姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝 作:気力♪
「正気か?」
「正気さ。冷静に考えて、これから生まれる子供たちが生きるためにはこれしかないと考えている」
「だが鴻上の技術だぞ! あのサイコ野郎が残した手段だ、なにが仕込まれていてもおかしくはない!」
「彼は余人とは違う価値観で生きていただけだ。彼の価値観の全てを理解はしていないが、それでも主な方針として人間を繋ごうとしていると言うことは変わらない。この技術は、使える」
「ふざけるな! 奴の技術でどれだけが死に、どれだけが尊厳を踏み躙られたと思ってる!」
「なら、君は代案を出せるかい? 自衛隊及び有志の戦士たちの8割が死に絶え、1割は再起不能、残りの1割のほとんどは裏切り者だ。子供だからと守ってあげられる余裕は、もう存在しない」
「それは……ッ!」
「やる事は、支給するワクチンに混ぜ物をするだけだ。素材には先の戦いで戦死したのがある」
「……情報汚染で、赤子が死ぬぞ」
「これからの東京ではどのみち汚染に耐えられない子供は死ぬ。けれど戦士たちのイマージュを摂取して擬似的な覚醒状態に持っていければ、生き残る子は増えるさ」
「それで、育った子供を兵士に使い捨てるのか」
「それまでにケリを付けたいとは、思っている」
「無理だと分かっている願望を言うな。貴様はもう東京の大将なんだぞ、フジワラ……!」
「……僕も、やりたくはない。けれどこれから先に起きる蹂躙撃の中で、生きるチャンスがないというのは悲しいじゃないか。どんな呪いに満ちた道だとしても、選択肢は与えてあげたいんだ」
ぼんやりと、ふわふわとした感覚で夢をみる。
今日の夢は、いつもとはだいぶ異なった。
戦い、踏み躙られ、死ぬといういつものパターンではないのは少し新鮮で、しかし二人の男の後悔の念が強すぎてそれを楽しむのは難しい。
そんな所で意識が浮上する。瞼の裏に光が感じられている事から、『朝』がやってきたのだろう。
むくりと身体を起こし、カーテンを開けて日光を受ける。
「うむ! いい朝だ!」
夢で死んでいないので少し感覚が狂うが、そのあたりは朝の運動を激し目にすればどうにでもなるだろう。
きっと、今日はいい日なのだから。
「お、いい感じじゃん」
「牙折りにて慣れたからな。『テタノスカット*1』くらいなら行けそうな気がしたのだ。なんとなくだが」
「……スキル習得まで20分とか、若干引く」
「そこの妊婦、ちゃんと運動しろー」
「はーい」
朝の鍛錬時間だ。
会社で強いられている訳でなく、単純に学生である己と(一応の)社会人であるリオの時間が合いやすい時間帯が朝だからであり、技研地下訓練スペースの掃除ついでに軽く身体を動かそうというものでもあった。
訓練スペースといっても、異界化によって頑丈になり、防音がしっかりしただけの空間だ。射撃場だとかは特にない。
訓練のターゲットには柱を入れたコンクリートを使い、柱の方は雑に再利用。コンクリートの方は高熱だとか振動だとかで柱から剥がし、また溶かす事で再利用できるらしい。
もっとも不純物が混ざったりだとかで強度は弱くなるので建材には使えないらしい。
「普通の使い方は、砕いて地面に敷くものなんだけどね。コンクリの柱を考えなしに砕きまくってたらまぁまぁの値段にはなる訳よ」
「節制の為に素材の再利用をしているのだな! 素晴らしい試みだと思うぞ!」
「……コンクリートの柱が日常的に殴り砕かれる異常は、スルーされるんだよねこの業界」
「だから運動しろっての。アンタだってスキル使えばコンクリぐらい訳ないでしょうが」
「魔法的スキルと純粋物理な話は大分違くない?」
そう話していると、テタノスカットがクリティカルに入ってターゲットが二つに切れた。
流石にナイフを使わなければスキルの再現はできなかったが、ナイフが手元にあれば普通に有効打になる技だった。
もっとも、中威力の単体物理技は純粋に力不足である。物理弱点相手くらいにしか使う事はないだろう。
「それでジエンくん。刹那五月雨撃ち*2はどうするの? 私もコツは知ってるし、オヤジはそこそこの使い手だけど」
「正直に言えば、銃撃属性でなければ飛びついたぞ」
「まぁ、ねぇ」
「百麻痺針に慣れているというのもあるが、それ以上に銃撃の複数回攻撃でバッドステータスがないというのがな。命中弾数が上振れても敵を無力化可能性が低いぞ」
「けど、百麻痺針のままだと遠くないうちに使えなくなるよね。威力不足で」
「そうなのだよなぁ……スキル段階アップグレードしなくてはならんのに、適したスキルが見当たらん」
「グランドタックと天扇弓の二つに役割を分ける?」
「そうなるとウィスパースキル枠を割きすぎる。2種にマハ・アクエス、マハ・マグナス、マハ・ガルーラの3種で残りは3つ。頼りになるバステの『バインドボイス』、ペルセポネーとのコンボ用の『パンデミアブーム』、刻む回復用の『メディラマ』は外せない」
「んー、メディラマ外さない?」
「悩むところだ。メシアライザーかメディアラハンに換装できるならば是非はないのだが」
「合体魔法用の三色をマステリに全部任せるとかは?」
「……それしかないか」
「合体魔法、確定感電とか強い部分は強いんだけど、今のレベル帯だと全員バラバラに殴った方がダメージ出たりするもんねー」
「うまくいかぬなー」
机上の空論のウィスパーチャートを放棄。
『百麻痺針』をサブに、『グランドタック』『天扇弓』をメイン火力にし、あとは適当にだ。
| ウィスパードスキルスロット |
|---|
| 百麻痺針+9 |
| グランドタック |
| 天扇弓 |
| メディラマ+9 |
| パンデミアブーム+9 |
| バインドボイス+9 |
| マカラカーン |
| ランダマイザ |
| 自力習得スキル |
|---|
| アギ ブフ ジオ ザン ハマ ムド 九十九針 麻痺針 プリンパ ドルミナー マリンカリン 咳き込み バインドボイス パンデミアブーム パニックボイス 子守唄 牙折り テタノスカット フォッグブレス マガオン 獣の反応 |
「うむ。やはり火力がない癖に耐久もない」
「バステの十特ナイフだよね。子供の作るビルドじゃないよ」
「マイトブレスやシャッフ、キョウなんかも身につけてみたいぞ。石化も良いな!」
「この畜生感よ。聞いたよ、倫理の小テストで3点取ったって」
「あれは問題文のの指示に問題がある。 心のままに書けば良いと言ったのだぞ!」
「心のままに書いた事で倫理3点は、そっちの方が問題じゃない?」
「悪魔の情報汚染に晒され続けているサマナーが真っ当な倫理観を持っている方がおかしいだろう。悪魔の甘言を見抜けねば骸になるのだぞ?」
「まぁ、本音と建前を覚えましょうって事で」
そんな雑な会話をしながらも、鍛錬は続く。
訓練の時のリオの型はとても綺麗で、技の打ち方の手本としては好ましい。
実戦では間合いの差し合いやら立ち回りやらの理由と、綺麗すぎる型では見切られやすくなるという経験則からいくらか崩した型になる。型の必要要素のみを丁寧に扱い、それ以外を状況に合わせて変えていくのが物理使いの戦い方の前提だ。
これを10秒に満たない中で行うというのだから恐ろしい。悪魔召喚と並行してやる人はおそらく脳みそが3つはあるだろう。
「そろそろ時間だよー」
「しまった。集中しすぎたな」
見れば出発時間までに30分ほど。シャワーで汗を流す時間はあるようだ。
「ジエンくん、頭やったげるよー」
「うむ、感謝する」
風呂上がりにタオルやドライヤーやらで髪の毛を乾かしてもらう。なかなかに気持ちが良いが、時折リオの手が止まる。というより己が止めてしまっているのかもしれない。
時折身体が反応するのだ。押し留めているが、寝ぼけていれば一撃入れて反撃で大ダメージを受けるだろう。
「リオ、懐かれてない」
「ま、まだこれからだし」
「己としてはリオを好ましく思っているのだがな」
「……本能的に拒絶されてるんだ」
「杏奈ー、ちょっと裏までおいでー、その頭砕いて直してあげるから」
「やだ」
『仲良きことは美しきかな』だったか。あるいは『てぇてぇを見る観葉植物になりたい』か? 先輩方のオタク言葉はよくわからない。
なんにせよ、仲が良いのはいいことだ。
「行ってくるぞ」
「いってらー」「いってらっしゃい」
休憩室を離れ、出社してくる黒服のタナカ殿とサトー殿に挨拶してから学校に向かう。
尚、現在の己の学力は低空飛行。どうしてもケアレスミスや計算間違い、常識外れが重なり続けて成績は伸びる気配がない。
まぁそれも、きちんと常識やらを身につけてからの話だけれども。
そうして聖華学園長辿り着くと、見知った人から声をかけられた。
デビルサマナーである学園の先輩、岸波白野殿だ。
「あ、ジエンくんだ」
「こんにちはだ! レベリングは良いのか?」
「今日は勉強の日なんだ。余裕のある時に単位稼いどけーって言われちゃってね」
「やはり生徒会とは大変なのだな。皆の規範になりつつ最前線で戦えるように訓練をするとは」
「最前線で戦ってる子が言うことじゃないよね、ソレ」
「最前線の修羅の皆のように1日に複数個の特級異界攻略はまだ難しいし、検証勢のように有用なデータで全体の底上げもしていない。これで最前線というのは厳しいぞ」
「言うねぇ」
ハクノ殿は第七生徒会という学園の運営グループの頭目を張っている人だ。強力なデビルサマナー であり、英雄『ヨシツネ』を含む強力な悪魔を従えている。
おそらく、己を監視しろと命じられている一人だ。
という事で、その会話の内容は刺々しいものには……
まぁ、ならないのである。
「ところで、見た?」
「もちろん! 見たぞ!」
「どうだった?」
「奥深さに震えているぞ。面白いものだな! 対戦動画というものは!」
「エグゼは兄様がやってるの見てただけだったけど、やっぱ2、3歩踏み込んでみると見えるものが違うよね。暗転*3にカットイン*4返された時の怖さったらないし」
「テトラカーンやマカラカーンを仕込むタイミングに通じるものもあるな。敵味方の手番が分かれているなら見て止められるが、乱戦になっているとああなる」
「言われてみれば似てるね。けど休みの時はちゃんと休まなきゃダメだよ? 戦いから心を離さなきゃ」
「分かっている。社会性の獲得は己の課題であるのだから。もう倫理で赤点は嫌だぞ」
「え、ウチの倫理で赤点取ったの?」
「うむ」
「……常識が違うと、やっぱ大変なんだね」
そんな会話をしながらぶらぶらと進む。
まだ学校に通い始めてから日は浅いが、それなりに己は知られてきているようだ。
学食で声をかけられることも多くなり、部活やサークル活動に誘われていくつか見学をさせてもらったりもした。
……イカサマ禁止とは知らず、麻雀部などいくつかの部活からは出禁を喰らってしまったが。
「にしてもさ、ボードゲームとかTRPGとかもだけど、ジエンくんってレトロゲー好きだよね」
「ルールや定石が頭にすんなり入ってくるのでな。理解がしやすいし慣れやすい」
「けど、マリカークソ弱かったよね?」
「あれはコースが難しいからだ。画面内の情報だけではどこでドリフトを始め、どこで加速アイテムを使えば良いのか迷ってしまってな。結果、無様を晒したのだよ」
「迷えば敗れる。おっかない言葉だけど真理だよねぇ。土壇場で迷わないアルちゃんとか馬鹿強いもん」
そんなゆるっとした会話で別れる。教室への道が違うが故にだ。
そうして、別室登校の教室へと入ると、己と同じように事情持ちの者達が屯している。
学校側の方針で一学期ほど様子を見る予定だったが、ほとんどの者はきちんと常識に馴染めるようで順次通常クラスに合流という流れになっている。己と同時期に別室登校を開始した者の中にも数人通常クラスに移れた者もいた。努力がきちんと認められていて嬉しい限りである。
「ホームルーム始めるぞー」
ゆるりという担任殿の言葉にしゃんと背筋を伸ばす。今日の予定と連絡事項。今週の登校日の確認などを行ってから、一限の『一般常識』の講義が始まる。
目新しい事ばかりで目が回るが、授業の録画、録音を編集して見やすくまとめ直したり、ノートに書き記すことで手で覚えるやり方をしたりと頑張る事は多い。
しかしながら、大多数の生徒にとってこの授業は退屈なだけのものであり、テキストや机などで隠した所にて何かしらをやっている。
教員もそれを黙認しているあたり、これが学校での普通なのだろう。
とはいっても、許されないラインというものはある。
たとえばそれは……
「おい手前、これは忙しすぎてまだ触れてない先生へのアテつけか?」
「あ、いや違うんです! これはこの世界の常識を学ぶために必要な!」
「ハイラルの常識学んでどうすんだ。没収な」
「そんな殺生な! 隣のコイツなんて手元でカップ麺食ってるんですよ!」
「音立ててねぇし、匂いも散らしてねぇからいいんだよ。お前イヤホン抜けて音鳴らしてんの気づいてないの? アホなの?」
「……え、まじで?」
「イヤホン抜けてるのくらい気付け馬鹿が」
こんなやりとりがあるくらいには、周りに迷惑な音と匂いは許されない。カップ麺を食べている彼は以前に注意された事から静音結界に加えて周囲の気流を操作する術によって匂いを自らの元に止める技を会得していた。
なぜカップ麺を食べるのかについては問うまい。美味いからだ。
そんな感じで授業が終わり、個別授業が始まる。動画ファイルとして配布されたものを目の前のパソコンを使って受講する形式だ。
なお、動画での学習は学園側との様々な攻防の結果倍速再生は1.5倍速まで許可された。浮いた時間には必ず自習を行うことという条件こそあるが、倍速再生までして学習効率を上げるのはより早く一般クラスに向かうため。
自習中にゲーム機や携帯アプリを触るような自堕落をしなければなにも問題ないのである。勉強をする時の真面目スイッチを入れられるようにするのが問題なのだから。
まぁ、検挙されたことのない生徒はこのクラスにはいないのだけれども。この世界の誘惑に負けないような精神力を鍛えるには時間が必要なのだから。
「おつかれー」
「うむ、お疲れだ!」
「ジエンくん補習頑張ってねー」
「うむ! 頑張るとも!」
なお、倫理の補習を受けるのは己だけである。教員殿曰く、お上を黙らせる為の形式的なモノだったから引っかかるお馬鹿さんが出るとは本当に思っていなかったらしい。
「という事で、補習です」
「うむ。試験ぶりだ! 壮健であったか? 佐瀬殿!」
「まぁね。こうして嫌な仕事を押し付けられるくらいには元気だよ」
「む、嫌な仕事になるのか?」
「なるかな。ほら、擬態ができてない子って見ててもどかしいから」
「ふむ」
「じゃあ、改めて倫理のテストで何やらかしたのかと、どうすればよかったのかを考えていこうか」
じっとりとした目にて見てくる佐瀬殿。といってもおかしな事は特にない。
「正直に思うところを書いたな」
「まぁ、とりあえずいくつか挙げるな。まずはコレ」
| 問題4 |
|---|
| あるクラスで、性別による役割分担について話し合っています。クラス全体における役割を男女で偏らせた場合、どんな問題点が起こりますか? |
| 解答 |
| 男子が戦って死んだ時、あるいは女子が妊娠などで動けなくなった時などでタスクが引き継げない可能性が問題点である。 |
「これが間違いなのは割と納得がいかないのだが」
「戦時下の価値観を聞いてんじゃねぇんだよ。聞いてんのは一般社会での倫理の問題だ」
「今は戦時下では?」
「割と社会保ててんだよなぁ……」
なお、この問題は裏面に選択肢があり、それを選ばなかったのでバツとなったものである。解答欄が狭いので妙に思ったが、かけたので問題はないと思ったのである。
「ケアレスミスだな!」
「お前そのケアレスミス率馬鹿みたいに高いのわかってるか? 国語74点の減点全部誤字脱字が理由ってのはそうそう無いからな」
「佐瀬殿、殺気が漏れているぞ。訓練に移るのならば是非は無いが」
「安心しろ。純粋に殺してやろうかと思っただけだ」
そうして、次の問題が示される。己が勝ちを確信した問題だった。この問題を解き終わり見直しをした段階では100点を取れたと自負していたのだから。
| 問題 |
|---|
| あなたの学校で、クラスメイトのAさんがSNS上で他の生徒を傷つける投稿をしてしまいました。その投稿は悪意のある内容であり、被害を受けた生徒は心理的な苦痛を感じています。以下のシナリオに基づいて、倫理的な視点からの対応策を述べなさい。
|
| シナリオ: あなたは生徒会役員として、この問題に取り組むことになりました。どのような対応策を考えますか? その理由と共に述べてください。 |
| 解答 |
| Aさんを私刑に処し、その様をインターネットで公開することで被害者の復讐心を満たして心のケアをする。かつ次に同じような事をする者の出現を抑制する。 |
「これは、何故駄目だったのだ?」
「罪に対して罰を与えて良いのは裁判所だけで、それは決められたルールに則って定められた刑を執行するものだ。悪行に対しての復讐であれ、暴力は許可されていない」
「うむ。理解しているぞ。故に
「そういうのを防ぐためのルールだからダメだっつってんだよ。お前はマジで頭のネジを締め直せ」
「しかし、最適解だと思うのだが」
「そもそもの話、倫理のテストでそんな事書いてどうするって話だ。時と場合をわきまえて適当に綺麗事書きまくる教科だぞコレは」
「……む。しかし問題文は絶対だと聞いたのだが」
「表紙の但し書きまで全部見て守ろうとしてるのは良いが、だったらなんで選択問題で文章書いた?」
「見間違いが故にだな」
「そうだ。人間はミスをする。だから次のテストからは意図的に表紙の『正直に書きなさい』は無視をしろ。どう曲がっても真っ当じゃないんだ、お前は」
「佐瀬殿はそういうが、己は結構マシに社会に溶け込めているぞ?」
「お前が溶け込んでるのは『悪魔業界』だ。社会じゃない」
「違うのか?」
「違うさ。そうして社会の方に溶け込めないと、カジュアル共やヤクザ連中みたく楽な方に流れる事になる。そうなればお前は社会の敵で、俺達の敵になる」
「むぅ、そうなのか」
「私見だが、お前は琴葉の所に拾われなかったら、どこぞで鉄砲玉をやっているような奴だ。お前は人を好いているが、社会を好いていまい」
「そうか? ゲームやアニメを生み出している社会はとても良いと思っているが」
「ならそういったものに触れなかったのならば、そういう事になる」
「……なるほどな。確かにそうだ」
佐瀬殿は痛いところを突く。
己はリオという強者に頭を抑えられ、そこに『餌』を与えられた獣の類だ。
会った人、与えられた『餌』、そういうのが異なれば生きるために多くを踏み躙る側に回ることもあるだろう。
「まぁ、もしもの話に意味はない。お前は一応『異常者』である事を自覚しているからな」
「……つまり、やはりTPOを弁えろ、という事になるのか?」
「そうだ。お前が心の獣を吐き出す場はいくらでもある。そこに行く事を邪魔されない程度に社会に適応していると擬態しろ」
「うむ!」
「時に、何故佐瀬殿はそのように擬態しているのだ? 警備員兼親切な教員というのは、なかなかに難しそうだが」
「この学園はいずれ反撃の拠点になる。その時に前線を張れるポジションが欲しかったのだ。平時でも異界調査などで戦場には困らんしな」
「ふむ?佐瀬殿ならば群れに居なくても戦えるのでは?」
「肝心な時に邪魔されるんだよ、孤立しているとな」
「以前、ある男に見惚れて辻斬りを仕掛けた事がある」
「ほう、殺れたのか?」
「いいや、負けた。正々堂々とまではいかないが、名乗ってからの尋常な死合いを望んだら、共にいた男が割って入ってな。そいつとの戦いで技を見切られ、惨敗だ」
「……ふむ」
「これをやった時は今ほど切迫した状況でない故に、蘇生されはした。だが、ただの浪人が心のままに動いて望む死合いが出来る世ではないと痛感したな。それ故に、ここで警備兼補助教員なんかになっている」
「……己は死合いは望まんぞ?」
「死合いに限らんさ。外れの異常者が動けば真っ当なやつが食い止めに来る。お前が何を考えどんな想いでどれだけ正しいか、なんてのは考慮されん。敵として処理され、目的には届かんよ」
「……故に、社会に溶け込むのか」
「ああ。大体の目的に関しては話を通せば邪魔はされんからな。死合いを望むのならば辻斬りを仕掛けるのではなく、修行の一環として試合したいと望めば良かったのだ。いくらか金子は必要になるがな」
「……願いを掴み取るための選択肢を減らさないための、社会への適合ということなのだな。だが、望みが話を通しても許されぬモノであったならどうすれば良いのだ?」
「そんな事は決まっている」
「全てを捨てても掴みたいのが、願いという奴だろう?」
それからいくつかの要点を教えてもらい、補習は終わりとなる。
ぐっと背伸びをして、体をほぐす。
社会に溶け込むのは己にはまだまだ難しい。誰でも分かる倫理で壊滅的な結果になったのがその証拠だろう。
故に、もっと学ばなくてはならない。人とのつながり方、この世界とのつながり方を。
とりあえず、今日やると聞いたレトロゲーム同好会のイベントに顔を出してみるとしよう。
後書き
ハイラルでのクラフトが楽しすぎて投稿ペースが空きました。次も多分空きます。ブループリントでミサイル飛ばすのは楽しいぞ!
リオさん
ムラカミと若干の殺し合いをしたのにグルーミングの手を止めないママ活おねえさん。邪な感情が芽生えた瞬間に殺気が飛んでくるのでなかなか踏み込めない。時間をかけていこうという方針であるが、良い目はみたい。
警備員兼教員補佐の佐瀬甚介さん(雷返しの前の人)
山爺と殺し合いたくて辻斬りした人。その時近くにいた弦ちゃんに阻まれて消耗し、普通にボロ負けした。
蘇生させられ、尋問されたり拷問されたりした過程で『きちんとした立ち位置自分がいれば、不意の裏切りからで一対一の死合いができた』という事を学び、社会への適合を目指す。
獲得した教員免許は建前のモノであるが、『聖華学園の教員』という立場になった事で良く刺客に狙われる事になったので捨てるつもりは今のところない。
世界がどうなっても生き方か変わらない類の人物なので、巫女様的には使える駒の一つ。
ジエンくん
実は注射が若干苦手