昨日の夜、いつ眠ったのかまるで覚えていない。ふと目を覚ませば日が昇っていて、朝どころかもうすぐ昼になるのではないのかと、そんないつも通りの朝を迎える。
眠ったはずなのに気怠い身体は、全力疾走したあとのように重い。起きるのを拒むかのような微睡の中に意識を揺蕩わせながら、私は心地良さに身を任せようとした。
滑らかなシーツ、ふわふわの毛布、肌に直接触れるそれらはもう服など着て眠れないほどに肌触りが良くて、おかげで余計な衣服を纏って眠るのが少し苦手になった。
おまけに大切な人の体温を背中に感じて、抱きしめられている感触に安心感を覚える。
しかし、どうやら今日はそれだけではないらしい。
おっぱいを背後からがっしりと掴まれ、絶妙な力加減で愛撫されているようだ。
好き放題した挙句、何やらお尻の辺りには熱い感触。
昨日あれだけ私を焦らして、いじめ倒しておきながら、まだヤり足りないのか。
いや、求められるのは素直に嬉しいんだけど。
すっかり彼に調教され、彼なしで生きられなくなった私の体は既に準備万端。
このまま流されてしまってもいいのだけど、それはそれとして拒むふりくらいはしておかないといけない。
私のおっぱいを揉みしだく彼の手に、自らの手を重ねて、
「朝からナニをしてるのかしら?」
と、声を掛ける。
「いや、ついな……」
言い訳をするわけでもなく直人はそう言いながら、私を抱きしめるように身を寄せる。
何かお尻に強く押し付けられた気がしないでもないが、一旦それは置いておいて彼の方へと寝返りを打った。
「おはよ」
「んんッ、おはよう」
下腹部に何か押し付けるどころか、お尻をがっしり掴まれているので、私はつい上目遣いにジト目を向ける。
「随分と情熱的なお誘いね。昨日もあんなにしたのに」
「昨日は昨日、今日は今日だろ。こんな魅力的な女性の裸体があったら誰だってこうなる」
「妊娠したらどうするのかしら?」
「その時はその時だ」
挑発的に胸を押し付けて訊ねると、カラダ目当てのセフレみたいな言い分が返ってきた。
「具体的にはどうするのよ?」
「そりゃ腹を括って結婚するしかないだろうな。正直子供とか早いと思うし、育てる自信ないから考えたくはないんだけど」
「一応避妊しているとはいえ、昨日私の中にたっぷり仕込んでおいてよく言うわね」
でもまあ、言質は取れたのでよしとする。責任取らない男みたいな言い分だけど、直人に限ってその心配はない。もし他に女がいるなら彼も迷うかもしれないけれど。
「一応、薬は飲んでるんだろ?」
「飲んでないって言ったらどうする?」
「……」
妊娠したら互いにまだ困るからさっきのは冗談だ。まだまだ二人きりでいたいし。
「愛理さんや。また俺を揶揄ったな?」
「だってこういう時でもないと仕返しできないでしょ。それに昨日のは完全に私のこと孕ませる気だったわよね」
なんだかまだお腹の中に異物感を感じて、そんなことを言ってみる。
「さすがに子供はまだな……。愛理と二人きりの生活をまだ続けたいし」
「ふ、ふ〜ん?まだ私と二人きりがいいんだ」
興味ないようなふりをして、私の心臓はドキドキだった。
直人が同じ気持ちでいてくれたことが嬉しいのだ。
最初はなし崩し的に関係を持って、子供でも作って結婚してくれなきゃシングルで彼の子でも育てようかと思ってたけど。
今思えばとても浅はかで突発的な計画に、私は苦笑してしまう。
「なに笑ってんだよ」
「べつに〜?」
彼の胸に顔を埋めて、そのまま鎖骨にキスをする。すると彼が覆い被さるように私を組み伏せて、唇に情熱的なキスの雨を降らせてくる。
しかしそれはすぐに物足りなくなって、唇をこじ開けるように舌を捩じ込まれてキスは激しさを増し、お互いに貪りあうようなものへと変わった。
「もうすぐ都が来るかもしれないし、一回だけよ」
「ああ、都なら昼から来るらしいから、それまでは二人でゆっくりできるな」
枕元にある私のスマホには新規のメッセージがない。私ではなく直人に直接連絡したことに、少し納得のいかない部分があるもののそれは今からぶつけることにした。
「どうして私には連絡がないのかしら」
「さて、な」
ギシ、とベッドが軋む。
このあとベッドで二回、お風呂で三回。
それが何の回数かは、私と直人以外は知らない。
ちなみにどうでもいいかもしれない話ですが、ベッドに“あれ”はあってもお風呂場に“あれ”はありません。
妹ちゃんは二人がどれだけいちゃついたか観測不可能です。推理もできません。