姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝   作:気力♪

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大爆発のあとしまつ

 あの大爆発からの出来事を、順を追って話そう。

 

 まず、異界は崩壊した。

 立地的にもGP的にも安定しており、霊的資源がそこそこ豊富であることから残されていた異界だったが、シェルターの爆発と異界の主の代替わりが同時に起こったことによる負荷は異界を構成する場を破壊するには十分なものであり、これはもう見事に崩壊した。

 

 異界がまるっと穴になり、底にずるずると引き込まれていくメシア教信者たちは、いっそ壮観であった。

 まぁ、今回は何かの儀式の生贄に連れてこられた方々であったので可能な限り助けるようにはしたのだけれど。それでもこの崩壊が天使ソロネが大天使へとランクアップするために行ったことなのだ! と勘違いしてしまった方々を救うことはできなかった。

 

 大多数の信者の皆さんの命を救えたので、後味はそれなりに良い。あとは警察やらがなんかいい感じにしてくれるだろう。騙されていた人も、目を曇らされていた人もそれなりにいたのだから。

 

 シェルターから出た瞬間にソロネとの戦闘やら市民の救助やらに駆り出されたフジワラの様子は、まだよく分からない。

 

 良いものを見せてやる! と意気込んで最初に見せたものが日常の延長の鉄火場というのは、なかなかに心苦しいものはある。

 

 次に行ったのは、ヤタガラスとの共同戦線だ。

 異界がまるっと落っこちたモノだから怒られるだろうか? と思えば、案外適当に済まされた。

 

 術師のお兄さんは目が死んでいたが、マッスルドリンコを飲んでいたので仕事に支障はないだろう。あれの意識覚醒効果は素晴らしいモノなのだから。

 とはいえ休める時に休んで欲しいのは本当であったから、可能な限りで助力をさせてもらった。

 

 というか、あんまりにも多くの悪魔が出てくるモノだから見過ごすことなどできなかった。

 

 異界の穴の封印を行うまでの間、穴の底から這い出てくる悪魔たちをばったばったと始末して半日ほど、東京の結界による自動修復と術者達の尽力によってようやくの収束となった。

 

 今回は術者の方々をフジワラがマカトラ*1などの支援スキルでサポートしていたのが大きかったと思う。

 

 本人曰く、『ヤソマガツヒが居ない私は弱い』とのこと。

 確かに戦闘能力は弱いのだが、LV86という超級悪魔ヤソマガツヒを完全に使いこなしていた彼女の能力はなかなかに凄まじいものがあり、支援に徹しているだけでも高精度のアナライズにマッパー*2での空間把握にテレパスでのリアルタイムの指示出しもあり、バックアップにいると世界が変わるタイプの戦士だった。

 

 戦いながら体力の回復すらできていた気がするほどに楽だったので、修復が終わったタイミングで仕掛けてきたメシア教の残党への対処は問題なかった。連中のような弱小勢力がなぜこんな時に動いているのかは謎であるが、その辺りのことはヤタガラスの皆さんに任せようと思う。

 

 そんなこんながあり、疲労困憊となった皆はレルムに存在するホテルにて泥のように眠っている。乃木というヤタガラスの有力者が経営しているそこではセキュリティもそれなりでサービスも良好らしいのだが、皆はそれを享受することなく眠っている。

 流石に全員眠るのは危ないので、体力に余裕のあった己は自主的に見張りをやっているのだが、正直に言えば貸し出されたタブレットで色々読んだり見ているのが楽しくて眠る気になれないというのが理由の8割あると思う。

 

「しかし、多くの人がいるのだな」

 

 電子書籍で漫画を一作品読み終えて一息ついたあたりで、周囲を見る。ラウンジのようになっているそこでは己と同じように見張りをしている人がいたりする。

 レルムのホテルであるからか、皆当然のように武装している。新品の装備をつけてニコニコしている人もいれば、草臥れた装備を補修しながら使っているような人もいる。かと思えばマリオの帽子を被ったままなことを気付いていない愉快な女性がいたりするし、部屋着のまま無料のソフトクリームを涙を流しながら食べている者もいる。

 

 見ていて、割と面白い。

 そうしていると、己の方に近づいてくる気配がある。MAGの感覚は既知のものであるので、警戒はほどほどにしておく。

 

「……ジエン、ここにいたのか」

「む? ムラカミ殿か。休息はもういいのか?」

「最低限は休めた。あとは動きながらでも調整はできる」

 

 そんな事を言ったムラカミ殿の顔には疲労の色がある。そこそこに無理をしているように見えた。体力はあまり回復できていないらしい。

 

「どのみち幾らかの間このホテルに留まるのだし、もう少し眠っていても良いのではないだろうか?」

「……馬鹿を言え。貴様だけに見張りをさせていては、お前が倒れた時に俺が困る。お前こそ休め」

「己はまだまだ問題ないのだが」

「あれほどの激闘の後で、死亡もした。しかもメシア教徒との戦闘はお前が主体になって行っていたのだ。見えない所に疲労は積み重なっている筈だ」

 

 その言葉には、確かな優しさが見えている。なぜ隠そうとしているのかは理解できないが、ムラカミ殿の善良さが故にだろうか? 

 

 偽悪的になることで、自身の行いを受け入れさせやすくするような働きがあるのだろうか? と少し考える。

 

「その心遣いはありがたい。とはいえ己はまだまだまだ余裕で動けるのだ。それに、今ムラカミ殿が無理をして見張りを替わったとして、ムラカミ殿が倒れられた時に困るのは己であるのだぞ?」

「……無理は、していない」

「己には無理をしているように見えている。だから、見張りの交代はしない」

 

 むすっとした顔になるムラカミ殿。そこで意地を張るのなら顔色くらい誤魔化せるようになって欲しいものだ。いや、誤魔化されて疲労で倒れられたらその方が困るから、やはり今のままでいいかもしれない。

 

「ならば、少し話し相手にでもなってくれないだろうか? 正直暇なのだ」

「……まぁ、警戒だけをしていろ、というのは違うか」

「ムラカミ殿は、イデアオーブの製法を学んだのだったな」

「ああ。その過程でお前の世界の様子を見た……あそこまで、悍ましいとは思っていなかった」

 

 唐突に己の故郷を侮辱されてしまった。確かにこの世界より酷い所ではあったけれど、悍ましいと言われるほどではなかったぞ?と睨むが、受け流される。眼力が足りなかったようだ。

 

「……皆、生きるために必死でいたな」

「うむ」

「そう生きようと必死で動く者達の瞳には、希望がなかった。未来を見ていなかった。あれは、生き残るためならに種籾すらも喰らう類の連中だった」

「……そうか?」

「職業上、屑は腐るほど見てきたからな。よく分かる」

 

 今日を生きるために明日の糧を放棄すること。それはまぁ、よく見る光景であった。そうしなければ生きられないのなら、切り捨てる。悲しいと思えないほどに、いつものことだった。

 

「……すまん、見たものが衝撃的でな。引っ張られていた」

「イデアオーブの製法とは、それほどに危険なものなのか?」

「製法自体は単純だ。幾らかの基礎データを入れた物体に死肉で作った記録媒体と怨念を詰め込むだけだからな。怨念のMAGが魔導書と同様にソウルに経験を与えるものとなり、内部に記録したデータが思念波となって適合する人間に情報を与える。そういう理論になっている」

「ふむ。意外と普通なのだな」

「その例として見せられた材料の中に、知っている顔があった。以前、ハッピーセットのミニカーを欲しがった子供だ」

 

 その言葉を発した時に、「しまった」という顔になっていた。そこまで話すつもりはなかったらしい。とはいえ話を切り上げるつもりはないようで、バツの悪い表情ながらも結論まで喋っていく。

 

「そういう無力な子供を、罪悪感のカケラすらも抱かないままに材料としていることに、悍ましさを感じたのだ」

 

 なるほどなー、と納得する。

 周回というのは、見知った顔が生まれ変わっているものだと聞く。己の世界で弱者として生まれ落ちてしまったのなら、それは普通に死ぬし、死んだ後は普通に素材になる。

 

 死ねばただの肉なのだから全部使ったほうが供養になる、という己の培った価値観はこの世界には通用しないのだ。それは逆も同じこと。

 

 死を悼み、埋葬のために高温で焼き払い骨にして収納するのを基本とするこの世界のスタンスからみれば、野蛮なことこの上ないと見えるのだろう。

 

「お前に言って変わることではなかったな」

「いいや、構わないとも。ムラカミ殿がそれほどまでにその子供たちを大切に思っているのだと知れて、己は嬉しいぞ!」

「……恩を高く売っているだけだ。機を見て回収するとも」

「恩返しという奴だな! 子供達もムラカミ殿相手ならば恩返しを迷わまい! これは正の循環という奴だな!」

 

 その言葉には頭を抑えるムラカミ殿。まだ眠気が残っているようだ。

 

「うむ。やはり疲労困憊が見て取れる。部屋で休むと良い」

「……お前相手では、なぜかこういう押し切られ方をさせられるな」

「ムラカミ殿の偽悪が薄っぺらいからではないか?」

「……貴様、意外と言うのだな」

「思ったことを胸に秘めるのは得意でないのだ」

 

 そんなことを言ったら、ため息を吐かれた。幸せが逃げてしまうぞ。

 

「寝る、交代が欲しいなら起こせ」

「承知したぞ」

 

 ホテルで取った男部屋への帰っていくムラカミ殿。すると、入れ替わりでツギハギ殿がやってきた。

 

「……ムラカミは戻らせたのか」

「うむ。流石に疲労が重そうでな」

「そういうお前はどうなんだ? 戦い続きだったろう」

「己は楽をさせて貰ったからな。フジワラの第二形態の時はヤソマガツヒの説得だけだったし、メシア教徒との戦いではバックアップが手厚かった」

「……それは、楽とは言わないがな。まぁそう言うのならば信じよう。事実、体調は良さそうだからな」

「スタミナには自信があるのだ。若いからな」

「確かに、幼いといえるほどには若いな」

「……時に、幼いと若いとは、どう違うのだ?」

「さほど気にせず使っていたな。幼いは赤子のような、子供のような方面の若さを示し、若いは肉体が全盛期に近いことを指しているか?」

 

 ツギハギ殿も、分からないようだ。こういうときは検索を行うだとか色々あるのだけれども、今回は嗜好を変えてみる。

 

「チャットGPTさんに聞いてみるとしよう!」

「……確か、AIの言語生成サービスだったな。嘘偽りばかりだと聞いているが」

「己も詳しくは知らん。なので試してみようと思うのだよ」

 

 という事で、聞いてみた

 

「日本語にて、若いと幼いの違いとはなんなのだ?」

 

『日本語において、「若い」と「幼い」は似た意味を持つ言葉ですが、使われる文脈や対象によって異なるニュアンスがあります。

 

「若い」は、一般的には人や生物の成長段階を指しています。年齢が若く、成熟していない状態や、経験が浅いことを表します。「若い」という言葉は、成人や大人に比べて年齢が若い人や、新しいことに対して使われることが一般的です。

 

 一方、「幼い」は、主に子供や動物を指す際に使われます。年齢が幼く、成長途中であることを表します。「幼い」という言葉は、身体的な成熟度や知識・経験の乏しさを指す場合にも使用されます。

 

 要約すると、「若い」は一般的な成人や大人に比べて年齢が若いことを指し、「幼い」は子供や動物の成長段階や経験の浅さを表します。ただし、具体的な文脈や用途によって微妙な違いがあることも覚えておいてください*3

 

「おお!」

「早かったな」

「ぱっと見は何一つ問題はなさそうだ。ツギハギ殿の肌感覚と違いはなさそうだぞ!」

「ただ、違和感を一つ言わせてもらうとするならば」

 

ガントレット(それ)でネット検索なども日常的なことをされると、な」

「失礼な。きちんとこの世界のSIMカードを使っての合法的な通信となっているのだぞ?」

「MAGでの空間投影ディスプレイは、文字生成AIのテクノロジーの五世代は先の技術に見える」

「むぅ、便利なのだがな」

「便利なのは理解する。俺も破壊される前はガントレットタイプを使っていたからな」

「ほう?」

「壊して、修理できずにそれきりだ。ジエンも修理のアテは見つけておけよ」

「それについては問題ないぞ! 内部データ構造は別のマシンにバックアップしているし、外装はスキャンできている。パーツが壊れても3Dプリンターですぐ取り替えられるのだ!」

「無用な心配だったな」

 

 そんな言葉に含まれる優しい色。どうにも子供扱いされている気がするが、己は子供なので問題ない。己は、子供でいるのは結構楽しいのだと知ったのだ。

 

「しかし、お前が仲間達の魂を受け継いでいるとは、奇妙な縁もあるのだな」

「おそらく己の世界のツギハギ殿の技もインストールされていると思うぞ。夢でツギハギ殿のような者がフジワラ殿と会話しているのを見たのだ」

「とすると、お前は俺より前の周回からの漂流者ということか」

「おそらくな」

「……ものは試しだ。ジエン、この刀を持ってみてくれ」

「む?」

 

 言われた通り、ツギハギ殿の持っていた刀を受け取る。抜いてみろ、と目で言われたので軽く引いてみる。

 

 美しい、太刀だった。

 

 だが、己はこの刀を持つのに相応しくない、という直感も共にやってくる。力の何分の一かは使えるだろうけれども、全力は仕えなさそうな雰囲気だ。

 

「……やはり、抜けるか」

「しかし、認められてはいないぞ」

「俺もだ。元々こいつは預かり物だからな」

「む?」

「コイツは認めた奴にしか刃を見せんのだ。俺は元の使い手からの義理でたまに使わせて貰っているがな」

「とすると、己は?」

「お前の内には、この刀を使った奴の魂が少しあるのだろう。通りで重なる訳だ」

 

「もっとも、この刀の『彼のお方』への祭器としての能力は失われている。俺が死んだ時に良い刀が手に入ると思えばいいさ」

「……ならば、当分手に入ることはないと言うことだな! ツギハギ殿はかなり強くなっているのだから」

「レベルは50かそこらだ。まだ及ばん」

「そうは言うが、活泉スキル*4で高い体力を持ち、属性銃撃と即死斬撃を巧みに使いこなしているのだ。戦っていればレベルなど上がるだろうよ」

「レベル60台で悪魔召喚と各種バッドステータスを使いこなし、戦法すらも自在に変えるお前に言われるのは、面映ゆいものがあるな」

「そう褒められると、照れるぞ!」

「俺も照れた。相子になる」

「なんと! ……相子になるな。なるほど」

「適当に言ったことに納得されるのは、いくらか困るのだがな」

 

 などとどうでも良さげな会話をしていく。

 ツギハギ殿の顔色は普通だ。良くはないが、悪くもない。

 

「もう少しの休息は必要なのではないか? ここは割と安全圏であるぞ」

「お前一人に見張りを押し付けるのは座りが悪くてな。まぁ、もののついでだ」

「そのようなことを、ムラカミ殿も言っていたな」

「……あの男、あの啖呵を切るあたり悪い男ではないと理解はできるのだが、なぜああも偽悪的になるのかは分からん。恥ずかしがり屋なのか?」

「当たりかもしれんぞ」

「……ああも悪ぶる方が、恥ずかしい気もするのだがな」

 

 うーんと頭を悩ませる。

 そうしていると、先ほどマリオのキャップをつけたままだった女性が普通のキャップに付け替えてラウンジに出て、無料のソフトクリームとコーヒーを受け取っていた。

 

「ツギハギ殿、ソフトクリームは要るか?」

「不要だ。どちらかといえば酒が欲しいが、飲むわけにもいくまい」

「酒飲みは甘いものを好まないと聞くが、そうなのか?」

「食い物全てが『酒に合うか』の基準で見ることになるからな」

「しからばコーヒーを貰って来よう。ミルクや砂糖は入り用か?」

「ブラックで構わない」

「じゃあ、私はミルクと砂糖2本でお願いするっス!」

「おお、いたのか」

「さっき来たんすよ」

 

 という事で、やってきたトンボ殿の分も合わせて3つのコーヒーを取ることになった。

 

 良い匂いがする。このマシンは豆を砕くところからやってくれているようで、一つ入れるのに若干の時間がかかる。それも含めて、楽しいものだ。

 

「さて、と」

 

 では、ここてコーヒーを3つ手に入れた。この熱いものをどう運ぶか? ということを全く考えていなかった己である。

 

「ふむ。やるか」

 

 なので、左手の薬指と小指をすこし肥大化させる。親指と人差し指で一つ掴み、薬指と小指で一つ掴み、右手で一つを普通に掴む。

 

 完璧だ。

 

 そうして持ってかけると、トンボ殿が『え、キモ』とドン引きしていた。酷くなかろうか? 

 

「え、ジエンくん悪魔化とかしたんすか? 人間の関節可動域じゃなかったっスけど」

「ある程度なら身体を弄れるぞ。『羽ばたき*5』や『丸かじり*6』などのスキルを使う時に習得した肉体操作技術だ」

「へー。気持ち悪いっスね」

「面食らいはしたが、気持ち悪いまで行くか?」

「行くっスよ。小指も薬指も折れてないか不安になったっスもん」

「なんと! 心配が故の言葉だったのか! ……これはすまないことをした。謝罪と、感謝を」

「いや、まぁ……はい! 謝罪は受け取ったっス! これでおしまい!」

「貴様は謝らんのか?」

「……はい、気持ち悪いって言ってごめんっス」

「うむ! 許した! 元より驚いただけで傷付いてはいないのだけれどもな!」

 

 という事でコーヒーを配る。ツギハギ殿が受け取る時に熱さでびっくりして落としかけたくらいの、平和な一幕だった。

 

「時にトンボ。お前の……アレはどういう技だ? ハッキングのように見えたが」

「理屈は知らないっスね。ちょっと昔にいろいろあって使えるようになったんスよ」

「なるほど。いろいろか」

「っス。いろいろっス」

 

 話す気はゼロである。

 なにかしらの鍛錬で己でも使えるようになるのであれば深く聞いただろうが、アレはどうみても先天的な特性によるものだ。

 人体改造や前世の覚醒だとかで使える可能性はゼロではないが、無視して良い確率に思える。

 

「……まぁ、話せとは言わないがな。しかし、あれほどセキュリティを突破したのだ。見えぬ所に傷でも負っていたのなら事だぞ」

「いや、私がそんな命懸けの博打とかする人に見えるっスか?」

「見えんが、一応な」

「己にはやるように見えるぞ!」

「ジエンくんは節穴っすねぇ。私は楽な方に流れることをモットーにしてるんス。命懸けなんて真っ平っスよ」

「しかし、そのような昼行灯という者たちは、いざという時にやると言われているが」

「フィクションと現実の混同はしちゃダメっスよ。根っこがクズの奴は、どこに行ってもクズっスから」

「ふむ。覚えておく。だが、トンボ殿はやる人であると己は信じるぞ。己の勝手にな」

「うへー……期待が重いっス」

 

「ところで、ナッジアントはどうした?」

「ダウン中なんで、COMPの中です。ほら、あの怨念体からの汚染があったんで」

「む? 大事ないか?」

「寝てれば治りますって。アントさんの魂はしっかり残ってますし」

 

 そうしてぐだぐだしていると、リオがやってきた。そこそこに疲労が残っている様子だ。

 

「む? 休まなくて良いのか?」

「あー、ヤタガラスの巫女様? との通信が繋がったのよ。私がいると話せない事もあるだろうから席を外した感じ」

「ああ、あの表情が不安になる彼女か」

「心労が故らしいな。頑張っているからこそ辛いのだろう」

「あの巫女がそんな程度でメンタル崩すってんのはイマイチ信じられないっスけどねぇ」

「知っているのか?」

「そこそこっスね。喋れるようになってすぐ予言しまくって書記の人を10人潰した*7とか」

「なんと!」

「生まれつき過去の記録を覚えていると、そのような凄まじい事になるのか」

「巫女殿も頑張っているのだな!」

「頑張るですませて良いやつかなぁ?」

 

 ホテルのラウンジでゆるゆるぐだぐだしているのも悪くはないのだが、皆の調子が戻ってきたようなので己は休息を取らせてもらうことにする。

 

 心労はないが、微量でも疲労あるのだ。休める時に休まなくては、いざという時に倒れてしまうのだから。

 

 ひとっ風呂浴びて、横になるとしよう

 


 

 その日、己は夢を見た。

 

 シェルターの仲間達と、彼らに似た者たちが、己をただ見ているような不思議な夢を。

 

 己の行為の是非をこれから先でも見ているぞ、と言う感じだろうか? 

 

 死んだのだから死んでいて欲しいものだ。決めるのは皆でなくフジワラの心だろうに。

 

 ただ、眠りはいつもより安らかだった。

 


 

「……ふぅ」

 

 通信を切る。

 今回、時間を取って話したのはとある漂流者(ドリフター)。名をフジワラと言う。

 

 別の周回においてのフジワラの子孫なのだとか。今周回のフジワラはブルージェット号の人員としてシュバルツバーツ調査隊に参加し、帰らぬ者となったと聞いた。

 

 故人の子孫が現れるというのは、なかなかに奇妙なものである。このフジワラという娘もまた私がさほど知らない娘であり、子世代、孫世代の人員という事らしい。

 

 正直に言えば、この手の詰んでる周回においての記憶はあまり残っていない。大体魂ごと食われて死ぬからだ。

 けれど、人外ハンタージエンの情報とこのシェルターの外観映像などを合わせると、私が和平交渉の材料として売り飛ばされて数多くの実験をされた周回のどこかというところまでは当たりをつけられはした。

 

 さて、フジワラから聞き取った情報をまとめよう。

 

 この世界への悪意はなく、シェルターの余剰物資と技術をデビルバスターに渡そうとしてイデアオーブを作成しばら撒いたとの事。

 

 レベルは80。ジエンや技研の姫などとの戦闘時のレベルは86といくらか上だったが、『逆襲の霊的国防兵器』の影響から外れたことでレベルダウン。

 現在可能な技はハイ・アナライズ*8やサードアイ*9、マッパーなどのバックアップ系の能力だけらしい。

 

「高レベルの人員を腐らせるのもアレだし、守護霊使いやマシン使いとの繋ぎを作らせてみようかしら。ヤソマガツヒの死体で作ったサイボーグを降魔していたのだから、そっちの方で使えないか聞いてみましょう」

 

 彼女のようなバックアップ系能力者は希少だが、怪盗団のナビなど探せば見つかる程度の希少さだ。特別に優遇する理由には少し弱い。

 

「ドリフターでも信用を勝ち取れるというのは最後の大隊(ラストバタリオン)最後の二人(レイとロゼ)のような実績を積みたげたケースをモデルにしたいから、強い力があるだけの彼女を優遇することはできない。そうしたら、今回のケースでも助けたチームに押し付ける形になってしまうわね」

 

 今回大立ち回りをしたバスターチームを見る。中心になっているのはこの二人、琴葉リオと、ハンタージエン。

 

 琴葉リオは技研にて数多の技を仕込まれたデビルバスターだ。今回の周回では物理主体らしい。周回で見かける度に違うスタイルで戦っているので、もともとはかなり多芸なのだろう。

 

 そして漂流者の少年ジエン。レベル60周辺のデビルサマナーであり、聖華学園の生徒。良好な授業態度と壊滅的な一般常識を兼ね備えたなかなかの問題児だ。

 人間関係などの問題はなく、学生漂流者の受け入れモデルケース初期組として扱われている。ただし、あまりにも色々特殊がすぎるので彼のデータは『外れ値』として考えているスタッフが多いらしいが。

 

 彼ら二人に、元自衛官のツギハギ、元ファントムのムラカミ、そして詳細不明の女トンボが今回のチームだった。

 ツギハギはまだ寄って立つ基盤が弱く、ムラカミはファントム時代での悪行が信用を打ち消している。トンボという女に至っては戸籍すら存在しない。

 

 よって、ヤタガラスからの依頼という形でフジワラを技研に任せることになるだろう。

 

「というかこのトンボって私を殺した鉄砲玉じゃない。一度私を殺してから見なくなったのは、漂流者になってたからだったのかしら?」

 

 霊的セキュリティで完全に防御されていた離宮に侵入して来て、ざっくりと私を刺殺した顔そのものだ。

 

「そんな小さいことを気にするくらいならさっさとルールの中に組み込まれてくれないかしら。別に気にしないのだし」

 

 という事で、大雑把な方向性は決まった。レベル80近辺の漂流者という事で私が直接やったのだけれど、下に投げていても技研に任せるという方針は変わらなかっただろう。

 

 ただし、気になることはある。

 

 それは、由崎星空(野生の天才)が算出した軌道以外の所にイデアオーブが確認されていること。そしてイデアオーブの基礎技術の中にある人体を計算結晶体に変化させるというそれ。

 

 明らかに、あの周回のシェルターの能力だけでは不可能だ。もっと技術が上の別組織、もしくは別の存在がいる可能性が見て取れた。

 

「過去の知識が通じないって面倒ね。なにかのゲームで似たような展開はないかしら?」

 

 その存在の目的が、この世界の防衛に害を与えるものでないことを祈ることしか、今はできないだろう。

 

 

 アラームが鳴る。時間だ。

 

 思考を切り替え、Proコンのホームボタンを押す。

 

 そしてスリープモードにしていたゲームを再開する。今は他のことを考えるのは不粋だ。ウルトラハンドで作り上げた殺戮マシンでキンググリオークを倒すことだけを考えるのだ! 

 

「……ティアキンって楽しいとかの次元じゃないわね。麻薬よ麻薬。遊ぶ麻薬」

 

 魔界に近い異界であることを利用して、寝食を忘れてプレイをし続ける。ちょうたのしい。

 


 

「人は、アレほどまでに顔面を崩壊させる事ができるのですね……」

 

 ホテルの食事で己とフジワラが理解を拒否した食事マシーンとなった一幕を忘却し、軽く今後の打ち合わせということとなった。

 

 そして、特にこれから先に共同で何かをする予定はなかったので『解散で』の一言で終了となった。

 

 事前の打ち合わせで経費は折半と決めていたので、消費したアイテム分のマッカを補填して、終わりだ。

 

「……あなたたちは、仲間ではないのですか?」

「大体仲間だ。けれど依頼が異なれば戦う事もあるだろうし、利害が一致すればまた共に戦うな」

「ネットでゆるく繋がってるからね。常に一緒にいる必要もないんだよ」

「……難しいですね。私はシェルターの外の社会を知らないので」

「己もトウキョウ以外の社会は知らなかったぞ。だが恐れず踏み込んでいけばなんとかなるものだぞ!」

「まぁ、考えなしに踏み込んでいくのもダメだけどね」

 

 巫女殿からの指示があり、若干の支度金があり、技研への話も通された。

 

 拒む理由は、もうないのだろう。

 

「では、これからよろしく頼むぞ!」

「はい。頑張りましょうジエン」

 


 

 黄昏の言葉は、淡々と私の心の真実を貫いていく。崩壊した表情のままに、情報の鋭さだけで私を切り刻んでいる。

 

 けれど、思ったのです。

 

 巻き込まれた戦いで感謝の言葉を返された時、この世界に私が居てもいい理由があるのではないか? と。

 

「巫女様、あなたの言うとおり私は今でも死にたがりのろくでなしです」

 

「けれど私は探してみようと思うのです。皆が私を生かして繋いだその意味を」

 

「いつかの未来、冥府で皆に会った時、胸を張っていられるように」

 


 

あとがき

 

フジワラちゃんはアナライズサポーターとして参戦です。りせちーほどの無法はないですが、アナライズ使いのいなかったジエンくん周辺では普通に引く手数多です。

 

ムラカミさん

 

グロッキーなのにジエンくんを気にして出てきた光のおじさんダークサマナー。面倒見ていた子供がぐちゃぐちゃにされてイデアオーブに加工されるのを見たので、結構心にキていた。

部屋で寝ている時に、ジエンは悪くないだろうが!と若干強く当たってしまったことを悔やんでいた。

 

ツギハギさん

 

成功例のジエンくんの事を魂が覚えていたので、似たような状況になったツギハギさんの周回ではジェネリックジエンくんが量産された。ジエンくんが強いのは加工される前のメンタルがオリハルコンだったからなので、一般メンタルの少年兵たちは普通に心を病んで死んでいった。 

 

公の太刀を預かっている。元の世界の公との繋がりが消えた今では普通に強い太刀程度になってしまっているが、公との相性の良い者(N属性)でないと抜くことすらできない性質は変わらない。

 

トンボちゃん

 

レベルが上がってウハウハな元暗殺者系シャーマン。

割と早い段階で流れ着いた漂流者であるが、アントさんところのカジュアルチームに転がり込んで楽しく生きていて、チームが潰れても雑に生きていたが自分と似たような境遇の者たちが増えた段階で情報を集め、彼らが皓白の姫巫女『美国織莉子』によって支援されている事を知った。会いたくないので、漂流者支援のシステムからは離れて暮らしている。

 

名前が削り取られて無くなっている。けれど名付けられた『トンボ』という名前があるので彼女は笑って生きている。

 

巫女様

 

真剣に考えていたのなら顔面崩壊に留まらず肉体全体が溶けて不定形生命になる所だったが、思考の大半をティアキンで占められていたので顔面崩壊だけで済んでいる。他の人のプレイ動画も見たいけれど、時差の関係でYoutubeがサクサク見れないのが地味にストレス。

 

ジエンくん

 

ボス戦との連戦で半日戦っていてもまだ戦えるスタミナモンスター。

元々のスタミナが人外級というのもあるが、戦いの隙間隙間にカロリー摂取を欠かさなかったり、仲魔とうまくローテを回して戦いながら休んでいたりなどの工夫をしていた。普通なら舐めプが死ね!となる所だがフジワラちゃんのバックアップを利用してそのあたりの穴を埋めていた。

 

かつての世界において、戦う事は呼吸することと変わらない日常であった。平和を知った今でも、その感覚は変わっていない。

 

 

 

 

 

 


 

 有限発電炉ムサシとは、シェルター内部に循環させた命の環よりエネルギーを吸い出し利用するものである。その命の環が永遠に尽きないからこそコピー元のヤマトは無限発電炉と呼ばれていた。

 

 ムサシが有限なのは、シェルターが大地から奪い去った命の環の量が限られているから。その奪い去った量はたったの数%だけだ。

 

 しかし、その数%は地球規模のエネルギーを基準にしたものである。たかが四世代程度シェルターが稼働した程度で消化し切れるわけもなく、莫大なエネルギーが有限発電炉ムサシには滞留しているままだった。

 

 それは、魔界の深層に転がり落ちた今でも変わらない。

 

 

 循環が止まったエネルギーはやがて澱みとなり、澱みはやがて一つ所に集結し、やがて形になっていくだろう。

 

 敗北した世界で、無惨に踏み躙られた数多のの逆襲のための、『怨念結晶集合体』に。

 

*1
魔法スキル。味方単体のMPを10回復する 魔力供給のようなイメージのスキル

*2
次の新月までミニマップを表示する

*3
出典、チャットGPT for iPhone

*4
体力の最大値を上昇させるパッシブスキル。雑に強いので大好き

*5
真3では、敵複数体にランダムで1~5回の衝撃属性小ダメージ

*6
敵全体に物理属性で小威力の攻撃を1回行う。HP吸収

*7
噂なので、若干の尾ヒレがついている

*8
1ターン後に、敵単体の属性相性と所持スキルを表示する

*9
敵への有効な相性をアイコンにて表示する。

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