姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝 作:気力♪
降ってわいた余暇を全力で満喫してはいたものの、時はやってくる。
己のいたシェルターが、この世界に引っ掛かるタイミング。ナサ殿により計算されたその軌道近くの異界を少し拡張し、シェルターが座礁するように仕向ける。
出費がかさみいくらかの借金をこさえてしまったが、まぁそれはいいだろう。返すアテはある。
「しからば、点呼だ!」
「琴葉リオ、いけるよー」
「ムラカミだ、問題はない」
「ツギハギだ。微力を尽くそう」
「トンボっす! お溢れで稼がせて貰います!」
「ナッジアント……で、これ必要か?」
「なんとなく引き締まるであろう!」
その発言に微妙な空気になるが、ツギハギ殿への紹介も兼ねていたので皆は押し黙った。
つい昨日踏破したこの異界は、普通の異界だった。普通にLV60周辺の悪魔がボスであり、ただただ迷路のように道がうねりまくっているだけだ。オートマッピングがなければ地獄を見ただろうが、普通に地図が見れたならば何一つ事故も起こらない普通の異界だった。*1
そうして、余裕を持って異界の最短路を進み奥に行く。そこには異界の主に据えた地霊ゴグマゴグがいる。異界を拡張するにあたって元の主は話が通らなかったので、代わりの悪魔を据えたが結果だ。
「良くぞきた。作業は終えているぞサマナー」
「うむ! 時間はあと20分。誤差はあると聞いたが大丈夫らしい」
「なんか嵐の前の静けさって感じだけどねー」
「実際そうだろ。ヤクザ連中が近くなんかしでかすぜ、俺のアドレスに関連情報が届いてた」
「アントさん死んでんのにまだ情報来てるんすか?」
「五月蝿え。死体は残ってねぇし連絡もとってるから対面してなきゃ気付かれねぇんだよ」
「あ、直に会う友達がいないから……」
「ぶっ殺すぞバカトンボ!」
「図星を突かれて暴れるな、ナッジアント」
がるるるるるとデフォルメ霊体の口から唸り声を上げるアント殿をトンボ殿が宥める。ネズミか何かをあやしているように見えなくはない。
ツギハギ殿は「大丈夫か? コレ」といった目で己達を見ている。トンボ殿以外は大体大丈夫な実力者な故、問題はない。
そうしていると、異界が震える。どうやらシェルターが引っかかってくれたらしい。拡張したエリアになにかの破片の類が転がって見える。
「行こう!」
「イデアオーブの技術、頂くぞ」
「楽して強くなりたいっスから!」
「雑魚の底上げにゃあ使えるしな、思考の汚染も大した事はねぇ」
「皮算用は後にして、攻撃と見てなんか仕掛けてくるかもよ」
「油断になるかもしれんが、この面子ならどうとでもなるだろう。初手にメギドラオンの乱射でもなければな」
「ツギハギさん、フラグ立てない。あと、その時は対応パターン3番でガードとカバーで回すから」
「あ、マッスルドリンコ飲み忘れてたっス」
「あ、己もだ」
「トンボちゃんは飲んでも耐えないだろうから良いけど、ジエンくんはダメだって。油断?」
「いや、朝にオロナミンCを飲んでいてな。体躯の小さいものはエナジードリンクの類は一気に接種しないようにと書かれていたので、本格戦闘直前に飲もうと決めていたのだ」
「……オロナミンCってエナドリ?」
「普通にエナドリじゃないっスか? カフェイン入ってますし」
「というか、マッスルドリンコの方にはカフェイン入っているのか?」
「入っているが微量だ。一応年少のが飲んでも中毒にはならないように調整はされている。オーバードーズは想定されていないらしいが」
「けど、オロナミンCと合わせるとどうなんスかね?」
「中毒が起きないのなら大丈夫だろう! いただくぞ!」
「……帰ったらカフェイン量とかチェックしよ」
雑談もそこそのに進んでいくと異界に座礁したシェルターが見えてくる。
外壁に傷がない部分はなく、所々穴が空いていてボロボロだ。結界の類も張られていないので侵入には困るまい。
「……これは、よくも次元を漂流できていたものだな」
「詳しい技術は知らぬ。戦略物資の他に集めていた資材がいつの間にやらコレになっていたのだ」
「……コレ元々は地下シェルターじゃないっスか?」
「そうだ。いくらか前の戦いでメギドラオンが直撃してな。シェルター本体は障壁で守れたが周囲の土地が禿げ上がり、こうなった」
「あ、そういう事か。なんか妙な形だなーって思ってたんだよね」
「……異世界的な建築様式ではなかったか」
ムラカミ殿が若干の落胆をしながら、二階部分の穴に入る。
セキュリティは動いているようには見えない。少なくとも侵入者に対して即応できるカウンター悪魔召喚やドローン兵器の類はなさそうだ。
ともすれば、監視カメラすら生きていないかもしれない。
「進むぞ」
マッパーで周囲を見つつ、記憶の通りの間取りを進む。
各フロアに、人々の暮らしの名残が見える。
小さな子供用の部屋履き、シミが目立つエプロン、壁に描かれた落書き、電池切れのタブレット、開けられ空になっている缶詰など。
いずれも、ある程度の整理整頓はされていた。立つ鳥跡を濁さずという言葉が頭に浮かぶような、それでも何かは残しておきたかった願いの痕跡のような、そんな印象だ。
「埃の類はない。掃除はされているのか?」
「……多分これ、缶詰の中ッス。一回綺麗にしてから蓋をしたから、汚れようがないんスよ」
何となくのイメージであるが、宇宙船の内部のようなものなのかもしれない。記録映像の中では埃などが飛んでいた様子はなかった。カメラに写っていないとか、埃が溜まるほど長期間放置されていないとかの理由なのかもしれないが。
「次元を漂流するというのは、宇宙を旅するようなものなのだろうか?」
「ナサくんが言うには大体そんな感じになるらしいわよ。シュバルツバーツ調査隊の報告書の公開分での推測らしいけど」
「セクター移動の原理だな。深層異界探索技術の一つとして俺の世界でも研究はされていた。まぁ、実現する事なく滅んだのだが」
「宇宙空間とは違うのか?」
「真空なのか意味わかんない虚数物質なのかの違いはあるけど、まぁ内側の空気を外に逃したらダメってのは同じじゃない? 知らないけど」
驚くほどに探索はスムーズに進む。道が阻まれている事はなく、セキュリティブロックも己のCOMPのクリアランスなら解除して進めるが故に。
このセキュリティコードが使えると言うことは、そっくりなシェルターではなく己のいた世界のシェルターであることが確定した訳である。ここまで人の気配がないと言う事は、そういうことなのだろう。
覚悟はしていたが、少し辛い。歓迎も迎撃もされていないという事は、皆は生きてはいないという事なのだから
「こちらが司令ブロックだ」
「んー、司令部の前に動力ブロック見ときたいんだけど」
「有限発電炉ムサシは司令部直下にある。危険だが、旧司令部は吹き飛んだのでな」
「有限発電炉?」
「もともとは市ヶ谷に無限発電炉ヤマトというものがあったらしい。戦いで破損したそれのデッドコピーがムサシになると聞いた。おおよそ高効率のMAG発電と言って間違いはない」
「無限発電か……ロマンがあるけどまぁ確実に碌でもないよね」
「案外、その影響かもしれんな。このシェルターの人気の無さは」
ドアロックを抜けて、司令ブロックに侵入する。
そこにあったのは一つの物体だ。
口枷が嵌められたゾンビの手足が物理的に接合して繭を作り、その中心に一人の女子が佇んでいる。
下半身はゾンビ共の肉と繋がって混ざり合い、境界はわからない。上半身は繭から出ているが、その身体に傷のないところはない。
数瞬見ているだけで傷が生まれ、また癒えてかさぶたとなり、別の箇所に傷が生まれている。
破壊が続いている中で、再生し続けている。
そんな傷によって赤く染まった女性は、目を開いてこちらを見る。
知らない顔だが、懐かしい顔だ。
「人外ハンター、ジエン」
「うむ。いまさっきシェルターに帰還した。貴女は?」
「フジワラ。4世代目だから、君は知らないだろうけど」
「己の仲間達の、子孫という事か?」
「そう」
そう言われてみれば面影がないわけではない。フジワラというのは人外ハンター商会の頭目を張っていたフジワラ殿の血縁が故だろう。先に逝った親や祖父の名前を子につけるのは不思議なことではない。
「単刀直入に聞く。己がこのシェルターから離れてから、何があった?」
「……なにも」
「進むことも、逃げることもなく、戦う敵も現れず、何もなく、滅びました」
何もないというにはいささか様変わりが過ぎているようだが、おそらく戦う事ができない脅威によって滅んでしまったというのが本筋だろう。フジワラ殿の装いはどう考えてもまっとうなそれではないのだから。
ただ、その顔にある絶望とそれでも折れない意志の強さは本物だ。感じる強さも相応に強いものであり、おそらく80の後半には届いている。
「私はこのシェルターの最後の指導者として、新たな世界に上陸することを拒絶しました。皆もそれに納得してくれています」
「……皆というのは、ソレか?」
「はい。皆は、MAGがなければ死んでしまうので、こうなっています」
一人の子供に縋り付く醜悪な死体たち。涙を流すこともせず、淡々と受け入れでいるフジワラ。一見すると気味が悪いと思えるその姿には、不思議と不快感は浮かばない。
リオ達の様子を見るに、己だけみたいだが。
「皆は、シェルターの機能を維持するための生体パーツになる道を選びました。老いて死ぬよりは、と。中段右から三番目の彼女は貴女と同年代でしたが、生体パーツになるのを選んだ時には立つこともできない状態でした」
「……この、老婆は」
ゾンビになり、老婆になっても印象というのは分かるものだ。そこにいるのは錦糸町で老人と二人で暮らしていた慧眼の少女だ。
彼女の誠を見るあり方に、助けられたのを覚えている。
今では、その目には何も映っていない。
「……ならば、どうしてもイデアオーブを投下しているのだ?」
「貴女が今漂着している世界は、悪魔と戦う最前線です。このシェルターも、私たちも上陸はしませんが、物資や技術を腐らせる事もないでしょう」
「……それだけか?」
「ええ。この世界に望んでいる事はあまりないのです。生きてさえくれていれば、それで」
フジワラの言葉は、おそらく本心だ。
だが、確実に何かを隠している。本心の奥底にある、願いを。
「つまり、死にたいのか?」
「ええ、
そこで、気付く。
この女は、ただ死にたいだけなのだ。なのに、使命がそれを許していない。雁字搦めだ。
「自殺が望みならば、その骸から技術や資材を剥ぎ取りたい。かまわないか?」
「残念ながら、まだやる事があります。
「ならば、始める前にデータは渡してくれ。こちらのムラカミ殿はイデアオーブの製法を望んでいる」
「なるほど。わかりました」
その言葉と共に放たれる思念波。圧力だけで怯みそうになるそれを受けて、己達は一歩下がるだけで済んだ。
ムラカミ殿は思念波の直撃を受けて一瞬意識が飛んでいた。
「……ッ⁉︎戻れた、か……ッ!」
「何を見た?」
「イデアオーブの製法と、素材を。思念波で脳内に叩き込み、経験を走馬灯のように追体験させたのか!」
「はい。では、お帰りください。私に貴方を攻撃する理由はありません」
「巫山戯ろ。
吠えるムラカミ殿。その体からは風が吹き出ており、今にも怒りで爆発しそうになっている。
「死人程度のイマージュに耐えられない命は、コレから先に必要ですか?」
「必要だ!」
フジワラの語り口に、激情をもって拒絶を返す。その様は、芯のある一人の命としてすこし美しく見える。
「戦うだけが価値ではない! ソウルの強さだけがその人間の生きる意味ではない! 学び、育み、作り、笑う! その全てが生きている事だろうが! 戦うだけのマシーンを量産して、その先に何が待つ!」
「戦うだけのマシーンがなければ、世界は滅びます」
しかし、フジワラは激情に流れない。彼女には彼女の理屈がある。
「これまでの戦いで世界が崩壊していないのは単なる奇跡です。これまでは万に一つの偶然が重なっただけで、全体の実力で世界を守れた訳ではありません」
「そんな世界など必要ない! 戦いたい奴が戦って守る! それがこの世界のルールだ!」
ムラカミ殿の激昂がツギハギ殿とリオに伝播する。
「貴方方には、私を殺す理由があるのですね。理解はできませんが、彼を殺した後でならいくらでも」
「そもそも、なんだってジエンくんを殺したいのさ。ケガレビトだっけ? 地底生まれの人を指す蔑称だって聞いたけど、それじゃないんでしょ?」
「彼の中には悪性情報が存在しているからです。このシェルターを壊滅させた根本的な原因が」
「……悪性情報?」
「滅びを受け入れる意志。人の心の奥底にある『死に還りたい』という願い。それを過剰に拒絶するものです」
「そんなの誰だって持ってないッスか? 人間たまには死にたくもなるっすけど、なんかなんとなくで生きてるじゃないッスか」
「はい。誰にである、存在しなければならない天秤の片方です。ケガレビトである彼にはそれがない。ワクチン接種と称したイマージュ操作によってその想いに蓋をされているのです」
「……良い事じゃないの」
「滅びを受け入れてその上で生きようとするのならば問題はありません。しかし天秤の逆側に何もないままでは、必ず器はあふれて『死神』へと変わるのです」
「この世界の全てごと自らも死のうとする、最低最悪の死神に」
「へぇ、自己紹介?」
「はい。私もそうですし、生体パーツとなった皆さんもそうです。このシェルターの管理プログラムと直結する事で衝動を抑制しているだけですから」
「……その、死神とやらになったらジエンはどうなる? こいつは強いが、一人が暴れた程度で世界は揺るがんぞ」
「いいえ、揺るぎますよ」
「人外ハンターランク8が死神と化した場合のレベルはこの世界基準で97。『マガオン』による思想汚染能力を保持し、各種バッドステータスを発動しながら高位悪魔の召喚すらも可能とする化け物です。討伐隊を組む必要がある程度には、揺るぐでしょう」
皆がチラリと己を見る。事実よりいくらか盛られている感じはするものの、概ね正しい。
「世界滅亡の遠因となるかもしれぬのだな、己は」
「ええ。だから殺しておかなくてはいけません。フジワラは護国のために全てを投げ打った一族です。末代として、跡を濁さない程度の使命感はあるのです」
その言葉には嘘はない。苦しく死にたいような最中でも、貫くべきと信じた使命なのだろう。
「理解した。そちらの要求は己の命だな?」
「ええ。死んでくださいケガレビト。ただの穢れになる前に」
「断る」
「己の体が悪いウィルスだとか、己が時限爆弾のように四散するとか、そのあたりの物理的に許せぬ理由があるのならば、己はここに留まるつもりはあった。ネットの皆で議論すれば、共に生きる目も見えるだろうから」
「悪性情報は、そうではないと?」
「ああ。それは心の話だ。由来がどうあれ、己は生きたい。美味しいらぁめんを味わって食べれるようになりたいし、読みたい漫画も、やってみたいゲームも、見たい映画も多くある! 友と共に語り合う事は楽しいし、勉強は難解だが学ぶ事は楽しい! 他の皆が熱中している事を知りたいし、己もそんな熱中できるモノを見つけたいと願っている!」
「たとえ今の生きたい気持ちが反転したとしても、また生きたいと思えると信じている! 故に、ここで死ぬことは選ばない!」
「ならば、貴方の目的は私の破壊ですか」
「それも違う!」
「……は?」
「貴女は死を望んでいながらも、使命のために生きようとしている! ならばまた生きたいと望む事だって出来るはずだ!」
「何を!」
「ここは! 切り捨てなければ生きられなかった己達の世界ではない!」
「遠目で見た事で納得するな! 自らの限界を規定してどうする!」
「メインシステムから離れて、死神に呑まれてしまえばどうなるか! 私は世界の敵になるつもりはない!」
「ならば証明して見せよう。
高まったMAGがぶつかり合い、戦いの火蓋が切って落とされる。
| マハムドオン | 魔法スキル | 敵全体に呪殺属性大ダメージ ニヤリ時は即死効果付与 |
先手を取ったのは敵方。ダメージタイプのマハムドオンであり、ニヤリ状態ならば即死をかますような技だ。
どうにも先の戦いで魂が昂り、『ニヤリ』状態になっていたらしい。即死の感覚がある。懐に仕込んでいたホムンクルスが身代わりとなって腐り落ちていた。
そして現在己は呪殺対策として無効アクセサリー『ホープの指輪*2』を装備している。それが抜かれたということは、つまり!
「呪殺貫通か!」
「カバーあざっすツギハギさん!」
「強化なしにこれか! アナライズ、まだか⁉︎」
「テトラジャストーン*3だ! どうせボス耐性だろ! 攻撃当てならがなんとかするんだよクソッタレ!」
「……レベルは見えた! いつも通り、馬鹿みたいに強いわよ!」
| シャーマン | フジワラ | LV86 |
| 装備悪魔 | ヤソマガツヒ | LV86 |
| 軍勢 | 生存者たち | LV32 |
「ヤソマガツヒ! まさか必殺の霊的国防兵器か!」
「いいえ、彼らの死体で作られたコレは、必殺ではなく逆襲! 一矢報いるために生み出された人類の爪牙!」
「逆襲の霊的国防兵器だとッ! どれだけをその肉体に捧げた!」
「全てです! これも私諸共葬るべきものですが、今はその力を利用する!」
「んー……亡霊さん、チヌンロプさんのお力を借りるっす」
「こんな鉄火場で即興技かよ」
「いや、なんか使えってうるさいんスよ」
| 予防のパウパウ | 補助スキル | 次のターンまで状態異常を防ぐ |
「
| 獣の眼光 | 特殊スキル | 自身の行動回数を1回追加する(SH2) |
| アクセラレート | 特殊スキル | 自身の行動回数を1回追加する |
| 殺風撃 | 魔法スキル | 敵単体に衝撃属性特大ダメージ ニヤリ時貫通を付与 |
「ノーガードで受け止めた?」
「ダメージ軽微、問題はありません」
「ゾンビを盾に使わなかったな」
「皆さんは、能動的な活動ができないだけでまだ生きています。なぜ仲間を盾にしなくてはならないのですか?」
「道理ではあるな!」
敵の連続攻撃を警戒したが、動きが遅い。手番を遅らせているらしい。いつでも動ける形で、何かを狙っている。
「ひとまず回復だ。クイーンメイブ、メディアラハンだ!」
「そいつですか。『忌念の戦慄*4』」
クイーンメイブのメディアラハンにて回復を行なった次の瞬間に、複合バッドステータススキルが飛んでくる。クイーンメイブを確実に逃さない効果範囲だが、他の皆も被弾するような広さである。
これは、耐性がなければほとんどの状態異常に複合的にかかる恐ろしいスキルだ。
しかし、今回はどうにでもなる。
『予防のパウパウに』よって、バッドステータスの無効化が可能になっているのだから。
「ヤソマガツヒを、読んでいた?」
「あぁ、こっち見たっスよ! 誰か庇って欲しいっス!」
「自分で守れ! 自分の身だろうが!」
「私が死んだらバステ祭りっスよ! 戦略です戦略!」
「ですが、問題はありません。彼女のレベルは低く、一撃圏内です」
亡者の一人がフジワラに対してスキルを使用する
| チアリング | 補助スキル | 味方単体にニヤリ状態を付与 |
あれは、マガオンの逆の対象の魂を高揚させるスキル!
「必中と即死狙い! バステも含めて事故らせようとしてるねコレ!」
「させん! 『マガオン*5』」
「幾らか早いです。私を助ける声は数多くあるのだから!」
| チアリング | 補助スキル | 味方単体にニヤリ状態を付与 |
「ゾンビの方、これ全員動けるの⁉︎」
「生体パーツとなっても、皆さんはまだ生きて私を助けてくれるのですよ。マハムドオン」
ニヤリ時のマハムドオンが放たれる。貫通効果によりこちらの全員にダメージを与えるが、即死効果は発動しない。テトラジャの効果である即死無効が故だろう。
まさしく、知識は力だ。
「『宝玉輪*6』! あの貫通はカーンを貫くタイプだ! マカラは張るな!」
「衝撃は抜けましたね、ならば氷結はどうですか?」
| ブフダイン | 魔法スキル | 敵単体に氷結属性大ダメージ |
REFLECTION 氷結反射
ロキが放った小手調べの『ブフダイン』が反射される。敵の相性は氷結反射。ロキは反射されたソレを吸収したが、メイン火力の一つが使えなくなった。
今は呼吸も手番の流れも揃えていないから崩れる事はないのが幸いだろう。
「耐性チェック! 物理はアナライズで見るよ!」
| マハジオストーン | 攻撃アイテム | 敵全体に電撃属性小ダメージ |
REFLECTION 反射
「ゾンビには等倍! フジワラは反射! メインシステムには届かない!」
「いや! あれは『隠し身*7』か何かだ! 攻撃は通らんぞ!」
「面倒臭い事を!」
「だが、だからこそ行動は起こしてない! 場に影響を与える自動効果の類を警戒しろ!」
「何してくる……いや、本当に何してるのさ!」
メインシステム、ヤソマガツヒの動きが始まる。見えているヤソマガツヒが2体になり、片方のMAGが高まりレベルアップした後に消滅。続いて2体目もレベルアップしたように見える。
戦闘中であるのに研鑽を行うとは好き勝手を。
「これで、2つ」
「……何か、やばい!」
「コンセントレイトの類か? だが、なぜ2体になって……」
3分の活泉により高い耐久をもっており、貫通で抜けない%耐性*8を持っているファフニールを前に出し壁にする。
| マハムドオン | 魔法スキル | 敵全体に呪殺属性大ダメージ ニヤリ時は即死効果付与 |
フジワラのマハムドオンを受ける。
生体パーツたちからの『チアリング』が直前に入る上、マガオンでニヤリを外そうにも数瞬ずらされればまた魂が昂らされる。
だが、先ほどのダメージを考えれば耐えられないレベルではない!
そんな己を、マハムドオンが直撃。致命打として命中したそれは、先の一発より明らかに重い。即死効果ではなく、純粋なダメージ量で死にかけた。
「……コンセントレイトじゃあねえ。ダメージ上昇量があれよりは少ねえ。『テトラジャストーン』」
「限界ラインが近いですサマナー。『メディアラハン』
「感謝するぞクイーンメイブ! だがまだ盾として生き延びろ!」
「ファフニールさん、どうっスか⁉︎」
「マダ耐エラレルゾ! 俺ハァ!」
トンボ殿が『予防のパウワウ』を使い、バステ無効結界を作る。
一回りと少しした事で、敵の手番の流れが見えてきた。
まず、フジワラは3手動く。しかしチアリングで
忌念の戦慄をブロックされた時に
現在は息を合わせず完全に乱戦となっているため攻撃の後に回復を差し込めるが、整えられたら呪殺貫通込みの連打で殺される。フジワラと生体パーツの動きを連動させてはならない。
次に、生体パーツたち。能動的な行動は特に起こさない。単体攻撃をカバーしたりもするが頻度は低い。
そして、『ヤソマガツヒ』。
必殺の霊的国防兵器の死骸から作られたサイボーグ的な存在だろう。増えて、消えるという行為だけを行なった。
だが、間違いなくその行動はフジワラを強化するためのもの。存在こそマシンとして存在しているが、補助パーツのようなモノなのかもしれない。あるいはペルソナやガーディアンのような役割のヴィジョンであるか。
現在は狙いは定められない。己の目にはフジワラに重なっているように見えるので、生体パーツを強化するような役回りはしていないようだ。
「まず潰すのは生体パーツの方だな! 大の大人がガキに縋り付いて、恥ずかしいとは思わねぇのか⁉︎」
「子供を殺そうとして死んだ人が言うとアレっすね! 説得力っス!」
「今それを言うかバカトンボ!」
縋り付くパーツたちは動じない。動じる心が残っていない。
フジワラは、顔を歪ませている。仲間たちを悪く言われたことに怒りを覚えているのだろう。
| チアリング | 補助スキル | 味方単体にニヤリ状態を付与 |
奴の魂が励起する。
縋り付いて、背中を押し続けているそれはやはり、良いモノには見えない。
どれだけの絶望の中選んだ一つの選択だとしても
そこに笑顔がないのならば、死にきれんだろう。
「臆せず攻めるか! 奥義一閃*10!」
ツギハギ殿が敵全体に対して一発の斬撃を放った。惚けそうになるほどに美しい太刀から放たれた一撃には即死効果があり、生体パーツの命を刈り取るには効果があった。
だが、カバーされて残った奴はいる
| リカームドラ | 回復スキル | 味方全体を蘇生し、完全回復する。その後術者は死亡する |
献身によって蘇る生体パーツ。自己犠牲すらも厭わずに、勝利のための最適解を行う。
COMP内部に収納されている訳でもない彼らはその場で蘇り、また繭のように一塊になっていく。
「……俺がメインを張る! 合わせろ!」
「なんか思いついたね! オーダーは?」
「残敵処理を任せる!」
「よしきた!」
ムラカミ殿が動き出す。初手にてアクセラレートと獣の眼光の二つ、加算タイプの行動増加を行ったことで3手動けるようになったムラカミ殿は、初手にて広範囲への『
| エナジードレイン | 魔法スキル | 敵全体に万能属性ダメージ、HPとMPを吸収する (ソウルハッカーズ2 ボス専用技) |
「リカームドラは魔法スキルだ! 全員のMPが枯れていれば起動はできまい*11!」
「そんなもの、回復すれば」
「そこのデク共に考える力があれば、早く動くだろう。だが! 押し付けた痛みにも、苦しみにも共感できん輩が知性など残しているかよ!」
「皆を、侮辱するな!」
「侮辱されるべきを晒しているのはそいつらだ!」
二発目のエナジードレインが放たれる。しかしそれは巧みなダメージコントロールにより一体の生体パーツが無被弾で生き残る。
「このタイミング!」
| 暗殺拳 | 物理スキル | 敵単体に物理属性大ダメージ 敵の防御効果 (仲魔生存時のダメージ軽減)を無視する |
そして生き残ったパーツは、リオの暗殺拳によって砕かれる。これで、フジワラの火力は次からニヤリ補正分低下する。
「『マガオン』! ようやく笑みが消えたな!」
| リカームドラ | 自爆スキル | 味方全体のHP、MPを全回復する |
| チアリング | 補助スキル | 味方単体にニヤリを付与する |
「消えたとは、何が?」
「敵の生体パーツは全て破壊した筈だ⁉︎」 殺り漏らしが居たのか⁉︎」
「当然です。ヤソマガツヒのメインフレームはこのシェルター全体。ここが中心ではありますが、ここだけがヤソマガツヒではありませんから」
「……一時撤退! 蘇生タイプと回復タイプのリカームドラが回っていたら戦いにならないよ!」
「逃がすとでも?」
「逃させるとも!」
| ルナトラップ | 特殊スキル | 3ターンの間逃走不可能状態を付与 |
| フォーメーション変更 | 基本行動 | 隊列を変更する ペルソナ1など |
「ジエンくん⁉︎」
「結界から味方を引き離しましたか」
「マップは渡したものが使える! シェルター全体の生体パーツ全てを同時に破壊しろ!」
「耐えられるか?」
「存外なんとかなりそうだぞ! タイミングは掴んだ!」
「タイミング?」
マハムドオンが発動するのと同時、魂の昂りが技の冴えに影響する一瞬前。そこに差し込む。
そうして必中がなくなれば、己と悪魔で4、リオ、ムラカミ、トンボ殿、アント殿、ツギハギ殿と合わせて9。
それだけを範囲に入れれば、確率的には誰かが回避できる。
まぁ、これからは4人になるわけだけれども。
「私としては、貴方を殺せれば構わないのですが」
「己は死なない。ので問題はない」
「不死身でも気取っているのですか?」
「気取ってるな。格好いいではないか。不死身という奴は」
クイーンメイブの『メディアラハン』、ファフニールの『雄叫び』、ロキをチェンジさせて放つソロネの『ランダマイザ』
弱体を入れながら、敵の行動のトリガーを見る。
| デクンダ | 補助スキル | 味方全体の弱体状態を無効化する |
「強化弱体に対して私が何もしないとでも?」
「……そこ!」
| チアリング | 補助スキル | 味方単体にニヤリを付与する |
| マガオン | 補助スキル | 敵単体のニヤリを解除する |
| マハムドオン | 魔法スキル | 敵全体に呪殺属性大ダメージ |
敵の呼吸が、見えてくる。
クイーンメイブをファフニールにカバーさせ、己とソロネは回避のチャレンジ。
己は動きが遅れ直撃したが、ギリギリ耐えられる。ソロネは己のマガオンのタイミングで回避行動を始めたので、回避に成功。手番が止まる。
「OKわかった! バフだけかけとくよ!」
| 殺気 | 補助スキル | 味方全体の攻撃力と命中、回避を1段階上昇 |
「シェルター全体の生体パーツを残らず同時に始末する! それまで耐えろ!」
| マハ・スクカジャ | 補助スキル | 味方全体の命中、回避率を1段階上昇 |
「合図をくれ! 合わせてこの場の生体パーツも破壊するとも!」
「……貴方は、それまで死なないでいられるとでも?」
「いられるとも!」
「もう、チャートは見えている」
追加でコウモクテンを召喚。己の呼吸を外すことによって指揮する仲魔を4体に。
クイーンメイブの『メディアラハン』で全体回復。
ファフニールとソロネは弱体。
コウモクテンは『威圧の構え』
己はマガオン差し込み用の待機
フジワラの手番が始まる。
まずはコウモクテンの威圧によって動きが狭められ一手固定。
次に弱体状態を解除するデクンダで2手目固定。
そして、チアリングを差し込む生体パーツとマハムドオンの即打ちの間にマガオンを差し込む。すると手番は3手全て終わり、己達のダメージはマハムドオン一発だけ。
回復を怠らなければ、耐えられる。
「……ええ、時間稼ぎはできていますね。ですがそれだけです。貴方は私に何一つのダメージも与えられていない」
「ダメージ与えても回復されれば無意味だからな」
「しかし、それもいつまで続くか。貴方のMAGは有限です」
「……いいや? フジワラ殿が思っているよりかなり余裕はあるぞ。懐は寂しいが、アイテムは溜め込んでいたからな!」
戦いは続く。
ヤソマガツヒ本体の動きは、あまりない。
何かの動きを行なっており、時たま分裂と消滅をする。そして、ヤソマガツヒが消滅をした次の一撃からマハムドオンの威力が上昇する。
最初はクイーンメイブが素で耐えていたものだが、今ではファフニールに隠れていなかったら即死するレベルになっている。
上昇幅はおおよそ1.4倍。ギガプレロマと同程度だ。
「懲りませんね。『マハムドオン』」
「懲りないな! 『マガオン』!」
「貴方と共に来たのは現地人でしょう? 貴方の為に命をかける理由はあるのですか?」
「さぁな! まだ時が経っていない故断言はできん! だが己は彼らと共に戦って、共に生きていて楽しかった! 彼らもそうなら、命程度は賭けるだろうさ!」
そうしていると、スマホに連絡が入る。
生体パーツを同時に破壊するプランが示されている。
大味で危なっかしいが、いけそうだ!
同意を示す意志を送った瞬間に起きる爆発音。
天井が砕かれ、壁が爆散し、シェルター床から引き剥がされた生体パーツが放り投げられてくる。
「何をッ⁉︎」
「同時に破壊すればいいだけなんだから、その辺に転がしとけばいいよのね!」
「……まさか公の太刀が、こう使われるとはな」
「マスターソードも木こりの剣になる時代っスから。へーきっスよ」
見れば、生体パーツたちはシェルター壁面ごと切り離されていた。肉体ならば回復されてしまうからだろう。そんな工事に対して自己防衛するシステムはないものか? と思いはしたが、そんな余裕は残っていないのだろう。
「……人の家を、踏み荒らして!」
「死肉毒団子を投げ散らかした貴様がいうことか!」
「ジエンくん! あと2ターンね! あと、アナライズ結果出た!」
「
「よし来たぁ!」
| 牙折り | 物理スキル | 敵単体に物理属性小ダメージ 攻撃弱体を付与 |
「……だが、ヤソマガツヒも整った!」
| マハムドオン | 魔法スキルスキル | 敵全体に呪殺属性大ダメージ |
| 呪殺ギガプレロマ | 自動効果スキル | 呪殺属性の攻撃力を大きく上昇させる(1.4倍) |
| 呪殺ギガプレロマ | 自動効果スキル | 呪殺属性の攻撃力を大きく上昇させる(1.4倍) |
| 呪殺ギガプレロマ | 自動効果スキル | 呪殺属性の攻撃力を大きく上昇させる(1.4倍) |
| 呪殺ギガプレロマ | 自動効果スキル | 呪殺属性の攻撃力を大きく上昇させる(1.4倍) |
「ガハッ⁉︎」
「ソロネが一撃圏内か!」
「……複数の悪魔からギガプレロマを抽出しているのか?」
「そんな無茶苦茶長持ちするもんじゃねぇ! 何かのデメリットは確実にある!」
「残りのターンで見切って見せるとも!」
己をメイン指揮下の4体の中に組み込んで、残り2ターン。
まず、ソロネが一撃圏内ということは己も当たれば即死する。食いしばりはまだ残っているので、残り1回を躱す必要がある。
コウモクテンはまだ圏外だ。だが次の強化が成功すれば一撃圏内に入る。
MPが切れかかっている問題もあるので、なんとかする必要がある。
「『チェンジ』です、ロキ」
「道具が必要なだけでしょう? 『生玉*12』」
なので、切り札の一つを消費する。クイーンメイブの回復を下げるのは少し怖いが、宝玉輪はまだ残っている。
「外し警戒で無駄な追撃は避ける!」
「『威圧構え』! 自由には動かさん!」
「サマナー! コレデイイノカ⁉︎」
「ああ! お前は待機だファフニール! カバーに集中しろ!」
「いい加減、終わらせましょうか」
床に転がされている生体パーツ達からも含めて、凄まじい量のMAGと、『チアリング』がフジワラに集中する。
フジワラは、初手における弱体解除を行わなかった。考慮はしていた手だったが、されて困る手であって。
しかし、最もハイリターンな手であった。
| マガオン | 補助スキル | 敵単体のニヤリ状態を解除する |
| マハムドオン | 魔法スキル | 敵全体に呪殺属性大ダメージ |
「あえて直撃で受けた⁉︎」
| 食いしばり | 自動効果スキル | 戦闘中に一度だけ、死亡するようなダメージの際HP1で耐える |
「己が見れば、仲魔に伝わる!」
先のマハムドオンは、ロキが回避した。
マガオンのタイミングで回避行動をすれば、6割程度で回避できる。これはここまでの戦闘で得られているデータだ。
それはおそらく、フジワラの『速』のステータスが低いから。
その足に縋り付いている者達を振り払うことができていないから、好き勝手に動き回る己達の動きについて来れていないらしい。
「なぜ、ここまで!」
「お届けに参りましたぁ!」
「これで、全員だ!」
衝撃魔法と物理攻撃によって吹き飛んだ壁から生体パーツが転がってくる。
「準備できた! やるよ!」
「……させない! 忌念の……ッ⁉︎」
フジワラの動きが鈍る。放とうとしたスキルを放てなかったかのような奇妙な動き。
恒常的火力上昇かつ弱体不可能な謎強化、そこにデメリットは、たしかにあったらしい。
破壊力の代わりに、多彩さが失われているのだ。
おそらく、スキル変異に類する現象*13
だったのだろう。使おうとした『忌念の戦慄』を仕損じたことから、かなりランダム性は高いとみた。
「『スマイルチャージ』、『マハザンダイン』! 2連打!」
「『奥義一閃』!」
「『デスバウンド*14』ォ!」
司令部に戻ってきたムラカミ殿、ツギハギ殿、リオが全体攻撃スキルを放つ。
部屋全体を巻き込んだ攻撃であり、当然己も巻き添えである。だがもとからそういう作戦なので問題はない。
「カバーはさせぬぞ貴様らには! バインドボイス』!」
あとは、諸共吹き飛ぶのみだ。
「貴様、何故⁉︎」
「お前は無理をしなかった! それは仲間の皆にトドメを刺す瞬間はお前にとっても同時に吹き飛ばせるチャンスだった! だからその時の為の強化を優先して、己は殺せれば良いという程度だった!」
「その慢心が、一手分の隙になった!」
「死ぬのを恐ろしいとは思わないんですか! 貴方は!」
「攻撃の火力が高すぎて、
「恐れを感じているのなら!」
「だが、なんとかなると信じている! その為に、この位置に陣取ったのだから!」
三方から飛ぶ5つの破壊の波。
仲魔を
奴は、縋り付いている連中を離さない。だから障害物として使えるのだ。
「ガハッ!」
まぁ、それは死体を全壊から半壊に抑える程度のダメージ軽減だけれども。
ケガレビトには死への欲求がない。
言われてみればなるほどと思わなくもない話だった。自殺なんてものが流行っているこの世界と異なり、己の世界では自ら命を断とうとするものはいなかった。腕を捨てても、足を捨てても、自由を捨てても、尊厳を捨てても、生き残る事ためならなんでもした。
人が死んだと聞けば皆が集まって身ぐるみを剥いだし、剥がれた後の肉体を切り取って食肉として売っていた人もいた。
一瞬前まで生きていた親友が死んでもその死体を囮や罠に使い捨てられるし、暖を取る為に悪魔の死体の中で眠ることもたまにあった。
それが、普通だった。
そんな己の世界の価値観は、真っ当なこの世界の価値観とはまだ合わない。だけど、己はこっちの価値観の方が好きに思えた。
死んだ仲間は余さず使いましょうじゃなくて、死んだ仲間を悼みましょうの方が、己は好きだ。
未来のために、生活の為に、戦いのためにならない娯楽のために生きられる。そんな世界の方が。好きだ。
死んだ仲間達だけの世界より、生きている皆がいる世界の方が、好きだ。
だから、もっと好きになりたい。フジワラにももっと好きになってほしい。
それは、死を望むあれこれよりも己の中では強いものだ。
きっと、これは不自然な感情傾向なのだろうけれど。
己は己を、気に入っている。
「反魂香っス!」
「感謝するトンボ殿! 状況は⁉︎」
「第二形態っスね! ゾンビの死体を材料にして合体魔人ヤソマガツヒ! って感じっス!」
「召喚、ロキ、ファフニール、コウモクテン」
トンボ殿の言う合体魔人ヤソマガツヒ。それは3メートルほどの巨躯の巨人だ。
フジワラはもう完全に見えない。メインコンピュータと接続している尻尾のようなものがあり、切り落としたく思えてくる。
動きはさほど鋭くはない。だが物理弱点が隠れたらしく、リオの攻撃はクリティカルには入るが弱点には入っていない。
「ジエンくん、いいっスか?」
「手早くな」
「勢いで戦ってますけど、あの子死にたがってるだけっスよ? こんなボコボコにするような形で引き摺り出したって、止まらないっス。あそこまで落ちた奴ってよっぽどの事がなかったらそのまま死ぬだけっスよ」
「……それでも、変わるものはある」
「己は昔、『美味しい』を知らなかった。けど今の己は『美味しい』の為なら命を賭けてもいいと思えている。フジワラにも、きっとそういうものがある。そう己は信じている」
「……押し付けてるっスねぇ、親切。やっぱりジエンくんって変っスよ」
「そうか?」
「まぁ、せいぜい頑張れって感じっスね。援護はしますから!」
「うむ! 心強いぞ!」
「……そういうところが変だってんですよ。まぁ、嫌じゃないっスけどね!」
そう言ったトンボ殿の雰囲気が変わる。
腹を括ったらしい。何かをすると。
「あの子の基本行動は変わらないっス。縋り付いてる肉が『チアリング』であの子の心を縛り付けて、メインシステムがあの子の動きを縛ってる」
「肉の方は、リカームドラを使わなくなったな」
「はい。なんで外側はリオさん達がやってくれるっス。だけど、内側のメインシステムを破壊しないと、あの子はずっと動けない」
「……それを、今?」
「全リソースが戦闘に注がれている今なら、半端者の私でも精神のデータ化ができるっス」
「分かった。任せるぞ」
「ちょっとは疑った方がいいっスよー」
「トンボ殿は欲深く浅慮な所もあるが、つながりを大切にできる優しい人で、己の友人だ」
「……はい、分かったっス。無駄だって」
己の額に指を乗せたトンボ殿。その指に己の心が引っ張られていき、それをもう片方の手からシェルターへと入っていく。
シェルター全体がコンピュータということは、シェルターのどこでも侵入できるということなのだろう。
似ているがシャーマンとしての技ではない。霊魂を操るそれではなく、電子機器に魂を影響させる類の技だ。
テクノシャーマン
そういう者がいたと、どこかで聞いたことがあった気がする。
「さぁ、頑張って欲しいっス」
その返答として、サムズアップをした。大丈夫! という意味だった筈だ。
「ヤソマガツヒィイイイイ」
眼前にいるのは、醜悪な悪魔。
日本神話にて、イザナギが黄泉の国にて受けた穢れが形になった悪魔。
彼は穢れを司るものであり、穢れそのもの。
しかしそれは黄泉の国の穢れであって、人の業だとかを煮詰めて濃縮した『コレ』は関係ないだろう。
ヤソマガツヒは、そんな穢れをひたすらに抑え込んでいた。誰の穢れかは言うまでもない。
「ヤソマガツヒ。その穢れを離してくれ」
何故だ? と瞳が語る。
彼は苦痛を感じていながらもそれを離そうとはしていない。必殺の霊的国防兵器という『人を守る為の悪魔』である事を貫いている為だろう。
「穢れがそこに留まったままでは、フジワラはどこにも行けない。そのままでは、彼女は死ぬことしか選べないままだ」
「今は、未来を選べる世界なんだ。死ぬか生きるかは、フジワラに決めさせてくれ」
ヤソマガツヒからの、思念が伝わってくる。
『彼女の絶望は重すぎる。君の言う世界がどれだけ良いものでも、深く落ちた絶望は消せない』
「けれど、道は一つじゃなくなる。死ぬにしたって死に方も死に場所も選べるようになる。それでは、ダメか?」
『君は、彼女をどうしたいんだ?』
「生きて欲しい。仲間が、遺したものだから」
……その涙は、何だ?
「悲しみだ。仲間達に、己の食した美味しいモノを食べさせてやりたかった。己の見た美しいモノを、己のやった楽しいことを、共に楽しみたかった」
『そんなに辛く苦しいのに、どうして足を止めない? 絶望を感じているのは、君もだろう』
「絶望は絶望だ。それは足を止めたい理由にはなっても、足を止めていい理由にはならない。このままだと、彼女は一人で死ぬ。己はそれを許容したくない。仲間達を、何一つ未来に遺せなかった愚か者にはしたくない」
『そうして無理をすれば、君の肉体のマインドは絶望に染まり、君は彼女の言う死神になる』
「構わない。己が死神になった程度で、己の生き方は変わらないのだから」
『君を信じよう、ジエン』
『絶望の中で、それでも星を目指せる君を』
「感謝する、ヤソマガツヒ」
「貴方も、共に行かないか?」
『シェルターの中で廻している魂を解放したい。そのためには私は一度破壊されなくてはならない』
『だから、今は共に行けない。けれどもし、君やフジワラが外法に頼らず私を呼び出す事ができたなら──必殺の霊的国防兵器最後の一柱だったもの。ヤソマガツヒの力を貸そう』
「感謝する。心優しき穢れの神よ。いつかまた」
「ヤソマガツヒィイイイイ!」
「子供に縋り付いてるしかない老害が!」
「ガタガタ文句垂れてんじゃないわよ!」
「死してさっさと道を開けろ!」
目が覚めると、戦いの趨勢は決していた。
見れば、生体パーツ達がフジワラから剥がれている。サラスヴァティが召喚されている事から、テトラカーン系の戦法でハメたのだろう。機械的思考しかできなさそうな連中をどうにかするには最適なモノだっただろう。
「貴方は、何故……」
肉から切り離されたフジワラが地を這いながら己に言う。不思議なことを問うものだ。
「己の心が、そう命じたからだ」
そう答えると、フジワラは意識を失った。
納得したような、顔だった。
「このまま死ぬくらいなら、私の死体をアレに組み込みな。食い扶持も一人分減って、ババアの面倒を見る働き手も自由になる。いい事じゃないか」
システムの生体パーツになる事を最初に選んだのは、おばあちゃんだった。
昔に次元ジャンプということを行なって、真っ暗な世界を旅している私たちのシェルター。
そこで私は、フジワラという親から生まれた。
クローニングではなく自然生殖で生まれた子供は久しぶりで、皆が大切にしてくれたのを覚えている。後から思えば、システムを管理できる人手として歓迎していたのだろうけれど、それでもそこにある愛は本当だった。
私たちのシェルターは、多分それほど大きくない。たまに座礁する異界の悪魔とは良くて互角の強さだし、物資が足りなくて設備の幾つかは壊れたままだし、沢山死ぬから戦力のためにクローニングで人を作っている。
かつてシェルターに住んでいて、死んでしまった人の遺体を素材に使っているそれは、生まれ変わりだとして皆に受け入れられていた。
クローンの皆も、その声に誇らしさを感じていた。
そうして幾つかの異界に座礁して、また逃げてを繰り返していくうちに、私は少し大きくなった。
そして、シェルターの管理AIはデータを蓄積して学習して、特殊な石化状態になった人間をそのまま計算部品にするという技術を生み出した。限りある資源の中で出来ることを考えた結果だった。
皆の意見をまとめたり、皆に道を示したりしてくれたおばあちゃんは、生まれ変わりを選ばずにそのシステムに組み込まれることを選んだ。その方が、良いとして。
そうして、一人組み込んだコンピュータは今までの数十倍のスペックを引き出して、皆を良く導いてくれた。正しい選択だった。誇らしかった。
けれど、おばあちゃんが死んだ心の悲しみを埋めるには、程遠いモノだった。
ある日、戦闘チームの一人が自殺をしようとした。周りの皆が止めたけれど、彼は「生きていたくない」と言った。
だから、コンピュータに組み込んだ。
皆、心が痛かった。
けれどそれは、コンピュータが示した『逆襲の霊的国防兵器』という希望を見せるまでだった。
コンピュータに霊的国防兵器『ヤソマガツヒ』の遺体を組み込むことで作り上げられるそれは、人類の叛逆の牙になり得るものだった。
それを見て、戦闘チーム達は皆身を捧げた。
戦力的には、ヤソマガツヒの方が戦闘チーム全員より強いから。合理的な判断だった。皆もそれを祝福した。
けれど、そんな悲しみに耐えられる心は、誰も持っていなかった。
ある時、ヤソマガツヒを使ってシェルターの皆を殺そうとした人が現れた。クローン体じゃない人で、おばあちゃんの息子だった人だ。
「ケガレビトは、生きるべきじゃなかったんだ」
そう言い残して心を閉ざした彼は、死神になった。だから、ヤソマガツヒで無力化した。
そして、その体を加工して生体パーツにし、ヤソマガツヒに組み込んだ。
そうしたら、いつのまにか皆がヤソマガツヒでのシェルター壊滅を考えるようになっていた。
ヤソマガツヒは逆襲の兵器だ。人を滅ぼすためのものじゃない。そう説得して、時に戦いもして、その戦いによってシェルターの人員はたったの6人になっていた。
元の世界からジャンプした時の人数は300人程度。98%が死んだ今、シェルターの維持すら不可能になってしまった。
だから、皆はヤソマガツヒになった。
私はヤソマガツヒに指令を出す一人として、残りのリソース全てを使って生き残れるように調整された。
そうして、最後の一人になって。
ようやく、このシェルターは滅びるべきだと理解した。
ヤソマガツヒの発する思念波にある情報。その中にはかつてのフジワラに当てられた研究レポートが入っていた。ヤソマガツヒになった皆うちの誰かが、探し当てたのだろう。
そうして私は、私たちに投与されていたソレのことを知った。
異界環境適応薬と称されたその薬。異界に適応できる体にすると言われたその薬の中に含まれるおぞましいそれ。その中には特定の思想の刷り込み、悪性人格の漂白、死の欲動の否定、食人可能な内臓への変化、そして管理者への服従の機能が組み込まれていた。
部分的に、戦士たちを元にした
私も、例外じゃない。
だけれど、それをしたシステムにはもう悪意はなくて、ただ求められている命令『人類を守れ』ということを忠実に実行しているに過ぎない。
このもどかしい怒りを振り下ろす先はどこにもない。ヤソマガツヒは進化した結果私の行動を止める程度の事をできるようになっていた。
一人になった私は、死ぬことも出来なくなった。
そんな中、ある世界と接触した。
とても沢山の『
けれど、その中にも戦う力が足りなくて死んでしまう人がいて、生きるための力を貸したかった。
だから、ヤソマガツヒの身体を切り落としてイデアオーブを作り出した。
数多の残留思念を玉に込め、『マガオン』を応用した思念波放出機構を組み込み、最適化したデータを入れた。
世界とニアミスするたびにそれを投下して、それが誰かの力になれたらと思っていた。
けれど幾度目かの接触の際に、声をかけられた。
人外ハンターランク8、シェルターを逃すために戦った当時最年少のハンターで、今の私と同じくらいの年だった彼。他のハンターと同じく、手段の一切を選ばなかった人否人であり、英霊になったと思っていた一人。
おばあちゃんが、彼の死を悔いていたのを感じている。彼を見て、喜びを感じていた皆がいたのを感じている。
シェルターの総意は、彼と一緒に死にたいと、願っている。
彼はシェルターの皆に愛されていた。彼を直接知らなくても、彼がいなければ皆死んでいた事を知っているし、彼の行動や明るさによって魅せられた命が今まで繋がっているのを知っている。
だから、それが曇る事を恐れていた。
だから、彼が死神になる事を恐れていた。
だから、シェルターの眼前に迫った異界を回避しなかった。回避は、可能だった。
けれど、殺せなかった。
私は、勝てなかった。
皆のために、彼とと一緒に死ななくちゃいけなかったのに。
そうしていると、何かの匂いを感じ取れた。
暖かく、香ばしい匂い。
「なに……が……」
「あ、起きた」
「生きているようだが、食欲はあるか?」
「何故、生かしたのですか? 貴方達の、敵の私を」
「子供を殺して悦に浸る趣味はない」
そんなムラカミの言葉に深く頷くツギハギの男。不思議なことに、その顔はかつてこのシェルターを守る戦士『ツギハギ』と瓜二つだった。
「それが戦友の子孫なら特にな。違う世界のことで赤の他人なのだろうが、そんなものは些細なことだ。殺す理由は俺にもないさ」
そんな二人とは打って変わって、低レベルの女とその持ち霊は笑顔で語る。
「楽してレベル上げできたっスから! 私的にはもう二、三戦してくれたらなーって感じっス」
「次あったらお前は生かされねぇだろうがな! なんだあれ! ハッカーも真っ青だぞ!」
「その辺の死霊から借りたんス! 私が習得してるわけじゃないのでノーカンっすよ!」
「カウントあるに決まってんだろバカトンボ! お前が死んだら俺も死ぬんだからな! わかってんのか⁉︎」
ギャーギャーと言い争う二人は、とても楽しそうだ。かつてのシェルターでも見れなかった言い争いだが、その中には命があるように見える。
使命ではなく、欲望のためだけに生きているような、強い命の光が。
「まぁ、あんまり目覚めないと殺してから蘇生しようかと思いはしたんだけどさ。バステの大体は蘇生すれば治るし」
「……そう、ですか」
「というわけだ。フジワラ殿。貴女の力はレベルが下の己達を倒すことの出来ない程度の弱いものだ。だから、フジワラ殿が狂って暴れても大事にはならない」
「……はい」
「だから、一緒に行かないか? フジワラ殿のように強い戦士は求められているし、フジワラ殿が生きたいと思えるような事は、きっと多くある」
「しかし、私がメインシステムから離れたら……」
「まずは、これを食べてみてくれ」
カップに注がれているスープと麺のそれを、2本の棒で巧みに挟んで麺を口に押し付けてくるジエン。匂いに抗えずに口を開けて食してみる。
その時、瞳の奥から何か暖かいものが溢れてくる。
「……これは、何ですか?」
「知りたいなら、来ると良い! これに限らず、もっと素晴らしいものが沢山ある!」
「嬉しいです。けれど私は、離れられません」
「もう、接続は切っているぞ」
「……え?」
下半身を見る。そこにはタオルが巻かれていて、その奥には足があるのを感じる。
その向こう側には、ヤソマガツヒとなったメインシステムが存在した。
奇妙なほどに、沈黙していた。皆からの呪いの声が、聞こえない。死神化した私の体が、元の人間のモノに戻っている。
「……わたし、は」
「フジワラという奴は、博打をする奴ではある。だが、勝てない賭けはしない。死神化だったか? それにしたって代を重ねれば打ち勝てる程度の事だったのだろうよ」
「なら、皆はどうして⁉︎死ぬ必要なんか、身を捧げる必要なんか、無かったのに!」
「いいや、あった」
「このシェルターの機構では、一人分の処置しかできなかったそうだ。ヤソマガツヒがそう言っていたぞ」
「……まさか、そんな事で?」
「メインシステムを調べれば分かると思うわよ。貴女が見れないようにマスクされてるかもしれないけれど、ログはあるはずだから」
「私を、人間に戻すため? ……私を、生かすため?」
「無論、死を望んでいたのは嘘では無かった。絶望して、呪いになっていた願いから、全てを終わらせたいと思ったのも本当だろう。だが、望みを一つだけしか持たない人間など居ない。死にたいと願いながら、生きたいと動くのは珍しいことじゃあないのだぞ」
そんな最中、瀕死のパーツの一人がスキルを放つ。ルーチンワークにされた、皆が望んでいた行動を。
| チアリング | 補助スキル | 味方単体にニヤリ状態を付与 |
命を未来に繋げる事を、頑張れと言っていた
「あ……あぁ、ああ! ァアアアアアア!」
泣き喚く。みっともなく叫ぶ。
「私は! 皆に生きていて欲しかったの! 私だけで生きたいんじゃなくて! 皆で生きたかったの! 皆で生きて死にたかったの! なのになんでそんな事言うのよ! 一緒に行かせてよ! 一緒に死なせてよ! 一人は、嫌なんだ……ッ!」
この涙が、きっかけだった。
私の心は折れて砕けて。彼を殺して死ぬのはもう選べない。
システムとの接続が、完全に切り離された。
『逆襲の霊的国防兵器、システムヤソマガツヒ。適合者消滅により終了します』
『貴女の新たな旅路を、ヤソマガツヒは応援します』
「なんか、グラグラ揺れてないっスか?」
「……メトロイド特有のアレか?」
「いやいやいや、メインシステムが終了しただけでなんで爆発オチになるのさ」
「……有限発電炉ムサシは、シェルター全体の霊魂循環を常に調整していなければ安定しません。爆発の可能性は、あるかと」
「ウッソでしょ?」
足元から、爆発音と振動が響いてくる。
とても、危険な雰囲気だ。
「トラエストストーン! 効かない⁉って︎ここダンジョンじゃないもんね! そうだよね!」
「……とにかく走れ!」
「あ、カップ麺が!」
「己が飲む! ……飲んだ! 行くぞ!」
「なんて、冒涜的な食べ方を⁉︎あの美味しかった食事を……ッ!」
「戦慄しなくて良いから走れ! 死にたいのか!」
「……私は」
「問答がめんどくさい! 走るよ!」
どかーん、ばこーん、ずかーんと多種多様な音が響き、開けっぱなしである通路を駆け抜けて、異界へと駆ける。
こんなに必死に走ったのは、いつぶりだろう?
彼に引かれた手を引っ張って一緒に死にたい気持ちは、嘘じゃない。
けれど、まだ少しだけ見てみたい気持ちになった。彼が言う、世界とやらを。
「ウッソでしょゴグマゴグが殺されて主が取って代わられてるッ⁉︎」
「天使ソロネだ! 氷結魔法で始末する!」
「な、何故異界の奥からデビルバスターが⁉︎先程の爆発といい、一体何が起きているのですか⁉︎」
あと、可能なら私の弱点は何かで補強しよう。死にたい気持ちは消えないけれど、ああなりたいとは思っていないのだから。
ケガレビト
鴻上博士のイマージュ操作技術によって『中庸』と『生きること』を刷り込まれた空を知らない子供達。肉体もいくらか調整されており、内臓などが
死への欲求に蓋をされているため、どんな地獄のような状況の中でも生き残るために何でもする。諦めないのではなく、諦めることを知らないだけ。
蓋をされているだけで死への欲求は存在するので、一定量を超えるとそれが爆発する。死への欲求を受けたこともなかった精神は簡単に折れるし、心が折れれば
かつての世界では、ケガレビトは理解できない化け物の一種として見ていた市民が多かった。
ヤソマガツヒ
ヤクザの元で使われていたのを当時のハンターが仕留め、遺体を持って帰ってメカヤソマガツヒに作り替えた。
その後の戦いでメカヤソマガツヒも大破してしまったが機械化を調整することでシェルター全体をメカヤソマガツヒにできれば!と考えた天才的なバカがいて、その命令をメインシステムに書き込んでいた。
その時からシェルターに繋がれていたヤソマガツヒは、シェルターの皆を見ていた。親のように、あるいは神のように。
ジエンくん一党
ムラカミがイデアオーブの製法を知った段階で戦う理由はないのだが、ノリと勢いでレベル86に戦いを挑んだ命知らず共。
アイテムを湯水のように使いまくったので大赤字。シェルターにはまともな物資は残っていなかったし、フジワラを殺してもいないのでMAGも稼げてはいない。
けれど、一人増えてから食べた打ち上げの食事は、とても美味しかった。
フジワラちゃん
第一歩目として、カップラーメンを探し始めた