元メスガキさんをお持ち帰りした件   作:黒樹

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炬燵と寝正月

 

 

 

元旦からの約三日間を一言で表せば、『寝正月』だ。

起床するのもだいぶ遅い時間で、朝食を食べても炬燵から動かずゴロゴロしている。家事に勤しむ愛理を炬燵の中に引き摺り込み、抱き枕にして二人で眠ったのも何度目かわからない。

 

九日にも及ぶ長い休日があったにも関わらず、もう残すところ今日が最後の休日。

 

今日も愛理を炬燵に引き摺り込み、柔らかな抱き枕の代わりにして惰眠を貪ろうとしていた。

彼女を逃さないように背後からバックハグをしながら、たわわに実った果実を好きなだけ揉み倒す。あまりにも贅沢な休日がもう終わりかと思うと働きたくなくなる。

 

「働きたくねぇ。ずっとこうしてたい……」

「ねぇ、ちょっ、やっ…もう…」

 

腕の中で甘い吐息を漏らして抵抗する愛理だが、本気で逃げるつもりならとっくに逃げているだろう。むしろこの状況を楽しんでいるのは俺だけじゃないはずだ。その証拠にスカートを捲られたりしても、身体を捩るだけでくっついてくるのだから。

 

「今朝もしたのに、元気なんだから」

「いや、またやりたくなって」

「……する?」

 

可愛らしく見つめてくる彼女のスカートを剥ぎ取り、覆い被さろうとしたところで、

 

–––ガチャッ。

 

玄関の鍵が開いた音が鳴った。

入ってくる二人分の足音に、話し声。

その音にびっくりして、炬燵の卓に腰を愛理がぶつける。

おまけに熱を発する部分にお尻もぶつけたようで、「あづっ!?」と、悲鳴を上げていた。

 

「お姉ちゃーん」

 

わざとらしくリビングのドアをノックして、来訪を伝える都。普段はしない確認を取るあたりやっぱりわざと急に訪ねてきたことを理解する。

 

「な、なに!?来るなら連絡してよね!」

「鈴音さんも一緒だよ」

「それならなおさら連絡しなさいよ!」

 

慌てた様子でもぞもぞと炬燵の中で動く。

スカートを穿き直して、愛理は炬燵に座り直した。

そのちょうど後に、リビングのドアが開き、都が入ってくる。宣言通り黒川も一緒だ。

 

「ごめんね。急に押し掛けて」

「う、ううん。いいのよ鈴音なら」

「お邪魔だった?」

「そ、そんなことないけど……」

 

既にやる気満々だった愛理の姿は少し色香に溢れていて、訝しむには十分だった。特に都にとっては。

 

「必要なら一時間くらいカフェで時間潰してきますが」

「余計な気を使わんでいい」

 

むしろ一時間じゃ消化不良で目も当てられない光景を見せることになるので、始まる前で良かったとも言える。

 

「しかし、珍しいな。黒川が来るなんて」

「っていうか、初めてじゃない?」

「うん。実は二人に話があって来たんだけど……」

 

改まって話そうとする黒川に炬燵に入ることを勧めて、三人で炬燵に入った。

 

「それで話って?」

「話っていうのは、これなんだけど……」

 

黒川が鞄から何かを取り出して、テーブルに置く。

それは一見普通のハガキに見えた。

裏面を見ると、差出人は円堂と書かれていた。

要約すると同窓会のお知らせらしい。三月にやるから、参加不参加の連絡が欲しいと。

 

「円堂君って誰だっけ?」

「ほら、親父さんがAV……作ってるとこの御曹司」

「あぁ……」

 

何故かとても嫌そうな顔をする愛理に、俺も怪訝な顔をする。よく見れば黒川も困った顔をしていた。

 

「何か言いたげだな」

「……いや、昔一度連絡あったのよ。うちのビデオに出演しないかって」

「え゛っっっ???」

 

過去にとんでもないお誘いを受けていたことに、思わず変な声が出てしまう。

 

「黒川も?」

「……うん」

「え、受けたの?」

「「受けるわけないでしょっ!」」

 

食い気味に答える二人に、心底ホッとした。

 

「というか私の初めて奪ったのあんたじゃない」

「確かに」

 

焦って損をした気分になるが、改めて言われると妙な優越感が心を満たす。

 

「まぁ、どうせ二人に連絡したのだって高校時代に可愛かったからやりたかっただけだろうけど」

 

合法的にヤる方法を考えて実行するあたり、相変わらずのようでちょっと懐かしくなってしまう。それはそれとしてしばくが。

 

「そういや俺も昔誘われたな」

「え、やったの!?セクシーな女優さんと」

「いや、あまりにも怪しいお誘いだったし、彼女いたし……」

 

そこまで言い切ったところで、何故か愛理の目が据わった。

 

「ふ〜ん、彼女がいなかったら受けてたんだ……」

「いやいや、俺全然女優さんとか知らないし受けないって!」

 

あまりにも酷い濡れ衣である。セクシーな女優さんとヤるために社長兼男優になったあいつと一緒にしないで欲しい。

 

「もう円堂のことはいいだろ。それよりどうしたんだそれ?」

「実家の方に届いてたの。ほら、こっちは愛理の」

 

そう言って二通目のハガキを取り出し、宛先が『鹿島愛理様』となっている同窓会のお誘いを見せてくれた。

 

「たぶん藤宮君の家にも届いてると思うよ」

「連絡来てないけど、たぶん年賀状とかに紛れてんだろ。そういうところ大雑把だからなうちの親は」

 

これで自分だけ届いてなかったら悲しいが、そんなことはないだろう。円堂が女子だけ誘ってない限り。

 

「というかいつの同窓会だよ」

「高校二年だって」

「そういや黒川とも一緒だったっけ」

 

間違いなく愛理が一緒だったのは覚えてるのだ。クラスが別になったことがないから。そうなると羽柴も一緒だろうか。

 

「参加する?」

「ん〜、面倒なんだよな」

「ちなみに来なかったら私があることないことクラスの全員に吹き込むから」

「なんて?」

「あの二人ちゃっかりヤることやってるって」

「それ行っても行かなくても同じじゃね?」

「でも、みんな心配してると思うよ。ほら、二人って周りから見れば早よ付き合えみたいな状況だったから」

「おいこれ面白がって企画したやついるだろ。同窓会」

 

聞けば聞くほど行きたくなくなる方に心が傾き、俺は頬杖をついてハガキを見下ろす。

 

「私は直人が行かないならいいかな」

 

そう言う愛理の顔には、「いきたい」と書いてあるように見える。俺は腹を括った。

 

「じゃあ、行くか。そういやいつ?」

「三月十四日。ホワイトデーだね」

「随分と先だな……」

「そうしないとみんな都合がつかないから」

「そういうもんか」

 

同窓会についての話し合いは参加が決定して、ちょうどそこにお茶を淹れていた都が四人分のお茶を持って炬燵にやって来た。

 

「はい、どうぞ」

「ありがとう都ちゃん。なんだかもうこの家の住人みたいだね」

「ほら、将来的には義妹ですし」

「確かにそうだね」

 

炬燵に入ってわざと脚をぶつけてくる都が、そのままぴったりと炬燵の中でスキンシップを図ってきた。

膝を太ももにぐりぐりと押し付けて、それだけでは飽き足らず炬燵の中で俺の手を掴むと自分の太ももに誘導してくるのだ。

すべすべして柔らかな感触が指先に伝わり、つい手の置き場を探すとひらひらとしたミニスカートに触れる。とても際どい位置に心臓が跳ねた。

 

俺の反応がお気に召したのか都は小悪魔っぽい笑みを浮かべて、口パクで「お兄さんのえっち」と伝えてくる。

 

あまりにもやられっぱなしは癪なので、わざとスカートを捲ってやるとガツンと炬燵が揺れた。

 

「ひゃっ–––たっ!?」

 

膝をぶつけたらしい都が、抗議の視線をぶつけてくる。

当然俺は素知らぬ顔で通した。

 

「……大丈夫?」

「いえ、大丈夫です。鈴音姉さんに心配されることでは」

 

半分涙目の都が、キッと睨みつけてくる。

猫が威嚇してくるようで、むしろ可愛い。

 

「そ、それよりあの話しません?」

「そうだね。じゃあ、もう一つの用件済ませようか」

 

もうひとつ話があったようで、こっちは都に関係あるようだ。都が居住まいを正す。

 

「それではお兄さんに問題です」

「なんか急に始まったな」

「さて、来月は何があるでしょうか?」

 

来月–––二月だ。何かあっただろうか?

 

「誰かの誕生日とか?」

「いえ、そうではなく。バレンタインですよ。バレンタイン!」

「外国では男の方から贈り物をするっていうあの?」

「よく知ってますねお兄さん」

「まぁ、オタクなら大概知ってるんじゃないか」

 

バレンタインは女性からチョコを貰う日だと日本では一般的に知られているが、海外では男性から女性に贈り物をするらしいとネットで見たことがある。

その理屈で言えば俺から愛理にプレゼントをしなければならないみたいだが、愛理から何かしてくれるならホワイトデーにお返しした方がいいだろうと逃げの一手を打つ。

 

問題はそっちではなく、都は愛理の方を向いて言った。

 

「それでお姉ちゃんはお兄さんにチョコ作るのかなーって」

「うっ……」

 

様子を窺うような都に、愛理は言葉に詰まったように顔を伏せる。何か懸念があるのか塩らしい反応だ。

 

「……直人がちゃんと貰ってくれるなら、作るけど」

「そりゃくれるなら貰うけど」

「本当?突き返したりしない?」

 

昔のことがかなりのトラウマになっているのか、半分涙目だ。

 

「そんなに心配なら口移しでもするか?」

「あ、それいいですね」

「十八歳以下禁止よ」

「あ、お姉ちゃんずるい!」

 

便乗しようとした都に釘を刺して、愛理はいつも通りの様子に戻った。

 

「それじゃあ私も用意しようかな」

「え、黒川もくれるの?」

「義理だけど」

「本命いるのか?」

「う〜ん、今そういうのはね〜」

「お兄さん私は本命ですから!義理の妹ですけど!」

「……ロシアンルーレットとかやめろよ」

 

一応、都にだけは釘を刺しておいた。

 

 

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