見慣れた、けれどどこか違う道。新しい建物が増えて景観の変わった街並みは、どこか別の世界のようにも感じた。

 

約三十分ほどの通学路を歩くと、昔は毎日のように見ていた中学校の校舎が見えてくる。近くまで来るとよくわかるのが、昔は大きく見えた校舎も大人となった今では少し小さく感じる。近くで見てもやはり小さい。

 

ちょうど六限目が終わるチャイムの音が鳴った。

しばらく校門で待っていると、昇降口の方が騒がしくなる。生徒玄関にわらわらと生徒が溢れて、部活や下校のためにぞろぞろと出てくる。その中でも特に目を引く双子の姿は見つけやすかった。

 

「あ、お兄さん!」

 

あちらも俺を見つけたようで、都が小走りにやってくる。セーラー服のスカートがひらひらと揺れて、その姿に女子中学生なんだなと再認識した。

 

「よう。おかえり」

「ただいま。–––って、まだ学校なんですけどね」

 

ゆっくりと歩いてきた京介も合流して、都は背後を一瞥した。

 

「ここでは目立ちますし、もう移動しましょうか」

 

鹿島さんと一緒にいる大人の男は誰だ、という視線をひしひしと感じる。しかし都は、好奇の視線を気にした様子もなく無視して俺の腕に抱きついて、学校を離れた。

 

「さっそく家に帰ってAV鑑賞と行きたいところですが、まずはスーパーに行きましょう」

「言い方」

「お兄さんとえっちなDVD鑑賞?」

「変わってない!」

 

人の気配がないからいいが、女子中学生にAV鑑賞と発言させているのは非常にまずい。思わず人気のないことを確認するために周囲に視線を配ってしまった。

 

「なんでスーパー?」

 

ツッコミに忙しい俺に代わって、京介がスーパーに寄る理由を聞けば、都は呆れたような顔をした。

 

「どうせ男二人でろくなもの食べてないでしょう。だから、可愛くて綺麗なお姉様が夕食を作ってあげようと思いまして」

「あっ、そう」

「もっとありがたがれ!」

「そうだぞ。都ほど料理が上手いお姉ちゃんはいないからな」

「お兄さんはそうやって褒めてくれるから好きです」

「はぁ、いちゃつくなら他所でやってくれる?」

 

すりすりと俺に頰を擦り寄せる都を、鬱陶しいと言わんばかりの目で見た京介は距離を少し離すように一歩ずれた。

 

「それにどうせお父さんが帰ってくるまで時間はありますし、料理しても時間は余りますよ」

 

そのまま通学路から少し逸れて、スーパーへ向かう。

店内に入ると俺にカゴを持たせて、迷いなく野菜をカゴに入れていく。

 

「う〜ん、お肉はどっちがいいですかね〜」

「なに作る気なんだよ?」

「なんだと思います?」

 

質問を問題へと変えた都に、知るかと京介は顔を顰める。

 

「お兄さんは?」

 

ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、肉。

 

「カレー!」

「正解」

「ふむ。肉か……豚も牛も捨てがたい」

「お兄さんは帰ったらお母さんが作ってくれてるじゃないですか」

「そうだった」

 

どちらかといえば、俺が好きなのはカツカレーである。だから、カレーに肉を入れるとしたら挽肉程度の気にならない肉の方が嬉しい。

 

「豚にしますか」

 

無難に安い方にして、カゴに豚肉を入れた。

他にもサラダ用の材料などを入れて、会計へと向かう。そんな俺の肩を誰かの手が掴んだ。

 

「ん?」

「あら、やっぱり」

 

振り向いた先には–––実の母親の姿が。

 

「げっ、母さん!?」

「あら、酷いじゃない。なによ『げっ』て。正月にも帰らないし連絡もしない薄情な息子に育てた覚えはお母さんありませんよ。あら?」

 

不満そうな顔が、双子に向かう。

 

「……まさか、愛理ちゃんとの子供!?」

「違う愛理の妹弟だ!」

 

とんでもない勘違いを引き起こしかねなかったので、思わず叫ぶ勢いで否定する。

 

「あら、そう。ふ〜ん。あちらの家族とは家族ぐるみの付き合いをしてるのに、なお君は家にも帰ってこないんだ」

 

不貞腐れたように頰を膨らませる母親。こんな子供っぽい拗ねた顔は見たくなかった。

 

俺が頭を抱えていると、都が一歩前に出る。

人懐っこい笑みを浮かべて、年相応の可愛らしさを浮かべたかと思えば、

 

「はじめましてお母様。私は鹿島都と申します。お兄さんの愛人です」

 

–––とんでもない爆弾をぶん投げた。

 

「…………愛、人?」

 

頭から爪先まで。確認するように母は眺めて、俺の方を錆びた機械のように動いて視線を戻す。ギギギ、という鈍い音が聞こえそうなほど完璧な首の動きだった。

 

「ねぇ、なお君……女子中学生に手を出したの?」

「手を出したとは人聞きの悪い……」

 

もう少しオブラートに包んでくれないだろうか。俺は全力で視線を逸らす。

 

「前から思ってたけど、本当にやるとは……。姉妹丼もしたんでしょ!」

 

どうして母がそんな単語を知ってるのか。

せめて、実家にあるえっちな本は全部処分しておくべきだったか。

 

「大丈夫?無理やり手篭めにされてない?」

 

心配したように母が都の肩を掴む。

俺は黙ってその様子を見ていることしかできなかった。

 

「大丈夫ですよ。母公認なので」

「それはよかったわ……。この子の性癖終わってて正直どうかなって思ってたの。お母さんも手篭めにされてない?」

「それは今後次第ですかね。うちの母ってお兄さんのこと大好きですし」

 

公衆の面前でいったい何の話をしてるのやら。

俺は京介と二人蚊帳の外で話を聞いていた。

 

「ところで本当にバレンタインの夜何もなかったんですか?」

 

すると思い出したかのように疑いの視線を都は向けてきた。

 

「あの媚薬すごい強力でしたし、一人で発散なんてまず無理だと思うんですけど……」

「……玩具を貸しただけだよ」

 

愛理を弄ぶためだけに買った大人の玩具を。だから、玩具と言われて人の股間を見るのはやめてほしい。

 

「まぁ、いいですけど」

 

興味を無くしたのかこの話題は終わった。

 

「それよりもう行っていい?用事あるから」

「あら、せっかくだから晩御飯をご馳走様してあげようと思ったのに」

 

まだ話し足りないとばかりに母が言う。都のことをよっぽど気に入ったらしい。

 

「今は急いでるから」

 

都を抱くようにして母から引き剥がす。今度姉妹揃って連れてきなさいよ、という母の言葉は無視して歩き出した。

 

「面白いお母さんでしたね」

「人の部屋漁るのはやめてほしいけどな」

 

おかげで俺が手に入れたえっちな本も、エロゲの類も全部把握されている。何が悲しくて母親に性癖を把握されないといけないのか。

 

 

 

スーパーから逃げるように先を急ぐ。それから十五分ほどで、鹿島宅に到着した。

 

「お父さんはいませんね」

 

車庫に車はなく、仕事に行っているみたいだ。

家に入った俺達は、取り敢えずそれぞれやるべきことに集中した。

都はキッチンでカレーを作り、京介は証拠の品を取りに部屋に戻った。それがダイニングテーブルに並べられる。

 

二枚の写真とNTR系のAV。

まずは写真の方から見てみる。

 

「ふむ……。不審な点は見当たらないな」

 

素人の合成なら、素人でも見分けられる粗さがあると思ったが、加工されている証拠となるものは見つけられなかった。

 

「親父曰く、キスされたって話だったからこれに関しては捏造じゃないんじゃねぇかな」

「これが例の写真ですか?」

 

具材を煮込んでいる最中なのか、都が写真を手に取ってまじまじと見た。

 

「……抱き合ってるように見えますね。これじゃあお父さんからやったって言っても過言ではないかと」

「不意打ちでキスするくらいは簡単なんだけどな。おまえがいつもやってるだろ」

「私そんなこと–––んむっ!?」

 

反論しようと振り向いた都の唇に強引に唇を重ね合わせる。たった一瞬の出来事に驚いた彼女は、瞳を見開いて硬直した。

 

「たとえばこんな風に」

「も、もうお兄さんってば……!」

 

満更でもない様子で照れる都。

 

「よそでやってくんね?」

 

見ていられないとばかりに京介は目を逸らす。

 

「でも、それだけだと弱いですよね。抱きしめてるようには見えないというか……」

「そっちもなんとかなると思う。そこ立って」

 

都をその場に残し少し離れる。一メートルほどの距離に向かい合うように俺も立つ。

 

「それじゃあ、躓くように倒れ込んできて」

「……あ、なるほど」

 

ピコン。何か閃いた様子の都が駆け出して、俺の胸に飛び込んでくる。

 

「きゃっ、脚が〜」

 

すっごい棒読みで抱きついてくる彼女を受け止めると、その勢いのまま「隙あり」と爪先立ちになり顔を近づけてきた。

不意に唇が都によって塞がれ、絡めるように首に腕を回す。そのまま何度もチュッチュと短いキスを繰り返した。

 

「こういうことですね」

「まあ、そういうことだな」

「それはいいけど、こっちはどうなんだよ?」

 

辟易とした様子でもう一枚の写真を指差す京介。イチャイチャするなら他所でやれと言わんばかりだ。

もう一枚の写真は、キスした女性とホテル前で撮られたものである。今にも入っていこうとするところを激写されていた。

 

「そっちはどんな言い訳をしていたんだ?」

「それが微妙なんだよな。はっきりしないっていうか。親父結構飲んでたみたいで。だけど絶対にヤってないって否定はしてたな」

 

あまりにも情報が少なすぎる。状況によって検証が必要だろう。

 

「直前に同僚と三人で飲んでたらしいけど」

 

補足説明が入ったが、正直役に立つかどうかもわからない情報だ。

 

「情報が少なすぎるな。この件は一旦保留にしておこう」

「それじゃあ次はいよいよAVですね」

 

残るは喧嘩の原因の一つ。NTR系のAVである。不倫に比べれば微々たるものかもしれないが、内容が内容なだけに無視できない。不倫も浮気もNTRもある意味一つなのだから。

 

「じゃあ、俺は部屋戻るから」

「京介は見ないんですか?」

「誰が見るかよ。しかも双子の姉と一緒とか!それに兄貴とナニおっ始めるかわかんないし」

 

そんなの隣で見せられるなんてごめんだね。あとはごゆっくり。と、京介は足早にリビングを出て階段を駆け上がっていった。

 

「……二人きりになっちゃいましたね」

 

さすがにそれは誤算だったのか都は少し緊張した様子だ。

 

「まぁ、いいだろ。とにかく見てみよう」

「その前にカレー完成させてきますね」

 

NTR系のAVの表紙には主演女優の姿が写っている。どことなく志穂さんに似ているような気がする。茶髪でグラマラスなボディだから余計にそう感じるのかもしれない。

おまけにこのNTR系のAVは、夫が飲みの帰りに連れてきた会社の同僚に妻が強引に迫られるところから始まる。そこから発展して身体だけではなく、心まで奪われるというストーリーだ。

 

リビングのDVDプレイヤーにディスクを入れてテレビをつける。

適当にソファーに座って、映画鑑賞のように準備をすれば都がリビングに戻ってきた。既にカレーの匂いが充満しているので、ルーは溶かし終えたのだろう。

 

「それじゃあ私はここで」

 

俺の膝の上に座って、背中を預けてくる。

言われるまでもなく彼女のお腹に腕を回して、そのままぎゅっと支えるように抱きしめる。

リモコンで再生ボタンを押せば、映像がテレビに流れ始めた。

 

「……」

 

緊張した様子でテレビを凝視する都。まだ冒頭だというのに、息を呑むように真剣な表情で画面を見ていた。

誰か人が出るたびに、喉を鳴らすような音が聞こえる。心臓の音もバクバクとホラー映画を見るように高鳴っていた。

 

それから数秒ほど画面を凝視して真剣に見ていた都が、ぽつりと零す。

 

「……なんていうか、お世辞にも演技がいいとは言えませんね」

「まぁ、こういうシチュエーションって味付けというか、飾りみたいなもんだからな。結局は偽物だし。エロゲだって登場人物は全部二十歳以上なんて言うけど、実際は違うからな」

「お兄さん、私は本物の女子中学生で義妹ですよ?」

 

反応に困ることを言うのはやめてほしい。俺は敢えて無視する。

 

「だから、俺はあんまりAVは見ないかな。エロゲやってる方が楽しいし」

「まぁ、確かに。お兄さんAV全然持ってませんもんね。エロ漫画とエロゲが大半ですし」

 

納得した様子で都が頷くが、俺はエロゲの類を見せた覚えがないんだが……聞かなかったことにする。

 

「あ……」

 

お世辞にも上手いとは言えない演技を見ていると、ついに状況が動き出した。

 

夫が酔い潰れている間に、妻が同僚に押し倒されたのである。

都は「きゃっ」と小さく悲鳴をあげて手で顔を隠しながらも、指の隙間から興味津々に行く末を見守っていた。

 

「ほぅ……おぉ……」

 

おっかなびっくりAVを鑑賞する都は、ふと何かに気づいた。

 

「…………なんていうかそこまでエロくありませんね」

「おまえは俺と愛理がやってるの見慣れてるからな。目の前でも見たし」

「あの臨場感は実写版AVとでも言うべきものでしたからね」

 

エロくないと言いながら、都は頰を赤らめて映像を見ている。

女優の喘ぎ声に、ぴくりと身を震わせる。

太ももをもじもじと擦り合わせて、無意識なのかお尻を擦り付けてきていた。

 

あまりにも可愛らしい姿に、つい悪戯心が湧く。

 

「んッ……」

 

スカートの中に手を入れて太ももを撫でれば、艶かしいくぐもった声がリビングに響いた。

 

調子に乗って今度は、セーラー服の上から胸の輪郭をなぞったり、脇腹をなぞったりしてみるとその度にぴくぴくと反応してくれる。

 

「……お兄さん。それ以上されると–––」

 

–––ガチャッ。

 

物欲しそうに上目遣いで濡れた瞳を向けてきた都と見つめ合っていると、玄関のドアが開いた音がした。

 

「–––あ。帰ってきちゃいましたね。残念」

「それはいいからまずはAV止めろ」

 

俺は慌ててリモコンでAVを一時停止させ、できるだけ証拠の隠滅を試みるのであった。

 

 

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