元メスガキさんをお持ち帰りした件   作:黒樹

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今回は短め


親子丼とサンドウィッチ

 

 

 

「ん……?」

「おはようございます。お兄さん」

 

眠りから覚めれば、目の前には柔らかな膨らみと、その向こうから覗く顔があった。

優しく髪を梳くように頭を撫でて、優しい表情を見せるその姿は女子中学生ではなく母親のようで、思わずママという言葉が喉から出そうになった。

喉が渇いていなければ、本当に口に出していたかもしれない。

 

「……おまえずっと膝枕してたのか?」

「はい。随分とぐっすり眠ってましたよ」

「今、何時だよ」

「もうすぐ六時ですね」

 

愛理の出勤が午前八時だとすると、もうすぐ帰ってくる。

欠伸混じりに「そうか」と言って、うつ伏せになって都の太ももに顔を埋める。

ニーハイソックスと太ももの段差はなんとも言えない素晴らしい感触で、ほどよい筋肉と脂肪に包まれた脚の感触からは、運動部に所属していたことがわかる。

 

「お兄さんって脚フェチなんですか?」

「さぁ、どうだろう。俺は胸も脚も好きだぞ」

「ちなみに京介は胸派で、巨乳派ですが」

「まぁ、性癖は人それぞれだからなぁ」

 

都の胸は同年代で見れば大きい方だ。姉と母親が大きすぎるのだ、という何度目かわからないフォローをしておく。

 

「お兄さんは私の胸、触りたいって思いますか?」

「そりゃ思うだろう」

「女子中学生の胸に触りたいって変態ですね」

「おまえが言わせたのに、より変態っぽく言葉を変換するな」

 

抗議の声を上げると、都はくすくす笑った。

 

「おや、帰ってきたみたいですよ」

 

しばらくそんな風に談笑していると、玄関のドアを開閉する音がした。

足音が迫る。寝室のドアを開けて–––。

 

「直人。ちゃんと寝て…る…」

 

仕事から帰ってきた愛理が顔を出した。

目の前の光景に目を見開き驚くかと思えば、目を吊り上げて声を荒げる。

 

「やっぱり嫌な予感がすると思った!」

 

買い物袋をどさりと床に落とし、愛理は寝室へ踏み込むとベッド前に仁王立ちする。腕を組むとおっぱいが強調されて、怒ってるはずなのにご褒美のような光景が目の前に広がっていた。

 

「なにしてるのよ!私がいない間に!」

 

いったいどちらを咎める言葉だったのか、俺と都は顔を見合わせて苦笑した。

 

「別に私は看病してただけですよ」

「来ちゃダメって言ったでしょう!風邪が移るから!」

 

正論である。都はどう返すのか。

 

「その時はお兄さんが責任取ってくれるらしいですから」

「せ、責任って……!?」

 

“責任”という言葉がどういう風に変換されたのか知らないが、愛理は面白いくらいに狼狽えている。

その視線が俺へと移り、どう答えたものか曖昧な笑みを浮かべると、愛理は慌てたように都の膝枕から俺を奪い返した。

 

「だ、ダメだからね!」

 

何が不満なのか愛理は俺を抱きしめながら、都を警戒したように睨み続ける。胸に顔を埋める形で抱きしめられているので、ちょっと息が苦しい。

堪能するべきか、踠くべきか、悩んでいると都は姉の本気で慌てた様子にくすくすと笑う。

 

「何がダメなんですか?お姉ちゃん別に付き合ってるわけじゃないですよね?」

「………………」

 

急所を的確に突いた都の言葉に、愛理は歯噛みして沈黙してしまう。無言の抗議は彼は自分のものだと見せつけるように抱きしめるだけで、気怠い身体には少しばかりきつい。

 

「ふふ、お姉ちゃん可愛い〜」

 

揶揄うだけ揶揄うと、都は買い物袋を拾って寝室を出ていく。

残された俺は、粘着質な視線から逃れるように彼女のおっぱいに顔を埋めた。

 

「……」

 

その上から愛理の腕が、植物の蔦のように絡みついてくる。

キッチンから食材を切る音がするまで、俺の後頭部に視線が突き刺さったまま、二人で抱き合っていた。

 

 

 

夕食ができたのは、外が真っ暗になった頃。

親子丼と味噌汁、小松菜の和物だ。

親子丼の鶏肉はしっとりとしていて、その上味もよく染み込んでいて、卵はとろとろ。

味噌汁は長葱と豆腐のシンプルなものだった。

 

「はぁ。美味かった」

 

夕食を食べ終えてソファーで寛ごうとしたところで、コップに一杯の水を入れて愛理が隣に座った。

 

「ほら、ちゃんと薬飲みなさい」

「……わかってるよ」

 

愛理の手料理の余韻に浸る間もなく、コップと共に錠剤が手渡された。

 

「まったくもう」

 

手の掛かる子供の面倒を見ているようなそんな顔で、愛理は俺のことを見つめてくる。

 

「……なんだよ」

「別に。だいぶ調子はいいみたいね」

「まぁ、頑丈だけが取り柄みたいなところあるからな」

 

むしろ眠りすぎて怠い身体の方が問題だ。今夜は眠れそうにない。

 

「そうですね。お兄さん意外と頑丈ですよね」

 

そう言って都が俺の左に座る。

俺の腕に腕を絡めて、胸を押し付けてきた。

 

「都、あんたいつまでいるつもりなの。七時過ぎてるのよ」

 

すると愛理は対抗して、腕を絡めてくる。押し付けられるおっぱいの質量が都の比ではない。

 

「今日はお母さんが仕事終わりに迎えに来てくれるんですよ」

 

両手に花どころかたわわに実った果実に挟まれて、収穫に手を伸ばしたい衝動は不思議と湧いてこなかった。どうやら体調が悪いとうちの愚息は本格的に役に立たないらしい。

 

「それとここに来た目的は、看病だけじゃないので」

 

都が俺の肩に頭を乗せる。

 

「ところでお兄さん。十月七日って空いてますか?」

「何曜日だっけ?」

「ちょっ–––」

「土曜日です」

 

何か愛理が言い掛けたが、都が遮るように答えた。

 

「……空いてるけど?」

 

来週は何も予定がない。

強いて言うなら、月曜日と金曜日に片桐に詫びるくらいだ。

金曜日は、酒の一杯くらい奢ってもいいかもしれない。

普段世話になってるから気にしないと言いそうだが、それとこれとは別である。

 

「よかった。夕食に招待したいそうなので、誘うように言われてたんですよ。絶対に来てくださいね。主賓が来ないと盛り上がらないですから」

「主賓って大袈裟だな。行くよ。志穂さんの料理美味いし」

 

来週の楽しみが出来た–––と、喜んでいると愛理は頭を抱えている。

 

「もちろんお姉ちゃんも来ますよね?」

「……当然じゃない。準備には、私も参加していいのよね?」

「はい。そう言うと思って、昼食も軽めに作ろうと思うんですけど」

「昼からね。わかったわ」

 

都の提案を了承すると、何故か不満そうにぺちぺちと肩に頭突きしてくる。

 

「特別ゲストも呼んでますので」

「……まさかお父さんじゃないよな?」

「お父さんはまだ出張ですよ。十二月まで帰ってこないんじゃないですかね」

 

なら安心だ。ほっと息を吐いたものの、まだまだ油断はできない。

都の悪戯好きがどう転ぶか、場合によっては最悪の事態も考えられるので警戒は続けておく。

 

「あ、それじゃあ迎えが来たので帰りますね。バイバイ、お兄さん」

 

ちゅっ、と小さく音が鳴る。

頰に柔らかくも温かい、そんな感触の余韻が残る。

 

「な、なにしてるのよ!?」

 

姉に捕まる前に、都はさっと逃げ出して行った。

 

 

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