黄金樹の名の下に   作:黒プー

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第5話

オフェリア・ファムルソローネは覚悟を決めた。

現在の北欧異聞帯は、自らが呼び出したセイバー、シグルドの皮をかぶっていたスルトが蘇り、再びこの世界を焼き尽くさんとしていた。

一時、そのマスターである彼女自身もスルトの強い怨念に飲まれ、彼に従おうとしていた。

しかしあるアーチャーが捧げてくれた、霊器を用いた一撃によって目覚めることができた。

そして彼女は、スルトを呼び出したマスターの責務として、巨人の要石……自らの片目を壊す覚悟を。

 

「……そ、れは……つまり、契約を破棄するためには…… っ、オフェリアさん! だめです!」

 

どうやら同じ結論に辿り着いたらしいマシュが声を上げる。

しかしオフェリアは、悲痛の表情をしているマシュに笑いかけ、自らの覚悟が揺らがないことを示す。

 

「……ありがとうマシュ、心配してくれて。でもいいの。だって……私は、希望を持ってこうするから。」

 

彼女を含めたAチームの面々を、必要ないだろうに蘇生してくれたキリシュタリアの期待。

彼女はそれを背負い、それに応えるために、希望を持って自らの魔眼を壊すのだ。

そこに決して絶望はない。あの弓兵が、最後に教えてくれたように。

 

「自分の失敗の始末はつける。それが、私をクリプターだと認めてくださった……いええ、生きるに値するものと身を捧げてくださった、キリシュタリア様への、唯一の……!」

 

彼女は魔眼を起動させ、高らかに叫ぶ。

 

「私の魔眼! その真価は可能性を見通すことでもその派生としての事象阻害でもない!

そう、要石……っ! 神霊にも等しい巨人王を現世に留めておくだけの霊的な要石としての役割を、この魔眼は備えている!」

 

少しずつ、彼女の目への負荷が増えていく。

オフェリアはそれを自覚しつつも、決して止めようとはしない。

 

「この瞳を排除して……っ、スルトとの契約を……切り離す……っ!」

 

彼女を思わず叫びたくなるような痛みが襲う。

しかしそれでも手を止めない。これが、彼女を救ってくれたキリシュタリアの期待に応えることができるものだから。

 

「っ、やっぱりだめです! 魔眼は脳に強く結びつくもの、繊細な処置をしなければ溢れ出した魔力が脳を破壊しかねない! これ以上は死んでしまいます!」

「っ……」

 

マシュの言葉通り、目を含め脳に負荷がかかっているのだろう、右目から血が溢れ出し、オフェリアの手を汚す。

 

「う……あああああああああああっ!

「オフェリアさん!」

 

脳をも揺らす激痛に、オフェリアは思わず叫ぶ。

しかし決して切り離すのをやめない。彼女の覚悟は痛みに耐え続けていた。

 

「魔眼と……っ、魔術回路の接続を……解除……っ! 魔眼は力を失い……同時に、消え失せる!」

「それ以上は……!」

 

明らかに出血量が増えていることに気づいた藤丸も声を上げる。

しかしそれでもなおオフェリアは止まらない。

 

「まだ! まだよ!」

 

彼女はさらに、自らのサーヴァントであるシグルドに、令呪を消費して、魔力を送り込む

…はずだった。

 

「……貴公。無茶は体に祟る。程々にしたまえ。」

「……あ。」

 

見開き、スルトを見続けていた自らの両目が、何かで塞がれる。

それはゴツゴツとした、それでいて温かい手だった。

自らの頭の中で暴れ狂っていた魔力が少しずつ静まっていき、それにつれて彼女自身にも眠気が襲ってくる。

 

「ああ、それでいい。少し目を癒したまえ。……あとでゆっくり話せばいい。」

 

その優しげな言葉を最後に、彼女の意識は暗転した。

 

 

なんとかオフェリアの魔力暴走を鎮めたエルデは、一息つき、それからカルデア一行を見る。

 

「久しいな、貴公ら。」

 

突然のエルデの登場に、マシュは驚きつつも彼にオフェリアについて聞く。

 

「何を、なさったんですか?」

「ああ、彼女のことなら心配いらない、ただお守り(タリスマン)で鎮めただけだ。……それよりも。」

 

エルデは話題を変えるようにして、未だ健在の神殺しの巨人を見る。

 

「あれを倒すのに戦力は足りているかね? 少なくともオフェリアの要石が消えたことで弱体化はしているだろうが。」

『なんともいえない。あれは腐っても神霊だからね。』

 

通信越しにダ・ヴィンチがエルデに言う。

 

「……ふむ、やはりか。では私も少し手を貸そう。……無論私自身ではないがね。」

「……ようやくか。」

 

エルデの言葉と共に、彼の後ろから巨体が歩いてくる。

青の鎧に、肩に特徴的な獅子を乗せた大男。そして手には巨大かつ無骨な大斧をもっている。

 

「名乗らせていただこう、カルデア。我が名はゴッドフレイ。狭間の地の王であった者。今は故あってこの男の下にいるがな。」

 

巨体の男…ゴッドフレイは、右肩に斧を担ぎ直しながらそういった。

そしてゴッドフレイの名を聞いたダ・ヴィンチが真っ先に反応する。

 

『……最初の王ゴッドフレイ、そして狭間の地。ロシア異聞帯の帰り道で会った時に君が連れていたサーヴァントもそうだけど……君、何を召喚したんだい?』

「……強いていうなら、神になるだろうな。」

 

エルデはダ・ヴィンチの言葉にそうかえすと、藤丸たちの方を改めて見ながら言う

 

「そう言うわけだ、前衛は我々に任せてくれ。」

「……我々? ま、まさかエルデさんも…?」

「ん? ああ。大丈夫だ、私はただ支援するだけだ。」

 

エルデは当然のように体ほどもある巨大な戦鎚を出しながらそう言った。

 

戦闘フェーズ

 

基本的には本来のスルトフェンリル戦と一緒。ただサポートにゴッドフレイが追加されているのと、ゴッドフレイを使った場合のみ7Tに一回エルデが特殊演出宝具を使用する。

 

 

 

シグルドの宝具、『壊劫の天輪(ベルヴェルグ ・グラム)』をその身に叩き込まれ、エルデとカルデアらの追撃をスルトは耐えきれず、彼はもはや散りゆくだけと思われた。

だが神霊はやはり強大だと言うべきか、彼は最後の力を振り絞り、一行を道連れにしようと試みた。しかし。

 

「否っ!」

「何も、させません……!」

 

シグルドとブリュンヒルデによってことごとくを防がれてしまい。

彼は最後の力を振り絞って、カルデアのマスターに目を向けた。

 

「貴様が要だ…カルデアのマスター…… 貴様も、道連れだ……!」

「っ! させん!」

「ぬううううううんっ!」

 

それに気づいたエルデとゴッドフレイが、片腕ずつを切り落とす。

しかしそれは遅かったのだ。

するとは勝ち誇ったように彼らを見る。

 

「我が腕を切り落としてもすでに遅い……死のルーンを、刻んだ……ぞ……」

「っ、先輩!」

 

だが、それはスルトの自惚れであった。

死のルーンを刻まれた藤丸は、落下して地上に落ちるわけではなく、映像が乱れるように消え去り、何事もなかったかのようにそこに立っていた。

 

「なっ……!?」

「なるほど。現実誤認と言うやつか。」

「はい。すでに我がルーンを阻む力さえ、奴は持ち合わせていない。きっと、何かを燃やす夢でも見ていたのでしょう。」

「ぬううううううっ、貴様ら……貴様らああああああああっ!」

 

腕もなく、魔術さえも防げなくなったスルトは、何をするでもなく、ただカルデアのマスターに近づこうと試みる。

しかし、それをサーヴァントらが許すはずもなかった。

 

「ブリュンヒルデ。」

「……はい。」

「征くとしよう。」

 

そう言うが早いが、シグルドとブリュンヒルデは同時に消え、凄まじい速度でスルトを刻んでいく。

すると話すすべもなく、それに刻まれていくほかなかった。

 

「オ、オオ――――こんな……こんな最後であってたまるか……俺は、星を……!」

 

そう言ってスルトは、そのまま刻まれて最後を迎えた。

 

 

 

ストームボーダーに戻ってきたカルデア一行、そしてエルデは、再び向かい合うこととなる。

 

『それで? ここにきた要件、まだ聞いていなかったよね。』

『……クリプター、エルデ。君がここにやってきた要件を聞かせてもらおう。』

 

ホームズとダ・ヴィンチに、エルデは問いかけられる。

彼は当然だ、と言うように、その言葉に応える。

 

「クリプターであるオフェリアの回収が目的だった。」

『……だった?』

「ああ。だった。だが今の彼女は……少々キリシュタリアに依存し過ぎている面がある。このまま彼の元にいても良いことはない。」

『ではどうするつもりかね?』

 

ホームズがそう問うと、エルデは少し考え、それから返事をした。

 

「貴公らに預ける。それが最もいいと思った。」

『……私たちからしてみれば彼女は敵の首謀者だ。尋問されると考えないのかい?』

 

エルデはそのダ・ヴィンチの言葉に、ほう、と少し驚いたような表情をする。

 

「……まさかそんなことを言う奴がカルデアにいるとは。お人好しの集団だと思っていたが……安心した。ならばやはりオフェリアは貴公らに預けよう。……貴公らの唯一の戦力は、友人になれそうな相手を尋問したいなどと思わないだろう? なら少なくとも、オフェリアにとってそこは安全な場所だ。」

『……そうかい。』

「ではな、貴公ら。貴公らが負けないのであれば、どこかの異聞帯で会おう。」

 

そう言ったエルデは、またどこかから飛んできた竜種の足に捕まり、そのまま飛んで行った。

 

「……あやつ、いつの間に友を大事にするような男になったのだ?」

「え? 違うんですか? その…ゴッドフレイさん?」

 

巨漢の男の呟きに、マシュは思わず反応してしまう。

彼女が疑問に思うのも無理はないだろう。マシュが知るエルデはそれなりにコミュニケーション力がある男だったからだ。

しかし、ゴッドフレイの知っている彼は違うらしかった。

ゴッドフレイはマシュに合わせてかがみ、彼女に顔を近づけて言った。

 

「…騎士の娘。貴様があれをどう思っているかは知らないが、あれはもはや人ではない。力も、思考も、全て神に近いものだ。」

「…え?」

「…ふむ、やはり貴様と私のアレに対する認識は違うようだ。」

 

まあいい、とゴッドフレイは立ち上がる。

そしてカルデアを見ながら改めて言った。

 

「カルデア。やつを必ず殺せ。そうでなければ、死ぬのは貴様らの方だ。」

「……。」

「では、またいつか会おう。」

 

ゴッドフレイは、ちょうど飛んできた竜種の足に捕まり、その場を去っていった。

 

『神に近い存在か。……今までどのようにして狭間の地を復活させたか疑問だったが……なるほど。可能性としてはあり得る。』

『その考察を教えて欲しいけど……今は移動を優先しようか。 さ! みんなボーダーに乗って乗ってー!』

 

 

 




ちなみに狭間の地はエルデンリングがないとおそらく維持とか蘇生とかもできず(多分。その辺明確じゃないからなんとも。)、そして今作で狭間の地が復活したのはエルデがクリプターとして蘇ったタイミングです。
また僕個人の見解ですが、マリカが外から来た存在だと言うことを考えると、エルデンリングは人に宿って力を与えたりできるんだと思います。
つまりどう言うことでしょうかね?
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