アリヤ・マフヴァーシュの占いは当たる。
アーシアンながら意外にも彼女のことを慕う人間が多いのは、その特技のせいかもしれない。
どうして占いが当たるのか。もちろん何か超常的な力が働いている可能性もなくはないが、最も大きいのは彼女の人柄だろう。
占い道具、彼女の場合は石を使うことが多いが、極論すればそういった類のものは雰囲気作りの物でしかない。
と、本人に言ってもおそらく否定するだろう。なぜなら彼女にとってこの占い道具は先祖から伝わる大事な文化の一つだからだ。それは人類が宇宙に出てから随分影響の薄くなった信仰というものとも心の深いところで繋がっているのかもしれない。
とはいえ石が伝えた予兆をどう読み取り、どう伝えるかというのがアリヤ自身の能力であることは否定しようがない。たとえ神というものが存在して石を動かしていても、直接その意志を代弁することはない。
「うん、悪くない。良い感情や成長が見える。きっと今の努力は身を結ぶだろう。とはいえ慢心は禁物だな、最近何か諦めるようなことがあったんじゃないか?もう一度チャレンジしてみることだ」
女子というのは古今東西占いが好きなものであるのか、様々な寮の生徒が噂を聞きつけてはぽつぽつと占ってもらいにやってくる。最初アーシアンであることを馬鹿にしていたペイル寮の女子二人も、アリヤの洞察力にすっかり魅入られていた。
「は、はい……」
「すごい、どうしてこんなに当たるの?」
占われた者は大抵こんなことを言ってくる。アリヤはお決まりのように笑いながら返答する。
「私はこの石が伝えたことを翻訳しているだけだ。拡大解釈してそれっぽいことを言っているだけのことだってある。だが、そうやって背中を押せば占いはきっといい方向で現実になってくれるんだ」
正面に座っていた二人は感銘を受けたように顔を見合わせている。さっきまで占われていた生徒がもう一人の肩をバシッと叩くと、おずおずと叩かれた方が話しだした。
「えっと、その、れ、恋愛運とかもいけます……?」
アリヤ・マフヴァーシュは占いが好きだ。
自分の特技を活かすのが楽しいし、普段見えない誰かの一面を見られることも多い。
もちろん、と言い終わる前に石をかき集める。相談者と相手の名前と誕生日、その他気になることを聞いたら、胸の前でぐっと石を握り、盤の上に投げる。
「ふむ……あまりいい兆候があるとは言えないな。これが彼。心の距離が君とは離れているのが分かる。うーんこれは…嫌われているというよりは興味がない、関心がないという類な気がするな」
相談者はそれを聞いて深く項垂れた。隣の生徒も額に手を当てて天を仰いでいる。
「……希望がないわけじゃない。こっちの石は…おそらく隣の彼女。これが君の石の方を向いているということは心強い味方になってくれるということだろう。
そうだな、俗っぽい言い方をするなら、ダブルデート?とかそういうのをしてみてはどうだろう。とにかく彼女の力を借りてみることだな」
希望を取り戻し相談者は少し元気になった。
「ありがとう、アリヤ…さん。ねぇ、その……お、お礼とか」
「必要ないよ。だけど、そうだな…よかったら、もうアーシアンというだけで私の仲間を悪くいうのはやめてあげてほしい。私にとってはこのオンボロな寮も大事な場所なんだ。これは占うまでもなく分かる」
占い道具を片付けながらアリヤは言った。
「うん、分かった。約束するよ。少なくとも私たち二人は考えを改めました!」
「ありがとう。どうかな、一杯お茶でも。私の地元のお茶は美味しいんだ」
茶葉とポットを取りに行く。今は地球寮の狂犬は不在だ。チュチュが戻ってくるまでは、もう少し相談に乗ってあげてもいいだろう。