スレッタ・マーキュリーはよく食べる。
水星で食べられるものはあまり多くない。学園に来てからの食事は彩りに溢れていてどれも美味しい。
「お、美味しいです!」
「良かった。ティコのミルクから作るチーズは独特でな。嫌いな人もいるんだ」
リリッケもよく食べる。チュチュもよく食べる。オジェロもよく食べる。ヌーノもよく食べる。
高校生の胃袋は無尽蔵である。
「マルタン、手伝ってくれてありがとう」
「いいよ!朝はいつも作らせてばっかりだから」
一堂に会して食事をすると会話も弾む。会社のことやエアリアルのこと、誰かの噂やちょっとした愚痴。
スレッタとミオリネにとっては人生で最も賑やかな食事だった。ミオリネは自分が自然と笑顔になっていることに気づいていない。
オジェロ・ギャベルはギャンブルが好きだ。
生活費までギャンブルに注ぎ込んでいる。正直将来を思うとマルタンは心配で仕方がない。
「最後の一個をかけてババ抜きで勝負だ!」
苺なんて正直どうでもいいとミオリネなどは思ったのだが、オジェロとスレッタに押されて参加させられた。
スレッタ・マーキュリーは顔に出る。
配られた手札にババがあり、露骨に嫌な顔をした。
各々の手札が減っていく。一抜けしたのはミオリネだった。
「じゃ、苺はいただくわね」
特別喜ぶわけでもなく、最後の一個はミオリネの胃袋に消えた。
ティル、リリッケ、ニカ、アリヤと続々と上がっていく。最後まで残ったのはスレッタとオジェロだった。
ギャブルが好きなくせにオジェロは顔に出やすい。その上緊張すると冷静な判断が出来なくなるのでスレッタの表情を見ていない。
スレッタからババを引くと、そのままオジェロが負けた。
「ぐぁぁぁぁぁ!!!!やられたぁぁぁぁ!!!!」
「や、やりました!ミオリネさん!ビリじゃないです!」
苺を賭けていたということを忘れるくらい二人は熱中していた。
スレッタ・マーキュリーが寝るのは早い。
朝早く起きるのだから、寝るのも早いのが当然というものである。しかし今日は楽しくて、ついみんなと夜更かししてしまった。
誰かとお泊まり。やりたいことリストに書いた内容よりも大きな規模でその願いは叶った。
オジェロとチュチュのいびきが響いている以外は静まり返っている。地球のように自然の音もなく、商業フロントのように夜も忙しく動いてる人もいない。
「ねぇスレッタ」
ミオリネは隣に寝ている。
「今日はさ、ありがとね。誘ってくれたの、感謝してるわ」
スレッタは半分だけその声を聞いている。瞼は重く今にも閉じそうだ。
右手に体温を感じる。ミオリネが手を握っていた。
「おやすみ、スレッタ」
「おやすみ、なさい……ミオリネさん」