姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝   作:気力♪

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ある日の修行、ある日の銭湯のコト

 学校から帰ると、リオが机に突っ伏して口から魂を露出させていた。漫画の表現のソレでなく実際にMAGが漏れ出している。おそらく幽体離脱という奴だろう。

 

「杏奈、リオはどうしたのだ?」

「試験用の武装COMP握りつぶした修理費で依頼料吹き飛んだんだって。そのせいで新しいゲームを買えなくて、死んでる」

「なんと」

 

 リオの口からは「ばとるおぺれーしょん、せっと、いん*1……」と喚いている。よっぽど堪えているようだ。

 

「リオよ、己が建て替えようか? ゲーム一つ程度なら問題はないぞ」

 

 そう口にすると、リオは言う。

 

『ゲームの購入は、私が汗水流してやった金じゃないと敬意に、失する……ッ!』

 

 話すのは突っ伏している肉体からでなく、霊体の口から。器用な事をするものだ。

 まぁ、その口調や話し方からして未練タラタラであり、なにか一押しがあれば普通に転がりそうな雰囲気はある。

 

 杏奈を見ると、放置を決め込んでいた。面倒臭いと思ったのだろうか? 

 事務員さんを見る。他人の不幸を見てとても朗らかな顔をしていた。

 黒服をやってるタナカとサトーは目で『関わりたくねぇですよ! 罷り間違ったら嫌な絡まれ方するんですから!』と必死で訴えてくる。

 リオの信頼のされ方がよく分かる。有事には頼りになるからこそ、普段の雑さが際立ってしまうのだろう。

 

「ならば、依頼という形ではどうだ? 己に技を教えて欲しいのだ」

 

 その言葉を言うと、魂が肉体に戻ってむくりと顔が上がる。一瞬でシャンとなった。

 

「いや、報酬関係なくやるからねそれくらい。ジエン君は少し私達と距離を空けすぎてない?」

「……ならば贈答品になるな! 訓練を手伝ってくれるのならば、ゲームを己が贈ろう」

「いやだから」

「なので、金が溜まったのなら己にそのゲームを贈ってくれ。リオがそこまで望むゲームというのには興味があるのだ」

 

 そう言うと、リオは頭を悩ませる。

 皆からは『あ、布教活動にかこつけられた』と感心したような目で見てきた。割と話しながら雑に考えた策であるが、割と教えたがりであるリオならばコレは効くだろう。

 

「……分かった。訓練スペース行こっか」

「うむ!」

「で、ジエン君は何を習得したいの?」

「と、そうだった。学校の食堂で話をした先輩からの話なのだが……」

 

 と、掻い摘んで言葉を重ねる。

 

 習得したいスキルというのは、物理スキル。

 

 それも、『力』よりも『技』により強い補正を受けるスキル達*2だ。いくらかの素人検証の結果、同じスキルを持つ悪魔の方が力が高いのにスキルの威力が先輩の方が高かったそうなのだ。

 

 その理由として、スキルを振った時の技量が理由なのではないか? という結論に至ったらしい。

 

 強いところでは『奥義一閃*3』という物理系スキルがコレに当てはまるとシロエwikiで見かけた。他にもちらほら『技』での物理スキルがあると情報を得られたのだった。

 

「おけおけ。それで、欲しいスキルの目星とかある? 私割となんでも扱えるけど」

「単体物理で、できるならデバフ効果などが欲しくはある。だが、そもそも習得できるかどうかが不明なので、スキルの強度については考えていない」

「んー、じゃあ『牙折り*4』あたりかな? 簡単な方だし」

「おお! 攻撃弱体効果であるな! 好きなスキルだぞ」

 

 そう言って、事務所に作っている訓練用異界へと進んでいく。

 

 リオが突っ伏していたことから分かっていたが、仕事はひと段落させていたようだった。リオは割と真面目であるから、大きく休む前には粗方の面倒ごとを片付けていく性質がある。

 素直に見習いたいものだ。

 

「じゃ、始めるよー」

「うむ!」

「じゃあ『技量物理』の牙折りなんだけど、まぁ見てみて」

 

 リオが柱状の訓練用のターゲットにスキルを放つ。とても綺麗に放たれた一撃だった。踏み込みからの力の乗せ方が流れるようで、大した力が入っていないのにすんなりと急所に当たっているように見えた。

 

「『牙折り』の基本は普通の物理攻撃だよ。今のは技量物理スキルの打ち方。コレだとまだ弱体効果は発生しないけどね」

「ふむ……」

「弱体のさせかたは体に叩き込むから、とりあえず基本の撃ち方からね」

 

 とりあえず、やってみる。

 

 技量物理スキルは通常攻撃と異なり腕力にモノを言わせるような事をしない。敵からの妨害があると技が乱れて撃ち方が難しくなりそうだが今は訓練、基礎訓練だ。戦闘中の応用は基本ができてからでいい。

 

 見取った通りに踏み込んで、力の流れを意識し、たんっと一撃を叩き込む。

 

「お、意外とできてる」

「そうなのか?」

「そうそう。もっと力抜くくらいの方が良いかな? 力を入れるのはインパクトの一瞬だけ。それまでは脱力して柔らかく体を使う感じで」

「……一瞬だけ、力を入れる感じ」

 

 再びターゲットを捉える。

 

 踏み込みからの動きを柔らかく、力を抜いた一撃で、インパクトの瞬間に力を込める。

 リオの力の入れ方は、MAGで活性化させるような感覚だった。

 

 すると、ぱしん、としっくりくる音がきた。

 この感じだろうか? 

 

「うわっ、才能の暴力だ」

「この感じなのか」

「そうそう。それじゃあそれをとりあえず一回200本の5セットで。体に覚え込ませるよー」

「心得た!」

 

 ぱしん、ぱしんと一発一発を丁寧に。

 

 すると、次第にヒットした時の音が小さくなっていく。リオに尋ねるも、今は訓練中だと目で言われていく。

 

 ぱしん、ぱしん、ぱしんと重ねていく。

 すると、腕でなく体全体、もっと言えばMAGの方が疲労してきた。肉体の方のダメージは少ない。

 

 198、199! 

 

「にひゃ、くぅ!」

「あと50!」

「ヨシ!」

 

 ヨシと反射で言ったが、全然ヨシではない。MAG疲労が辛く、息が乱れてくる。酸欠になっていく感覚だ。

 

 無駄が多いのだと仮定。同パフォーマンスの中で魔力を小さく刻んでいく。

 

 最小量の割り出しだ。

 幸いにもMAGが辛いが脳に酸素は回っているので思考に澱みはない。撃った結果から必要量を刻んでいけ。

 

「お」

 

 リオが驚嘆の声を出してくる。刻み始めてから十八回ほど、これ以上少なくすると技の完成度が犠牲になると思考は判断した。

 

 ここを、最小量と仮定する。

 

 あとは、呼吸を意識してMAG生成を活性化する。これで回数は問題な「そこ」

 

「ガァッ⁉︎」

「回数こなすことに思考を取られすぎ、打ち込むときに悠長に呼吸なんてしたら気取られるよ」

 

 リオの放った技が己の肩に当たり、ダメージを引き起こす。放たれたのは、牙折りだ。

 

 ヒットの瞬間に敵の(武器)を折るという意思を叩き込むことで、弱体効果を発生させる技だ。

 

 綺麗に放たれたその一撃の軌跡は目の中に残っていき、一つの見本になっていく。

 

『意』を、『情報』を叩き込むこと。それがデバフ物理の感覚だったようだ。今まで沢山喰らってきたが、初めて理解できた。物理スキルの基礎しかやっていないというのに不思議なことだ。

 

 おそらく、リオはわざと隠さず見せているのだろう。実戦での撃ち方とは明確に違ったものだ。正面でこんな素直な意の込め方をされたら呼吸を読んで普通に回避、反撃に移れるのだから。

 

「じゃあ最初から、一回一回に全力で、数打ち込む事が目的じゃないよ」

「ここ、ろえたぁ!」

 

 それから、リオの見せた『牙折り』の撃ち方を模倣して、情報の撃ち込み方を意識して、訓練用ターゲットを攻撃していく。

 

 それが、158回続いた時だった。

 

 バキっと聞き慣れない音がする。

 折れたのはターゲットの根本、積み重ねたダメージが内部に積み重なっていたらしい。

 

「はい休憩5分後再開だよ」

「ハァ、ハァ……了解、した」

 

 呼吸に集中してMAGの回復を試みる。その間リオは折れたターゲットを交換していく。マットに包まれている柱のようなモノであるそれは、内部の芯が鉄筋コンクリートでできていたらしい。

 

 アレを折れたのか……と少し誇らしい気持ちになってくる。

 

 リオが備え付けの機械から柱を取り出して、力尽くで柱を変え、マットを柱に巻いていく。あのマットは見覚えがある。初日に己が眠るときに使ったやつだった。

 

 そんなどうでも良い事を考えながら呼吸を整えていくと、「時間だよ」とリオが言う。

 

 さぁ、頑張るとしよう! 

 


 

 ジエン君の鍛錬を見る。

 

 私が牙折りを叩き込んだのは一回だけ。手本は見せたけれど、あくまで私の手本。ジエン君の撃ち方じゃない。体の構造が人それぞれ違うように、スキルの撃ち方は人それぞれ違うのだから。

 

 だから、習得、習熟までには数日はかかるモノとして見ていた。ジエン君の天才性ならコレくらいだろうと。

 

「158ッ!」

 

 甘く見ていた。ジエン君を。

 この子の戦っていた環境は相当に真っ当じゃない。社会が崩壊して、師匠と呼べる人に長期間教わっていた訳でもなく、悪魔からの囁き(ウィスパー)と先人のテキストデータのみで修行をしてきたのだろう。

 

 それで、あのレベルの銃撃スキルを撃ちまくっていた事を、甘く見ていた。あれほどの召喚術を、戦闘時の呼吸の読み方、崩し方を会得していた事実を、軽んじていた。

 

 天才とは、こういう事なのだろう。

 

 ジエン君の牙折りは、58回目の時点で実戦に耐え得るレベルにまで高まっていた。それから一発ごとに最適化されていって、消費MP量の最小化までやってのけていた。

 

 そして、明らかに『技量物理』そのものに対して完璧に理解をしていた。

 

 技量物理は、スキルの型通りに力を込めて使う普通の物理とは大分違う。力の込め方が問題ではなく、MPで身体能力を活性化するのにそれのパフォーマンスを一瞬の一瞬にしか使わないという意味で。

 

 コツを掴めなければ10年経っても何も身に付かない特殊な撃ち方だ。なんならアカシャアーツなどの特大威力スキルがないから先行きも明るくないので積極的に身につけようとは思われない方式でもある。

 

「コレは……想像以上だよ」

 

 だが、相当に高められた『技』から放たれた技であれば、十分に一戦級の威力へと変貌する。

 

 今回の柱が折れたのは、174回目。

 もう、柱をサンドバッグにしたものでは意味をなさないだろう。

 

「ジエン君、柱が勿体無いからスパーリングに切り替えるよー。実戦での立ち回りも含めてやってこう」

「なんと! ……ヨシ! 近接バスターであるその胸を借りさせてもらおう!」

 

 

 それからのスパーリングにて、私は30分間で四発の直撃を貰う事になった。

 これは、将来が楽しみだ。きっと強くなる。

 

 

 けれどそうして思う修羅の心とは別に、泣き言ひとつ言わなかったジエン君の心の頑丈さが不審に思えてくる。洗脳されたような弱い精神強度ではないけれど、年齢に対して明らかに成熟しすぎている戦士の心に。

 


 

 訓練がひと段落した事で、せっかくなので気持ちよく汗を流そうと銭湯『草津温泉風湯布院』へと向かう。

 

 番頭の司殿に挨拶し、バスター用のMAG認証式ロッカーに装備を入れていく。

 

 そうして液体石鹸『ボディソープ』やら洗髪用石鹸『シャンプー』やらを使って身体を清める、初日に入った風呂では固体石鹸しか分からなかった事が非常に勿体なかったという思う訳である。気持ちが良い。

 

「おや?」

「む……少年か」

 

 湯船に入ると、ツギハギ顔の戦士がいた。

 レベルのほどは30周辺に上昇している。先日レベリングツアーで見かけた男性だった。

 

「失礼する」

「……ああ」

 

 隣に入り、ゆったりと体を休める。湯の温かさが訓練で疲れた身体をほぐしてくれる気がして、とても心地が良い。

 

 そんなとき、ツギハギ殿が声をかけてきた。

 

「少年……その習慣は、いつから?」

「習慣?」

「常に反撃できるように構えているソレだ。湯船の中でも殺し合いに心が残っている」

「むぅ、いつからだろうか? 気が付けば癖になっていた。しかし、湯浴みの場でコレはいささか礼に欠けたな」

「構わん。俺も大差はない」

 

 そう言うツギハギ殿は、掴みから湯船に押し込んで窒息させる動きを想定しているようだ。体重に負け、力は互角程度ならばレベル差関係なく組みつきからの近接戦闘の結果は己が不利だろう。

 

「しかし、何故そのような事を?」

「まぁ、知人たちと君を重ねているだけだ。戦場に心を囚われて、死地に進んで落ちていく様に思えてな」

「む、だいたい当てはまるか」

「自覚しているのか?」

「無論だ。己は戦狂いのイカレであるとはよく言われたし、己自身もそうである事を望んでいた節もある。……今は少し、違うかもしれんがな」

 

 この世界に落ちてリオに連れられてからか、あるいは他のきっかけがあったからか定かではない。ただ、戦い殺すだけの自分では不足しているような気がしている。

 

 それがハンターとして、戦士としての己の生き方を変えるものではないけれど、しかし何も考えないでそこに止まり続けて良い訳がないとは理解できているのだ。頭では、だが。

 

「……ならば、明日のことを考えると良い」

「明日の事か」

「そうだ。遠くの未来でなく、戦いの現在ではなく、明日を。明日は美味いモノを食べようだとか、アニメを見よう、ゲームをしよう、そんな雑多な希望が丁度いい」

 

 その言葉には優しさがある。己が死戦から逃れる気が無いことを理解していて、しかしその死戦を潜り抜けた先のことを考えるように、と。

 

「確かに、明日に美味いラーメンを食べる予定があったならば、死ねないな」

「そうだな」

「もっとも! 己は死ぬ気はないぞ。重ねた者と己は違う。生き残り次の戦いにも赴く事も己の課せられた勤めなのだからな!」

「それは、誰かに押し付けられた事か?」

「違うとも。己の心が、護り戦いたいと願っているのだ。人の命を、皆の未来を良いモノだと信じているのだ。故に、己は生きていて楽しいぞ!」

 

「……そう、か」

 

 それきり、会話は途切れた。しかしツギハギ殿の顔色は良くなり、瞳も柔らかい色に変わっている。

 

 温泉でゆっくりしたが故だろう。さすがナサ殿のところの温泉だ。

 

「……俺はサウナに行く、どうする?」

「さう、な?」

「知らんのか? あちらの部屋でやってる蒸し風呂だ。身体から悪いものが流れ出ていく感覚が心地が良いぞ。心身が整う」

「なんと! それは面白そうだ!」

 

 その日、己はツギハギ殿にサウナの作法を教わった。

 

 サウナそのものには長く入れはしなかったが、しかし身体の悪いものが流れ出る感覚というのは面白く、心地が良い。熱った体を水風呂で冷やすというのもなかなか面白い感覚だった。

 

 次からは、折を見て入っていこう思う次第である。

 


 

 その後ツギハギ殿(本当にそう名乗っていた)と話し、スキルの話になった。するとツギハギ殿はなんと『技量物理』の使い手であるようだった。

 

「なんと驚きだ」

「俺は悪魔からの囁き(ウィスパー)もなしに1日でスキルを習得できたという方が驚きだな。この世界の人間は末恐ろしい……」

「む? その口ぶり、まさか?」

「……知っていたか、俺もドリフという奴になる。……未だに自分がドリフターズというのは、慣れんな」

「ふむ?」

 

 なにやらドリフターズという言葉に違和感があるらしい。己は素直に受け入れられたのだが……

 

「昔のテレビスターにザ・ドリフターズという者たちがいてな。音楽もギャグコントも良いもので、昔に憧れていた」

「あぁ、8時だよ全員集合! というヤツだったな! 己はまだ見ていないが、とても良いモノだと掲示板にて拝見した」

「機会があれば見てみると良い。いささか古いが、面白さは色あせない」

 

「おや、懐かしい話をしているじゃないか」

 

 そうして絡んできたのは番頭の仕事を引き継いで自由になった司殿。その目からは『ドリフを語りたい』という欲望が駄々洩れだった。

 なんだかここにいると面倒な話題に巻き込まれそうなので退散する。

 ちょうどマッサージチェアが開いているのでゆっくりさせて貰おう。

 

「あぁぁあ! マッサージチェア取られてるぅ!」

なにごとかぁ~?」

「超気持ちよさそう!? やっぱめっちゃ良い奴じゃんここの!」

とても良いぞー夢心地だぁ~

「後……3分! わかった、次貰うからね私が! 他の人に譲らないで! 何なら私に声かけてね!」

心得た~

 

 非情に愉快な様子のデビバスも含めて、だんだんと銭湯がにぎやかになってきた。

 みな最低限の武装をして、各自の入浴セットなどを持っている。

 なんというか、愉快な場所になってきたぞ。

 

「危険物はちゃんとロッカーに入れるっすよー。あと戦闘は厳禁っすからね」

「分かってまーす」

 

 そんな中には見知った顔もちらほらと。先日のレベリングツアーの参加者だった者たちが多い。

 

 恐らく参加者の中に宣伝をした人がいたのだろう。マイクロバブルシャワーの魅力に取りつかれた亡者もいるのだろう。

 

「……もう終わってしまっのか」

 

 もう一回起動したい欲望がありつつも、先ほど声をかけてきた女性に場所を譲ろうとする。

 するとそこにはNintendo Switchで何かのゲームを見せびらかしている女性と、それを睨みつけているリオがいた。

 

「マッサージチェア終わったぞー」

「ありがとー少年、今度イイことでもしてあげようか?」

「遠慮するぞ。その手のイイことの後にはロクな目にあわないと聞いている。一時の快楽が欲しいのだったならば漫画やゲームで事足りるしな」

「残念、君を立派なRTA戦士にしてあげようと思ったのに」

「……意外に心が惹かれる話であったぞ」

 

 そんな緩さがある奇妙な場所になっているこの銭湯。これは確かに、一般客が入りづらそうである。まぁ武装用ロッカーの使用には微量のMAGが必要であり、現在MAG価格が高騰中なので儲けにはなっているのだろうとは理解できる。

 

 できるが、他のお客さんが入りやすいように己くらいは自重しようとは思う。できるだけであるが。

 

「んだとコラ、手前やんのか?」

「テメェこそふざけてんじゃねえよ。ぶっ潰されたいみたいだなぁ!」

 

 ガラの悪い男たちがにらみ合う間に入る。しかし二人は止まらずに額を付けるほどに近くなっていた。

 

「揉め事か? 武力衝突ならば介入させて貰う」

「安心しろよ坊主、殺し合いにはならねぇ」

「命よりも大切な、プライドを賭けるわけだからなぁ!」

 

 一人の腕につけられている機械式の盾のようなものと一人の腕につけられている魔術系の盾のようなものが、何かをセットされたことで展開し、羽のようになる。

 

 そして盾から5枚の札を引き抜いた二人は、高らかにこう唱えた

 

「「決闘(デュエル)!!」」

 

 すると、それぞれの手元近くに謎のフィールドが展開してきたそして、わらわらと周囲の人間が集まってくる。

 

 いつもの見世物を見る感覚であった。

 

「な、何だコレは!? 手元に悪魔の、モンスターのヴィジョンが映っているぞ! 力はないが、恐ろしい精巧さだ!?」

「フフフ、これこそが悪魔の世界で進化した新たなデュエル!」

「だがしかし、コイツは俺の魔術方式ディスクを馬鹿にしやがった! ぶっ殺す!」

「ふざけるな時代遅れの俗物が! 完全機械式を侮辱した貴様が先に謝るのが筋だろうよ!」

 

 そんな罵り合いをしながらもカードを触る手つきは丁寧で、互いのカードを触るときには常に一礼してからだった。もしかすると、この者たちは相当に仲がいいのでは? 

 

「あ、チェーン順間違えた」

「ケッ、次は許さねぇぞ!」

 

 互いに腕のモノの羽部分を押し付け合っての戦闘である。だが、腕に着けないでテーブルに置いた方が楽ではなかろうか? 現にお互いに腕がプルプルとしてきている。

 

 そしてそれぞれの盾には精巧な映像を映し出す効果のみであり、互いの盤面を跨ぐような場合にはそれぞれ相談してうまいことやっていた。

 

 熱意も技術もあるのだが、ロマンを突き詰めている結果肝心なところができていないように思えた。

 

「だが! とても格好良いぞ二人とも! 全身全霊を尽くすのだ!」

「「おうよ!」」

 

 盤面のゲームの処理は何一つわからない! だが面白いという事は分かる! 熱いという事は分かる! 

 

「あのー、隅っこか外でやってくんないっすか? 邪魔っす」

 

「「「あ、すいません」」」

 

 そうしてその日遊戯王をはじめいくつかのカードゲームを教えてもらった己だった。スキルといいサウナといい、本当に学びの多い一日だった。

 

 

 

 

 そして、こうやって紡いだ絆があれば、情報が入ってくるのも早くなる。

 

 突如として異常な技量に目覚めた人物についての興味深い話が入ってきた。

 

 チンピラ崩れのアリヅカという男が、突如としてレベルを10ほど上げて一流に踏み入れたらしい。

 それはちょうどセプテントリオン『アリオト』『フェクダ』のやってきた時期と一致する。とすればそれは漂流者がバシバシ現れる時期と同時であり、己のシェルターからの干渉がこの時あったとしてもおかしくない。

 

『アリヅカ』を調べること。それが次の手掛かりとなるだろう。さぁ、頑張ろう。

 


 

 ジエンくん

 ガチの天才。

 天才なので技量物理もパパっと覚えるし、天才なのでサウナの気持ち良さを学ぶし、天才なので決闘者に憧れる。だけどコンマイ語を習得した結果国語の成績が若干落ちた。異種言語だからね、しょうがないね。

 

 ツギハギさん

 サウナ好きのオッサン。奥義一閃を実戦レベルで振り回せるので、即死効果で格上の雑魚を狩りまくってレベルを爆上げした。気になることは多々あるけど、ジエンくんが幸せそうなので構わないかと流した。

 銭湯にドはまりしている。

 

 謎のデュエリスト2名

 デュエルディスク試作型をそれぞれ完成させて見せびらかしに持ってきたら、同日に被っていらい犬猿の仲に。それまではあんなに遊戯王の話で盛り上がっていたのに……

 それぞれ細かくアップデートしながら自分がマウント取るために頑張っている。

 大声でやり合うのは迷惑だが、それはそれとしてブラマジだのサイバースだのが動き回っているのは面白いので見世物にはなっている。なお、お互いのディスクの操作が基本的に全手動であることはあまり知られていない。

 

*1
ロックマンエグゼアドバンスドコレクション 絶賛発売中! 

*2
真4無印において、物理攻撃スキルへの影響度は『力』より『技』の方が高い。なので割と『力』が死にステになっている

*3
真4無印 敵全体に物理攻撃中ダメージ 確率で即死を付与

*4
敵単体に物理属性小ダメージ 攻撃力を1段階弱体化




ちょいと短めなお話でした。
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