姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝 作:気力♪
敵方の面子を確認する
堕天使パイモン、魔王スルト、妖鬼オンギョウキ、天使ソロネ、妖獣フェンリルの5体、パイモンは2回の悪魔合体ライトを用いて二つ使ったが、あと一度動く。
ソロネは出た瞬間にラスタキャンディにて自陣営の強化を行なった。己が放ったフォッグブレスと合わせて、防御に一段階強化。倍率不明、魔防に関与するか*1も不明。
悪魔合体ライトにて現れたフェンリルを見る。レベルは素体となったヴェータラとケルベロスより弱いが、『ボスとしての風格』が強まっている気がする。合体を重ねた事による強化か? 素直に合体で上昇するステータスが理由だけかもしれない。
「ウォオオオン!!!!」
フェンリルは咆哮と共に『ペノンザッパー*2』を解き放つ。毒効果付きの全体物理、おそらく継承技で、ダメージよりも毒狙い。
「喰らってたまるか!」
「治療に手番は使えない!」
それを、己とリオは気合いで避けた。リオは前転、己は姿勢を低くしてだ。どちらも紙一重であり、己は前髪がずばっと切られた感触がある。髪の毛から入る毒はレジストできたのでダメージはない。己は安堵の呼吸をして、リオは戦意を高揚させて『ニヤリ』と笑う。
ファフニール、ゲンブ、ペルセポネーは被弾して、ファフニールが毒に侵された。ダメージ量はおおよそ200、ペルセポネーが5割強、ゲンブファフニールが6〜7割の体力が残っている。
フェンリルが言葉にしないながらも動揺を起こす。己とリオが回避したからだ。これで勢いがそがれて呼吸を二つ奪った*3。
手番開始時の
己達の動きを差し込める隙は十二分にある。
「『マカラカーン*4』ダ!」
まずは、ファフニールにマカラカーンを使わせる。毒によってダメージを受け4割程度の体力になるが、毒の治療の手番が足りない。最悪の場合は落として招来石*5にて回復させる。
して、これから取り巻きを雑魚(己よりLVが高い)を始末するにあたっての方策としてまず浮かんだのは『風邪*6』と『悪化*7』のコンボだ。しかし
次に浮かんだのは、緊縛や魅了などで一時無力化するというもの。動かないか、回復の手番で一つ使わせる事で攻め手を潰せる。
しかしながら、『メシアライザー*8』というスキルが頭から離れない。味方全体を全回復し、ニヤリ時にはバッドステータスまで治療するもの*9だ。
パイモンの手の中に、あるいは合体悪魔のどいつかに存在する可能性を考えると、バステ頼りは主軸にできない。
しかし他に策が浮かばない以上、やるしかないだろう。
「悩むのは、動きを見てから!」
「『霞駆け*10』!」
リオの放ったのは複数攻撃の霞駆け、オンギョウキに1発、ソロネに2発、フェンリルに1発の4回ヒット。ソロネが『マヒ追加*11』にて縛られた。
全体的にダメージは軽微。高揚した攻撃といえどボスの耐久力の前では集中せねば無為だろうし、防御に1段階強化も入っている。
加えて、オンギョウキは物理無効までであり反射ではない事がわかる。リオは反射を貫く感覚を掴めてないらしく貫通が不十分なのだから。
しかし『ニヤリ』時の技の鋭さによってクリティカルが発生した事により敵の呼吸は乱れた。追撃のチャンスだ。
「『雄叫び*12』ダァ!」
ゲンブが攻撃と防御に一段弱体をかける。そしてペルセポネーはクイーンメイブに『チェンジ』、ダメージを受けた事と、マカラカーンの付いていない仲魔を見せつける為だ。
「『メディアラハン』……習得できて手良かったわ」
続けて、全体全回復魔法のメディアラハン。クイーンメイブがレベル57にて習得したスキルにて、ぺノンザッパーのダメージを治療する。このターンでの追撃、頭数を減らすのを不可能だと踏んで敵の攻撃に備えるためだ。
リオの霞掛けの通り方からいって4発1体に集中すれば仕留められるダメージの感覚だ。敵の回復の動きの中に招来の舞踏*13に似た動きになる『悪魔合体ライト』が存在するので無理攻めしたところで被害が大きくなってしまう。今は攻め時ではない。
「弱体を重ねる! 『フォッグブレス*14』!」
故に放つのはフォッグブレス。先のゲンブと合わせて敵は攻撃
「『会心の眼力*15』……」
そして、リオが次のターンのためのチャージを起こして手番が敵方に移る。
「僕共、動きを止めるな。『メシアライザー』」
「案の定か!」
「取り巻きはワンキルしろって事ね!」
「殺したら悪魔合体の素材にされるがな!」
続けてパイモンが動く。パイモンは悪魔合体ライトをした後は召喚悪魔に行動させるようだが、基本的には手番を連続させて行うようだ。
「『コンセントレイト*16』」
「チャージ即撃ち! 来るよ!」
「『ブフバリオン*17』」
「させぬ!」
敵がコンセントレイトを使った時点で動けていたのでカバー*18は間に合った。魔法反射のかかっていないのはクイーンメイブだけだったから、狙いが絞れていたというのはある。
──心底恐ろしい魔法だった。眼前に見た氷結の魂まで凍るような冷たさは魔法反射障壁程度なら余裕で貫いてしまいそうで、被弾したら耐性持ちのクイーンメイブですら致命傷クラスのダメージになるだろうという確信があった。
そんな恐怖を乗り越えた事で、『ニヤリ』と魂が励起してきたのが分かる。
「揺らいだ!」
「ワンマンだからだろうな!」
そして、パイモンがマカラカーンで反射された強化版『ブフバリオン』のダメージを受けた事での
おそらく氷結無効や吸収があったのだろう。ファフニールの『マカラカーン』は先のせぷてんとりおんに対して有効だったとらしい『耐性貫通マカラカーン*19』だ、というのは己達しか知らないのだから。
「流れが来てる! 『百烈突き*20』ィ!」
補助役のソロネは放置、オンギョウキはあえて無視してフェンリルを殺しにかかるリオ。六度のクリティカルを受けたフェンリルは大ダメージであるが、まだ耐える。食いしばりじみたギリギリでの耐え方は、ダメージが下振れたようだ。
「ここで仕留めろ!」
「『モータルジハード*21』ォオ!」
ゲンブがファフニールへのトドメとして物理スキルにて攻撃する。しかし、そこに割り込まれた。オンギョウキのカバーだ。
「ッ⁉︎」
オンギョウキは物理無効、ゲンブの致命打がスカされた事で呼吸がズレる*22。残り手番は3。リオのクリティカルで浮いた分が飛んだ。
だが、今現在ダメージを受けているものはいない。毒の治療ができていないファフニールくらいか。
「『マカラカーン』!」
ファフニールが行動した事で毒ダメージを一度喰らう。約1/8と致命傷ではないが、耐久計算が狂いそうだ。
「『ジオダイン』」
クイーンメイブがフェンリルに対して電撃を放つ、耐性チェックしていない無理撃ちなので勝算はない。フェンリルは火炎吸収も反射も弱点もあったりするブレブレ耐性*23なので、電撃に関しても若干の賭けである。
「グガァッ⁉︎」
「仕留めた! 次!」
「回復に一手使わせる! 『バインドボイス』!」
そうして、最後の出番で放ったのはまたしても耐性チェックなしでのバインドボイス。緊縛属性の状態異常を放つもの。 賭けではあったが無効は無し、しかし弱点もなかったようで今回のバインドボイスによる緊縛者数はゼロッ! ここで無駄撃ちが重なるかッ!
手番が移るタイミングで敵を再確認、ノーダメージ、手数6、攻撃二段階命中一段階弱体化。これまではなんとかなっていたのは敵が自由に動けていなかったからだ。回避や反射などが効いていただけの幸運だから、敵のフルスペックに近い状態での攻撃は今から始まるものが初めてとなる。
緊張の最中、スルトが動き出す。使ったのは『デクンダ*24』弱体解除にて減少していた攻撃力が元に戻る。続いて動いたのはソロネ。マカラブレイク*25か? と思えば使ったのは『ラスタキャンディ』全段階一段階能力上昇だ。
そして、パイモンの手番が来る。行動は3度、召喚や回復で手番を使わないフルパワーが……来るッ!
| 貫く氷の闘気 | このターンの間、味方全体の氷結属性が貫通する 真4F |
| コンセントレイト | 次の魔法攻撃の威力を2.5倍にする |
| ブフバリオン | 敵単体に氷結属性特大ダメージを与える |
「しまった⁉︎」
狙われたのはまさかのリオ。貫く氷の闘気によって氷結属性貫通を得たパイモンが、強化を重ねた一撃でブリザードローブ事リオの命を凍て付かせた。
リオは必死に食いしばるものの、ダメージ量が桁外れのため身体を四散させない程度にしか踏みとどまれていない。死んでいる。
そして、最後のオンギョウキ。これまで呼吸が噛み合わず行動できていなかった奴の行動。それは計らずも己達が適した動きをできていたという事であり。
今、その正解ルートから外れたという事が目に見えて理解できた。
| バッドカンパニー | 特殊スキル | 味方全体をストックに戻し、レベル高い順に |
パイモンの同時制御可能悪魔数は、脅威が過ぎる27。
全体が一度ストックに戻り、そこから現在の4体から合わせて23体の『
一目で分かる程度には、それぞれ姿やスキルが異なっている。アナライズで耐性全てが確認できる奴から、一度戦闘した事があったのか呪殺無効を確認できている姿、一度もまみえた事がなく何も耐性が分からない姿など様々な『パワー』が混ざっている*26。
「やりたい放題してくれるッ!」
手番の最初ゲンブに
「……すっごい数だね」
「奴はこの数を制御し切っている。『パス』を使ってくるぞ!」
「上等! 薙ぎ払う!」
「否! 足枷にするぞ!」
「ッ! 了解! 勝手に突っ込むよ!」
天使パワーのレベルは最大40、弱くはあるが、雑魚として薙ぎ払える程ではない。
だからこそ、リオを蘇生させた。
この状況で、息を合わせて一つ一つの隙を突く戦い方をしても勝ち目はない。ならば個々のパフォーマンスを最大に活かせるような乱戦に持ち込むのだ。そのための一手を、これから放つ。
「『チェンジ』任せたわサキュバス」
「アハハ! ぶちかましてあげましょうよサマナー!」
リンケージ L-テンタラフー*27
神経属性で、敵全体にダメージを与えつつ、混乱状態を付与するもの。
それは整然としていた能天使の群れを混乱の最中に落とし、レベルの低い3体を仕留めすらした。
混乱状態となったのは3割ほど、数字に直すとたったの6体であるが、混乱から立ち直るまでの間は己達の味方だ。肉の盾という意味で。
リオがパワーの陣の中に突っ込み、続いて己が侵入する。ファフニールは
「潰れて」
パイモンの指示によってパワー達が攻撃を始める。読み……というか賭けであったが、敵は最初に回復を行わなかった。それはこの数の悪魔を手駒としてすら見ていない証拠、使い捨てで死んでいい駒なのだ。
そんな
パワーたちから放たれたのは『絶命剣』『地獄突き』『白龍撃』とさまざまな単体攻撃スキルの山である。ファフニールのマカラカーンを見たが故に魔法は放ってこない。
足を止めた瞬間に、己もリオも命はないだろう。
──乱戦に踏み入る寸前に、リオの使った『フィジカルミラー*28』がなかったならば、だが。
パワー達が指示通りに攻撃を重ね、リンケージのダメージで瀕死のところに反射ダメージを喰らって落ちる。これで4。リオに対しての2度めの攻撃を己が変わり受ける、これで8。
混乱状態のパワーが手近な味方によれてぶつかる、9。それを払いのけて放ってきた物理攻撃をゲンブとサキュバスを盾にして反射する。17。
パイモンが息を飲む音が聞こえた気がする、当然気のせいだろうが鼻を明かした気分だ。なにせ、もう敵のパワーの攻撃はすでに始まっているのだから、割り込みは不可能だ。
『絶命剣』 己の頭をたたき割るような振り下ろし挙動の物理攻撃
『地獄突き』 心臓を貫き破ろうとする突き攻撃
『白龍撃』 破魔属性を内包した大楯による一撃
『パワースラッシュ』 剣によって己の首を落とそうとする一撃
四方からほぼ同時に攻撃が放たれる。力が強化されている様子のこの悪魔たちなら、命中させれば己の命を食い破るに足るものだろう
| 獣の反応 | 自動効果スキル | 命中、回避率が上昇する |
「見切った!」
しかし、コンビネーションの劣悪なこの攻撃たちは、付け入る隙が存在する。
白龍撃を無防備で受けることによって回避のための初速を確保、己は人間であるから
「あと、4手!」
体を小さく狭めて潜り抜けたのはパワーの脇下。しかしそこは能天使包囲網の外側近くであり、待ってましたとオンギョウキが己を仕留めるべく『暗夜剣』を放とうとしている瞬間だった。
「サマナー!」
そこに割り込むのはファフニール。能天使の集団に突入させず外周からの合流を指示していたが故に、ここに来れた。
ファフニールが割り込み、残っていた物理反射障壁を使ってオンギョウキの攻撃を防ぎ姿勢を崩す。それを見た敵方は、あれほどの包囲網をノーダメージで突破されたことに動揺し呼吸が乱れ、己たちは『勝ち』に近づいた確信から『ニヤリ』と心を震わせる。
手番30 崩し切ったり!
「サキュバス!」
「行くよ!」
リンケージ L-テンタラフー
1発目のリンケージでギリギリだったパワー達は、2発目のリンケージに耐えられない。全体魔法で仕留めることができれば、多数とて所詮はただの数なのだ。
また、仕留められなくてもダメージ蓄積は2発分残る。回復に手番を使われなかったが故に、オンギョウキには大きなダメージが入っているので、確定圏内
「その首貰った!」
| 物理スキル | 敵単体に物理属性大ダメージ(劣化)ニヤリ時貫通効果(劣化、反射貫通不可) |
フィジカルミラーでの反射が成功した事で己達は皆『ニヤリ』と魂を震わせている。そのために今のアカシャアーツもクリティカルであるし、先のリンケージもクリティカルに命中している。
反撃の流れが続く!
「オ前モ死ネ!」
「クタバル時ダゾ!」
口調も声色も似ているゲンブとファフニールが、共に『アカシャアーツ』を放つ。ソロネはゲンブのクリティカルの一撃により吹き飛び、スルトはファフニールの打撃によって中空に打ち上げられた。
今、眼前にはパイモンとスルトの二体だけ。これでようやく
「『ブラストアロー*29』!」
敵全体に銃撃の雨霰を撃ちまくるスキル、ブラストアロー。ターゲットはパイモンと、スルトと、奴らの背後の輝き動くスクリーン!
「そいつがお前の『スマホ』なら! 砕けば悪魔使いではなくなるな!」
「ッ⁉︎」
両腕から放った弾丸が背面のスクリーンを破壊していく。次第にスルトは実体を保てなくなり、オンギョウキ達の死体すら影響されてスライムに変化していく。
当然それはプログラムにて悪魔合体を受けていたパイモンにも影響されて、レベルが目に見えて低下していった。
「馬鹿な……私の、主様のための『力』が!」
「今際の際でもここに無き者は何もしない! 捨てられた想いを抱えて一人寂しく死んでいけ! 堕天使パイモン!」
「貴様ァァアアアア!」
| 貫く氷の闘気 | このターンの間、味方全体の氷結属性が貫通する 真4F |
| コンセントレイト | 次の魔法攻撃の威力を2.5倍にする |
| ブフバリオン | 敵単体に氷結属性特大ダメージを与える |
奴の攻撃のための三手詰め。己の言葉によって憎しみを掻き立てられたパイモンは己を狙っての必殺のコンボを放っていく。
想像より手が早く、仲魔を壁にするのには間に合わない。しかし、リオが喰らうよりはマシだ。今心根が崩れているパイモンを始末するのには、必要なのは己ではなくリオなのだから。
あとは、己が反魂香を切らしているという寂しい話もあったりする
「耐えてみせるとも!」
レベルの低下したパイモンによるコンセントレイトからのブフバリオン。肉体が消し飛ばないように心に決意を漲らせる。魂すら凍てつかせる氷が敵ならば、心を燃やして備えれば命を取るには通らない! *30
| 食いしばり | 自動効果スキル | HPを0にされても1戦闘中1回だけ残量1で耐える。 |
「耐えた!」
「馬鹿なッ⁉︎私の……バリオンがッ⁉︎」
「あれだね。貫通効果は%耐性を超えられないって奴。ジエンくんヤクトヘルムで氷結75%だから」
「まぁ! 食いしばる必要はあったがな!」
そして、今のでパイモンの心が折れた。戦いのために張り詰められていた強者の気風が消え去り、隙が生まれた。
| 闇討ち | 物理スキル | 敵単体に敵ターン中一定確率で物理属性の攻撃を行う。即死・貫通効果*31 |
その隙は、命が終わるのには十分なものだった。
パイモンの死亡を確認した。リオの正面からの『闇討ち」によって即死したパイモンには、死体からの蘇生などの兆候はない。
背後のLEDスクリーンを見る。
ブラストアローによって破壊した画面にはチカチカと光が灯っているが、魔法陣や文章などの意味のある言葉にはなっていない。
しかし起動が止まっていない以上、スマホの
「とりあえず、お疲れ」
「うむ! 完勝できてなりよりだ!」
「しかし、あれだけの召喚も制御も只事じゃないよね。パイモンが普通に強かったからかな?」
「それは理由の一つではあるだろうが、間違いなく
「プログラムの出所も把握しないとねぇ……ヤタガラスとかクズノハ案件だわ」
と、パイモンを仕留めた後であるが未だ異界の崩壊反応が始まらない。何かが異界をこの世界に留めている楔になっているのだろう。
とすれば、考えられるのは悪魔召喚プログラムそのものだ。
「召喚、ティターニア」
サキュバスと交代でティターニアを召喚する。ティターニアはもともと情報収集用に仲魔にした悪魔で、この異界の主パイモンと顔見知り程度であった。探索のきっかけにはなるだろう。
「サマナー、私を召喚しないだなんて酷いわ」
「暇がなかった。許せ」
「せめて死体でも踏み躙ってあげようかしら?」
「そうだな、念の為二、三発打ち込んでくれ」
「話が分かるサマナーは好きよ」
ティターニアがふわふわと飛んでゆき、パイモンの死体に対してATTACKを行う。
反応は……あった。死体の内側から何かの球体が転がり落ちた。
色はドス黒い怨念と優しい薄桃色がぐちゃぐちゃに混ざったような色合いで、MAGの強さは魔石程度。
だが、その色合いが見せる『情報の重さ』が他のものと桁違いに見える。破壊などの対処が必要だろうか?
そう思っていると己とリオのCOMPの通知音が鳴る、情報受信の反応で、受信したアプリケーションは『バックアッパー』
共有情報の題目は文字化けして読み取れないが、情報容量はそれなりに大きい。何かのプログラムだと思える。
「発信元はこの球かな?」
「おそらくな」
トラップを警戒して手元にあるアイテムの『バックアッパー』にて受信ファイルを開く。
内部には、文字化けした文章と一枚の写真、そして圧縮されている一つのプログラムがあった。
写真は、一人の好青年と
添付されているプログラムは、悪魔召喚プログラムそのものだろう。ファイルの名前がDDS.exeとシンプルに悪魔召喚プログラムを示している。
「堕天使パイモンは、この球体からの情報を受け取ってこの異界を作り出したモノだと考えられるな」
「……元人間か。そりゃ悪魔合体には使われない訳だ」
「……というと?」
「純粋な悪魔じゃないと悪魔合体の術式の中でバグみたいな挙動することがあるんだ。読んだ秘伝書だと混沌か秩序に偏った魂を持つ人間と悪魔を合体させると、とてつもないランダム性のある合体ができちゃうって感じ*32に」
「合体事故とは違うのか?」
「さぁね? まぁそういう強いランダム性が生まれちゃうもんだから人間混じりの悪魔は儀式系に使うのは避けられてるんだ。パイモンが『主様』に使われなかったのはそういう理由だと思うよ」
「それを知らず……あるいは忘れていたからパイモンは暴走し、こうなったのか」
「腑に落ちない点はあるけどね。この球のこととか色々。だけどこれは、『妙な悪魔が自分の強化のために異界を作った』って流れで纏めていい話だと思うよ」
そうリオと話すと、光球の輝きが一瞬揺らぐ。再びのデータ受信があり、内容は写真と、文字化け文書と、プログラム。
そして、揺らいだ光球の中のMAGが減少していく。数度輝けば停止するだろう。
「念のため複数回サンプル取って、終わりかな?」
「うむ。破壊を試みて大事を起こす必要もなかろう」
「放置してパイモンその他が復活する感じでもなさそうだしね」
そうして、いくつかのデータを収集した後に異界の崩壊が始まった。備えていた『裏ボス』、あるいは『乱入者』はなし。
手元に残ったのは輝く球体だった何かの。性質としてはバックアッパーに近いもので、収集した情報を送信するものだ。
光を発していたコアパーツはストーン系のような魔術的な作りになっており、素材自体はかなり安っぽそうだ。有り合わせで作られたハンドメイド、だろうか? 誰かの強い想いが込められているように感じる。
「……して、これはどうするのだ?」
「封印してヤタガラスに渡すよ。あちらさんなら何か知ってるかもしれないし」
「念の為に確認しておくが、こういう悪魔召喚プログラムをばら撒く物質というのは良くあるのか?」
「愉快犯がネットで流したりはあるけど、ばら撒きでこういう道具を使うのはないかな。そもそも体内に取り込まれてるし」
「……食べたのだろうか?」
「それはない」
「しかし、
「……うん、ジエンくんはもっといっぱい美味しいものを食べようね」
「???」
と、このような流れにて西東京スタジオ異界化事件は終了した。多くの道具を消費したが、その分多くの経験や仲魔を獲得できたので収支はきっと黒字だ。
多少のトラブルこそあれど己は敵に喰らいつける。そんな増長すら生みかねない大戦果だった。
だが、本当に大変なのはこれからだという事を、己は知らなかった。
「ヤタガラスへの連絡はこの番号でやるから、覚えておいてね。研究所の場所は秘匿されてるから、直接は行かない感じで」
「ウチの報告フォーマットはこんな感じ。ここのページのテンプレ見てね」
「消費アイテムがここ、消費MAGがこの欄ね。経費計算に使うから」
「あ、アイテムの使用タイミングと『なぜそのタイミングで使ったか?』は報告書に別途記入ね。メモ書き程度でいいけど」
「で、ここが各戦闘それぞれでの報告ね」
「アイテム使用、スキル使用のタイミングが適切かどうか。敵の行動からの最適解とどれだけ離れていたか? とかメモ書きしといて」
「それからこれが今回の異界に関連してそうな技術書のリスト」
「全部読んでからそれぞれの方式と今回の異界化の相違点、類似点をレポートにまとめてあげといて。感想程度で良いからさ」
「じ、慈悲はないのか?」
「え?」
リオの言葉から、リオの中ではこれが特別な事ではないということが伝わってくる。なるほど確かに、戦闘終了後に課題の洗い出しなどを完璧にする事ができれば次の戦闘における課題やより適した戦術の組み立て方の想定など多岐に渡って役に立つだろう! 組織の中でどんな手段が有効か、どんな手法なら被害が大きいかだとかのデータを残すことはこれからの戦いの勝機を高めることだろう!
「やってやろうではないか! より強く正しい己になる為に!」
「あ、ジエンくんが弾けた」
そう勇んだ己はこの日、この世界の人間のポテンシャルの高さと、根本的に己に足りていないモノを学んだ。
足りないのは、基礎学力かッ!
あとがき ドリフの掲示板系のところでジエンくんがでたっぽいので
ジエンくん
実は技研に入ってからの本格的な異界探索は今回が初めて、報告書作成のタスクに心が折れそう。でもめげない。
リオさん
技研が技術書、秘伝書の類を扱う会社であるからか書類周りはものすごく丁寧。
経験を文書化して後続のための資料とすること、文書から技術を学んでそれを血肉とすることは教え込まれ習慣と化している。『姫』の由来はこういう所からもある。
ジエンくんに報告書などのタスクをさせた戦闘時の思考パターンを文書化したものという特級の弱みを握るため……などではなく、ジエンくんが社員扱いを望んでいたから。
ジエンくんが子供として甘えたいのなら甘えて良いように逃げ道を作っているママ活成人女性(のつもり)。本人のナチュラルスパルタン思考とジエンくんの修羅適正のせいでママ活のえちえち系への進展がまるでない。
堕天使パイモン
勘違い系のヤンデレ 27体同時制御とかいう狂った技術のネタは(多分)次回にて