元メスガキさんをお持ち帰りした件   作:黒樹

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鼻の調子が悪くて全然書けぬ。


ゴールデンウィーク

 

 

 

ゴールデンウィーク、初日の朝。

視線を感じて目覚めると、隣には裸の美女がいた。

俺が眠っているのをいいことに、身体を密着するほど近づけるとくっついたまま寝顔を観察していたらしく、起き抜けに見たのは至近距離にある愛理の顔だった。

脳が起動するまでたっぷり数秒ほど見つめ合う。

随分前から起きていたようで、寝起きにしては完全に目が覚めているようである。

 

「今何時?」

「十時くらい」

 

午前十時とすると六時間くらいしか眠っていないことになる。

当然、夜更かしした理由は明日が休みだと調子に乗って二人して欲望のままに行動していたからだが。

 

「おまえいつから起きてたんだよ」

「ほんの一時間くらい前かしら」

「……その間ずっと見てたのか?」

「そうだけど」

 

男の寝顔なんて見て何が楽しいんだか。

俺が呆れたような顔を見せると、彼女は半目で睨んできた。

 

「なによ。直人だって私の寝顔見てるくせに」

「まぁ、否定はしないがな」

「見飽きたら頰に触ったり、おっぱい触ったりしてるでしょ」

 

どうやら寝ている間に悪戯していたのもバレていたらしい。しかし、それなら寝たふりをしていたことになるのだが……。

 

「寝ている間に改めて触っておこうと思って……?」

「い、言ってくれれば……いくらでも触らせてあげるのに……」

「そんなこと言われたら最後までしたくなるだろ」

 

自分でも何を言ってるのかわからない。確かにやましい気持ちもあったかもしれないが、俺が知りたかったのは“感触”そのものだ。例えるなら……。

 

「ほら、聞いたことあるだろ。二の腕と胸の感触は一緒だとか。ちょっと確かめておきたくて」

「あー、そういえばそんな話あったわね。っていうかそれなら自分ので確かめればいいんじゃない?」

 

意地悪い笑みを浮かべる愛理。

頼んできなさいよふふん、と顔に書いてある。

実に挑発的だ。

 

「男の身体で試したって面白くないだろ」

 

何が悲しくてそんなことしなければならないのか。

あくまで女性の胸だから、面白いのである。

 

「……ところでおまえ、何してんの?」

「なにって噂を確かめてみようかと思って」

 

ぺたぺたと布団の中で俺の胸板に触れ始めた彼女は、そんなことを言いながら二の腕にも手を伸ばす。両手で包み込むように握って感触を確かめては、その頰を赤らめている。

 

「う、噂は本当みたいね。腕も胸板も結構硬いし」

「そりゃあ週に何回か筋トレとかランニングしてるからな」

「え、私見たことないんだけど」

「最近は一緒に運動する機会の方が多いからなぁ」

 

何が、とは言わないが察したようである。

愛理は顔を真っ赤にして、布団の中に口元まで隠した。

俺もこっそりと布団の中に手を忍ばせる。

手慣れたように彼女の巨乳を鷲掴みにして、その感触を二の腕と比べてみる。

 

「ちょっと……!」

 

恥ずかしそうに身を捩って反転した彼女を、背後から抱きしめる。右腕で二の腕を掴み、左手を脇下に滑り込ませてそれはもうやりたい放題だ。

 

「私シャワー浴びたいんだけど」

「じゃあ、もう少ししたら一緒に風呂入るか」

 

もうしばらくはこのままで。……それまでは、ベッドを抜け出せそうにない。

 

 

 

シャワーを浴びてリビングに移動したのが正午前。

渇いた喉を潤すために烏龍茶を出すついでに、小腹を満たせるものはないかと冷蔵庫を漁る。最近はほとんど食材の買い出しを愛理に任せているため気にしていなかったが、卵以外に食料になりそうなものがなかった。あるのは調味料くらいのものである。

その愛理さんはお風呂上がりに髪を乾かしてから、ソファーにぐったりと身を預けている。よほどお疲れの様子だ。

 

「お腹すいた」

「残念ながら冷蔵庫には何も入ってない」

「知ってるわよ」

 

グラスに烏龍茶を注いで渡すと、よほど喉が渇いていたらしく傾けたグラスから烏龍茶が数秒ほどで半分消えていった。

 

「今から買い物に行って、ご飯作らないと」

「それにしたって時間が遅いと思うがな」

「あんたが妨害しなきゃ今頃できてたんだけど?」

「それはすみませんでした」

 

心当たりがないわけではないので、俺はすぐに頭を下げる。

昔はこんな言い合いすら喧嘩になったのに、俺も腰が低くなったものだ。

 

「まぁ、その代案って言ったらアレだけど。飯食いに行くか」

「あんたの奢りで?」

「まぁ、日頃の感謝も込めて?ついでに買い物して帰ってこようと思うんだけど」

「……デート?」

「客観的に見たらそうかもしれないな」

 

男女が二人歩けばデートとは誰の言葉だったか。

客観的に見て関係がわからないのだから、そういう勘違いが起こるのも無理はない。

嬉しさ半分、照れ半分といった表情で喜ぶ愛理を見ると否定しようにも言葉が出ず、中途半端に揶揄するような形になってしまったが、彼女はそれでも嬉しいようですぐに立ち上がった。

 

「準備してくる」

「おう」

 

部屋に引っ込んでいく愛理を見送る。

あまりにも張り切りすぎて時間が掛からないといいんだが、あの様子では時間が掛かるだろう。女の身支度は長いと聞くし。

自分も身支度を整えるために、適当な服を寝室の箪笥から取り出す。

 

着替えて待つこと三十分。

身支度を整えた愛理が、リビングに姿を現した。

白いブラウス、黒いフレアスカート。モノトーンのシンプルな服に、髪はクラウンハーフアップに纏めて少し上品な感じが出ている。

普段のポニーテールやサイドポニーも良かったが、これはこれで彼女に似合っていた。

 

「どうかしら?」

「大変よくお似合いですよ、お嬢様」

 

冗談めかしてスカートを翻す愛理に、俺も冗談交じりに褒める。

すると彼女は首を傾げた。

 

「あら珍しい。褒めてくれるなんて」

「普段から言ってるだろ。綺麗と、エロいは」

「そういう時は行動で示してくれるものね」

 

何が、とは言わないが意思疎通はばっちりである。伊達に長い付き合いではないし、これ以上の褒め言葉が出ないとわかっているのか彼女は満足そうな顔で身を翻した。

 

「それで何処に行くの?」

「近くのショッピングモール。あそこなら買い物も食事もできるだろ」

 

ショッピングモールは自宅から徒歩三十分の距離にある。

車を出してもよかったのだが、愛理が歩きたいと言うので徒歩で移動する。

 

肩が触れ合いそうなほど近い距離で並んで歩いていると、お互いの手の甲がぶつかる。その度に視線を送ると、何故か恥ずかしそうにすぐに目を逸らされた。

 

……手を繋ぎたいってことなんだろうな。

 

あくまで自分から言い出す気はないらしい愛理は、いじらしくも何度もアピールしてくる。そっと指先だけで触れてきたり、俺の手の内側を撫でるように当ててきたりと。

 

「んっ……」

 

無視し続けるのも面白かったが、あまり無視し続けると可哀想もとい俺に何かありそうなので、愛理の手を握ってやるとちょっとびっくりしながらも嬉しそうに握り返してきた。

 

「ねぇ、なに食べる?」

「何か食いたいもんないのか?」

「私?パスタかな」

「そういえば洋食屋もあったな」

 

住宅が多く並ぶエリアを抜けて、駅前まで出てくる。ショッピングモールは駅を挟んだ反対側にあり、ここらの学生も利用する人気のスポットだ。母校や実家からは何駅か離れているが、専ら学生の時の遊び場といえばここだったのだ。実家に近すぎることもあり、愛理と俺が連れ立って歩いているのを地元の奴らに見られる可能性があるのが難点だ。

 

学生の時は休日によく通っていた街並みを思い出話に花を咲かせ歩いていると、程なくしてショッピングモールについた。辺りには様々な専門店も建ち並びまさに休日の遊び場にはうってつけと言ったところで、駐車場には数多くの車が駐車していた。

ゴールデンウィーク始めとあって普通の休日よりも車が多い。あの中には、カップルだっているだろう。俺たちの関係は未だに不明瞭な点が多いが、客観的に見れば間違いなく休日にデートしにきたカップルだろう。知り合いに会わないことを祈る。

 

「まずは飯だな」

「そうね。朝から何も食べてないし」

 

ショッピングモールに入って洋食専門のファミレスに入る。

さすがはゴールデンウィークとあってか、家族連れや学生達、カップルなどの客が多かった。おひとり様など何処にもいない。

 

既にお昼のピークを過ぎたからか、少し待っていると席が空いた。窓際のボックス席の一角に案内されて、水を出すとお決まりのセリフを言って忙しそうに去って行った。

 

「さて、何食おうかな」

「私はカルボナーラかしら」

「それだけ?」

「あんた私がどれだけ食べると思ってるのよ?」

「いや、それで足りるのかなーと」

 

文句ありそうな顔で、不満げに俺を見遣る愛理は“あんたは何食べるのよ?”と目で訴えてきた。

 

「俺はミックスグリルとシーフードドリアかな」

「相変わらずよく食べるわね」

「食べること以上に楽しみがないからな。……いや、最近は一個増えたか」

「なによ?」

「夜の楽しみが」

 

次の瞬間、弁慶の泣き所に痛みが走った。

どうやら愛理さん、机の下で蹴ってきたらしい。

 

「こ、こんなところで何言ってるのよバカッ」

 

羞恥で赤い顔の愛理に睨まれて俺は両手を挙げて降伏の意を示すが、許してくれる様子はなくコツコツと膝を蹴られ続けた。

 

「もうほんとバカなんだから」

「悪かったって。ほら、パフェなんてどうだ?」

「そんなもので釣れると思ってるの?」

「じゃあ、新しい服とか」

「いらないわよ別に。ただ、まぁ……誠意は見せてほしいけど」

 

彼女はわざとらしく唇を指でなぞる。

帰ったらキスしろ、つまりはそういうことなのだろう。

 

「ここでもいいが」

「ダメに決まってるでしょ」

 

あくまで二人きりがいいらしい。帰ったら相当濃厚なやつをプレゼントするとして、脳内の予定表に記憶しておく。

 

「私は左手の薬指にアクセサリーなんかもいいかな、って思ってるんだけど」

「特級呪物か何か?」

「なんでそんな禍々しい品みたいになってるのよ」

 

俺はあくまでわからないフリをしておいた。

 

 




主人公君わからないフリしてるけど、わからないフリしきれてないんだ。
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