「それじゃあお疲れ!」
今日の仕事を終えて、オフィスを飛び出すように退出した。
後方で驚いたような片桐の声が聞こえたが、それが気にならないくらい俺の心は帰宅へと向いていた。
昨日からずっと楽しみで仕方がなく、年甲斐もなく遠足前の子供のように眠れぬ夜を過ごした。ついでに言えば今日の仕事だってほとんど手につかなかった。
逸る気持ちでアスファルトを蹴り、家路を急ぐ。
早歩きになってしまう足が、急かすように身体を押し出した。
気がつけばもう家の前。
期待か、運動のせいか、高鳴る鼓動を抑えつけるように胸に手を当てて深呼吸すると、ゆっくりと玄関のドアを開けた。
「ただいま」
その声に奥から反応が返ってくる。リビングへの扉が開いて、顔を出したのは都だった。
「おかえりなさいお兄さん」
姿を現した彼女は、エプロンを身につけていた。
ただ肩には他の布地が見えず、エプロンの裾からは網タイツに包まれた脚が伸びている。
一見すると裸エプロンにも見えるその光景に、思わぬ副産物を得て思わず下から上まで見返してしまった。
「……そんなやらしい感じで舐め回すように見られると、私も困る、というか……」
珍しく恥ずかしがる都が、頰を赤くして俯いた。
「……一応聞くが、服着てるよな?」
「着てますよ。何言ってるんですか?」
エプロン以外は裸に見える、と指摘するのはやめた。
それよりも早く、都がエプロンの裾を捲ったからだ。
「ほら、お兄さんお待ちかねの白バニーです」
エプロンの下から覗いたハイレグは、網タイツに包まれた脚だけではなく、下腹部をこれでもかといやらしく魅せている。正直女子中学生にさせていい格好ではない。
「お、おう……」
着てる、着てない。そんなものは小さな問題だ。
自ら捲ってみせるという行為に、そこはかとない性的な魅力を感じていた。
いつもは悪戯にする都も自分の行為に気づいていないようだ。
無意識というのも破壊力が高い。
「そういえば愛理は?」
「お姉ちゃんはあの姿で出迎える勇気がなかったみたいで、ソファーの上で縮こまっています」
「そうか」
せっかくの姉妹バニー。揃えて見なければ損だ。
俺は足早にリビングへ向かった。
「ただいま」
「……お、おかえり」
リビングのソファーには、黒のバニースーツを着て姿勢良く座っている愛理がいた。
妹とは違ってパンストを穿いている彼女の脚は、薄らと肌が透けていてそれが妙に艶やかに脚を魅せている。
頭の上にはウサ耳ヘアバンド。
胸は溢れんばかりで、柔らかそうな谷間が覗いていた。
「ほう……」
とても美味しそうなうさぎさんだ。すぐに食べてしまいたい。という欲望が湧き上がってきたがどうにか抑え込み、全て下半身に封印した。
「すぐにご飯の準備するので待っていてくださいね」
しばらくしてキッチンからは油の跳ねる音が聞こえてくる。揚げ物を揚げているようで、パチパチと小さく弾ける音だけがリビングには聞こえてきていた。
待っている間、ソファーに座ろうと愛理の隣に腰を下ろすとビクッとウサ耳が揺れた。
「似合ってる。可愛い」
「それ絶対美味しそうとかそういう意味よね!?」
「そんな肉食獣みたいな感想あるわけないだろ」
「だって夜になると狼になるじゃない」
「そりゃあこんな美味しそうなうさぎさんがいたらなぁ?」
軽くシャワーでも浴びたのか、愛理からはお風呂上がり特有のシャンプーと本人の甘い香りがしてくる。それが余計に欲望を掻き立てる。
「も、もう、どこ触ってるのよ……」
ストッキングに包まれた脚を撫でると、愛理が可愛らしくピクッと反応する。
今すぐにでも食べられるかも、と怯えているのが可愛らしい。
あまりにも可愛らしいのでバニースーツの上から身体をなぞり、腰や胸に触れると嫌がりはしないものの新鮮な反応を返してくれる。
そっと上から胸を突くと、「んっ」と小さく嬌声をあげて抗議の視線を向けてきた。
「まだ飲んでもないのにお触りが激し過ぎない?」
「待ってる間暇なもんで」
ストッキングに包まれた脚の感触が素晴らしく、何度もリピートして触ってしまう。
ほぼ剥き出しのお尻にも手を出して揉みしだくと、えも言われぬ感触がする。
「どうですかお客さんうちのうさぎさんは?」
「もう最高」
「本番もありですよ」
キッチンから料理を運んでくる都がノリ良くそう言う。『本番』が何を指し示しているのか知らないが、愛理が顔を真っ赤にしているのはそういうことだろう。
「ふふ、あとでもう一人行くので待っていてくださいね」
テーブルにブリ大根と日本酒を置いて、次の料理を取りに行く。
他にも竜田揚げ、海老カツ、サラダなどを置いて都はキッチンとリビングを往復する。
最後に大きな丼を盆に載せて、都は戻ってきた。
中には豚角煮と煮卵。その下には細く切られた玉葱とタレの塗られた白米。豚角煮丼である。
「なんかもう俺の食べたいものばかりだな」
大根おろし付きだし巻き卵、きんぴらごぼう、合計で七品目の豪華な夕食が並んだ。
「お兄さんがお疲れのようだったので、頑張っちゃいました」
愛理とは反対側に座った都がエプロンを外す。代わりにウサ耳ヘアバンドを付けて、網タイツの白バニーさんが完成した。
網タイツに包まれた健康的な脚が目を引くが、それよりも目を引いたのは愛理ほどではないにしろ形のよく健康的な張り艶のあるおっぱいである。
まだ少女と呼べる年齢なのに、そんな格好をさせているという罪悪感と興奮がより彼女を魅力的に見せてしまう。
「こっちもいいですけど、温かいうちに食べてくださいね」
わざとらしく胸を触って、アピールする都がお酒の入った瓶を手にする。
促されるままにお猪口を手にして、気がつけばお酌をされていた。
「あ〜あ、お父さんにあげる初めて奪っちゃいましたね?」
「変な言い方するな。変な言い方を」
まずは一献。都に注がれた日本酒を口にする。
続けて二杯目が注がれたが、俺はそれよりも料理の方が気になっていた。
「やっぱり最初はこれですね」
俺が食べたいものを理解していたらしく、ブリ大根を箸で摘んで都が口に運んでくる。それを一口でパクりと食べると、程よい柔らかさのブリの身と味の染み込んだ大根の味が広がった。
「く〜、美味い!」
「ほらこれなんてどう?」
先を越された愛理が、むっとしたように唇を尖らせて対抗する。
海老カツにはタルタルソースが掛かっており、半分に切られたそれを一口でパクリと食べる。
揚げたての海老カツに、シャキシャキとした玉葱の入ったタルタルソースのハーモニーはもはや王道と言っていい出来栄えだった。
「美味い。でも取り敢えずガッツリ食っときたいな」
「それじゃあ、はい、あーん」
意図を察した都が、レンゲで豚角煮を米と一緒に掬う。流石の俺も戸惑った。
「いや、さすがにそれは食べづらくないか?」
「ダメですよ?今日は甘えてもらう日なんですから。お兄さんは箸とか使うの禁止です」
「そうきたか」
丼物は自分で食べたかったのだが、そう言われては仕方ない。
俺は差し出されたレンゲではなく、その先にある谷間を見て考えを改めた。
◇
テーブルの上にあった料理が全て片付く。
残ったブリ大根等の料理は明日の朝食に保存して、都がリビングへと戻ってくる。
体温が消えて寂しくなった右側に、また都は座った。
「いや〜、美味かったな」
「まだデザートが残ってますよ?」
そう言って都はくっつくように身を寄せてくる。既に愛理は手中に収めており、左手でガッツリと抱き寄せていた。
「んっ……もう、いつもよりスキンシップが激しくないですか?」
右手で都を抱き寄せて、そのままさわさわと網タイツと太ももの感触を楽しむ。ほどよく引き締まった太ももと網タイツによる感触は素晴らしい以外の感想が出てこなかった。
「完全に酔ってますね〜。お姉ちゃん共々」
「まあな」
左を見れば、グラマラスな黒姉バニー。
右を見れば、健康的な白妹バニー。
お酌をされるままに飲み過ぎてしまうのは道理で、その分スキンシップも過激になっていった。
肩を組むように愛理と都に腕を回して、置き場に困った手をおっぱいの上に置く。
「ん……っ」
「あ……もう、こういうこと許すのお兄さんだけなんですからね?」
脳裏におっぱいマウスパッドという言葉が過る。購入したことはないが、感触的にはこういうことなのだろうか?
「本当は有料なんですからね」
「ほう。じゃあ、いくら払えばいいんだ?」
「いくらだと思います?」
可愛らしく小首を傾げる都に、俺は真剣に考える。
胸ポケットに突っ込んでいた千円札を取り出して、そっと都の胸とバニースーツの隙間に差し込んでみた。
「きゃっ」
可愛らしい悲鳴が大変耳に心地いい。
「も、もう、どこで覚えてきたんですかこんな遊び」
「漫画で」
「それ絶対えっちなやつですよね」
「残念ながらR-18じゃなくてもそういう描写がある漫画はあるんだよ」
「お兄さんがそういうお店に行ったのでは?」
「興味はあるけど、さすがに足を運ぶ勇気はない。それにこっちの女の子の方が可愛いし」
そっと胸の上に手を戻して覆い被せる。
ふにふにと柔らかな感触が癖になりそうだ。
「本当にそういうお店行ってないの?」
「俺にそんな度胸があると思うかね」
「堂々とおっぱい揉みながら言われてもねぇ」
そんなつもりはなかったのだが、気がつけば指が愛理のおっぱいに沈み込んでいた。バニースーツとおっぱいの間に挟まった指を抜けば、同時におっぱいまで零れ落ちそうだ。
「ひゃん!」
右からも可愛らしい嬌声が聞こえてくる。
手持ち無沙汰な手がいつの間にやらがっつり都の胸を掴んでいた。
「すまん」
「そう言って手を引き抜かないあたりわざとやってますよね」
「嫌なら跳ね除けてくれてもいいんだぞ」
「……お兄さんって時々悪い顔しますよね」
「俺は悪い大人なので」
「知ってますよ。女子中学生をえっちな目で見ちゃう変態さんってことは」
より一層身を寄せてくる都が、困ったように唇を尖らせる。
「……あれ、お姉ちゃん?」
その時、するりと左腕が解かれた。
立ち上がった愛理が、ぼそりと呟く。
「……トイレ」
「お姉ちゃんも結構飲みましたもんね」
俺が付き合わせてしまったためか、愛理も飲み過ぎたのか今日はだいぶおとなしかった。もしかしたら尿意を我慢していたからかもしれないが。俺がずっとおっぱいを弄んでいるせいで、席を立てなかったのかもしれない。
「あんまり都にセクハラしちゃダメだからね」
忠告を残して、愛理がリビングを出ていく。
その背中を見送る最中、ふとした疑問が浮かんだ。
「なぁ。バニースーツってどうやってトイレするんだ?」
「覗きに行きます?」
疑問を手っ取り早い方法で解決しようとする都に、俺は同意して腰を上げる。
「–––言っておくけど、覗いたら怒るからね」
するとそこで廊下への扉が再び開いて、愛理に釘を刺されてしまった。
再び閉まるドア。残された俺は、諦めてソファーに腰を下ろす。
「おや、覗きに行かないんですか?きっと覗いても許してくれると思いますよ?」
「許してくれると思うけど、嫌がることはしたくないから」
「でもお姉ちゃんってMですよね。誘い受けでは?」
実際一回頼み込んで見せてもらったことはある。でも俺が気になるのは、あのバニースーツでどうやってトイレをするのかなのだ。
「実際あれどうやってトイレするんだろ」
「構造的に脱ぐしかないですね」
「……ということは?」
「全裸ですね」
「じゃあ、スク水とかは?」
「人によりますかね。ずらしたり、脱いだり」
愛理が戻ってきたら聞いてみたいところだ。
「ちなみに私は脱いでしましたけど」
自己申告してくれた都は、少しだけ恥ずかしそうに頬を赤らめている。
「よいしょっと」
僅かに腰を浮かせて、都が膝上に乗ってくる。
お尻の位置が気になるのか、もぞもぞと動いてベストポジションを探す。その度に際どい部分が擦れてしまう。
やがて落ち着く場所を見つけた都は、背中をぴたりとくっつけて甘えるように肩に頭を載せて見上げてきた。
「もう、お兄さん視線でバレバレですよ」
ガラ空きの胸元を見ていたのがバレたらしく、楽しそうに都は小悪魔の笑みを浮かべて言う。
「見ているだけでいいんですか?さっきは触ったくせに」
「ほら、さっきのはつい癖というか……」
手元にあるものを弄んでしまうことは、誰しも一度はあるのではないだろうか。意味もなくペンを回したり、プチプチを潰したり、スマホの画面をスクロールしてみたり。
言い訳がましく言い淀む俺に、都は小さく囁く。
「……いいんですよ。触っても」
置き場の困っていた俺の手を取り、自らおっぱいへと持っていき、包み込むように触らせてくれた。
張りのある未成熟でふわふわと柔らかな果実が、自分の指で形を変えていく様を見るのは、背徳的であまりにも官能的であった。無意識にもっと指を沈めてしまうくらいには。
「さっきみたいにスーツとおっぱいの間に挟んでみます?」
悪戯な笑みを浮かべて、都は誘惑してくる。
「……それともお尻に当たってるこの硬いものを挟んでみます?」
そこは見ないふりをして欲しかった。
いや、触ってるから見ないふりはしてるのか。
「誰に興奮したのやら。きっとこのあとお姉ちゃんで発散するんですよね?あ〜あ、残念だな〜。姉妹丼のチャンスなのに」
わざとらしく都はそう言って、頬を擦り付けてくる。
鼻先を掠める甘い匂いが、理性を刺激した。既に崩壊寸前だ。
「……さすがに中学生のうちは手を出せないよ」
なんとか振り絞った声は、威厳を保てているだろうか。おっぱいに触れている時点でダメかもしれない。
「下半身はそうでもないですけど」
「出してないです」
「衣服を突き破りそうですけど」
冗談を言い合ったおかげか、少し余裕が生まれた。
都の胸から手を離して、お腹に腕を回してくっつく。
下半身を押し付けてくるとか言わない。
むしろおっぱいから手を離したことを褒めてもらいたい。
そういう意図はないから。
「お兄さんJCよりJKの方が好きなんですか?」
「何を唐突に?」
「だって一切抱こうとしないじゃないですか。こんなGOサイン出してるのに」
「年齢的な問題だよ」
「JKはいいんですか?」
「結婚できる年齢なら責任取れるだろ。たぶん」
「じゃあ、あと数ヶ月ですね。十六歳になったら覚えておいてくださいね」
何故か嬉しそうに笑う都。
「俺は最低なことを言ってるつもりなんだが」
「いやですね〜お兄さん。うちの一族は女性は代々一人の男性を好きになったら死んでも愛する厄介な家系なんですよ」
「なにそれ怖い」
「お兄さんだってお姉ちゃんの執念深さは知ってるでしょう。私とお姉ちゃんにロックオンされた以上、逃げられないんです。だから逃がしてあげません」
可愛らしい顔でとんでもないことを宣言する都は、続けて予想だにしない言葉を放つ。
「たとえお兄さんがまだメイドさんのことを好きでもですよ?」
「……」
–––否定はできなかった。自覚はあるから。
「そう見えるか?」
「そうですね。未練たらたらなのバレバレですよ。というか冬海さんが好きだから、美月さんにも手を出してないんですよね?」
「……そう見えるか?」
「そう見えます。というかお兄さん自分で気づいてなかったんですか?」
冬海が好きだから、片桐に手を出してなかった。そう指摘されるとしっくりくるものがある。社内恋愛を口実に手を出していなかったが、根本にあったのは別の問題だったようだ。
正直、片桐は魅力的な女性だ。一緒にいて楽しいし、気が合うし、自然体な自分でいられたように思う。そんな風に接することができたのは片手で数えるほどしかいない。
なんかもう自分でも驚愕の事実に打ちひしがれていると、そっと唇に柔らかな感触が押し付けられた。至近距離に都の顔があると気づいた時には、彼女は優しい笑みを浮かべる。
「どうせこのあとお姉ちゃんとえっちなことするんでしょう。だから、迷惑料を先に受け取っておきますね」
「……それはすまん」
「本当は私もお兄さんとしたいんですよ?興味がないわけじゃないので。というか毎晩見せつけられる私の身にもなってください。おかげで勉強に集中できないんですから」
いやでも毎晩おまえも覗いてるじゃん、とはさすがに言えなかった。