学園には気温変化がある。
居住フロントでは健康のために年間を通して気温を調整し、季節を演出していることが多い。もちろん雨も雪も普通は降らないし、大した気温変化ではない。
それでもフロント暮らしに慣れると少しの変化が暑く感じたり寒く感じたりするのである。
地球寮は常に予算不足である。
御三家のような豪華な寮とは違い空調設備が整っておらず、仮にあっても電気代が馬鹿にならない。
「やはり少し肌寒いな。そろそろ恒例行事をする時期かもしれない」
「アリヤさん、恒例行事ってなんですか?」
編入してきてから日の浅いスレッタは知らない事が多い。
「寒さに耐えられなくなった時にやるお泊まり会だよ。寮生みんなで大部屋に集まって寝るんだ。一つの部屋にまとまれば電気代の節約にもなるからな。まぁ、予算がないなりに行事をする言い訳だけどね」
「お泊まり会!す、すごいです!またやりたい事リスト埋まっちゃいます!」
「今日は少し豪勢にいこうか。スレッタ、一緒に買い出しについてきてくれるかな?」
「もちろん、です!」
買い出し部隊は店に入った。
大勢の食べる分であるのに加えて、たくさん食べる健康的な者が多いので、買い物籠にはどんどん食料が積み上がっていく。ちょっとしたパーティーグッズもそれに加わる。スレッタがはしゃいでいるせいで、今年は例年よりも豪華になりそうだ。
野菜を選んでいるとトマトが目に入った。この場にミオリネがいて、スレッタがトマトを取ろうとすれば、温室のトマトを使うことを提案しただろう。
ミオリネのことを思い出してスレッタは笑った。
「……そうだ!」
スレッタは思いついたアイデアをアリヤ達に話した。もちろんアリヤは二つ返事でその提案に乗った。
ミオリネ・レンブランは孤独である。
どこの寮にも所属していない彼女は元理事長室で生活している。特に友達がいなくて困ったりしたこともないのでなんとも思っていない。
しかし地球寮の面々と関わるなかで人と話したいと思うことが増えたような気がする。
「……暇ね」
一人パソコンに向かっていると扉を叩く音がする。
「ミオリネさーん!ミオリネさーん!」
スレッタ・マーキュリーの突然の訪問に驚きつつも扉を開けると、アリヤとリリッケもいた。
「どうしたのよアンタたち」
「今日は地球寮でお泊まり会です!ミオリネさんも良かったらどうかなと思って!」
どうやら食料を買った後ミオリネを誘いにきたらしい。
「別にいいわよ。私は地球寮のメンバーじゃないし。みんなで楽しくやりなさい、それじゃ」
「そう固くなるなミオリネ。君は地球寮のメンバーでなくとも会社の仲間じゃないか。私からもお願いしたいな」
ミオリネ・レンブランは一人で溜め込みがちである。
嬉しいことも嫌なことも自分だけで完結させようとする。仲間とか人を頼るとかいうことを彼女は知らない。
内心では仲間と言われて相当心が揺れているのだが、それを表に出すことはない。
「わ、分かったわよ……行けばいいんでしょ行けば」