姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝   作:気力♪

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目覚めた母性の琴葉リオ(25歳素人処女)

 キリギリス掲示板を少し調べてみたら所、己以外にも『異世界』からやってきた者達がいるかもしれない? くらいの話らしい。

 

「えぇ……私ネットの人とリアルで関わるの嫌なタイプなんだけど、漫画ニキとかに相談しなきゃダメ?」

「あれか、リオは『読み専』という奴なのか? 嫌われやしないか?」

「発言しなきゃ嫌われようが無くない?」

「自ら情報の発信を行わず人の情報だけを貪り食うのは、アバドン*1のものでなかろうか?」

「そんな慣用句みたく魔王の名前が飛んでくる社会やだわ。イナゴにして……いやそれも嫌だったわ」

 

 どうにもこの世界では読み専はあまり憎まれてはいないらしい。おそらく情報を書き込む者達が多いから、自発的に情報を書き込んで『流れが途絶え情報が断絶する』という危惧を抱かなくてよいのだろう。

 

「して、どうする? 個人に対してメッセージを送る手段が難しい者だったりするのだろうか?」

「まぁ、DMするだけだから難しくはないし、問題もないかな。……こんな掲示板にたむろしてる連中がまともな訳ないっていう事を除いては、問題はないよ」

「信用できる人格の持ち主であるかどうかという事か。確かに、そればかりはテキストだけで読み取れはしないか」

 

 まぁ、ものは試しとばかりにキリギリス代表の『漫画好き』と名乗る者にメッセージを送ってみる。

 

 己のアカウントならば大した失言もないのだし問題はないだろう。

 

「返信が来るまではどれくらいかかるだろうか?」

「んー……レベル100とかと日常的にやり合ってるトンデモ連中だから普通に忙しいよね。アイテムの仕入れとか」

「であれば己も訓練や武器の調達を行いたい。属性弾はどの程度の対価で入手できるだろうか?」

「属性弾ねぇ……軍属だったら仕入れが楽だって話は聞くけど、どうしよっか? ──―ねぇ黒服くん、ウチの店って属性弾仕入れてなかったよね?」

「そうですね。効果の大きい属性弾はどうしても生産が難しいらしいんですよ。火力の低い属性があるだけの弾丸なら在庫にあると思いやすが、そんなん今の環境で通用しないでしょうし」

 

 なるほど、内心で頷く。己はハンター商会のバックアップを受けるまで弾丸はサラマン弾*2やノームボム*3しか使えなかった。現在マガジンに残っているセイリュウ弾*4とはえらい違いだし、同じように扱ってはミスが起きるのは間違いない。

 

「新しい職人か生産ルート探すしかないかな? ……っと、ごめんねジエンくん。今すぐには良い弾無理そうみたい」

「承知した。そうなると己は使える属性に偏りができてしまうな。すこし前に無計画に合体したので、呪殺と氷結程度しか有効に撃てる仲魔がいないのだ」

「……んーバフデバフはどんな感じ?」

「己自身がフォッグブレスを習得している程度だな。カジャは使える仲魔は勧誘したレベルの低いヤツだけでな。魔力に乏しく、回数使うのには無理がある」

「……その辺まで計算はできてるのに、なんで手持ちぐっちゃぐちゃにしちゃったのさ」

「全ては己の不得の致すところだ。MP回復アイテムが尽きてしまって、合体を行うしかない状況になってしまったのだ」

 

 ──―本当に、よく生き残れたものである。

 

 

「……あぁ、合体で出てきた悪魔は新しい個体だから、魔力が回復してるんだっけか」

「そういうことだ。補給の無い時の最期の手段として覚えていて本当に良かった」

「じゃあ、チャクラポット仕入れられるだけ仕入れないとね。……高いんだよなぁアレ」

 

 売り込みしてる段階では隠して……というか隠せてきた事が明るみになっていく。

 

 現在、己の戦力で計画的に強化、合体してきた仲魔は()()()。先に言ったように悪魔合体に使用したからだ。ペルセポネーになるまですべての仲魔を。

 

 それも『悪魔合体ライト』という戦場で行う簡易合体でだ。

 

 そのため、合体で作り出した悪魔に使えるスキルや『プレロマ』を継承できていない。かなり致命傷ギリギリの状態である。

 

「しゃーなし。悪魔勧誘目当てで異界巡りしよっか」

「……アテはあるのか?」

「あれ、不満な感じ?」

「悪魔勧誘自体には否はない。しかし、己とリオだけではかなり穴が多いぞ。悪魔勧誘は戦力強化のためのモノで、勧誘できる悪魔より消費する資材が多ければ全体ではマイナスになってしまう」

「……ジエンくん、私の技を甘く見てるみたいだから言うけどさ」

 

 

「物理が通る悪魔には、絶対に苦戦しないよ?」

 

 リオはしれっとそんな大言壮語を放ってくる。

 

 

 

 

 

 そして、それは壮語ではなかったようだ。

 

「獲った!」

「グハァッ⁉︎」

 

妖鬼スイキレベル56*5

火炎弱点 氷結無効

 

 

「あのスイキを一撃で⁉︎」

 

 侵入した異界、どこか『和』と『滅び』の雰囲気のある迷宮にてリオが暴れ回る。

 

 出てきたスイキの三体との会戦時にいきなりぶちかました『刹那の刃』はスイキの息の根を止めた。しかも、リオは『一方的に仕留められる』タイミングで仕掛けたようで既にスイキの攻撃範囲から逃れている。

 

 驚くべき、技の冴えだ。

 

「まずは安全を確保しろ、ピシャーチャ『バインドボイス』、ペルセポネー『パンデミアブーム』」

 

 相手との交渉結果が成功と分かっていたならば安全確保は必要なかったが、ないモノねだりしてもしょうがない。

 すんなり仲魔になってくれたピシャーチャのバインドボイスと、ペルセポネーのパンデミアブームでバッドステータスを付与してから悪魔会話を開始する。

 

「スイキよ、現状は理解しているな?」

「テメェ、話をするってんのにコレはマナーが悪いにも程があるなぁオイ!」

「む、マナーを気にする類の繊細な武人には思えなかった。すまなかったな」

「……へぇ、言うじゃねぇか」

「こちらの目的は仲魔の確保だ」

「……欲しいのは仲魔であってオレじゃねぇ。なるほどな。なら580マッカ寄越せ」

「承知した」

「……まぁ、当然だがコレじゃあ首を縦には振れねぇよ。魔石を寄越せ」

「構わない。魔石にはいくらか余裕がある」

「へぇ、それじゃあ反魂香とかも余ってたりするか?」

「それは無理だ。己に持ち合わせはないし、あっても今のお前に与えるほどお前との交渉には期待できない」

「……いいやがる。なら聞くがよ、お前さんはなんだって戦いなんかをやってやがるよ? そっちの嬢ちゃん共々普通に生きてりゃ良いじゃねぇか?」

「己にとっての普通とは、戦いの中にある事だ。コレでは不満か?」

「いや、戦狂いなら悪かねぇ。オレは妖鬼スイキ、コンゴトモヨロシク」

 

 スマホの中に吸い込まれていくスイキ。情報に分解され、プログラムの中のデータ領域に仕舞われるのだと聞いている。原理の理解はできてはいないけれどもベンチに使えるのはありがたい。

 

「あぁ、一応残っている一体(ソイツ)についてはオレは関与しねぇ。好きにしな」

「テメェ⁉︎人間に尻尾振りやがった負け犬が⁉︎せめて逃がせや!」

 

「……なら、お前は自分の命を見逃す対価として何を差し出す? お前の命を散らしてMAGにすることよりも価値はあるだろうか?」

「マッカだ! マッカならくれてやる!」

「……少ないな、お前ほどの悪魔ならまだ持っているだろう」

「今はコレしか持ってねぇ、本当だ!」

「あ、そいつかなりのマッカ集めてた銭ゲバだぜ」

「クソッタレが! 持ってけ畜生!」

「……いや、まだ持っているな」

「動けねぇ奴に対してそこまでするとか、テメェには人の心ってやつがねぇのかぁ⁉︎」

「合計で2000マッカ強か、それなりだった。感謝する」

「へぇ、分かりゃ良いのさ」

 

「──―あ、殺っちゃった」

 

 そうして言葉を交わして『逃しても良いか?』という感じになった時、リオの『闇討ち』が入った(クリティカル)。スイキは何が起きたかも理解できないままに息絶えた。

 

「もうちょっと強請る所だった?」

「構わない、奴がどんなにマッカを抱えていても無限に金が落ちる貯金箱という訳ではない。一度限界までやれば十分だろう。万が一動かれても困るしな」*6

「というかごめんね。ここ元々は40レベル代の異界だったんだけど、GP上がって強くなってるみたい」

「安定してるとはいえ、出てくる悪魔がコレでは破壊した方が良くないか?」

「そうでもないみたいよ? DARK悪魔が少ないらしくて、合体素材集めに使えるらしいの」

「把握した。では早速合体といくか!」

「……え? ここで?」

「もう少し周囲の警戒ができる場所でやるべきだろうか?」

「プログラム内の悪魔合体ってそんなに良くないって聞くけど」

 

 その言葉に、頭に電流が走るような気がした。

 

「何ッ⁉︎邪教の館アプリ以外に悪魔合体をする方法があるというのか⁉︎」

「顔近い顔近い、現実世界の悪魔合体施設なら、最適な悪魔の調整とかもしてくれるらしいし、御霊合体とかデビルソース付与とか色々できるって。まぁ、その辺が面倒になってサマナー辞めた私が言うのもなんだけど」

「恐ろしく気になるぞ! 己のやり方以外に悪魔を強くできる手段があるのだな! 知っていたかスイキ!」

「普通に知ってたわ。何言ってんだお前」

「本当か! ならば信じよう! お前は『悪魔合体施設』で合体をしてみよう! きっとより強くなれるぞ!」

 

 心が躍るとはこのことだろう。『悪魔を強くする』ということは契約の対価として悪魔使いに課されている。適当に合体しても強くなれるのは確かだが、苦楽を共にするのだから仲魔にもより強くなって欲しいと思うのは人情というやつだろう。

 

「この異界、他には妖精、魔獣、鬼女とか扱いやすい所はあらかた出るし、粘ってみれば?」

「心得た!」

 

 と、意気込んだとしても時間は待ってはくれないモノ。キャンプの備えもしていない己たちでは2体ほどの悪魔を勧誘できたところでの帰還となるのだった。

 


 

「ここが、悪魔合体施設なのか?」

「んー……邪教の館近くの商業区域って感じ? レルムって呼ばれてる」

「市場のようなモノか?」

「そう。最近ちょっと悪魔関係の環境が激変しすぎて、こんな感じに合体施設近くに必要なモノを買える場所を作ったらビジネスチャンスになるんじゃないか! って悪どい連中がやってんのよ。阿修羅会とかのヤクザが」

「己の知っている阿修羅会とは違うと分かっているが、知っている名前だけで親近感が湧くぞ」

「そっちの阿修羅会は何やってたの?」

「子供の身請けだったり、対悪魔用ドラッグの作成だったりだな。作ったドラッグを用いて悪魔を誘導して地下居住区の安全を守っていたと聞いている。『ケーサツ』という仕事だと誇らしく言っていた者も多かったな」

「……絶対集めた子供使ってナニカやってる奴じゃん」

 

 ざっと出てきたその言葉にドキリとする。己の中では考え至らなかった衝撃の真実だったのだが、この世界に生きるリオはさも当たり前のように『正解』に当たりをつけた。

 己がそういった想像力が欠けているのか、リオ達この世界の人々の想像力が逞しいのかどちらだろうか? 

 

「レルムでこの程度という事は、最精鋭の『業魔館』という所ではもっと凄まじい市場ができているのか?」

「でっかい船が丸ごとこんな商業施設になってるわ。ホテルだったり武器市場だったりね。まぁ、紹介状ないと受け付けてくれないんだけど」

「そうなると、やはり『キリギリス』の使い手と接触を持つ必要はあるだろうな。『武器や防具をケチったときに失われるのは命だぜ』とは良く聞いた忠言だった」

「良い事言われてるね。師匠さんとか?」

「いや、コレを言ったのはハンターになったばかりの者たちが多いな。己は武器屋で下働きをしていた事があるのだが、その時にさまざまな者がアドバイスをくれたのだ」

「……近所の子供に格好つけるダサい奴だ」

 

 ハンターとして大切な事の多くはそういったタイミングて初めて触れる事が多かった。仲間を大切にする事、結果さえ良ければ他はどうでも良いという事、命さえあれば他は無くなってもなんとかなると言う事、様々だ。

 

「しかし、MAGの少ない者が多いな。感じ取れないように隠す呪符などが流行っているのか?」

「普通に弱いからじゃない? 最前線クラスの鉄火場に潜り続けられる『ノリの良さ』ってなかなか来るモノじゃないし」

「自力を高めている者たちが多いという感じだろうか? だとすればきっかけ一つで皆強者(つわもの)になれそうだな! 頼もしいぞ!」

「強くなった人たちが皆良い人とは限らないけどね」

「悪い者とも限らないだろう?」

「そりゃね」

 

 そうしてレルムを歩いていると、目立つ装いの一団がいた。あの頭部装備は、ドルフィンヘルムの改造品だろうか? 

 

「あの被りモノの者たちは何者なのだ? リオ達技研の者のような動きの鋭さを感じるぞ」

「アレは……うん、検証勢だわ」

「検証勢?」

「キリギリスの掲示板に流れた情報を精査して、wikiに情報を載せてる連中ね」

「素晴らしい志の者たちだな! なるほど、装いに統一感を持たせて団結力も高めているのか!」

「目をキラキラさせないの。連れてかれるよ?」

「むぅ……致し方あるまい。己の面倒すら見れぬ若輩は彼らにとっても不利益だ。次に出会った時には協力を申し出たい所だ!」

 

 と言葉にしていると検証勢の一人と目が合った気がした。レベルは己より上、技の冴えも同じく上だろうから戦えば苦戦を免れないだろう。

 

 敵意はなかったので、一つ会釈をする。向こうも普通に会釈をした。

 

「こらこら、言ってる側からアピールしないの」

「アピール?」

「盗み見られたのに反応するなんて『お前の視線はバレバレだ!』な威嚇でしょう。絡まれて時間無くなってもしらないよ? 予約時間はすぐなんだから」

「なるほど、話が弾んで時間を過ぎてしまっては大変だな」

「そういうことじゃないんだけど……まぁいっか」

 

 邪教の館への道を進んでいく。

 食事処ではハンターのように見える者たちが和気藹々と英気を育んでおり、悪魔もまた甘味をはじめとした嗜好品を楽しんでいる。

 総じて、己にとっては生きやすい空気ではありそうだ。だが己が良く知るという事はこの世界の一般的には知られていない、『平和ではない』場所なのだろう。

 

 難しい話だ。

 

 そうしていると、軽装な一人の少女が『キリギリス』について人に尋ねている場面が目に入った。

 その事で、流していた疑問を尋ねてみる気になる。

 

「リオ、今更だが『キリギリス』とはなんなのだ?」

「えっ? ……そういや何なんだろ、便利な掲示板にたむろしてる連中くらいとしか考えてなかった」

「リオも知らぬのか。とすると、なにかの深謀遠慮の一つであるのだな。まだ表層に触れただけの己には民草を守る向きの謀に見えたが、どうなのだろうな?」

「何も考えない馬鹿の集まりだと思うけど」

「であればリオも馬鹿者となってしまうぞ?」

「割とそうだけど」

「……そうは思えぬが」

 

 リオはリオで色々あるのだろう、そうとりあえず置いておく。己がこのような化け物じみたレベル(トウキョウ基準)になったのにはきちんとした理由がある。最精鋭として最前線で戦い続けた上でそれより上の限界を破らなくては死ぬ場面があっただけだ。

 

 そんな己より普通に強いリオは、己以上の地獄を見たのだろう。気軽には聞けないが、然るべき時に聞いてみたいとは思う。仲間を知ることは信頼を生むのだから。

 

「着いたわね。ここが予約取れた悪魔合体施設。ここの主は『シモン・ムーラン』、エジプト系悪魔について造詣が深い、熟練の悪魔合体士よ」

「エジプト系悪魔か! ペルセポネーの素材となった悪魔の一体はエジプトのオシリス神なのだ。これは縁があると言えるだろう!」

「ほほぅ、オシリス神を扱えるサマナーとな。顔を見てみるものじゃな」

 

 ドアを開けて現れたのは布で体の多くを隠した老術師。すこしゴワゴワした質感の布は頑丈さもさるものながら、対魔術防御も優れているだろうと思わせる。

 

「爺様、こんばんは」

「壮健でなによりですな、姫」

「姫はやめなさいっての」

「ほっほっほ、さぁ中に入りなさいな」

 

 立ちという感想を抱かせる。

 リオとの軽妙なやりとりの中には優しさと思慮深さが滲んでおり、仲魔を預けるのに不満感は今のところない。

 

 コンピュータコンソールと培養ポッド、そして魔法陣なのが敷き詰められた空間へと誘われた己は、腹を括ってこの世界流の悪魔合体に挑むことにする。

 まずは疑問の解消からだ。

 

「まず、この悪魔合体施設での合体がCOMP内蔵のモノとはどう違うのかを教えてくれないか? 最新技術に明るくないのだ」

「COMPによる合体も様々じゃ。昔はスキル継承ができんかったが、最近のプログラムじゃとできるモノもある。話に聞くシュバルツバーツ調査隊の合体システムじゃと結果からの検索合体なんてもんもできたと聞く」

「……己の召喚プログラムのモノにも最精鋭の検索合体機能がある」

「ほう? 拝見してもよろしいか?」

「ああ、コレが己のスマホだ」

 

 そう言って左手につけていた『籠手型のスマホ』を渡す。

 

 それについてリオは

 

「コレをスマホって言う世界がわっからん。ガントレット型スマートフォンって売れないでしょどう考えても」

 

 とぼやいていた。

 

「このCOMPはどのように?」

「拾ったモノだ。持ち主を探したが『所有者死亡につき新規ユーザーを登録します』とスマホに出た事と、それどころじゃなくなったので半ば勝手に使わせて貰っている」

「中にある悪魔召喚プログラム、かなり高性能なモノですが、最新型には二つほど型が落ちますの。『コマンダースキルシステム*7』や『デビルCOOPシステム*8』がありませぬ」

「なにか不都合があっただろうか?」

「いいや問題はないとも。合体施設に持ち込む場合、『悪魔契約』機能が規格に合っていれば大丈夫なんじゃよ。契約さえできればプログラムの機能に落とし込めるからの」

「なるほど。では合体の相談をしたい。現在合体に使える悪魔は『妖鬼スイキ』『妖精ヴィヴィアン』『魔獣アーマーン』と『悪霊ピシャーチャ』の四体だ」

「ふむ。スイキの契約時レベルは56、最近現れるようになったタイプの『氷龍撃』を覚えておるタイプですの。ヴィヴィアンの契約時レベルは52、成長によって3分の魔脈を覚えるタイプ、アーマーンの契約時レベルは56、雄叫びとモータルジハードを持っており、デビルソースには勝利の雄叫びの存在するの」

 

 悪魔たちのデータを見てから澱みなく情報が流れ出る。深い知識に由来するゆったりとした言葉は、その重要さを『当たり前のもの』と勘違いさせてしまいそうだ。

 

「アーマーンの『デビルソース』というものはどのように入手できるのだ?」

「悪魔がその全てを知覚された時*9か深く絆を結ぶ*10かでデビルソースは見える形となりますの。もっとも狙ってソースを抽出するのはほぼ不可能なこと、気にせずとも良いのです」

「ふむ……己のレベルはこのスマホ換算だと60*11素材になる悪魔たちのレベルがいささか高い気がするが、問題はないだろうか?」

「目的の種族だとかは決めておいでです?」

「全くない。使う属性をバラけさせて欲しいという程度だ。強いて言うなら『仲魔を安全に集めるための仲魔』が欲しいか」

「合体結果をざっと見てみるとしよう。この程度なら総当たりが可能じゃよ」

 

真4F方式 作成レベルは平均+1

ベースレベル1ベースレベル2作成レベル作成種族合体結果(予想)
妖鬼LV56魔獣LV56LV57龍王LV60 龍王ゲンブ
妖鬼LV56妖精LV52LV55 鬼女LV59 鬼女ターラカ
妖鬼LV56悪霊LV54LV56 邪鬼LV62 邪鬼ギリメカラ

 

妖精LV52悪霊LV54LV54妖鳥LV56 妖鳥タイホウ
妖精LV52魔獣LV56LV55妖鳥LV56 妖鳥タイホウ
悪霊LV54魔獣LV56LV56妖獣LV59 妖獣カブラカン

 

真3方式 作成レベルは平均+1

ベースレベル1ベースレベル2作成レベル作成種族合体結果(予想)
妖鬼LV56魔獣LV56LV57鬼女LV58 鬼女クロト
妖鬼LV56妖精LV52LV55夜魔LV56 夜魔クイーンメイブ(電撃 タルカジャ
妖精LV52魔獣LV56LV55天使LV50 天使ドミニオン

合体法則上に『悪霊』存在せず ピシャーチャ 種族適応 悪霊 → 幽鬼

ベースレベル1ベースレベル2作成レベル作成種族合体結果(予想)
幽鬼LV54妖鬼LV56LV56妖獣LV43 妖獣モスマン
幽鬼LV54魔獣LV56LV56 妖獣LV43 妖獣モスマン
幽鬼LV54妖精LV52LV54夜魔LV56夜魔クイーンメイブ

 

 

真V方式 作成レベルは平均+1

ベースレベル1ベースレベル2作成レベル作成種族合体結果(予想)
妖鬼LV56魔獣LV56LV57鬼女LV58 鬼女ラケシス マハタルカジャ
妖鬼LV56妖精LV52LV55鬼女 LV52 鬼女クロト 単体マカラカーン、ディアムリタ ヒュギエイアの杯(回復チャージ
妖精LV52魔獣LV56LV55夜魔LV56夜魔クイーンメイブ アギダイン マハザンダイン フォッグナー ハイリストア

合体法則上に『悪霊』存在せず ピシャーチャ 種族適応 悪霊 → 幽鬼

ベースレベル1ベースレベル2作成レベル作成種族合体結果(予想)
幽鬼LV54妖鬼LV56LV56外道LV33 外道ブラックウーズ
幽鬼LV54魔獣LV56LV56 妖獣LV49 妖獣ヌエ
幽鬼LV54妖精LV52LV54鬼女LV52 鬼女クロト

 

 あっさりと見せられる同じ悪魔を素材にした3種類の合体表。ピシャーチャが『悪霊』として扱われるか『幽鬼』として扱われるかの差が見える。

 

「同じ悪魔の合体だと言うのに、結果が異なることがあるのか?」

「それは合体の軸をどこに合わせるかで変わるものなんじゃよ。同じ妖精、同じ魔獣といっても細かく見れば中身は異なる。ピクシーを軸に『妖精』とするか、『ヴィヴィアン』を軸に『妖精』とするか、のようにの。今回合体法則の軸のズレを大きく受けているのはピシャーチャじゃが」

「──―これは悪魔合体士という仕事が成り立つ訳だ。幅広い知識によるアドバイスに加えて合体先の選択肢まで増えるとは」

「それで、どの合体を行うかの?」

 

 パッと見て使えそうに見えるのは夜魔クイーンメイブ。電撃属性を得手としつつも火氷電衝の4属性に耐性を持ち弱点を持たない*12という優秀な耐性を持っている。また、別の法則では衝撃に無効の耐性を持ち、アギダイン、マハザンダインの2種類の属性を扱う*13事が可能だった。

 

「まずはこの方式で、ヴィヴィアンとピシャーチャを素材としてクイーンメイブを作成したい」

「では、合体を始めようかの……」

 

 召喚したヴィヴィアンとピシャーチャと一度の別れを告げる。ヴィヴィアンからはスクカジャと暗夜剣を、ピシャーチャからは吸血とバインドボイスの継承を行おうとしたのがこの悪魔だ。

LV56夜魔 クイーンメイブ

ジオダイン タルカジャ メディラマ スクカジャ 吸血

 

「む? バインドボイスと暗夜剣は継承できなかったぞ?」

「これは、スキルの継承適正ですの。この合体方式じゃとブレスなどの口を使うスキルや武術に似たスキルなど、継承するのに悪魔側の適性が必要になるのじゃよ。クイーンメイブはなかなか作ることがないんで、口系統の継承ができんとは初めて知ったわい」

「強力な耐性に目を引かれたが、それだけではないのだな」

 

「あら、お嫌いですか?」

「いいや全く問題はない! お前のおかげで新たな学びを得ることができたのだ。その上魔法の強さには変わりがないのは見て取れる。これからよろしく頼むぞクイーンメイブ!」

「フフッ……ヴィヴィアンだった私をあんなやり方で勧誘した方だとは思えない純朴さですわね」

「手段を選ばないサマナーは、嫌いだったか?」

「いいえ全く。私はクイーンメイブ、今後ともよろしく」

 

 魅了状態の女性悪魔をスカウトすると一時は確実に成功する。ハンター商会の色恋沙汰にふしだらだったイトウさんから聞いたことであり、今なお己を助けてくれる有力な情報だ。

 しかし、魅了が解除されたときにどのような心境で仲魔を続けるかは対話が必要になる。だいたいは問題ないし、ヴィヴィアンとの話では合体に使うだけなら問題ないとは言われていた。

 ──―それはそれとして悪いことをした気分にはなるので、合体後に話すまでは少し不安であったりはするのだ。いつもの事であるが。

 

「では、スイキとアーマーンの合体はどう使う?」

「えっと……こちらの合体法則にて龍王ゲンブを作りたい。可能か?」

「それで良いのか? 何やら悩んでいるようじゃが」

「プログラムの方の悪魔全書にアーマーンとスイキの登録ができていないのだ。『登録時にエラーが発生した』と言っていてな」

「それもまた、悪魔を捉える軸の違いからじゃよ。そのプログラムの中で扱える悪魔の軸からずれておったんじゃろうよ。そのあたりはアップデートで適応できるはずじゃから、その籠手にプログラムを入れた者の修正パッチを探すんじゃな」

「心得た! 課題が沢山で心が躍るぞ!」

「え、躍るの? 嫌にならない?」

「コレをすれば改善できると言う(しるべ)なのだ。むしろ見当たらない方が辛く苦しかった! 何をどうすれば良いのかさっぱりだったからな!」

 

 まじかーと言ってるリオは、手元の……何だろうか? 一つのモニターを二つの丸いリモコン? コントローラー? のようなもので挟んでいる機械を動かしていた。

 

「姫よ、暇じゃからと悪魔が出る側でSwitchを動かすでない」

「良いじゃない、事故率0.000000001(オーナイン)の腕を信用してるのよ」

「遊びがないとも言うんじゃがなぁ……」

 

 そんなぼやきを言いながらスイキとアーマーンは合体され、どっしりと構えた龍王がその姿を表した。

 

「我は龍王ゲンブ、コンゴトモヨロシク」

「よろしく頼むぞゲンブよ!」

 

LV60龍王ゲンブ

牙折り ブフダイン モータルジハード 氷龍撃 ラクカジャ 雄叫び

 

 そうして、とりあえず有り合わせの仲魔はできた。火炎、衝撃はなく、破魔属性も居ないという体たらくではあるが、カジャ系は整い、頭数も揃えられた。

 

 コレで最低限、戦いながら仲魔を集める事はできるだろう。

 

「今日は付き合ってくれて感謝するぞリオ!」

「いいよ、ジエンくんが強いと私も楽だしね」

「……所で、その『すいっち』? というのは何なのだ?」

「ゲーム機。えっと、ゲームボーイとか分かる?」

「おお! 分かるぞ! 己はこれでも役満仙人を1プレイで撃破できたことがあるのだ!」

「わぉタイムリー。ちょうど最近Switchでゲームボーイできるようになったんだよ」

「????? ……ッ⁉︎これがゲームボーイなのか⁉︎最新式なのか⁉︎」

「大体そんな感じ……やる?」

「……よし! やらせて貰おう!」

「次の予約があるから、どっか他所やってくれの」

 

 

 そうして、己は久しぶりの知っているモノに、知らない形で触れ合えた。

 

 

 すると、何故だか楽しいのに涙が出てきた。

 指の動きに澱みはない。戦うよりも簡単だから。

 切るべき牌の選択に澱みはない。皆で競ったゲームだから

 

 1プレイ15分20マッカ。遺物集めで手に入れたマッカの、数少ない娯楽に回せる予算で、生きてた皆と遊んでいった。

 

 まだ己の世界が崩れる前で、まだほんの少しだけ人間の命が重かった時で、まだ未来に希望を持てた頃。

 

 己が戦えなかった頃の思い出だった。

 

「ジエンくん?」

「……すま……な゛い゛! 大丈夫ッ……だ!」

 

 ゲーム機を汚さないように流れる涙を拭いながら、己は牌を捨てていった。

 

「……思いっきり暴牌してる」

 

 そんな罵声が何故か優しい音に聞こえたのは、不思議だった。

 


 

 その涙を見るまで、ジエンくんは年下の皮を被ったスーパーマンに見えていた。

 凄すぎて理解できない、心の強い戦士みたいに。何となくで死地にいられた自分とは違うように見えていて

 

 けれど、ゲームをしながら流した涙を見て気付いた。

 

 

 ジエンくんは強がっていただけだった。

 強い戦士でいなければ生きていけなかったから、強い戦士を演じていただけだった子供だった。

 

 弱い事が罪でいる場所に、適応してしまった子供だったんだ。

 

 

 そう気付いたら、不思議と子宮が熱くなった。

 この子の母親《ママ》になる。そう決めた。

 

 今まで何となく戦って何となく強くなったのはこの為だったのだと、天命を得た。

 

「ジエンくん、お疲れ様」

「うむ! 12分51秒! タイム内だ!」

 

 まずはこの子を甘やかそう。そんな事を決めたのだった。

 

「って、タイム測ってたの?」

「うむ! 動画も撮ってあるぞ!」

「え、すご」

 

 黒服くんに動画投げてbiimシステム動画を作らせよう。母性とは関係なくソロゲーマーとしてそれは思った。

 

 

 

*1
魔王アバドン 真2では街一つ食べるほどの暴食悪魔 原典では奈落の底的なニュアンスであり別に大喰いではない

*2
威力47 火炎属性の弾丸

*3
威力47 電撃属性の弾丸

*4
威力117 衝撃属性の弾丸

*5
真・女神転生V出典

*6
主人公たるフリンやナナシなら無限にファンドできます。流石プロのカツアゲ士だ、レベルが違う

*7
真・女神転生DSJより出典

*8
真・女神転生SJより出典

*9
悪魔の解析ゲージ100%での入手

*10
2回目以降の入手法、レベルアップ時ランダム入手、初期レベルよりレベルが高いほど確率大

*11
勧誘時の会話経験値で上昇。みんな大好きファンドレベリングである

*12
真3のクイーンメイブ

*13
真Vのクイーンメイブ




あとがき

ジエンくんが流れ着いてから一息つくまでが終わりました。ようやくキリギリスっぽい二次元を推す性質を見せられるようになってきます。
ジエンくんもリオさんも、ゲーマー属性です。

ジエンくん
1プレイ15分の阿漕なゲーム屋の兄ちゃんにマッカを毟られていた過去を持つ。ただ、1プレイあたりの時間を気にしてプレイすることは正確な時間間隔を刻むこととに繋がり、思考速度は初戦で生き延びるための頭の回転に繋がった。
そしてプレイの動画の共有はハンターメモ共有にてそれを見ていた人たちに『名前を売ること』を成立させた。総じて、ハンターとしての第一歩を踏みしめるための力となったのである。

ただし動画を撮っていた時のスマホはキッズケータイであり、召喚プログラムを十全に扱うのには足りない。
埠頭にて足を滑らせた者の残した、謎の籠手型スマホを手にしたのはそんなときだった。


尚、現実世界での役満GBのRTAはspeedrun.com、ニコ生RTAwiki共に記録が見当たらなかった(2/20日当時)のでスイッチのNintendo Switch Onlineで完走できれば世界記録である。未来の走者さんがんばれ!


リオさん(25)
子宮がうずいてママ活の光面に目覚めた女。ジエン君が通報したら死ぬ
元々はソロゲーを黙々とやっていくタイプのゲーマーであり、『漫画が好きだぁ!』『アニメが好きだぁ!』『ガチ推しアイドルがいるんだよぉ!』というキリギリスのメインストリームに乗り切れずにいた。とはいえ世界が滅んでは新作ゲームに溺れられないので世界を守る活動をしていた。(桜井さんをはじめとしたゲームクリエイターの方々や任天堂、フロムといった企業を守ることは考慮に入れるまでもない()()として彼女の行動の中にある)
そんな彼女はごく普通に喪女であり、普通でない情報をもとに修練を積んだ無自覚な修羅だった。

ママ活に目覚める、この日までは。


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