考えようによってはhappy endですかね……。
二階から暴れるような音が聞こえてきた。
ドンガラガッシャン。
何かを投げ、壁にぶつけ、床に落ちる音。それが何度も繰り返され、喚き散らすような声も聞こえて、リビングにいた俺達は騒然となる。
「ごめんなさい。少し席を外すわね」
志穂さんが慌ててリビングを出て行き、その後に鹿島父が続く。
残された俺と都は、二階から聞こえてくる御両親の焦燥感のある声をただ聞くことしかできなかった。
「……先輩、お姉ちゃんと面識あったんですか?」
そんな中、都は姉が落としていった鞄を遠目に見ながら、ぽつりと疑問を零す。
俺はどう説明したものか困ったが、事実だけを簡潔に伝えることにした。
「同級生だったんだよ。小中高と同じ学校通ってたんだ」
「……それって、それだけじゃないですよね?まさか先輩、お姉ちゃんをやり捨てたとか……」
「おまえ俺をなんだと思ってんだよ」
「冗談ですよ。先輩にそんな度胸がないことは私がよく知ってます。同僚とメイドさんから合鍵も返してもらってないみたいですし。まぁ、返さなくていいと私も言ったんですけど」
それからお互いに無言で、二階で起こっている喧騒を聞きながらただ時間を無為に過ごす。
「先輩」
「なんだ?」
「お姉ちゃんと何があったんですか?」
「……別に。ただ告白されて、振っただけだ」
「……」
「えっ!」と驚いた顔をした都に、俺は怪訝な顔を浮かべる。
「……そっか。先輩がお姉ちゃんの初恋の人だったんだ……」
確信を得て、得心を得た。
都はそんな表情で、二階へ視線を送る。
それから都の–––都と愛理の両親が戻ってきたのは、一時間も後のことだった。
どちらも憔悴した様子で、少しだけ頰がやつれて見えた。
鹿島父は俺の姿を見ると、さっきまでの覇気のない様子が嘘のようにズンズンと距離を詰めて、胸ぐらに掴みかかってくる。
「おまえ、愛理に何を–––」
「ちょっとお父さんやめてください!」
間に割って入った都が、鹿島父の腕を引き剥がす。
そして俺を庇いながら、父親を睨んだ。
「先輩は何もしていません!」
「だったらなんで、愛理があんな風に……!」
「藤宮直人君」
ぽつりと名前が呟かれる。
「藤宮直人君、って言ったわよね」
志穂さんが噛み締めるように繰り返して、俺を懐かしそうな顔で見た。
「愛理の初恋の人、よね」
「おーまーえーかぁぁぁぁぁ!!!!」
顔を真っ赤にして、再度掴み掛かろうとする鹿島父。
その間に都がまた割って入ろうとしたので、俺はやんわりと手で制した。
女に男が守ってもらうのは情けない。前時代的な考えかもしれないが、俺にだってそれ相応のプライドというものがある。それに都は妊娠しているんだし、何かあったら困る。
「愛理だけじゃなく、都まで誑かすとは!よっぽど死にたいようだなッ!」
「あなたやめなさい」
「止めるな!こいつと都の結婚を認めるわけには–––」
「やめなさいって言ってるでしょ!」
丸めた雑誌で、ポカンと夫の頭を打つ。
妻に諌められて、鹿島父はちょっとだけ冷静に妻を振り返った。
「し、しかしだなぁ」
「冷静になりなさい。……ごめんなさいね、直人君。今日は帰ってもらっていいかしら」
「あ、はい。すみません」
「こちらこそごめんね。厄介なことになって。……できれば愛理にも、優しく接してあげてちょうだい」
「それは、まぁ、はい」
俺と都は、話が途中のまま鹿島宅をあとにする。
この日の挨拶は、失敗に終わった。
◇
あれから三ヶ月。なんとか結婚の許しを得て俺と都は入籍した。
都のお腹は日を追うごとに大きくなり、おまけにおっぱいのサイズも少し大きくなった気がする。
「……随分と大きくなったな」
「直人さん、どこ見て言ってるんですか」
都はジト目で俺を睨み、相貌を崩す。
他に変わったことと言えば、都の俺の呼び名が『先輩』から『直人さん』に変わった。入籍を機に心機一転らしい。
「……触ってみたいですか?」
「いいのか?」
「いいですよ。ちょっと痛いですけど、優しく触ってくれるなら。揉むのは禁止ですからね」
お言葉に甘えて、ちょっとおっぱいに触る。……なるほどこれはデカくなってる。
「んっ。……あ」
くぐもった声を漏らした都は、焦ったそうに身を捩る。
「直人さん手つきがやらしくありませんか?」
「気のせいだろ」
–––ピンポーン。
夫婦で戯れあっているとインターホンの音が鳴る。
我が家のインターホンが鳴るのは珍しい。
大抵よく来る面子は、合鍵を所持したままだからだ。
「おや、来客ですね」
「俺が出る」
都をソファーに置いて、髪をさらさらと撫でてから親機で確認するとこれまた珍しい来客だった。
赤茶色のロングヘア。真紅の瞳の巨乳美人。
その体つきはオフショルダーのアイボリーホワイトニットセーターで強調されており、逆にワインレッドのロングスカートからは上品さが溢れている。
何やら髪型を気にするように前髪を弄っており、インターホンの前で身だしなみを整えている。ちなみにそれは鏡ではない。
「おまえの姉が来たぞ」
「あぁ、やっと来たんですね。通してください」
都の許可が出たので、「ちょっと待ってろ、今開けるから」と返事をしておき、玄関の方へと向かう。
鍵を開けて扉を開けると、インターホンで見た通り鹿島愛理が扉の前に立っていた。
「あ……ひさしぶり」
「……おぉ。ひさしぶり」
若干俯きがちな愛理は、控えめに挨拶を口にする。
会話するのも、本当に何年振りか。
この前のはノーカンにした方が、彼女のためにも俺のためにもいいだろう。あくまで自然体を装う。
「取り敢えず、入れよ」
ドアを開いたまま促すように彼女の背中を押す。
晴れた瞬間、びくりと震えた愛理は誘われるようにして、玄関の中へ入った。再び施錠する。
「……結構、大きい家に住んでるのね」
「まぁ、な。設計の段階であれやこれや助言する奴がいたから、俺はほとんど口出ししてないけど」
「庭にプールがある家なんて初めて見た」
「殆ど人間用じゃないけどな」
「人間用じゃない……?」
案内するために先を歩いてリビングへ。
リビングで待っていた都が、姉の姿を見て笑顔を見せた。
「お姉ちゃんいらっしゃい」
「……あんたに言われた通り、夕食作りに来てあげたわよ」
「ありがとう。いやー、持つべきものは優しいお姉ちゃんですね」
「夕食作らせるために呼んだのかよ」
愛理が肩に掛けていた荷物を下ろす。そのエコバッグの中からは、様々な食材が隙間から見えていた。
「キッチン借りるわよ」
もう一仕事と持ち上げて、キッチンへ運ぶ。
あくまで自然体で、ただ少しだけ俺を振り返った愛理は一瞥しただけでそそくさと逃げるようにキッチンへ駆け込む。
「ねぇ、包丁とか鍋とかフライパンとかどこ?」
「全部下の戸棚の中です」
戸棚をパカパカと開けて道具の確認をしていく愛理は、一通り必要な調理器具を調理台の上に出していく。
「何作る気なんだ?」
「きゃっ!?」
気になって話し掛けると酷く驚かれてしまった。
頰を赤くして、困ったように視線を逸らす。絶対に視線を合わせないぞという鋼の意志を感じる。
「シ、シチューだけど……それと揚げ物を少し。エビフライとか。あんた好きだったでしょ」
俺が好きな食べ物を聞いたのか、昔から覚えていたのか。言った覚えはないが記憶が定かではない。
「何か手伝おうか?」
「いいわよ。都のそばにいてあげて」
キッチンからやんわりと追い出された俺は、まだまだ溝は深そうだなと感じた。
夕方になって、シチューの甘い匂いと、揚げ物の香ばしい匂いがリビングへ流れてくる。
気がつけば外は薄暗くなっており、夏の暑さは夜になっても衰えることを知らない。クーラーをつけているから快適ではあるが、一度外に出れば夏の暑さに焼かれる。
「できたわよ」
都の体が冷えないようにぎゅっと抱きしめながらテレビを見ていると、夕食の完成を告げられる。
ダイニングテーブルに料理を並べ始めており、三人分の料理の他に揚げ物を盛られた皿が中央に並べられていた。
付け合わせに海藻のサラダが一品追加されている。
「さすがお姉ちゃんですね。どれも美味しそうです。そう思いますよね直人さん?」
「あぁ、食べるのが楽しみだ」
「……そう」
素っ気無い態度だが、愛理は褒められて嬉しそうに頰を赤らめて自分の席へと座った。
「「いただきます」」
「……いただきます」
シチューを一口食べる。ブロッコリーとほうれん草、ジャガイモ、鶏肉の入った緑多めのシチューは理想的な味をしていた。甘さの中に野菜の味が広がって、ジャガイモは芯までしっかりと火が通っており、鶏肉も柔らかい。実にレベルの高い料理スキルだ。
「美味い」
「そう。よかった」
愛理が初めてほっとした様子で相貌を崩す。溢れ出た笑顔は、今まで見た彼女の中で一番綺麗と感じるものだった。
◇
夕食を食べ終えて、リビングでゆっくり寛ぐ。
食後に珈琲を飲みながら、姉妹は仲良さそうに話をしている。
俺は当然蚊帳の外。
テレビをぼーっと眺めながら、盗み聞きするかのように二人の会話へ耳を傾けていた。
「そういえばお姉ちゃん、今日泊まっていくよね?」
「え、いいの?」
時刻は夜の九時を回った頃。
都の提案に、ちらりと愛理が俺に視線を送る。続いて都も「いいですよね?」と視線を送ってくる。
「いいんじゃないか。部屋は空いてるし」
「そう。それじゃあお言葉に甘えようかしら」
僅かに緊張した声で、愛理はそう言って妹の申し出を受け入れた。
「ただ着替えがないのよね」
「私のだとサイズがあれですしね。直人さんの借りればいいんじゃないですか」
「なっ……いいの?」
「シャツ程度ならあるけど、パジャマとかはないぞ」
「大丈夫ですよ。お姉ちゃんいつもノーパンだから」
「ちょっと変な嘘つかないでよ!」
ニヤニヤと笑みを浮かべる都を見るに、姉ノーパン説は嘘のようだ。とても残念である。
「さて、それじゃあ私はそろそろお風呂入って寝ようかな」
怒る姉から逃げるためか、都は楽しそうに笑いながら席を立つ。俺はあまりにも心配だったので声を掛けた。
「大丈夫か?一緒に入ろうか?」
「それじゃあ、いつも通りお願いしましょうかね。お姉ちゃんも一緒に入ります?」
「なっ!なにを言い出すのよ急に!?」
流れ弾が飛び火して、愛理の顔が赤くなる。
俺の方をチラリと見て、その視線が下に一瞬だけ向いた。
ブン、と勢いよく逸らされる。
残念ながら、俺と都はその瞬間をバッチリ見ていた。
「やだなぁ冗談ですよ。直人さんはお姉ちゃんの相手でもしていてください。私は一人で大丈夫ですので」
都はそう言って、姉を好きなだけ揶揄うと楽しそうにリビングから出ていく。あとには憔悴した姉と気まずい俺だけが取り残された。
「も、もう……散々人のこと揶揄って」
火照った顔が熱いのか手でパタパタと仰ぎながら愛理はそう言って誤魔化して、珈琲の残りをぐいっと飲み干した。
ちょうどお互いに飲み物がなくなったので、俺はソファーから立ち上がり飲み物を取りにキッチンへ。冷蔵庫を開けながら振り返る。
「愛理、おまえ何飲む?」
「–––へぁっ!?」
奇妙な声が聞こえたが、スルーする。
「わ、私……?」
「そう。鹿島が二人いるとややこしいだろ。鹿島さんと呼ぶわけにもいかないし。知らない仲でもないし」
「そ、そうよね……」
何かを噛み締めるように反芻してから、愛理は顔をこちらに向けた。
「酒なら大概なんでも置いてあるけど」
うちにはとんでもない飲兵衛が遊びにやってくる。その慣習と勝手に酒をストックするせいで、うちには酒が余るほど置いてあるのだ。自由に飲んでいいというので今日は勝手に飲ませてもらうことにする。
「……ワインある?」
「あるぞ」
二人分のグラスと冷やしたワインボトルを手に、リビングのソファーへと戻る。
ワイングラスにグラスの三分の一注いで、愛理の方へスライドさせた。
「ほら」
「ありがと」
まだぎこちない愛理が、簡素に礼を言う。
そのままお互いに無言でグラスに口をつけた。
「人生何が起こるかわからないよな」
一口、二口。ワインを舐めるように楽しみながらそんなことを口にする。すると愛理は仏頂面で首肯した。
「そうよね。昔私を振った男が妹と結婚するし」
恨みがましい視線を受けて、俺は苦笑する。
「おまけに一緒に飲むことになるとはな」
感慨深いものがある。……いや、本当になんだこの状況は?
ワイングラスを持つ愛理の腕には、同じくらい濃いワインレッドのボロボロのシュシュが嵌められている。それが俺の勘違いでなければ、あれは俺が最後に贈ったものだ。
いったいどういう意図があってまだ持っているのか知らないが、物持ちがいいというレベルではないことにちょっと引く。早く捨てればいいのに、と。
「それまだ持ってるんだな」
「だって、大切な人にもらったものだもん」
愛おしそうにシュシュを撫で、愛理は寂しそうな顔をする。贈った本人に言われるのは心外とばかりに。
「いや、捨てろよ」
「嫌よ。それとも新しいの買ってくれるの?」
「それくらいなら、まぁ」
プレゼントを自然な流れで強請られた気がするが、シュシュ一つ程度の値段ならさして痛くもない。ピナの一週間分の餌代にもならないだろう。
やがてお風呂場の方で水音が聞こえ始めた。
都がお風呂に入っていると、不思議なことにその光景が今も見ているように網膜に再生される。
「–––った!?」
–––と、嫁の入浴シーンに思い馳せていると耳を引っ張られて中断された。
「隣に見るべき美女がいるのに、なに妄想してるのよ」
「俺が嫁の入浴シーンをいくら妄想しようが俺の勝手だろうが」
「それはそれで腹が立つのよ」
「なんて理不尽な」
やがて水音が止み、お風呂から上がる音が聞こえる。
脱衣所の辺りでドライヤーの音が聞こえ始め、その音に妄想の入浴都が消される。
残ったワインを飲み干し、新たにワインを注ぐ。
それを何度か繰り返したところで、リビングの扉が開いた。
「それじゃあ私は先に休ませてもらいますね。お姉ちゃんもおやすみ」
「おやすみなさい。私達はもう少し飲んでから寝るわね」
顔を出した都が、それだけ告げて寝室へと引き上げていく。そうしてまた二人きりになった。
「ねぇ、直人」
「なんだよ改まって?」
「……もう少しだけ飲まない?カプレーゼ作るわよ」
「おぉ、いいな。つまみが欲しいと思ってたんだ」
「積もる話もあるし、ゆっくり話しましょう」
妖艶に笑む愛理の横顔が、少しだけ翳りのあるものを帯びた気がする。ただそれも一瞬のことで、すぐにその翳りは見えなくなった。
それから俺達は酒の肴をつまみながら、様々な話をした。
小学校の頃に出会った話から、高校卒業までの十二年の話を。
大学で道を別れ、それぞれ何をしていたか。
今に至るまでの軌跡は語り合うことで、思ったよりも明確に思い出せた。
その度に酒が進み、グラスが空になる。いつからか愛理がお酌をしてくれるようになり、グラスが渇くことはなかった。
「ねぇ、直人。今の私を見てどう思う?」
もうすぐワインがまるまる一本空になるというところで、愛理は僅かに赤い顔で尋ねてきた。その真意を測りかねているとグラスを持つ手に手を重ねられた。
「ねぇ、今の私は?あなたから見て綺麗かしら?」
「そうだな。綺麗なんじゃないか」
「都よりも?」
踏み込んだ問いに沈黙が生まれる。
とても難しい問題だ。
目の前にいる愛理は確かに美女の類だと思う。おまけに巨乳で、学生時代から人一倍視線も人気も集めていた。
「さぁ、どうかな」
だが、都も誰にも負けないくらい美人だ。俺の嫁が一番可愛いと言いたいところだが、愛理にだって負けない魅力があると思う。だから俺ははぐらかした。
「変な質問をしてごめんなさい。でも……」
隣に座っていた愛理が、肩に頭を預けてくる。
「私は今でも、あなたのことが好きだから」
酔った脳に染み渡る、彼女の独白。
耳元で囁かれたその言葉は、あまりにも甘美だった。
その意味を理解するより早く、ソファーの上に二人で倒れる。押し倒されたと気づいたのは彼女に馬乗りになられてからだった。
「んっ」
勢い任せに唇を押し付けられた唇は、甘く柔らかくとても瑞々しい。都とは違った感触に少しだけドキッとした。
「……愛理?」
「ごめんなさい。でも、ずっとこうしたかった」
昏い光を宿した瞳が、俺を見下ろす。
熱情に浮かされ、頰を上気させた愛理は蕩けるような笑みを浮かべて、
「……一回だけでいいの。一回だけでいいから。私を抱いて。どんなに乱暴にしてもいいから、ぐちゃぐちゃにしていいから、私の初めて貰ってよ。都とできないんでしょ?この体好きに使っていいから、代わりにしてもいいから、私を愛してよ。大丈夫。黙っててあげるから」
「お、おい、愛理さん……?」
愛理は馬乗りになったまま、上の服を脱ぎ捨てた。
その下から覗いたのは、赤の布地に黒い装飾のブラジャーだった。大人っぽく妖艶なデザインで、それを包むのは都と比べ物にならないたわわに実ったおっぱいだ。
「ほら、ねぇ、どう?」
焦ったくなったのか愛理は俺の手を掴み、自らの乳房に持っていく。触れた先からふんわり柔らかな感触が伝わり思わず反射的に指先がぴくりと動いた。
「–––本当に一回でいいんですか?」
万有引力ならぬ万乳引力の力に抗えず手を引き剥がそうと抵抗していると、不意にリビングの扉の前から声がした。
「み、都!?」
寝たはずの都が、そこに立っていた。
驚いた愛理は、自らの体を隠すように胸を掻き抱く。
「ち、違うのこれは!あ、あなたの夫を奪おうとしたんじゃなくて、私は–––」
「人の夫にキスして、あまつさえ下着姿を見せて誘惑して、メスの匂いをぷんぷんさせておいて……さすがに無理があると思いません?」
すたすたと近寄ってきた都は、焦る姉の前まで来るとその胸をむんずと力任せに掴んだ。夫を誘惑する悪い乳はこれかとばかりに。
「いたっ。やめ–––」
「私の旦那さんとえっちなことしたいんですよね?」
自分の夫であることを強調しながら確認するように囁かれた小悪魔の言葉に、愛理が縋るような目を妹に向けた。
「どうしよっかなぁ〜。お姉ちゃんの態度次第では考えなくもないんだけどなぁ。愛人かセフレなら家においてあげなくもないんだけど」
都の提案を最後の希望とばかりに、愛理は息を呑んだ。
「……態度次第って?」
「まずはその邪魔なスカート脱ごっか」
命令にも近い都の言葉に、愛理はそっとスカートの留め具を外す。そのままソファーから一旦降りて、スカートをぱさりと床に落とした。
少しだけ恥ずかしそうに胸と局部を腕と手で隠しながら、媚びるような視線を向けてくる。
「つ、次は?」
もったいぶらないで早く教えてと願う姉に、都は見せつけるように俺に抱きついてきた。
「……やっぱりどうしよっかな」
気が変わったのか逡巡する都を見て、愛理は絶望の表情を顔に浮かべる。
「–––なーんて冗談だよ。ほら、反対側から直人さんに抱きついて」
言われた通りに愛理はソファーにお尻を乗せ、絡みつくように抱きついてくる。そんな姉の耳にこっそりと都は耳打ちした。
それを聞いた愛理は顔を赤らめて、それから僅かに逡巡したあと熱っぽい視線を向けてくる。
「……はしたない私を、どうか躾けてくださいご主人様」
おねだりするかのような言葉と共に、愛理は再度口付けをして、積年の想いを晴らすかのように体を求めてきた。
「これからよろしくね。おねーちゃん♪」
キスに夢中な愛理には、もうその言葉も聞こえていないようだった。
次回からNTR√志穂やろうと思います。たぶん一番の問題ルートです。考えられる限りでは三つくらいルートあったんですが、鹿島父わからせるルートがこれしかなかったので……。