姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝 作:気力♪
現在位置はスタジオの屋根上、周辺からの脅威はなし。
リオが開けた屋上の穴、その向こうには堕天使パイモンがいる。合体を用いて自身の強化を図っている異界の主。
推定レベルは76、悪魔合体の度にレベルは2〜3上下する。最大79、最低73だ。
「すまぬ、奴が何をしているのかさっぱりわからぬぞ」
「私も。正直レベルと強さがバカスカ上がってるなら今すぐ突撃する気だったけど、何これ? 結構な割合で
リオと共にキリギリスに情報と増援要請を投げかけて数時間。1時間半に一度程度の感覚で堕天使パイモンの悪魔合体が発生する事が分かった。
ティターニアの『クリエイター気取り』という評が正しいのであれば、なにやら拘りがあるのだろう。傍目からは何がどう変わっているのかよくわからないが。
また、パイモンの悪魔合体が起きるときに多くの悪魔が零れ落ちるように現れるのが見えた。どうにもレベルが高い悪魔ほど異界を動き回る性質を持たないようだ。異界のGPを大きく超えているから動き回れるMAGがないのかもしれない。少しすれば消えるように退去していった。
「他のデビルバスターからの増援は何時来られそうか?」
「1つのチームが8時間以内って言ってくれてるね。けど、合流を待ってたら変化は5回起きる」
「……異界のマップ埋めを優先しよう。ボスへのルートを確保するはどう転んでも有効な筈だ。探索中でのパイモンの変化を見て、それ次第か?」
「おけ。じゃあ、カメラとこいつをセットして、と」
リオが懐から一つの機械を取り出す。アイテムの『バックアッパー*1』だ。記録したデータを周辺の者に共有するものであり、そこそこに頑丈であるから異界にて後続に残すメモとしても使われるらしい。
これをカメラと接続すれば、即座に監視カメラの出来上がりだ。覚えておこう。
「じゃあ、探索再開?」
「屋根上から内部に侵入できるルートの有無も確認しておこう。裏口からの侵入ができれば上策だ」
「光を入れちゃいけない関係で窓はなさそうだから……換気口あるかな?」
軽く調べたが、内部に入る入り口は見当たらなかった。
換気口は存在したのだが開かない。一方通行の呪いがかかっているようで、内側からしか開かないという測定結果が得られたらしい。
「扉を壊せないか?」
「時間かければ不可能じゃない……かな? 微妙なトコ」
「承知した」
ひとまず、このポイントを『トラエスト』のホームポイントにセットする。観測拠点としよう。
「では、探索はどこから向かう?」
「まずはスタジオの通用口から。大扉は開かないだろうし、開いてもすぐバレるから」
という事で、屋根上からすとんと降りる。その際、屋根に杭とロープをセットして下から登れるようにしておいた。トラエストストーンでの帰還がメインになるだろうが、道はあって困るものではない。
通用口のドアを見る。鍵はなし、封印もなし、しかしドアの向こうに道が通じているようには思えない。
「『ヨカンムシ*2』に反応、ワープゾーンよ」
「了解、ファフニールを先行させる。頼むぞ!」
「任セロ!」
ドアの向こうのワープゾーンにファフニールを突っ込ませる。
転送先は見覚えのないエリア。オートマッピングによると北西に存在する第2スタジオだった。
「別のスタジオに飛ぶのね。帰って来れる?」
「帰り道となるワープゾーンは見当たらないな」
「なら、覚悟して行きましょうか」
「おうとも!」
危険だからと引いていい場面ではなくなった。時間がどれほど残っているのか分からない以上、多少のリスクは許容する。
「来タカ! サマナー!」
「斥候ご苦労様だったぞファフニール!」
ワープ後に敵はなし。
北西にあるスタジオの様子に妙なモノがあるかは己の知識ではわからない。撮影エリアに緑色の幕が二つあり、それを囲むようにワイヤーのついた機械やロボットアームが配置されている。
「カメラがあるわね。点灯してる、撮影中?」
撮影エリアの近くにある大型ビデオカメラに近づく、ロボットアームの上には巨大なカメラが存在しており、重そうだ。支えているロボットアームの方は動かすのに相当なパワーが必要そうで、内部に動作補助用のモーターとかあるのだうと推測する。
カメラを見てみる。撮影物を確認するディスプレイには緑色のスクリーンの姿はなく、宇宙を思わせる背景に文字のような紋様や様々な図形が表示されていた。緑色の幕がカメラを通すとこのような絵に変わるのだろう。カメラを動かすと映る絵も変わるので、
仮想空間に立体を作り、それを撮影できる仕組みのようだ。すごいぞ!
「出ちゃったか謎パズル」
「……どのあたりが謎なのだ?」
「存在自体よ。なんだって異界奥への通り道にこんなギミック入れる訳? 入ってきて欲しいの? アトラクション感覚?」
「こういったその場で完結しそうな仕掛けならば構わないと思うぞ。四方八方奔走してパスワードを入力するような仕掛けでないのだし」
「……賭けてもいいけど、コレこのままじゃ絶対開かないから東奔西走する羽目になるわ」
賭けられてしまった。
報酬として渡せそうなものが『フィジカルミラー*3』程度しか思いつかない懐事情ではあまり受けたくはない気もする。
だが!
「ならば己はそうでないと賭けよう! 挑まれた賭け事に臆するのは一流のハンターではない!」
「……ボヤいただけでジエンくんと賭けようとはしてないからね?」
「大丈夫だ! 己に問題はない!」
「私に問題があるかなー?」
カメラの乗ったアームを動かして、映る映像を調整する。
撮影エリアを右上から左下に写せば円形が現れそうだった。とりあえず円を作ればなにか見えるだろう。
「……む?」
しかし、円形を作る事ができてもその内部に記された法陣は存在しない。中身はぐちゃぐちゃになっている。
「ジエンくん、どう?」
「……リオの言う通り、ただこのカメラを動かすだけではダメなようだ」
「……へぇ、そういうタイプか」
「む?」
「多分、うまいことモノを配置すれば、魔法陣が描けるんだと思う。周りに小物は置いてあるし」
「そうなのか?」
「うん、ゲームっぽい事を除けば理にかなってるのね。カメラ内に魔法陣が完成してなかったら転送陣が起動しない。現実世界側では物理的にモノを置くだけだからワープの術式からハッキングされる事もない」
「……というと?」
「カメラが写す背景の方を変えないとボス部屋には踏み込めない感じじゃないかな? 撮影エリアに置くべき正しいものと、カメラを置く正しい位置、そして正解の背景CGソフト。物理キー、電子キー、撮影角度の三重ロックになる訳だ」
「……そうまで面倒なロックにする必要はあるのか? 普通に結界を張れば良いだろうに」
「結界のオンオフの隙を嫌ったんじゃないかな?」
「なるほどなー」と理解しきれていないながらも納得をする。隔壁の上げ下げに使う電力が大きい、そんなようなものだという認識で一旦置いておく。今は深く理解する必要はないだろう。
「それで……己はどうすれば良いのだ?」
「とりあえずこのカメラ自体を調べてみない? ログとか残ってたら楽ちんだし」
という事で、役割を交代する。
カメラの側に行ったリオは、COMPを翳して内部のスキャンを始めた。己の見た限りではディスプレイ横の操作ボタンは2つだけ。撮影と、電源の二つだ。
SDカードやUSBを挿入できそうな場所は見当たらず、悪さできそうな場所もない。
「あー、シャドウを被せてるのか」
「……そのカメラは悪魔の力の影響下なのか?」
「多分ね。元々あった『撮影用カメラ』っていう形の上にギミック用の仕掛けをつけたみたい。けど、杓子定規なギミックとしての役割しかないみたいだから、突然動き出したりはなさそう」
一応だが魔法陣が完成したら悪魔が飛び出してくるくらいは想定していた。だが、カメラそのものが動き出すような事は想定の外だった。
リオらこの世界で戦うモノたちは踏んでる場数の質が高いのだな、となんとなく思う。
賭け事の勝者であるリオに『フィジカルミラー』を受け渡しつつカメラから離れて周辺の探索に移る。本人は何故か受け取ろうとしなかったが、賭け事の結果は正しく履行されねばならない。
転移魔法陣の出現場所と思われるぽかんとあいた空間に近づく。悪魔はあまり寄り付かないらしい。異界の主がそのように指示しているのだろうか?
だが、周辺に悪魔が存在しないわけではないらしく、気配はひしひしと感じられはする。侵入者の行動によって攻撃対象かどうかを見ているようだ。
おそらく、カメラの破壊などがトリガーだろう。
「あ、コレなんか使えそう」
ふらりとリオが緑色のペンキを手に取った。コレを塗れば、緑色の幕のようにモノを透過させられる……ので、理解は間違ってないだろうか?
しかし、それを手に取った瞬間に悪魔たちがこちらに襲いかかってくる。正面方向からの奇襲だ。
『百太郎』が反応しなかったのは、奇襲が前方からだったから。己が半瞬遅れたのは、自分自身の事でなかったから。あるいは油断があったのかもしれない。
「あ、やべ」
リオはこちらにペンキを投げ渡す。縦に回転させて遠心力を残した投げ方だった為か、中のペンキは溢れない。
しかしその一手を使ったリオは敵からの攻撃をモロに受ける事になる。
「合体魔法ッ⁉︎」
「嘘でしょ⁉︎」
ファフニールのカバー内に入った己、氷結無効のペルセポネー、そして『ブリザードローブ』という氷結吸収防具を持ったリオは無傷。ファフニールは87.5%耐性で軽傷、クイーンメイブも氷結耐性故に軽傷。ダメージは軽微だ。
しかし、ファフニールとクイーンメイブが『凍結』を受けた。行動できず、攻撃されれば致命打を受けてしまう。
ただ、敵方も氷結吸収は想定外のようで、
| 鬼女 | クロト | LV68 |
| 鬼女 | ラケシス | LV69 |
| 鬼女 | アトロポス | LV70 |
強者の気風を漂わせるモイライ三女神だ。交渉は通じそうにない。中ボスというヤツだろう。
「不味いね、『アムリタシャワー*5』!」
リオが攻撃に
三女神の情報をwikiから思い出す。基本的には魔法系のステータスで、三体を素材に特殊合体をすると女神ノルンになるという。それほどの繋がりがあるのなら合体魔法程度は放てよう。
耐性に関しては参照しない。アクエス、マグナスの水撃、地変あたりの魔法を使う悪魔の報告例として三女神が上がっていないからだ。現在精査中なのか未発見なのかは知らないが。
「ファフニール!」
「オウ! 『マカラカーン*6』!」
ファフニールが消費の軽いマカラカーン*7を貼る。
コレでひとまずの合体魔法での凍結連打*8は防げる。次にクイーンメイブと控えのサキュバスが『チェンジ』、反射の内側に氷結無効が2枚だ。
そして、サキュバスを召喚したタイミングで頭の中に閃きが生まれた。可能だという確信だ。
「合わせろサキュバス! 『プリンパ*9』!」
「ええ、『スクンダ*10』
合体魔法にはいくつかの種類がある。悪魔とサマナーのコンビネーションによって放つもの、連続する魔法の相乗効果として発生するものなどが己が見た事があるものだ。
そして、合体魔法の中には所持スキル同士の相乗効果で発動することで発生するものがある。それが『リンケージ』だと聞いた。
話に聞いていたソレを、サキュバスを召喚した瞬間に理解した*11己だった。
リンケージ L-テンタラフー*12
サキュバスが放った
……新たなスキルに目が眩み、最適解を選び損ねた。自制せねば。
「『フォッグブレス*14』!」
サキュバスの使用にて理解したが、リンケージはなかなかに奥が深い。
リンケージの使用には意識を合わせる必要こそあるものの、実際の行動自体はほぼ単独で行える。故に合体魔法にスキルを回していても続けてフォッグブレスを放てる程度には小回りが利くのだ。
リンケージで使う
現在のダメージ量は軽微、マカラカーンと攻撃1段階、命中1段階のデバフ付き。
敵へのダメージ量は軽微。動きを見る。
敵の
現在こちらは氷結無効2枚に吸収が1枚。リオとペルセポネーは見えているので択があるなら氷結以外の合体魔法以外が来るだろう。
『マカラコワース*15』
すると、まずアトロポスがマカラカーンを破壊するスキルを叩き込んでくる。
「
「楽はさせてくれないね!」
立ち位置を調整、氷結以外の魔法を放たれる可能性を考慮して一塊に。
「地変属性ッ!」
「対策し辛いのを!」
3体の力を合わせた合体地変魔法が放たれる。地変属性はファフニールの87.5%耐性の対象外、先のダメージと合わせて致命傷を受けダウンした。
「耐久を過信したかッ!」
「ぼやかない! 立て直すよ!」
87.5パー1回と、1段階弱体化の87.5パーならファフニールの耐久で耐えられると踏んでいた。先の手番にてテンタラフーを急ぐ必要はなかったのだから、本当に完全なるミステイクという事になる。
つまり、『流れが悪い』
「『招来石*17』!」
「シクジッタナサマナー!」
「回復するよ、『宝玉輪*18』!」
そう言う時には出費を躊躇ってはならない。備えとは、必要に応じて使ってこそだ。
さて、マカラカーンを張る事でマカラコワースを誘発できる。そして現在の面子ならば使ってくるのは『クラックファング』、追加効果はない。
「サキュバス!」
「ええ、
「『ラクカジャ*19』ダ!」
「オレノ、『マカラカーン』ダ!」
立て直しは成功、バフデバフは耐久面に一つずつ。不足はないが過剰もないので不安は残る。
『マカラコワース』
『クラックファング』
放たれたのは変わらず地変属性の合体魔法。他の手はないのか、優先度が低いのかだ。敵の行動の型は見えてきている。
「これ、パターン入ったかな?」
「合体魔法に面食らったが、それだけだ。ダメージによって行動が変わる事に注意だな」
行動順を己が先に切り替える。
「『メディラマ』!」
ダメージを回復し最低8割程度の耐久をキープ、クラックファングのダメージは6割程であるから、必要に応じてリオが『マカの葉*20』などを使えば問題なし。
「『ラクカジャ』!」
そして、敵がゲンブのカジャを除去する手立てを打たないのならダメージは減っていく。
「『マカラカーン』ダッ!」
そして、ここからだ。ミスに付け込まれないように補助を先に行い、攻撃を後にする。
「『ムドオン』」
ペルセポネーがクロトにムドオンを射出、等倍ダメージ。弱点見えず。有効。
「力を溜める……『会心の眼力』」
そして、本命のリオは溜めを選んだ。まず1匹落とす事を優先する方針に齟齬はない。
敵の攻撃が始まる。
またしてもマカラコワースと合体魔法『クラックファング』。ワンパターン。
一応、メディラマ一回で全回復はできないので、効果は無いわけではない。誤差レベルだが。
「行くよ……『百烈突き*21』!」
そしてリオの攻撃が始まる。確定クリティカルの物理連打7回攻撃、魂の励起はクリティカル一度につき一回の判定が起き、弱点を突いた時よりもクリティカルの手応えの方がより心を震わせやすい*22。
七度のクリティカルを当てたリオの百烈突きは、どれほどの手応えを感じさせるのかはとても興味があったりする。実際、リオの魂は『ニヤリ』と笑っているのだから。
そして、クリティカルで相手を乱したリオを『
『メディラマ』『マカラカーン』『ムドオン』と若干雑に
「
ニヤリ状態で放たれたリオの大技。本人的には未だに納得していないらしいが傍目からは十分に絶技である。
その一撃を食らったクロトは、胴体が吹き飛んで塵になった。確認するまでもなく死んだだろう。
「リカーム*24あるかな?」
「招来の舞踏*25かもしれぬ」
残心を行いながら軽い認識の擦り合わせ。コレで崩れはしないだろう。
「アァ……ァアアアア!」
言葉にならない怒声で吠えるアトロポス。怒りから攻撃力が上昇し、対して防御力が低下したようだ。心持ちによって強化が起きるアレ*26だろう2段階上昇なので、強化状態は攻撃に+1だ。
「む?」
となれば当然ラケシスの方も何かある。という事でゲンブを捨てる覚悟で壁にした所、『自爆*27』を放ってきた。自爆技だ。モーショボーだとかが使うヤツを継承でもしたのだろうか?
ゲンブに特攻をブロックさせたので皆は無事だ。だが当然ゲンブは吹き飛び四散して、続けてアトロポスの放つ『メギドラオン』は防げず被弾する。ラクカジャの影響によって耐久力は足りており、全員生き延びた。
そして、その必殺の一撃の後には致命的な隙が生まれる。
「獲った!」
リオの『霞駆け*28』が4発入り2発がクリティカル。体勢がぐらりと崩れ『めまい』を起こし動けなくなり、続けてのファフニールの『モータルジハード』、ペルセポネーの『ムドオン』が命中し、アトロポスは地面に転がっていく。
ちょうど、撮影エリアの中心部分だ。
「念の為回復だ『メディラマ』」
「おーけー!」
リオが放ったスキルは『百烈突き』。
アトロポスの特徴的な頭部をグシャグシャに整形して、もののついでに、と『丁度いい形』に整えたらしい。ついでに近くに転がっていた緑色のペンキにて彩色もしていた。動画に撮っていればさぞ絵になるスタイリッシュさだったろう。もったいない。
するとカメラから音が鳴り、ぽかんと空いたスペースにどこかに繋がる転送魔法陣が現れた。
「む? これで良かったのか?」
とはいえ分からない事はある。カギとなる適切な置物を置く必要があるのではなかったか? と。
「アトロポスの死体を整えて偽造しちゃった」
「ふむ?」
よく分からないのでカメラ映像を見てみる。すると、アトロポスの死体、というかアトロポス頭部の円筒装飾に緑色を塗ったものが魔法陣を補完して、カメラ映像の中に魔法陣が完成していた。……余分な血飛沫などがついたモノだったが。
「なるほど、カメラの中に魔法陣が作成できたのならば、手段はなんでも良かったのか」
「らしいね。ダメ元だったけど」
何がどうして正解の魔法陣の内容を知れたのかは分からない。しかし、完全に理解不可能な技術ではなかったので一安心だ。学べば追いつく事ができる。
蘇生と回復をしてパーティを整える。そしてワープゾーンにファフニールを突っ込ませた所人間でも通れる場所であったので己達も進み始める。
その後も二度程敵中ボス悪魔と戦闘しつつ、カメラの仕掛けを解いて行った。CGソフトはいくつか見つかり、それを用いることで新たな場所へと探索を進めていった。……撮影するエリアは一つだけでいちいち戻る必要があるので、面倒さがふつふつと湧き出てくる。
「次で終わってくれないかなぁ?」
「消耗は軽微だが、時を使ったな。パイモンの強化が終わってないと良いのだが」
「多分大丈夫かな? カメラ越しのアナライズだけどレベルはまだ上下してるし、身体変化は見られないよ」
「ふむ……どういう事だ?」
「こっちが知りたいって」
己たちが侵入しているのだからこちらにしっかりと迎撃の手を割いてはくれないものだろうか? 見えぬタイムリミットを思っての探索には多少の焦りが生まれてしまう。疲労の溜まり具合を見誤らないようにセルフチェックをしっかりしなくては。
「そうだ、コレまで戦った悪魔について少し共有しておきたい」
「合体魔法使いってのはびっくりだけど、他に何かあった?」
「最初の三女神『クロト』『ラケシス』『アトロポス』は特殊合体にて『女神ノルン』の合体素材となる。2回目の『ヘカトンケイル』『フラウロス』『ヴァルキリー』の三体は『魔王スルト』で、3回目の『キンキ』『フウキ』『スイキ』は『妖鬼オンギョウキ』だ」
「合体魔法使えるほどの繋がりはありそうだね、そう聞くと」
「ここまで符合するという事は、
「んー、そだね。その合体素材だとどんな奴らになる?」
「クロトは回復を得手として、弱点を持たない支援型、オンギョウキは物理と召還系能力を持ち、弱点という弱点はない前衛型。スルトは言わずと知れた火炎使いだな。耐性については変化はあるだろうが、オンギョウキは物理に耐性、無効を持つ傾向がある。ノルンは破魔呪殺が通らず、スルトは火炎吸収氷結弱点、そこに電撃、呪殺耐性がたまにあったりするとの事だ」
「……オンギョウキが面倒ね。物理耐性もそうだけど。『招来の舞踏』とか『バッドカンパニー』とか使ってくるでしょ絶対」
「ならば、オンギョウキを最優先か?」
「最優先は回復役として出てくる悪魔。1匹倒して様子見かな?」
若干の皮算用がありつつも方針を合わせておく。次が敵の本丸である可能性はそれなりに高い。オートマッピングで埋めていない場所はもうほとんどないからだ。
「いくよ」
リオと共に転送魔法陣を踏み抜く。
召喚している仲魔はファフニール、ゲンブ、ペルセポネーの3体。マカラカーンのファフニールに、氷結を扱えつつラクカジャを用いれるゲンブだ。
スルトの火炎が弱点に刺さってしまう訳だが、そこはファフニールのマカラカーンでカバーする。
ペルセポネーの枠は正直誰でも良かったので、扱いに慣れている仲魔を手癖で選択してしまった。これが悪手にならない事を願うばかりだ。
一瞬の暗転
視界が戻ったその時には、目の前に『堕天使パイモン』がいた。
何かを求めて、一つずつ一つずつ積み重ねているような印象を受ける、王冠を被った貴婦人だった。
「……侵入、者?」
パイモンが胡乱な目で己達を見る。その瞳は狂気の中にあっても、理性を完全に捨て去ってはいないらしい。交渉可能な印象を受けた。
「……あなたが、ここの異界の主よね」
「はい。堕天使パイモンと、申します」
「要求は一つ、今すぐこの異界から退去して。受け入れなければ……分かるわね?」
「お断りします。私には、やらなければならない事があるのです」
パイモンの意思は固い。案の定として、殺し合うことになる。だが、やり合う前に多少の会話はできそうだけど。
「パイモン、貴女は一体何をしていたのだ? 悪魔合体で自分自身を変化させていたのは見ていたが、強さを求める訳ではないように見えた」
「……私は、私を捨てざるを得なかった主様の元に戻りたいのです。主様の『知恵』に相応しい、『悪魔の力』となることで」
知恵者の『主様』というのは、人間だろう。ただの『力』ではなく『
仲魔から外した悪魔の暴走か? と考える。
これほどの大悪魔をストックから外す理由はあまり浮かばない。現在パイモンのレベルは
76、普通に考えれば主力として使うだろう。
「貴女の『主様』は、苦渋の決断をせねばならなかったのだな」
「ええ、そうです。一重に私が弱かったが故の事。主様の『知恵』と近しかった私よりも、ただ力が強いだけの下種を選ばれた! 戦い! 強くなる事を選ばなくてはならなかったから!」
表面上の同情に食いついてきてヒートアップし始めた。幾らかの情報は取れるだろう。
「あぁ、主様。数多の悪魔を召喚し、導き扱う偉大なる主様! 今、パイモンが参ります! 貴方に相応しい、貴方だけに最適化された肉体として!」
「それであれだけの悪魔合体……すごいね」
「うむ、本物だな」
これは所謂、愛が重いタイプの悪魔だ。やんでる? と言うのだったか。自分の世界だけで完結して暴走する。悪魔使いとしては相当に面倒な類に見える性格だ。
悪魔と人との魔人合体だとかの邪法に選ばれなかった事がこうまで拗らせる原因と見えた。うむ、ただの1個人としては同情できない所はない訳でもないが……異界の主として現実世界を侵食する以上、狩らねばならない。
「聞くが、別の場所に移動するつもりはないか?」
「何故私があなた方塵芥の言葉で主様の為の行いを止めねばならないのですか?」
「理由は先ほどのリオの言葉と変わらない。ここで死ぬことになるからだ」
「そうですか。ならあなた方も敵ですね」
「元より敵だぞ? だが敵と言の葉を交わしてはならぬ縛りもない」
「私はあなたのような雑魚の事で私の記憶領域の1厘たりとも使いたくはありません。死んで下さい」
堕天使パイモンが自分にかけていた悪魔合体の呪法切り上げたのを見た。戦闘中に耐性や能力が前触れなく変化し全回復する事はないらしい。
「我が名、堕天使パイモンの名の下に王と従僕よ降臨せよ」
| 堕天使 | パイモン | LV76? |
パイモンが歌うように3体の悪魔を召喚、いや作成する。悪魔合体ライトの効果と似たものによって、三体の悪魔が追加で現れる。
| 魔王 | スルト | LV72(+7) |
| 女神 | ノルン | LV75(+6) |
| 妖鬼 | オンギョウキ | LV78 |
それぞれ生まれたばかりで、瞳に意思は見えない。しかし力は本物であり、『合体によって得られているスキル』がどうなっているのかなど考えたくもない。考えなければ死ぬだけだが。
パイモンの最初の召喚は、一体の生成につき一度の手番を消費した。使ったのは3手、なので敵全員が息を合わせているのなら6回行動ということになる。吸収、反射でズラせる呼吸は4つ分、先走って足を救われないように、だ。
「ジエンくん!」
リオが先駆けて『会心の眼力』を使う。ターゲットは女神ノルンだ。リオの動きを流れに組み込みながらファフニールにAUTOの指示を出す。使わせるのは『マカラカーン』。
「手堅く行くぞ、『フォッグブレス』」
「『ラクカジャ』ダッ!」
「外すと不味いからね、『パス』」
攻撃に1段デバフ、防御に一段バフをかけて即死を避け、手番をリオまで回し抜く。魔王スルトの氷結弱点がそのままだったなら弱点を突きながら手番をリオまで回せるが、安定を優先。今スルトに手傷を与えても何にもならん。
「さぁ行くよ! 『百烈突き』!」
会心の眼力で必中となった突きの7連打がノルンを襲う、『マヒ追加』での拘束が狙いだったが、なんとノルンは連打によってその身体を砕かれ絶命してしまった。
弱い……違う、脆いのだ。敵方の、自然の悪魔として出てくる頑強な悪魔でなく、仲魔としてある程度型にハマった状態であるから、耐久力は敵である頃よりも高くない。
7回の連打が全て致命打となった事でリオの魂が『ニヤリ』と震える。クリティカルの手応えだ。
そして、敵の手番が始まる。
「レベルだけの悪魔は弱いわね……システム起動、『悪魔合体ライト』」
「悪魔召喚プログラムッ⁉︎」
「COMPにしてるのは背後のLEDスクリーン! 画面が馬鹿でかいもんだから、影響範囲も相当だよ!」
| 女神 | ノルン | ベースLV69 | LV61 天使ソロネ |
| 霊鳥 | ジャターユ | ベースLV55 |
ノルンを素材に現れたソロネは淡々と『ラスタキャンディ』で補助をかける。全段階強化1段階。差し引き防御1段階上昇。
さらに続けてパイモンが悪魔合体ライトを起こす。
| 幽鬼 | ヴェータラ | ベースLV63 | LV61 妖獣フェンリル |
| 魔獣 | ケルベロス | ベースLV64 |
「これだけの数で統率が取れているッ!?」
「7手動く*29よ!」
「さっさと、消えて」
──己は正直に言って、この時までこの世界が異常であるという事を実感していなかったのだと思う。多少レベルが高く、戦いの土俵に立つ事ができていたが故に。
あぁ、勝ち目のない戦いだ。一か八かの戦いだ。
楽しい楽しい、戦いだ。
あとがき
パイモンさん
ヤンデレ風味の悪魔合体モンスター。人数制限というゲーム的制約を無視できるので最大27体まで制御可能というスペック。Wikipedia見る限りだと、生贄捧げてパイモンを召喚したら2人の王と25匹の能天使を引き連れてくるかもよ?という逸話があった。
召喚したのが『二人の王』でも能天使でもないのは、悪魔合体によって肉体の性質を『知恵』の方へよ寄せようとしているから。
ジエンくん
ギミックについてとかあんまり分かってない。リオからのざっとした説明と雰囲気で『カメラを動かせば良いのだな!』とは分かったが、クロマキー合成とか理解できていないので基本的に頭の中に宇宙が広がっていた。
ミスが目立ったのはが原因なのだろうか?