姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝 作:気力♪
今回任された依頼の共同相手として、ムラカミ殿がやってきた。
「フッ、早かったな」
「いや集合時間ちょうどだから。むしろアンタが遅刻ギリギリなの見たからね」
「声をかけようとしたのだが、早足で行かれてしまってな」
「……フッ」
「意味深に笑えば誤魔化せると思ってるの割とダメなところだと思うわよ?」
リオがザクザクと言葉のナイフを投げつける。それを受けたムラカミ殿は若干傷ついているようで、顔が引き攣っていた。
「ひとまず合流は出来たわけだな。依頼内容の最終確認は車内でか? それともどこか店にでも入るか?」
「それならば、あそこのマクドナルドはどうだ?」
「え、マック行くならバーキン行きたいんだけど。一本向こうにあるじゃん」
「ハッピーセットのおもちゃを集めている」
「──ジエンくん、今日はハッピーセットでいいよね?」
「……うむ? ハッピーセットとはなんだ? ハピルマと何かのコンビネーション……ではないな、食事の話をしているのだし」
そう疑問を投げかけると、ムラカミ殿はすんなりと答えてくれた。
「マクドナルドにおける少量のセットメニューだ。メイン一つ、サイドメニュー一つ、ドリンクのセットに加えて一つのおもちゃなどがおまけで付いてくる」
「ふむ……なるほど、子供用メニューなのだな。そして、そのおもちゃには夢や浪漫があり、大人達も買い集めているのか」
「その通りだ」
「承知した。己もハッピーセットとやらに異存はない。おもちゃの類を求めてはいないので、それも譲ろう」
「感謝する」
「どうでも良いけどムラカミとジエンくんの口調ってなんか時代錯誤よね。会話切り取って時代劇のワンシーンって書いたら10人くるい騙せそう」
「ハッピーセットの話題では無理があるぞ」
そんな事を言いつつ、店舗の中に入る。
なんでも『モバイルオーダー』というシステムがあるらしく、スマホにて注文を送信すれば並んで受付の店員殿に話す必要はないらしい。
「はい、3マッカ」
「二人分のセットでコレとは、円の価値の暴落は甚だしいな」
「マッカの価値が高まったのではないか? こう、円安でなくマッカ高みたいな」
「マッカの価値が高まったから、相対的に円の価値が減ったように見えたって奴ね。社会の授業でならったの?」
「いや、食堂にて話した先輩の友人に円やドルなどの海外通貨とマッカの価値の差を使って荒稼ぎしている者がいるらしくてな。少し話を聞いたのだ」
「……面白そうな話だな」
「そう思って頑張って聞いたのだが、正直ちんぷんかんぷんだったぞ。マッカが通貨として強いのはマッカ自体に価値があるからだ! というのは理解できたがな」
「うん、そういう通貨の考え方は金本位制って言うのさ。こっち業界だとマッカ本位制かな? 通貨の価値の保証を通貨で得られる物質の価値によって保証させるやり方ね」
「金本位制であれば金の量という通貨の発行限界があるが、マッカであればそれもない。マッカ本位制の経済が強い理由はそこにある」
「うむ。そこは理解できている」
分からないのは、円やドルといった国だとかが発行している通貨の事である。
国の強さが通貨の価値を決めているのだ! というなんとなくの理解であれば一ドルは一円より130倍強いという事になってしまう。大統領マイケル・ウィルソンJr.率いるアメリカ合衆国という強い集団であっても130倍のパワーの差があるとはあんまり納得できていないのだ。
というのを話すと二人には笑われた。ガッツリと。
「一ドルってのは日本で言う所の百円玉みたいなものなんだよ。向こうではセントっていうドルの下の通貨があるんだよ……ッ!」
「130倍パワーの、通貨……ッ!」
「そこまで笑わなくても良いではないか!」
そうこうしているとモバイルオーダーの注文が完了した! というのが上方のディスプレイに現れる。3人で3つのトレーを受け取り、袋に包まれたおもちゃを受け取る。
袋の中に何が入っているのかは分からない。これは、ガチャというギャンブルなのだな?
黒服のサトー殿の発狂している様から、ガチャとは闘技場だとかカードだとかの賭博行為によく似ているのは知っている。のめり込みすぎて財産全てを投げ打たないように注意しなくては。
「おお! ミニカーだな!」
「へぇ、チープだけどよくできてる。やっぱハッピーセットは侮れないわね」
袋を開けて、ちょっと遊ばせてもらってからムラカミ殿に渡す。3つのおもちゃを収集できたムラカミどのはちょっとだけホクホクとした表情になっている。
どうにも、ムラカミ殿は意外と表情に出るタイプのようだ。
「それで、アホほど脱線したけど依頼内容分かってるわよね?」
リオがCOMPを使ってささっと防諜用の結界を張る。ムラカミ殿が目を見開いたことから、実はそこそこすごいものだったらしい。
「じゃ、まず確認ね。蠱毒皿の在庫は?」
「6個だ」
「私が4個で」
「己は2個だ。仲魔にマハムドオンを使える者はいるが、ダメージタイプで即死はニヤリ時のみのものだな」
「……ギリギリ、足りるか?」
「ギリッギリよねぇ」
「ヤタガラスからの情報では、昔にあった四天王の館*1という異界と出現パターンが似ているとあった。ゆえに妖魔テングLV52や闘鬼ヤクシャLV52が複数体現れるとの事だな。……それだけなら問題はないが」
「いやまさか、最低がそのレベルってんだからねぇ……」
「本来の四天王の館ではLV30の闘鬼ヤクシニーどが現れたらしいが」
「うむ。闘鬼、妖鬼、邪鬼、妖魔の4種が最低52レベルで現れる異界らしいな。掲示板での話ゆえに話半分だろうが、メシア系の組織が異界を乗っ取ろうとして返り討ちにあったと聞く」
「あと、魔法のファストアクション*2。敵の魔法の出が早すぎて物理で対応できないとか。先手マハムドオン放ってくるギリメカラとか確認できてるそうよ」
「……それほどの異界を、フリーランスに任せるのか。ヤタガラスもギリギリだな」
「己達が信用を得られた、という考えもできるぞ。最前線に張り付いていない者共の中で、人に仇なす人間ではないと」
「普通に首が回ってないだけだと思うわよ。COMP職人やってる奴の話だと、内ゲバやってる余裕なんかねぇバーカ! って感じの声*3が通信室から響きまくってるらしいから」
「分からんでもないな。この有事において勢力を強める道は仕事を全うする中にしかない。自力だけあっても世界が滅べば無意味だし、脅威のレベルを考えればどこぞに引きこもり逃げるなど不可能だ」
「逃げ出しても次の周回とかでさらなる地獄に引っ掛けられるってのはドリフの皆が証明してくれるわけで、アリに逃げるのも意味がない。うん、こうして事実並べるとキツいことキツいこと」
「うむ。逃げれば一つ、進めば二つ、止まればオルガだったな。結局頑張るしかないのだ」
「いや、どこのネットミーム拾ってるのさ。団長はもう結構古いネタよ?」
「そうなのか?」
という雑な話で話題がズレる。
もきゅもきゅとサイドメニューに頼んだポテトを食べて一息。うん、美味しい。
「で、傾向として呪殺無効がないらしいから危険な敵は即呪う感じで方針立てたけど、そっちで追加の情報とかある?」
「異界内部に放った使い魔は、妖魔テング以外の悪魔を確認できなかった。入り口周辺はテングのテリトリーのようだな」
「ふむ、このレベル帯のテングはシバブー*4、マハザンマ*5、羽ばたき*6を用いる悪魔で緊縛と破魔に強いようだ。防具を衝撃耐性のものにするべきだろうか?」
「アクセサリーなどの切り替えが楽なもので衝撃を対策できるなら構わん。だが基本は呪殺対策をメインにしろ」
「心得た」
などといいつつもできることは少ない。なにせ手持ちの装備などは粗方売り払ってしまったのだから。せいぜいがリオが買った安めのアクセサリーくらい。
呪殺に関してはホムンクルス*7などの身代わりアイテムは少量あるので、それでなんとかする。
「まぁ、基本は私とムラカミの2トップで行くわよ。ムラカミ程度の速度域なら私は合わせられるわ」
「己の役回りは周辺警戒、支援とパーティMPリカバリ*8の起動だな。全回復とはいかないが、チャクラウォーク程度の回復量なら付与できる」
「任せろ。俺の力を見せてやる。せいぜい付いてくるといい」
「どうでも良いけど、雑魚共とか言わないのね」
「……共同相手だぞ? 貶めてどうする」
集合場所から車で20分ほど。小山の中にその異界は発生した。
異界の仮称は『天狗修練場』。主な悪魔として出てきたのはテングだかららしい。まぁ、ギリメカラだのハヌマーンだのの強敵が混ざっているのだけれども。
森に入り、異界内部に足を踏み入れたと感じた瞬間に奇襲がやってくる。
テングが6体。一瞬の躊躇いもなく放たれたマハザンマが6発。話に聞いていたが、魔法の出が異常に早い。
「だが、何故ダイン級でないのだ?」
「ダイン級を使えないから*9じゃない? たまに強いのに中級魔法しか使えないのいるし」
「%耐性を持っている悪魔にはその傾向が強いな」
まぁ、当然に防ぐのであるが。
リオと己の防ぎ方はアクセサリーを利用してのもの。『孔雀色の蝶ネクタイ*10』には衝撃、銃撃見切りのスキルが封じられており、驚くほどにマハザンマの軌道が視認できる。
意識の外からならばともかく、敵意を感知している状態からならば最小限のダメージで済ませるのは可能だ。被弾したのは6発のうち一発。ザンマのダメージであるから、軽傷だ。
ムラカミ殿は素で持っている吸収耐性で受け止めている。
衝撃魔法の最上級を振り回せる実力者であるのだから当然ではあるが、衝撃魔法への耐性があるらしい。
「邪魔だよ」
「堕ちろ、雑魚ども!」
そして、リオとムラカミ殿が敵方の動きの切れ目を見て高速戦闘を開始。リオの放つ『千烈突き』と『麻痺追加』が3体のテングを地面に落とし、ムラカミどのの『刹那五月雨撃ち』が2体のテングを蜂の巣にする。
一体がまだ無傷で動けるような動きを見せたので、己が割り込む。
「ロキ、『ブフダイン』」
ロキを召喚して即魔法を打ち、即時に格納。一瞬しか展開しない事により消費MAGを節約する技術だ。今回はサポーターなので、余力を残しておきたい。
ロキが高い魔力と氷結ギガプレロマを重ねて放ったブフダインは、無傷だったテングに致命傷を与える。うむ、良い感じの仲魔だ。
そうして残りは麻痺効果にて呻いている天狗だけ。ささっと『ファンド』にてマッカを奪おう、とした段階で次の奇襲が起きる。
「堕ちろニンゲン共! マハムドオン!」
レベル62の『邪鬼ギリメカラ』。霊格の洗練を見るにある程度低いレベルにて顕現し、レベルが上がった類だろう。
マハムドオンは死ぬ気で回避。受けたら死ぬ。
リオとムラカミ殿がは装備の耐性で受け止めて反撃に移ろうとしているが、そこに追撃がやってくる。敵は『妖魔ハヌマーンLV64』。
『マハタルンダ』によって攻撃力を下げてくる。そして2体目以降のハヌマーンが放つのは『デスバウンド』。
ハヌマーンの数は4体。デスバウンドを放ったのは3匹であり、敵方の上振れもあって全体中ダメージの物理は五発放たれる。
「不意打ちが連動してる! 組織戦慣れてるねコレ!」
「偵察への情報は囮だったか!」
「緊急展開! 壁になれ!」
その5発のデスバウンドを、召喚して盾にしたファフニールに受け止めさせる。
ファフニールの身体は大きく、方向がある程度定まっているのならその肉体で受け止めてくれる。しかしながら87.5%の耐性では受け止めきれず、四発目で砕け散り、五発目は己達に直撃する。
厳しい事に、クリティカルで。
しかし、追撃がない。
「敵悪魔は集団戦メインだよ! クリティカルに乗って来れない! 動きが速いけど重い!」
「ならば、どうとでも! 『獣の眼光』!」
敵がクリティカルに乗って来ない。つまりこちらのミスに反応する動きの良さがないと分かってムラカミ殿が発動型の眼光を切る。
2回分の半手の行動回数が増える。
「『スマイルチャージ』『マハザンダイン』!」
敵全体に必中かつクリティカルの衝撃魔法が入る。
ギリメカラにもハヌマーンにも命中。クリティカルヒットによって半手分リオの動きが軽くなる。そこで差し込まれたのが『風龍撃』先程のマハザンダインが等倍で入ったギリメカラに追撃をかけて撃破。続けて放った『千烈突き』にて残ったハヌマーン達も撃破。
次を警戒して『メディラマ』にて消耗を回復、ソロネを召喚して『サマリカーム』にてファフニールを回復させる。
「第一陣は終わったか?」
「テングLV52が6体、ハヌマーンLV64が4体、ギリメカラLV61が一体と。歓迎が豪勢だね」
「死体からのアナライズが出た。弱点のないタイプのギリメカラ*11だな。衝撃、火炎が100通るだけだ。他は%耐性で75になる」
「あ、やっぱりか。破魔が37.5で呪殺75だよね。蠱毒皿対処は若干危ない感じかな?」
「バッドステータスはどうだ? 弱点はないだろうか?」
「んー、魔力神経緊縛全部100通るみたい。複数来たらジエンくんバステお願い」
「承知した」
死体からのアナライズにて対処方針を練る。
邪鬼ギリメカラに魔法弱点がない以上、奴への対策をメインに据えて動く必要がある。
主力の一人であるリオは物理反射持ちがいる場合だと明らかに戦力が低下する。複数攻撃、全体攻撃の際に引っかかる為、中ダメージまでしか伸びない龍撃系*12を使うしかないからだ。
ギリメカラのHPはおおよそダイン級2発程度。1体ならともかく、複数で出てくればいずれ大変な事になるだろう。
「うん、共同依頼で良かったよ今回」
「同意する。単身で乗り込むにはあまりにも事故率が高い」
「回復を切らさず、マハザンマ以外の先手も打たせず、丁寧に、だな」
尚今回の依頼は己達からヤタガラスに言ったとか、ムラカミ殿が己達を誘ったとかではなく、完全に偶然として共同依頼の相手だったのであったりする。
警戒しつつ進む。
ソロネを召喚したことで己も消耗するようになった。それは若干のマイナスであるが全滅するよかマシである。
と言いたいが、召喚を維持するMAGの消耗の厳しいこと厳しいこと。自力で維持はできるので緊急時に悪魔が使えないということはないが、MAG貯金が目に見えてすり減っていくのはなかなか怖いものがある。
強い悪魔作った際の、当たり前のデメリットだった。
正直合体で強い悪魔を作ることに考えを割きすぎて、便利な悪魔、軽い悪魔が手持ちから居なくなっていたのは痛手であった。考えなしだった。
だが、本格的に合体をした後毎回コレを思っているのでほぼ間違いなくまたやるだろう、うん。
「正面にダークゾーン、右手にワープあり。やらしい作り」
「外れだろうが、ワープゾーンから行くことを提案する。オートマッピングで先の道が見えるかもしれん」
「分かった。偵察には俺の使い魔を出す。戦闘にはレベルが足りないが、足回りは良い」
そう言ってムラカミ殿が召喚したのは『妖精ナジャ』。合体によってトラポート、トラエスト、トラフーリを継承しているとのこと。
「フフフ、よろしくねジエンくん、リオ」
「よろしく頼むぞ!」
「コイツ私のこと若干舐めてない?」
転送先にナジャが行き、即座に戻ってくる。手元にはOKのサイン。なんとでもなるだろう。
転送先を偵察する。四方に道があるが、進む道はない。移動床が敷き詰められているからだ。どこかで移動床を踏めば、この部屋に放り込まれてしまうらしい。
「懲罰部屋だね」
「周辺に道は見えたなかったが、移動床の配置は記録した。注意していくぞ」
「自前でマッパー*13使えるのはやっぱ強いよねぇ。ネオクリア*14だと情報が二次元だから」
「見晴らしの玉*15となどでの感覚らしいな。立体の情報だから迷いにくいと聞いている」
「安心しろ。マッパーがあっても迷う時は迷う。転送やらが絡むと特にな」
「それ安心できないから」
すこし戻り、ダークゾーンに侵入。
この際、一時的に全力戦闘の準備をする。不意打ちからの移動床で離れ離れというのがありうるからだ。
外周には己の仲魔を配置して、主力の消耗を避ける。前にファフニール、後ろにコウモクテン、己の側にマスターテリオンだ。デカい身体で壁にするつもりであった。
『暗殺拳』
| 暗殺拳 | 物理スキル | 敵単体に物理属性高威力攻撃。仲魔の防御効果を無視する |
|---|
「ガハッ⁉︎」
「嘘でしょ抜けられた⁉︎」
「相変わらず役に立たんな百太郎は!」
しかし、あっさりと警戒網を抜けられた。眼前に悪魔の姿形は確認できない。まだ敵を捉えられていないらしい。
ダークゾーンという環境の悪さ、仲魔に警戒を任せていたという慢心、その全てが敵を見損ねるという失態をやらかした原因だろう。
しかも、腕の感覚からいって何かしらの状態異常効果がありそうだった。レジストはできたが、耐性のない相性のもの。
リオの追加系スキルと同じ感覚だった。万能属性状態異常か?
という事でデータから逆算。暗殺拳と追加効果という2つのスキルをベースにした悪魔となると限られる。
敵は、『
レベルは未確認だが、敵がヨモツイクサだと脳内で認識した瞬間に視界の中に三角頭が入り込む
二手目動いてる最中だったなこのやろう!
| 防御 | 基本行動 | 敵からのダメージを軽減する*16 |
|---|
ガードをする事でダメージを軽減。バステの追加は発生しない。運の上振れだ!
「敵はヨモツイクサ! 暗殺拳に石化付与があるぞ!」
「ディストーン、アムリタ準備!」
「奇襲がコレで終わるものか! 次が来るぞ!」
「ならば引くか⁉︎」
「一手にて殲滅する!」
宣言通りに抜き打ちの『ザンダイン』が放たれた。アンノウン状態から実体が定まったヨモツイクサはモロに衝撃魔法を被弾する。しかし思いの外に耐えて見せた。通りの良さからして、弱点だったにも関わらず。
アナライズでのレベルは60台だが、ベースレベルは40程度のはず。特化型70レベルの魔法を弱点で受ければ落ちるのが普通だろう。
相当なステータス強化か、活泉系のスキルか、そのあたりがあると見た。
だがダメージは確かにある。
「そこ!」
弱点に被弾して体が揺らいだところにリオが『マッドアサルト』にて追撃。ヨモツイクサは胴と頭が別れて散った。
そのリオに対して暗闇からハヌマーンが飛びかかる。猿のような軽快さで、リオの首を取りに。
「やらせんとも!」
飛び出てきたハヌマーンは3体。相変わらずのダークゾーンを用いての奇襲である。ヨモツイクサの奇襲は、次の奇襲への警戒リソースを割くのに十分な効力があったらしい。
ただ、リオがあえて踏み込んだ事で敵の狙いは読みやすくなった。カバーを入れる事は可能だ。ちょうど、ファフニールとコウモクテンを警戒に使っていたのだから。
2体のハヌマーンから放たれたのはトンボ蹴り*17というスキル。必ずクリティカルになる恐ろしい技だ。
「ッ!」
二人のハヌマーンがトンボ蹴りによってファフニール、コウモクテンに一撃を与える。それによって動きが止まった2体は三手目、本命からリオを守る盾にはならない。
| ブレイブザッパー | 物理スキル | 敵単体に斬撃属性特大ダメージ ペルソナ |
|---|
| 猛反撃 | 自動効果スキル | 物理攻撃を受けた時、確率で中威力の反撃を行う |
|---|
リオが大技を受け、その反撃をハヌマーンに当てる。
ダイン級の火力に思えたが、それでもまだハヌマーンは耐えてしまっている。
個体差はあるだろうが、下手をすればダイン級三発でも生き延びかねない。
「使うぞ!」
リオが頷く前にアイテム『蠱毒皿』を使用する。敵3から5体を呪い殺す呪詛のアイテム。蠱毒によって発生した濃縮された呪いの塊を使用するもので、即死タイプのムドオンの効果を持つ。
そうして己がハヌマーンを呪殺した事で一瞬のインターバルができる。ムラカミ殿はスマイルチャージ、リオは宝玉輪にて全体回復。
そして、次の敵が来る。
妖魔テングが6体、邪鬼ギリメカラが4体。
奇襲はされていないが、先手は取られた。やはりあのテングども、魔法を使う時に異常に早く動いている。
『マハザンマ』
「無効耐性まで伸ばすべきだったな!」
「全部良ければ問題ないけど、いつか事故りそう!」
アクセサリーの『衝撃見切り』と戦闘経験のみで回避を続けるのは若干の無理があったか? 敵を甘く見ていたか。
リオと己は1被弾。ムラカミ殿は吸収耐性で受け止めてノーダメージ。
続いてギリメカラ達の動き。マハムドオン連打かと思いきや、まさかの物理系の動き方だった。動き出しが重たく、遅い。
先手は貰った!
「『パニックボイス*18』!」
敵全体に対して己の声が響きその魂を乱す。
ギリメカラは混乱に無耐性である。また、テングは緊縛属性*19を25%まで軽減する強い耐性を持つ。だが己の使うパニックボイスは
大別すれば『精神状態異常』であるらしい己のコレは、精神でも神経でも緊縛でもなく混乱属性なのだ。
よくわからないが、そういうものらしい。
「ヒットはテング4、ギリメカラ3!」
「無傷のギリメカラからだ! トドメは任せた!」
「このテングども、なんで衝撃に耐性ないのかしらね!」
「知るか!」
ムラカミ殿が加算タイプの『獣の眼光*20』を起こしながら、マハザンダイン*21を解き放つ。先程のチャージにてニヤリ*22と魂を震わせていたが故に、威力は十分にあった。
「強めの万能物理が欲しいわね。バイパースマッシュ*23とかの」
などとぼやきながら放たれたのは『風龍撃*24』。高い力から放たれた一発はギリメカラへ大ダメージを与える。
致命打には、一つ足りないが。
「コウモクテン!」
『アギダイン』
継承によって獲得していたコウモクテンのアギダインがギリメカラの命を奪う。75%耐性に適正+2のジオダインを放つのと、無耐性に適正0のアギダインを当てるのとどちらが良いのか、一瞬悩みはしたが。
念の為カバー要員としてマスターテリオンは待機。ファフニールには『マカラカーン*25』を発動させる。毒ガスブレス*26なら有効打になるが、ムラカミ殿のマハザンダインで散らせる以上意味はあまりない。
敵の動きが始まる
ギリメカラは全員が全員ボーッとして手番が飛ぶ。
テングの中で動けるものはいない。先程マハザンマを放ったのだから。
そして、次のターンになる。
混乱していないテングの2体が動き出そうとする。が、魔法でないのか動き出しが重たい。このタイミングなら差し込める
「動かしてなるものか!」
敵全体に電撃が迸る。
コウモクテンの魔力、技は低いため火力自体はそれほどにならないが、ご存知の通り麻痺の追加は確定だ。
テングは62.5%に軽減するし、ギリメカラは75%に軽減するのもあってまぁ火力はしょっぱい。
だが、そこは問題にはならないのだ。
「マハザンダイン!」
ムラカミ殿が放つ二発目のマハザンダインにて、敵は全滅する。どうにかなったようだ。
このように全力戦闘を行いながら少しずつ前に進む。エンカウント率は低いが、一度のエンカウントで戦闘が連続しがちになる。なかなかに厳しい。勧誘して会話対処できるようにしようともしたが、まともな会話にならずスカウトまで繋がらない。
このように苦戦しながらダークゾーンと移動床のコンボを潜り抜けたら、広い場所に出た。
四方に道が伸び、それぞれが何処か新しい場所に繋がっていそうな通路にはそれぞれにテングが4体、ギリメカラが2体、ハヌマーンが2体に『邪神トウテツ』が1体いた。
新顔の悪魔か? と思ったその時、信じられない距離から攻撃を仕掛けてくる。4つの通路からの射線が交わるのは、このダークゾーンからの出口。
そして、ダークゾーンから出た時の道は移動床! 退路はないッ!
「十字砲火だとッ!」
「やばいやばい洒落にならない! あのテング共三味線引いてやがった!」
先手に動いたトウコツが発動したスキルは『貫く風の闘気*28』。味方全体の衝撃属性に貫通効果を付与するもの。
トウコツそれぞれが味方のテング集に貫通効果を付与し、力を受けたテングが『マハザンダイン』を解き放つ。
射程距離が明らかに長いのは、狙撃系の能力だろう。
あれは、『混沌の息吹*29』か? 戦闘開始までの射程を4倍に増やすが、追撃や二発目が遅くなるスキル。
引き込んで、反撃されない距離から、一方的に、連射する。
ちょっと呆れるほどに有効な戦術が過ぎている。
「……ガハッ!」
「これはまずいでしょ!」
「耐性装備だったら死んでいたな!」
「実際ムラカミ死んだしね!」
リオと己が被弾したマハザンダインは三発だけ。『衝撃見切り』さんが上振れまくった結果だ。
16分の3発とか信じられない。もしかしたら、狙撃距離であるからというのもあるかもしれないが。
リオがムラカミの死体を拾ったのを確認してから『トラフーリストーン*30』を起動。ガン逃げである。
そうして射程距離から離れてからムラカミ殿を蘇生、『非常口*31』にてダンジョンからの脱出をする。
脱出が成功する直前、遠距離からのマハザンダインが己達に飛んできているのが見えた。
間一髪のギリギリセーフであった。
「撤退完了か?」
「ムラカミ、指とかどっか落としてない?」
「蘇生は完全に成功している。問題はない」
「……いや問題だらけでしょ。なにあの地獄の十字砲火。全部避けろっての?」
「あのタイプの貫通はマカラカーンですら防げぬからな。どうしよう」
「悪魔連中を壁にするのは?」
「4体4チームで16発のマハザンダインだ。己の仲魔では2〜3発程度しか耐えん。あの射線であるなら壁は2枚なければ全員隠れることはできないので、仲魔が最低10体は必要になる。仲魔の数も召喚速度も足りないな」
「これは、作戦を練り直す必要があるな」
「しゃーなし、一時撤退ね」
「同意する。だが、考えてどうにかなる問題か? 貫通効果のマハザンダインを防ぐとなると%耐性の仲魔を盾にする程度しか思いつかん」
停めている車に戻って各々調べ物。
キリギリスに情報を流したり、シロエwikiなどを確認したりだ。
その結果として理解できたのはいくつか。
アナライズのメイン画面に発生する耐性は、貫通の対象になるということ。大体の装備の耐性だとかは『何かの耐性がある』という門のようなものらしく、貫通はそれを無効がする通行権のようなものだ。
だが、通行権があっても道が険しかった場合は100の力が通らない。これが数値耐性。
他にも様々な説があるが、ひとまずこの説が今回は扱いやすい。
要は、中身で勝負できる奴が必要なのだ。
「あの16連打、ヤクトシリーズの75%耐性と防御を合わせれば何発受けられる?」
「俺と琴葉の体力はそう変わらん以上、ガードに専念すれば5〜6発だろう。お前は反撃する必要があるからノーガード。何発耐えられる?」
「正直、三発いくかという所だな」
「ならば、二、三体悪魔を壁にすればいけそうだな」
「だが、そうなると集団が4つに分かれているのが厳しい。一つの集団をバステで無力化できても、他集団は無理だ」
「まぁ、今回生き残ったのは割と運の上振れだもんね。普通見切りついててもあんな数は躱せないから」
「ああ。見切りのお陰で避けやすいと思ったが、それにしたって限界はある」
「そうか? お前達は二人とも完全に技を見切っているように見えたぞ」
「まぁ、いつもよりなんか避けやすかった感じはあったかも。魔法の出こそ早いけどみんな同じような軌道で飛んできてたし」
「訓練を受けていたのではないか? 早撃ちのやり方を学んだが故に同じようなやり方で魔法を放つようになったとか」
「訓練か」
「んー、経験を持った悪魔を複製してて、まだ個体差が生まれてないとか?」
「悪魔の複製という線はありそうだ。出現する悪魔のレパートリーの少なさも悪魔生産ラインが限られているからとすれば納得はできる」
「同一のルーツを持った悪魔の異界かぁ……」
「個体差がないなら、インフルエンザで滅びそうだな。抗体の違いがない」
「インフルエンザ?」
「まぁ、ひどい風邪みたいなものかな? 感染力が高くて、一度かかって抗体を持ってる人じゃないと最悪死ぬかもしれないってくらいの」
「……風邪か」
ひとつ、試してみたいことができた。
敵悪魔の出現パターンはテング、ギリメカラ、ハヌマーンがメイン。トウコツ、ヨモツイクサが少数いたくらいだ。
まぁトウコツが貫く風の闘気を持っていた以上なんらかのカスタマイズはあるかもしれんが、その時は普通に攻略すれば良いだけのこと。
その日は、もう一度異界の中に突入して軽い偵察と仕込みをして撤退となった。
翌日
異界の膨張率から考えてタイムリミットはもう少しある段階である。あと二週間は大きな脅威にならないだろう。
ムラカミ殿と交渉してファフニールを強化する御霊を譲ってもらったりもした。
御霊にあった3分の活泉をファフニールに装填し、ムラカミ殿のアクセサリーも『衝撃見切り』の効果のあるものに変更したのを確認し、準備完了。
今回の目的は十字砲火エリアより前のマッピング、および『スクカジャ最大値で突入して気合いで避けまくる作戦』のテストである。
「んじゃあ、手順確認ね。ムラカミのマハスクカジャとジエンくんとこのクイーンメイブのスクカジャ、あとは『コレ』で使える『殺気』の3種スクカジャで回避率を爆上げする。先鋒は私で次がムラカミ、ジエンくんが3番手だけど陣形よりも自分たちが自由に動けることを優先。チームプレイよりスタンドプレー寄りの動きよ」
「任せてくれ!」
「スタンドプレーの集合によるチームワークか。やはり良いスタンスだな」
「うむ!とても含蓄のある言葉だ!ハグレモノである己たちには良く似合う!」
「少年は、攻殻を、知らぬのか?」
「未履修の作品多いからねぇ。割とレゲーに流れがちだからアニメとか漫画とかはまちまちみたいよ?」
「……是非とも攻殻を進めてくれ。ハイセンスな描写の数々はきっと心を豊かにする」
そこそこの準備をしつつさっそく異界内部に。
天狗修練場の異界内部の空気は、昨日よりもピリついているようだ。
前回侵入したときにテングの奇襲があった所を見ると、そこには明らかに
『風邪』のバッドステータス*32にかかっているがゆえにだ
ポムズディやアムリタを持っている悪魔が混ざっていたのならこうはならなかっただろうに、という感想が出てくる。罠かもしれないが、うまくいって良かったという所だ。
「話には聞いていたが、風邪は体内のMAG調整で排出できない*33のか……」
「うむ。それと、風邪の悪魔を合体素材にすると事故率が高まる*34ぞ。具体的にどのくらいか? は不明だがな」
「で、近くのヤツが動いた時に伝染する可能性がある*35、と」
「
テング集、ハヌマーン部隊、ギリメカラ連隊、暗殺系ヨモツイクサが散発的に飛んでくる。
魔法の早撃ちは相変わらずだが、どいつもこいつも風邪で火力が低下している*36ので火力面での脅威度が消えている。どうにもダイン級を打てるのはあの十字砲火エリアのテング達だけのようで、他のテングは『マハザンマ』のみ。普通に対処可能だ。
「……しかし、これほどまでの感染爆発が何故起きた?」
「敵が異界内部の悪魔行動をシステマチックにし過ぎたからかもね。お前はここで待ち伏せだーとか警備の為に歩き回れーとか。自分自身に変調が起きてもそれに対処する事ができてない。自己判断力が欠如してるからね」
「ふむ。集団を単一の方向性に訓練したが故にか?」
「……ここまで単調だと、やはり訓練ではなく複製だな。風邪状態での技の鈍り方すらパターンが見えてくる。お前や琴葉なら数日で全てのパターンを見切れるだろうよ」
「あ、ちょっと舐めてるねムラカミ。もう見切ってるよ。私もジエンくんも」
「見切れている事と回避が可能かどうかはまた別なのだ。当然だがな」
「……そんなものか」
そんな会話ながらも着々と探索を続けていく。ダークゾーン前でのマッピングは完了。抜け道はなし。
ダークゾーン内部のマッピングも完了。先に進む道は一つだけ。迂回路はなく、ハズレルートは全て懲罰部屋への移動床だった。
どう足掻いても十字砲火エリアは通らなくてならないようである。
「補助をかけるぞ。『マハ・スクカジャ*37』!」
「お願いよ武装COMPくん! 『殺気*38』!」
「クイーンメイブ、加護を寄越せ!」『スクカジャ*39』
違う方式3種のカジャが己達にかかる。
体が風のように軽く、軽やかだ。
移動床での前進の勢いを殺さずに、突撃開始。
先手のリオが踏み込んだと同時に、4体の邪神トウコツがその力を発動。『混沌の息吹』により攻撃射程が4倍に延長される。
リオが狙いを定められないようにフェイントをかけつつ疾走。狙いは1番左の通路のようだ。
4つの通路それぞれから狙撃チームが襲ってくる。放たれる魔法はマハザンダイン。妖魔テングの早撃ち魔法だ。
まず一射目の四発。それぞれの通路から一発ずつだ。しかし、『疾風見切り』によって軌道を把握でき、乗算するという噂の『仕様違いカジャの重ねがけ』により機動力が上昇している今ならば、回避は十分に可能だった。
第二射目。
前に抜ける形で飛び出したリオを狙って面での攻撃を行おうとするテング達。しかしながら、どのポイントが着弾点なのかが非常にわかりやすく、後続を捕まえるための網にはなり得ない。
第三射目
この辺りからキツくなるだろうという感覚はあった。眼前に着弾したマハザンダインにより巻き起こる突風が己達の行動を阻害するからだ。
なのでここからは壁で受け止める。ファフニールを最速で突っ込ませてマハザンダインからの壁を作る。ガードさせていたファフニールはリオが切り開き己達が走る道に着弾するものをその肉体で防ぎ、封鎖されるのを防ぐ。
そして第4射目。
これを凌ぎ切れば、ようやく敵集団の一つと戦闘が可能になる。
貫通付きマハザンダインは恐ろしい範囲火力であったが、射線の関係で3グループからの攻撃は届かない。ラスト一つからの魔法は距離の関係で直撃を受けるしかないが、『風邪』が伝染していたテングからの火力は低く、致命傷にはならない。
だが、見えていた部分以外にも罠はあったようだ。
敵前に足を踏み入れたリオの足に絡みつく呪力がある。リオは直前でCOMP機能『ヨカンムシ』により感知したが、勢いは殺せなかったらしい。
「ワープ床!」
「外道が過ぎるぞこの異界!」
| Auto MAPPING | ||||||||
| ↓ | ||||||||
| ↓ | ||||||||
| 敵 | ● | ○ | ○ | ○ | ジ | ● | 敵 | |
| ○ | ○ | ○ | ||||||
| ● | ○ | ● | ||||||
| 敵 | 敵 |
最前列を走るリオがワープ床に突撃する。
分断トラップの類ではないようで、使った後でも転送床は機能している。
ムラカミ殿とアイコンタクト。今回での攻略を諦め、ワープ床の先で体勢を立て直す算段だ。
だが、その前にこの集団の始末だけはしておく。
「ファフニール、力を示せ!」
「ガァ! 『邪念の波動*40』ダ!」
種族スキル、というモノがある。
カジュアル連中が使っているアプリにて発生するスロット外スキルだ。
敵の邪神も使ってきた射程距離を伸ばすスキルだったり、妖獣の持つ一呼吸での移動距離を伸ばすスキル*41などがある。まぁ、このスキルを発動させる場合はMAGの込め方を工夫しなければならず、『戦闘の流れ*42』が変わるのは気をつけねばならない。
邪龍のスキルを使っての遠距離戦を行う場合は、弱点を突いての追撃を起こせないし、己含めて二体分しか動きを連動させられない。だから軽く試してみたくらいで実戦投入はしていなかったのだが。
いまこの場では、最適解の一つである。
「ペルセポネー!」
「はい、『悪化*43』」
妖魔テング、邪鬼ギリメカラ、邪神トウコツが悶え苦しみ転がるところに『メギドストーン*44』にてトドメを刺す。これで邪魔だった集団を一つ排除できた。
このマハザンダインを使うテング達は特別性だろう。量産は可能だろうが、コストは重い筈。
「ジエン君! ムラカミ! 転送先はこの部屋の中! 床踏むよりも防陣作って!」
ムラカミ殿が合流の為にワープ床に踏み込もうとした時、部屋内部からリオの声がする。
背後の、敵邪神の十字砲火の射線が交わるポイントだ。
そして部屋を俯瞰して見れば現在位置、ワープ床直前では1集団の攻撃しか届かない。
なるほど、防御優先は悪くない。
「少年、防御は俺の仲魔がやる」
「しかし、急激に上がったレベルに仲魔がついて来れていなかったと聞いたが」
「壁にはできる。それで十分だ」
レベル40周辺の仲魔を召喚し、ガードさせていくムラカミ殿。飛んでくるマハザンダインからの風除けには十分だった。
リオが他の集団から狙われたのを見切りと気合いで回避して被弾1に抑えた所で、ファフニールのスキルの
この位置関係なら、邪龍には出来ることがある。
『邪念の流動*45』。邪龍由来の射程距離延長能力を一時的に伸ばす力だ。これを用いる事で元々の射程距離から6倍の距離の敵に攻撃することが可能なのだ。
……再行動するにあたっての立て直し時間も、相応にかかってしまうのが問題点ではあるけれど。
位置を動かず、4つ向こうにいる集団を『悪化』と『マハザンストーン』で焼き払う。
これでこちらに射程が届く敵集団は消える。
その後、残ったニ集団は攻撃をするためにこちらへとワープする床を踏んだが、そこは普通に射程距離内部。敵の攻撃に備えていたリオとムラカミ殿が先手で邪神トウコツを仕留めれば、衝撃魔法に貫通効果を付与できない敵集団は何もできない。
一度崩してしまえば、どんな無敵の集団でも容易く仕留めることができる。よくある事だ。
「……で、全部の道が罠だとしたら、先にはどう進めば良い感じ?」
「部屋の壁面にスイッチがあるな。コレを用いればワープ床の効果を変化させられるかもしれん」
「……道がなかったら? 己が敵であったなら、殺し間に叩き込んだ相手に逃げ道は渡さんぞ?」
「完全詰みの行き止まりってのはそうそう起こらないんだよ。異界内部のMAGの通り道があるからさ」
「今回の場合は、そこのポイントに足を踏み入れる事がワープ床を発動させるギミックだったようだな。普段は通れる道なのだろう」
ムラカミ殿がスイッチを切り替えると、ワープゾーンの空気が立ち消える。先に進む道はできたようだった。
「恐ろしい異界だな。ここは」
「正直なトコ、増援呼びたい気分かな。このレベルの悪魔を多数召喚して、異界のギミックをここまで洗練させた敵悪魔とか、80レベル以上の可能性だってある」
「……キリギリスに纏めた探索データは投げておいた。援軍の要請をしつつ、マッピングを進めるぞ」
「それもそうだな。この異界はよく風が通る。トラエストやトラフーリが阻害される事もないだろう」
探索を続ける。
すると、最前線に張っていたバスターチームの手が空いたという事でバックアップに入ってくれるという連絡が来た。心強い。
交代で小休止を取りながら、死体の見聞などを行なっていく。
どうにも、パッと死体を見る限りでは悪魔に特異な点は見られない。しかし複数の悪魔を同時に見れば、奇妙さは一目瞭然だ。
同一の悪魔を複製させ、同一の経験をインストールし、同一のスキルを発現させた。だから誰もポムズディやアムリタの『風邪を治療する魔法』を取得できていなかった。
多様性というのは、まぁ大切なのだな。
「ジエンくん、そろそろ行くよー」
「うむ!」
休憩を終え、異界探索を再開する。
といっても、先ほどのエリアを超えた後に然程の苦戦をする事はなかった。4つの通路の先には
「んー……ダンジョン攻略おめでとう! なご褒美エリア?」
「異界の主の首も転がっていたら文句はなかったがな」
「己も同感だ」
そんな会話の後、おおよそのマッピングは終了した。探索データを共有し、後続に情報を渡す。負けた時の為に。
「ファフニール、クイーンメイブ、ロキ、行くぞ」
3体の仲魔を展開。
道中の戦いを観察した結果、ムラカミ殿の呼吸は読めるようになった。
己が『調律』できる限界数は4名。バックアップにファフニールとクイーンメイブを回し、メインにはリオ、己、ムラカミ殿、ロキの4体で行動する予定だ。
まぁ、ロキは雑に使い潰すだろうけれども。氷結無効の可能性はあるし。
「かんらからから! よくぞこの修練場を突破したな! 戦士達!」
門を抜けて異界の主の部屋に入る。
するとそこには、待ち構えていたように一体の女性型悪魔がいた。
テングを思わせる和装で、手元に葉のような団扇を持ち、からっとした顔で笑うそいつが敵悪魔なのだろう。
名を、『鬼一法眼』
| 造魔 | 鬼一法眼*46 | LV71 |
「あんたがこの異界の主?なんなのよココは」
「ああ。君たちのような強い戦士に戦い鍛える場を提供するための異界さ」
「む? ヤタガラスからはそのような説明は受けていないぞ? 抜き打ちテストなのか?」
「コレは僕個人がやった事さ。ちょうど良い異界に生まれたからね」
「ほう?」
「解せんな。造魔は造られた悪魔の筈。この異界を作るのは作成者の意向なのか?」
「違うとも。僕の心が命じたからさ」
「虚心の義体が良く言う」
「白糸は何色にも染まるのさ。これみたいな『
手元の団扇から異常な気が流れ出る。物理的な者でなく、精神に何らかのイメージを叩き込むようなもの。
「これ、手記や球体と同系統の毒電波だよ!」
「毒電波とはよく言うね。『イデアオーブ』という名前はあるんだよ」
そう宣う敵悪魔。そうはいっても情報として知っているだけで細かな由来などは知らない雰囲気だった。
「そのイデアオーブをから、何の影響を受けたのだ?」
「『人を、未来に繋げ』って願いさ。そのほかにも異界の寿命を削って多くの悪魔を引き入れる方法や、伽藍堂の悪魔にイマージュを差し込む方法なんかも貰ったけれど、基本はその願いだ」
そう言う鬼一法眼の顔は楽しそうで、何かの使命を強制されたようには見えない。
挿し込められた願いと、造魔としての虚心と、鬼一法眼という人格の相性がとても良かったのだろう。おそらく。
「つまり、アンタは放っておいても良いって事?」
「ああ。契約を結んだって良い。この異界から今ある世界を侵すつもりはない。ただ、戦士を鍛える場としてここを作っただけだからね」
「その割に、殺意は高かったがな」
「この程度で死ぬならば、未来でもすぐ死ぬさ」
カラッと笑ってそうのたまう女。
戦う必要はないらしい。
「まぁ、仕留めるんだけどさ」
「ああ。お前の訓練異界一つとしても、現在の東京では致命傷になりかねん」
「……なるほど、やはり良いね」
「人を未来に繋ぐことを願うのであれば、異界を放棄してはくれないか? このままでは東京が終わってしまうかもしれんのだ」
だが、戦う理由はあった。
これまでのトラップでムカついていた、というのがゼロとは言わない。しかし、それ以上にこの異界を残してはならない理由はあった。
この異界は、限界ギリギリで踏ん張っている『ヤタガラス』が無理をしてでも排除するべきと断じた異界なのだから。
「どうせ東京は魔界に落ちるのだから、変わらないだろう?」
| 鎧通し | 物理スキル | 敵単体に物理属性小ダメージ 防御力を1段階弱体化 |
| 牙折り | 物理スキル | 敵単体に物理属性小ダメージ 攻撃力を1段階弱体化 |
| ザンダイン | 魔法スキル | 敵単体衝撃属性大ダメージ |
示し合わせた訳ではない。この世界で育った心が『殺せ』と命じていた。
「ククク、それでこそ我がサマナーです」
ロキが『テトラジャ』を使って破魔呪殺への障壁を展開。
続けてバックアップ*47のファフニールが『マカラカーン』を展開して手番が移る。
攻防1段階減少で、ザンダインは直撃。
物理攻撃、衝撃魔法、それぞれダメージは等倍だった。押し切れる。
「良い動きだ! けれど、速さが足りないね!」
鬼一法眼の手番に移る。動きの速さは3回行動レベル。感電、氷結ハメは不可能。
| 紅の扇*48 | 補助スキル | 自身の命中、回避率を最大まで上昇 |
| 八艘飛び | 物理スキル | 敵複数体に物理属性小ダメージ8回 確定クリティカル(真V仕様) |
「命中を補正してからだとッ!」
「不味い、こいつ『笑ってる』!」
ニヤリと震えた魂のままに、鬼一法眼は暴れ回る。ただひたすらに、強い!
「あぁ、弱体は解除させて貰うよ」
| デクンダ球 | 消費アイテム | 味方全体の弱体効果を解除する |
| 道具の知恵・癒 | 自動効果スキル | 回復、補助系アイテムを使う事ができる |
「ボスが道具を扱うか!」
「1ターンで削り切らないと、宝玉で回復される!」
「それよりも、次が来るぞ!」
| 八艘飛び | 物理スキル | 敵複数体に物理属性小ダメージ8回 確定クリティカル(真V仕様) |
| 八艘飛び | 物理スキル | 敵複数体に物理属性小ダメージ8回 確定クリティカル(真V仕様) |
弱体一段での8回と、ニヤリの付いた8回と、通常の8回
攻撃はランダムに分散したが、おおよそ1人につき4回の攻撃がヒットする。
今回は平たく分散してくれたが、比較的体力の高くない己は『食いしばり』を使わされた。ファフニールは余裕そうだが、壁にして2人分以上のダメージを喰らえば落ちる計算だ。
| 猛反撃 | 自動効果スキル | 力依存の攻撃を受けた時、確率で中ダメージの反撃を行う |
リオが受けた攻撃に反応してカウンターを入れる。しかし受けてから放つタイプのカウンターであり、リオの体力もギリギリ。そのクリティカルの手ごたえに敵はまたしても『ニヤリ』と笑みを浮かべる
「『物反鏡*49』だ!」
「その呼吸を乱す!」『マガオン』
| マガオン | 補助スキル | 敵単体のニヤリ状態を解除する |
ムラカミ殿がノータイムで立て直しのためのアイテムを消費。敵が物理一辺倒であるならばこれで時間は稼げる。そして三度目の八艘飛びにて再びの『ニヤリ』を解除するために、己は『マガオン』で邪念を叩きつける。
リオは『会心の眼力』にて力を溜める。
そして、ロキが邪神トウテツより継承した『道具の知恵・癒』で『デ・カジャミスト*50』を使用して命中4段階強化を解除。
そして、サポートのクイーンメイブが『メディアラハン』を使用。全回復することで再びダメージから耐えられるようにする。
だが、複数攻撃の回数が誰かに集中すれば意味はない。
リオ、ムラカミ殿が五発で、己とクイーンメイブは4発で落ちる。ファフニールは七発耐えられる計算ではあるが、それだって八度の攻撃が集中すれば一撃で吹き飛びかねない。
「なるほど、丁寧だ」
| 紅の扇 | 補助スキル | 自身の命中、回避率を最大まで上昇 |
「けれど、これはどうかな?」
| 会心波 | 物理スキル | 敵全体に物理属性小ダメージ 会心率・高 |
「テトラカーンに突っ込んできたッ⁉︎」
「……違う、これは『セーフティ*51』だ! 意を乱さず反射だけを解除しているぞ!」
「ダメージは受けるけど、ね!」
| 八艘飛び | 物理スキル | 敵複数体に物理属性小ダメージ8回 確定クリティカル(真V仕様) |
| 獣の反応 | 自動効果スキル | 命中・回避率を上昇させる |
八度の攻撃のうち一度、ギリギリで体を捩らせての回避ができた。
しかし、それで呼吸は乱れない。クリティカルの流れに乗れない程度だ。
「仕損じたか、なかなかやるね!」
そう言った敵の様子は、心底楽しそうだ。
おそらくだが、先程のタイミングで全弾命中していたならば、『ニヤリ』と笑ってからの単体高火力技が飛んできただろう。最低で怪力乱心クラス、最悪で単体複数回攻撃。食いしばりを貫通して仕留める技を。
己は既に『食いしばり』を使ったのを見られている。手数の多いサマナーであるのだから、狙われるのは必定だ。
「召喚をする!」
「下がれロキ!」
だが、収穫はあった。それは物理反射を攻撃が
ロキを
そしてサラスヴァティはすかさずの『テトラカーン』。
次いで己が『メディラマ』により全体を回復、八艘飛び一回分ならばこれで大体の回復はできた。もっとも先程2度被弾した己は完全回復していないが。
そしてリオが動き出す。放つ技は、『暗夜剣』封技属性のバッドステータスを与える物理の2連攻撃だ。
「残念だね、BS耐性持ちさ!」
「それでも、ダメージは入った!」
リオがニヤリと笑う。クリティカルの手応えが魂を震わせたのだ。
そして、ムラカミ殿が『スマイルチャージ』を行う。次の手番に勝負をかけるためだ。
そして、サポートのロキに『デ・カジャミスト』を使わせる。4段階上昇していた命中が基本値に戻る。
ここが、運命のターン。
現在与えているダメージ量から考えて、次の手にて仕留められなければ負けだ。誰かを殿に残して撤退するしかなくなる。
敵は間違いなく、宝玉*52を複数個持っているのだから。
猛反撃や反射などでこれまで積み重ねた微量のダメージという『下駄』がなければ、仕留めきれない。
「さぁ、終わらせようか! 『会心波』!」
サラスヴァティのテトラカーンによって、全体攻撃は全て反射される。
しかし小ダメージ技で抑えたそれは、6つ重ねたとしても大ダメージにはならない。
『紅の扇』にて命中、回避を最大まで上げた後、ついに鬼一法眼は必殺を解き放ってくる。
その火力は一撃で己を吹き飛ばすに足るもの。尋常でない一撃の代わりに命中率を犠牲にした技だったが、しかしそれは紅の扇の命中上昇によって補われている。
確定クリティカルのその一撃の名前は
| 朧一閃 | 物理スキル | 敵単体に特大威力の物理属性攻撃。 命中率が低い代わりに当たれば必ずクリティカルが発生する |
その致命的な一撃は……しかし、サラスバティの貼っている障壁により反射された
「なッ⁉︎」
「かかった!」
「テトラカーンの中には、1ターン継続のものがある! 見誤ったな!」
そう、これが勝ち筋。
あえて一撃で仕留められるような体力でいる事で、敵の行動を誘導するということ。
先程のタイミングで『獣の反応』を見せたので、必殺の一撃の前には命中上昇を挟む。反射を剥がすために、全体物理を放つ。これで2手。
もしも狙われたのが己でなければ、八艘飛びを先に打ってクリティカルで浮いた手番で強化をするだろう。
そうなればテトラカーンが1ターンであることをがバレて、最後の一手で回復されてしまう。
そうなればもう消耗戦だ。順当に高いHPと、持っていないわけのない貫通付与スキルなどを用いての削り合いになり、上振れの起きやすい複数攻撃を軸にする敵の勝ちへと繋がってしまうだろう。
故に、罠を張った。倒せば仲魔をまとめて無力化できる、弱ったサマナーという餌で。
「「「行くぞ!」」」
まずリオが『
そこで浮いた手番で己が『デ・カジャミスト』を使用。回避率を通常に戻す。
そうして鈍った動きのところにムラカミ殿が『殺風撃*54』を放つ。最強クラスの衝撃魔法がクリティカルに着弾し、体勢を崩す。
「勝利を!『マカカジャ』!」
サラスヴァティが味方の魔法攻撃力を強化。残り2手分。
「ジエンくん、いけるよね!」
| 会心の眼力 | 補助スキル | 次の物理攻撃に確定クリティカル、および必中のチャージ効果 |
「おうとも! そのために備えてきた!」
| パス | 基本行動 | プレスターン消費0.5で次の味方に手番を渡す |
「見ものだな、貴様の秘奥は!」
| スマイルチャージ | 補助スキル | 自身にニヤリ状態を付与 |
「その呼吸、取らせて貰う!」
| ASSIST ATTACK! |
| パートナーゲージが最大(8段階目)の時にパートナーのターンに発動する。 パートナー2人による補助行動の後、パートナー人数だけの万能属性攻撃を与える。その後、味方全体に確率でニヤリを付与し相手のターンをスキップする。 |
ロキ、ファフニール、クイーンメイブの放つ3連撃が鬼一法眼の動きを完全に封殺する。
この奥義を用いるには敵の呼吸を完全に読み、複数のバックアップの位置、攻撃タイミングを調整しなくてはならない。準備にはおおよそ8ターンかかる。
最初の無駄話の際にある程度の位置を調整し、これまでの戦闘で必殺の為のMAGを用意をできていたからこそ、秘奥をこれほど早く発動できたのだ*55
そして、その技が完璧に決まった事で己の魂は震えニヤリと笑う。
「終わりだ!」
リオの放った必中クリティカルの『霞駆け*56』そこで崩れた体勢を己が『牙折り』でさらに崩し、ニヤリと笑っているムラカミ殿が『殺風撃』をぶち当てる。そうして中空に飛んだ身体をサラスヴァティを踏み台(行動パス)にして先回りしたリオの『
連携が完全に決まった。
超ダメージの連打によって鬼一法眼の首は捩れ体はズタボロになる。
だが、食いしばられた。
「まだ……だ!」
「いいえ終わりです。『ブフダイン』」
そこを、後衛にて状況を見定めていたロキの氷結魔法が狙い撃つ。ギリギリで踏みとどまっていたその身体は、最後の一押しを受けた事で凍てつき、バラバラになった。
「第二形態、来てくれるなよ」
「言わないの、言葉にしたら本当に来るよ」
「なるほど、道理だ」
リオとムラカミ殿がそう言ったそばから、鬼一法眼の背後の空間から何かが飛び出してくる。
悍ましい気配のそれは、これまでこの異界で戦った悪魔たちと同じ姿の悪魔だった。
違うのは、その体が白く染まっていると言うことと、そこに内包する力の強さだろう。
「しまった、地下の白子たちが動き出したか」
ズタボロ死体のままの鬼一法眼の声がする。どうにも、ソウルだけはまだ留まっているらしい。
「白子って何よ。負けたんだから情報くらい吐きなさない」
「ああ。僕の依代になった造魔素のほかに、ここには幾つかの素体が転がっていたんだよ。そいつらもここを超えた戦士へのお宝にしようとしたんだがね、戦いの余波によって目覚めてしまったようだ」
「今更だけど、ここはなんなのよ」
「ここではないどこかの世界の方舟から切り離された研究施設が座礁した異界だよ。そのせいで元々あった異界が変異してしまったのさ。まぁ、その変異に指向性を与えたのは僕だがね」
「面倒臭い女ね畜生」
そう話しているが、いささか以上に不味い盤面だ。テング、ギリメカラ、ハヌマーン、トウコツ、ヨモツイクサと5体おり、それぞれがボス級に強化されていた。
「……バックアップを頼んでいていて正解だったな」
しかし、こちらにも風は吹く。背後から、二人の人物がやってきたのだった。
「ちょっと、
「ママ活始めたゴリラがなんか言ってるわね。真っ当に武器を扱えない嫉妬?」
「先にあんたぶっ殺してやりましょうか?」
「仲が良いようでなによりだ!」
現れたデビルバスターは2名。
数多の武器を扱うと聞く『武器ネキ』こと兵器の魔女ルーナ。
高い信仰心とその気高さが故に信頼されている『太陽万歳』こと太陽の騎士ソラール。
話に聞いているチームの数より少ないと言うことは、先行させて援軍を送ってくれたということに他ならない。
「連携してないみたいだし、分散して一体ずつ仕留めるわよ。一人一殺ね」
「じゃあムラカミはギリメカラお願い。物理反射は面倒だし」
「任された」
「己はトウテツに行こう。サマナー故に耐性は見えずともなんとかなる」
「私はハヌマーンをやろう! 最もレベルの高い相手だ!」
「じゃあ私はテングで。造魔って飛天族の括り残ってるかしら」
高レベル悪魔集団は、集団で出てくるからこそ恐ろしいのだ。
多人数で分散させてしまえば、ただのガチンコ勝負、真っ当に戦えるのならば真っ当に強い方が勝つ。それだけである。
「あ、倒すの1番遅かったやつなんか奢りね」
「おー」と気の抜けた声で始まるその賭けで、敗北したのは己だった。
まぁ、たまにはこう言うのも良いだろう。とコンビニスイーツを奢る事となったのだった。
戦いは終わった。
順当に強いだけのボス造魔は死に、異界は崩壊した。
崩壊前に地下にあった研究施設の残骸からデータをサルベージすると、それは漂流者関係の施設だった。
箱舟として異界を放浪していく中で何らかのアクシデントに襲われ、破損した研究ブロックを切り離したらしい。
元の世界は悪魔の増加とアバドンゲートの拡大で滅んだが、必死に戦った痕跡が見て取れる。
その一つが、人間の遺体を効率的に造魔素にする製法と、造魔素を利用した戦闘用悪魔の大量召喚だった。
データは破損しており解読には時間がかかるようだが、異界の中心点にはいくつもの造魔素が転がっていた。そこに己のシェルターのイデアオーブが流れ着いたことで、目覚める筈のない造魔たちがあふれ出したのだ。ということらしかった。
「玉突き事故だね、コレ」
「うむ。だがこの異界はメシア狂という者たちが先んじて発見していた。鬼一法眼が目覚めていなかったらあの異界にて見られたテングやギリメカラが組織的攻撃に使われることになった。その方が、己は悲しいぞ」
「そだね。まぁそれでアイツの平和を切り捨てる在り方を肯定することにはならないけどさ」
「……そうだな」
「あと一応突っ込むと、メシア教ね。狂信者は多いけど、教会の人たちだから」
「む、また間違えて覚えていたか」
「意味は伝わるからオッケーっちゃオッケーだよ。うん」
そんな感じに、大きく世界が変わることなく、いつも通りに悪魔の脅威は取り払われた。細かく考えねばならないこともあるのだろうけれど、今はゆっくり休むとしよう
手元のチーズケーキを食べながら、己はそう思ったのだった。
ムラカミさん紹介な感じのエピソードのはずだったんですが、筆が乗って妙な方向に延びました。
ジエンくん
兵器の魔女ルーナと太陽の騎士ソラールさんと仲良くなった。突如としてコンビニスイーツを奢るハメになったが、二人の技を教われたので収支はプラスだと思っている。
今回の仕事の報酬で見切り系のアクセサリーを買いそろえたが、見切り系スキルは肝心な時に仕事をしないことをジエンくんはまだ知らない。
ムラカミさん
一話使って紹介しようと思ったら話が外れまくった被害者。
ハッピーセットを集めていたのは本人が欲しかったというよりも、施設の子の中に欲しがっている子が居たから。かなり楽しく遊んでいたおもちゃを素直に渡してくれたジエンくんはとても良い子だと思っている。
だが、それはそれとしてルーナから聞いた『リオがジエンくんを性的に食おうとしている』という疑惑には割と本気でブチギレている。ものを知らぬ子供をグルーミングして洗脳するような輩を許すダークサマナーではないのだ。
ソラールさん
太陽万歳!
ルーナさん
リオと武術の共同訓練をしたことがある。その時に気に入っていた訓練刀を握りつぶされたことがある。弁償はされた。
武器を扱う技があれば良い好敵手となれたかもしれないとリオを高く買っているが、それはそれとして煽る。
リオさん
リオがルーナさんに煽られた日には、何故か技研のゴミ箱に訓練武器が増えるという怪現象がある。何故なんだ一体……
造魔 鬼一法眼
テングがひたすらアンブッシュ!という異界を作り上げた造魔。元々が転がっていたドリーカドモンであるため、耐用期間は短かった。悪魔としてはメジャー所でないが、沙那王こと源義経を育てた天狗であるという所から『八艘飛び』を引っ張り、過去周回における敗北者の思念から紅の扇(ただの赤のカポーテ)を編み出した。
本来の鬼一法眼から、毒電波による洗脳一つ分ずれている。なので無意識に人類の完全勝利が不可能だと断じていた。
異界内でパンデミックを起こされた時は大爆笑して、誰もポムズディやアムリタを使えない事で頭を抱えた。しかし耐用期間が迫っていたので仕切り直しはせず、そのままジエンくん達を受け入れた。
戦士たちの血肉として死ねたことを満足している。それが誰かに刷り込まれたものであっても