貴公らは、とある五つの物語について知っているだろうか。
どこの誰が書き手なのかは不明だが、いつの間にか書かれ、そして世界へと広まった五つの物語。
『悪魔殺し』
『火継ぎ物語』
『獣狩りの夜』
『
そして
『黄金樹物語』
本当に実在していたのか怪しいとまで言われているこれら五つの歴史は、間違いなく、存在しているのだ。
偉大なるエルデンリングは、再びこの地に蘇る。
霧の彼方、我らの故郷、狭間の地は、再び作られる。
かつて偉大なる王は黄金の輪を砕き、新しき歴史を開いた。
しかしその偉大なる歴史は捨てられ、忘れ去られようとしている。
おお、我らが王よ!
未だ黄金の繁栄を望む民たちよ!
遠い昔に捨てた祝福が、今我らを再び呼ぶ!
魔法の極地へと辿り着きし、カーリアよ!
狂いをついに我が物とし、王に使えし3本指よ!
そして我ら黄金よ!
祝福は再びもたらされるだろう!
再び王の元へ、我らが狭間の地へ!
そして再び刻みつけるのだ、黄金とは何か、エルデンリングとは何かを!
♢
「…再び、ここに戻るとはな」
クリプターとして蘇った男の前には、彼があの時治めていた地が広がっていた。
狭間の地。五つの物語の一つ、『黄金樹物語』に書かれていた、実在したとされる場所。
しかしどこに存在していたか、いつの話なのか。それらは魔術協会を持ってしても分かり得なかった。
しかし、男は知っている。それは間違いなく実在していた。
あの黄金の歴史は、黄金の人々は、確かに存在していた。
だがもうみることは叶わない、はずだった。
「…導きの始まり。懐かしい」
男は改めて、周囲を見渡す。穏やかな風が広がる大草原。争いなど無くなっていたこの地に、もはや黄金の守り手も白面の男もおらず、ただ動物が跳ね回るのみになっていた。
改めて、ここは俺がかつて統治していた地なのだと実感する。
ならば、やることは一つだ。
「戻るとしようか、我が玉座へ」
男は立ち上がり、祝福に導かれるまま、道を進んでいった。
♢
「久しいな、貴公ら」
黄金樹の麓。
玉座に座る男が、円卓を囲むようにおかれた椅子に座る半神達に言った。
「二度と会いたくなかったがな、褪せ人」
「私は会えて嬉しかったがね。貴公の継ぎ、人を使うことをやめてからさらに磨かれていると見た」
「フン。だが確かに、貴様があの時獣墓を融通するようあの黒犬に伝えたおかげで少しはマシになっただろうな」
ストームヴィルの守り手たる半神に言葉を返す。
彼はずいぶん強くなった。今では当然のように古龍の頭を継ぎ、それを存分に使いこなすだろう。
「ずいぶん久しいではないか、我らが王よ! 今まで何をしておったのだ!」
「…すまぬな、貴公」
腐敗に飲まれていた大柄な半神の言葉に、男は申し訳なさそうな、それでいて彼に言えることは何一つないと言いたげな困った顔で返事をする。
「…少なくとも、あなたが戻ってきてくれてよかった、我らが王。娘が喜びます」
「…襲われそうになったら、止めてくれたまえよ?」
「ご冗談を」
ニコリと笑ってそういった魔法に至っているであろう魔術師の言葉に、男は少し焦りを覚える。
彼女の娘はなかなか執念深いのだ。
「…」
「久しいな、貴公。やはり貴公にここの守りを任せたのは正解だった。民達は輝いて見えるようだったよ」
「…私への皮肉か? 王よ。貴様が逃げなければさらに輝いていただろうに」
「…そうかもしれないな。だが、私はエルデンリングを砕いたことを悔いてはいない」
「…そうか」
かつて孤独に王都を守っていた忌鬼は今も確かに王都を守っていた。
「…それで? 他の者らは」
「先先代の王は巨人らのしつけをするといって山脈の方へ行かれていましたよ」
「我が兄はいつも通りよ! 愛も変わらず蛇に身を食わせておるわ!」
「…兄はわが弟と共に地下に。妹の方ならばどうせ聖樹に引きこもっているだろう」
ここにいない一族のものも、どうやらよくやっているようだ、と男は安堵した。
「…それで。なぜ今更になって戻ってきた、王よ」
静かなる守り手は、男にそう問いかけた。
男はその言葉に大きく頷き、デミゴッド達を改めて見渡す。
「私が戻ってきたのは…貴公らに協力を仰ぐためだ。」
「ほう! 戦ですかな!」
男の言葉に、戦神である将軍が大きく反応する。
「ああ。だが人の世を滅ぼしてはいけない。我らはすでに譲った者達なのだからな」
「ではなぜ協力を?」
男の言葉に首を傾げていた魔術師が言った。
「…今の人の代は、脆弱だ。力は弱まり、歴史だけしか残っていない」
故に、と男は言葉を続ける。
「我らは彼らの力を押し計り、試練を課すのだ。歴史を紡ぐ種としてふさわしくなれるようにな」
「おお! なるほど! 素晴らしい戦いが起こりそうですなぁ!」
一人騒ぎ出す将軍を尻目に、魔術師はクスリと笑う。
「…どうした、貴公」
「いえ。王がなんだか親のようだなと思いましてね? 我が娘との子ができればさぞかし立派な…」
「やめてくれキャスター。 …だが、確かに子供を育てているような気分ではあるな」
そういうと男は椅子から立ち上がり、彼らを改めて見渡す。
「…お前達。俺についてくる気はまだあるか?」
「…もちろんですとも」と魔術師。
「応っ! これほど楽しめそうな戦い、ついていかぬわけには行きますまい!」と将軍。
「…いいだろう」と、静かに頷く忌鬼。
「チッ…私が反対したところで無駄なのだろう…」と、接木。
その答えを聞いた男は満足そうに頷き、再び玉座に座る。
「…では、我らが息子達に再び見せつけようではないか。我らの偉大さを…黄金樹を!」