姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝 作:気力♪
ストーカー、という存在がいる。
英語の《追跡する》という意味の単語、『stalk』からstalkerとなり、古くは獲物を追跡する狩人の表現であったとか。
現在では、欲望を由来とした追跡、嫌がらせをする人の事を指す名詞として使われることが多いらしい。
英語の勉強中に、「もしや、己も悪魔に対するストーカーなのでは?」という考えから調べてみたが、古い狩人の意味でも、現代の嫌がらせ野郎の意味でも合致していた。
うむ、己はストーカーなのか。あまり良くない雰囲気の言葉なので、公言はあまりしないようにしよう。
さて、そんな単語がつい目に入ってしまう程度には、己達のやらかしは前線基地に影響を与えた。
まず、別シフトの人が揶揄いにやってくるようになった。己も当然やり返すネタは知っているので悪口合戦一歩手前となるが、それも含めて楽しいので問題はない。
次に、前線基地にやってくる補給員(またの名を、緊急用アイテムの値を釣り上げるハゲタカ)が多くなった。
あの有識者に意見を募る動画配信が他のグループに転載され、話題になったとのことらしい。
転載した奴は幾らかの賠償アイテムをくれたので許す。転載を編集して転載した輩は許さない。画角的にゴグマゴグは映っていなかったのだが、貫通物理へのダメージ感から%耐性付与*1が透けるような編集をしやがったので、今後対人戦において確定数ずらしからの逆襲は想定されるだろう。
まぁ、ゴグマゴグはこの異界に出てくるし、特に隠してもいないから手持ちにいる事は既に結構知られているけれども。
不特定多数に情報を公開する事の被害がどうたらこうたら、という論調でそれっぽく慰謝料をぶん取るつもりだ。
閑話休題
ストーカーの話だ。
まぁ、端的に言えば、
一人は、聖華学園にて特別クラス*2にてクラスメイトである漂流者のグラツィエ殿だ。異能者としては地変系をメインに使うLV30後半の前衛型で、結構なタフガールだ。
一人は、システィナ殿。レベルは20代と低めだが、結構に頭が回るタイプだ。前線基地へのキッチンカー、補給員の派遣をしているやり手の女性であり、この奥多摩アビス前線基地の有力者だ。
現地人ではあるらしい。見た目に惹かれたのだろうか?
一人は、サーペンタイン殿。
ファントム系の暗殺者だったらしく、その姿を晒していることに驚いていたバスターがいくらかいた。現在はフリーであり、適正レベル少し上の異界でレベリングをするつもりだ、と取り繕っていたが、どう見てもジエド殿目当てである。
口数こそ少ないが、細やかな気配りのできる人だ。だからこそ敵対すれば些細なミスから首が落ちかねないとも思っている。
一人は、プラド殿。
彼女は
という、4人のストーカーが思い思いに色々なアプローチを仕掛けているので、前線基地は華やかになっていき、ついでその全てを袖にしている
傍目から見たら美女たちのアプローチではあるのだが、ジエド殿の近くで見ていると割とホラーである。
ジエド殿の行く先々で豪勢なものが提供され、椅子やらはグラツィエ殿が砂から玉座を作り出し、影からサーペンタイン殿がジエド殿に付き添って、正面からプラド殿が愛の言葉を投げかける。
唯一の救いは、異界2層へのアタックがメインの己たちについて来れる実力は(まだ)ない事だろう。まぁ、他人事なのでどうでもいいのだが。
そんな考え事をしながらの駅から前線基地への移動だったが、特に事故なく襲撃もなく終了した。学校終わりで直接来るルートなのだが、「ZEDΩ様の僕である貴方にも、支援は必要でしょう?」とシスティナ殿の所の人が車を出してくれることとなっていたのだ。
まぁ車での移動は遅いので、己は普通に山道をまっすぐいくのだけれども。森の中飛んで跳ねては結構面白いのだ。
そうして、前線基地に着地をすると、キッチンカーの中に見知った姿の女性と、ふよふよしている幽霊がいた。
「トンボ殿! こちらにやってきたのか!」
「あ! ジエンくんじゃないっスかー。なんかバズったらしいっスね」
「……まぁたこのガキとつるむのかよ手前、絶対ロクなことならねぇって」
何かと便利なトンボ殿と、ふよふよ幽霊なアント殿の2名が、キッチンカー内で整った服装をしていた。どうにも店員として雇われたらしい。
「いやー、楽してマッカ稼げるとか、いい時代になったっスねぇ」
「なに? 店員のお仕事とは楽なものなのか?」
「そりゃあもう! 適当に調理して渡すだけでいいんスよ? 面倒な仕入れは上の人がやってくれますし。レジ打ちとかは自動化されてますし」
「ふむ? 機能が多そうなレジであるが、操作は簡単なのか?」
「私には簡単っスよ。私にはね」
そう言ったトンボ殿は結構な得意げな顔をしている。よほど技能に自信があるらしい。
「そういえば、トンボ殿は『テクノシャーマン』だったか? そんな感じのものなのだったな。だとすればテクノロジーへの理解にも納得がいく」
「は?」
取り繕った声でなく、ドスの効いた強い声でトンボ殿はそう反応した。なにか間違っていたのだろうか?
「
「あー……結構な間違いなんですけど、定義は合ってるっスねこれ」
「いや、定義が合ってんなら間違ってねぇだろうが」
アント殿が語るその言葉に、トンボ殿は頭を悩ませ始める。
「なんて言うんすかねぇ……レベルとか、規格とかが違う感じっス。テクノシャーマンって呼ばれる理想像ってのは、世界滅亡まったなしな超存在! の言葉を翻訳する機能を持ったウルトラ巫女さんなんスよ。マシンへの適合性はあくまでおまけっス」
「……つまり、トンボ殿はテクノシャーマンランク0.1、のような感じなのか?」
「0が200個くらい足りないっスけど、まあ大体そんな感じっス。
などと言いながらガチャガチャとレジを遠隔で開け閉めするトンボ殿。機械への適合性が高いというのはこう言うことだろう。しかし……
「それ、フジワラもやれるぞ?」
「そーなんスよねぇ! ジエンくんとこで寄生してレベリングやっほー! とか思ってたら完全上位互換出ちゃったじゃないっスか! 居場所無くなったじゃないっスか! フジワラちゃんを救った立役者だってのに、あんまりっスよ!」
「ならば、別のパーティを紹介するか? ここに来ている皆は、とても強いぞ!」
「いや、ジエンくんレベルのカッ飛んでる子じゃなきゃ支援専門型とか雇いませんよ? 自分の身を自分で守れない雑魚ってのは居るだけでかなりのマイナスなんスから」
「そう自分を卑下するものではないぞ! トンボ殿は強いのだからな!」
「いや私クソザコなんですけどぉ⁉︎」
やいのやいのと騒いでいると、車がやってくる気配がした。見れば、システィナ殿が出している送迎車であった。
誰が降りてくるのか? と見てみれば、そこにいたのはプラド殿にグラツィエ殿にサーペンタイン殿。運転はシスティナ殿であったらしく、運転席からは本人が降りてきている。皆して、目を皿にしてジエド殿を探している様子である。
「そういや、あの4人が居るってことは、この世界にも
「……ルクシア?」
「
「ふむ。良き歌だったのだな! 己も聞いてみたいぞ!」
「いや、改造されてた時の曲とかどう考えてもトラウマもんだろうが、なんでファンになってんだよコイツ……」
ふよふよとしているアント殿がポロッとこぼす。アント殿って割と一般的な感性をしているのだよなー。元に今も来客が来ないかちゃんと店番として立って? いるのだし。
「ならば聞いてみるとしよう!」
「行ってらー」
と、流れで尋ねてみたが、歌手のルクシアという方を知る人は誰もいなかった。
ジエド殿ストーカーの4人は、それぞれこの異界での初対面の関係だ。トンボ殿が言うには4人ともジエド殿が率いるATEMSという集団に属していたらしい。トンボ殿のいた過去周回の話だけれども。
「ふむ……巫女殿の話によると、周回した後も似たような組織、似たようなポジションに付きやすいのだったか?」
「いや、私アレとは会ってないので知らないっスよ」
「わだすは、元の世界でも普通に畑耕して、普通に悪魔と戦ってってだもんでなぁ、他の生き方ってのも想像つかねぇだ」
「わたしもだね!
グラツィエとプラドがそう語る。グラツィエ殿は地元を守るために戦っていたらいつのまにかこの周回に転がっていたという神隠しタイプの漂流者で、プラド殿は異界でガチンコして目覚めたらこの世界だったという異界崩壊タイプの漂流者。
崩壊前もデビルバスターで、崩壊してからのデビルバスターだ。生き方に芯があるタイプだろう。
「……他の生き方? 私が?」
「ありえますわね!
割とガチガチの暗殺者だったサーペンタイン殿は困惑するような声で呟き、社会的地位やその他諸々を放り捨てて流れのバスターに全賭けしている元キャリアウーマンのシスティナ殿は、恍惚した表情で宣った。
「じゃあ、私が見たATEMSって集団のがレアケースなんスかね? 今回のキリギリスみたいに」
「かもしれんな。まぁ、本人がガン逃げするものだから話はあまり聞けないのだけれども」
「マジっスか⁉︎あのイケメン女から逃げ回ってんスか⁉︎クソ笑うんスけどwww」
トンボ殿が超愉快そうに笑っている。雇い主のシスティナ殿が見ている中であるにも関わらず。これは、減給か? それとも不払いか? とトンボ殿の未来が楽しみだ。
「……お前たちか」
背後から、バチバチとした電撃系のオーラが伝わってくる。実質顔バレしたブレイド殿だった。
「今日は早いのだな、ブレイド殿」
「さしたる理由はない。別の異界での狩りが早く片付いただけだ」
「お、お客さんっスか? なんか食っていきません? 霊感冷やし中華*3がお勧めっすよ?」
「……MP補助タンクは必要としていないな。あるのならはごろもワンタン麺*4を頼む」
「はいっス! ちょっと待ってて下さいねー」
トンボ殿がテキパキとした動作でワンタン麺を作り出す。スープを温め直し、ワンタン含む具材の下準備をして、同時進行で麺を茹でる。
そうしてスープに麺と具材をささっと盛り付けて、ワンタン麺が完成した。熟練のラーメン屋の動きのように見える。これほどの経験をどこで? と考えると、不自然なMAGの動きが見えた。誰かを霊媒しているな、この女
「いやー、やっぱ楽で良いっスねぇ」
「お前に技術を盗まれているラーメン屋の爺さんは、さぞ無念だろうなぁ……」
「有効活用してるんス。有効活用」
霊の瞳で見れば、頑固そうなお爺さんの姿がトンボ殿に重なって見える。死人を降霊することで技術をパクっているらしい。おそらく死人が成仏しないようにする保存には悪魔召喚プログラムを使っているな?
それを知ってか知らずか、ブレイドは鬼面をずらしてワンタン麺をかきこんだ。やばいお腹が空いてきたぞ。
「トンボ殿、ブレイド殿の事は知っているか?」
「知らないっスねぇ。仮面だからってわけじゃなく、奥の顔も見た事はないっス」
「……何の話だ?」
「トンボ殿が過去周回でのこちらの4人を知っているということでな。過去周回での彼女たちはジエド殿と関わっていたのか? という話だ。ブレイド殿は彼女らを知っているか?」
「……かつての部下に、似ているかもしれん。その程度だ」
「つまり、関係は無さそうだな」
なんだつまらないというのが大半で、安堵の雰囲気が少々、馬鹿馬鹿しい話だと切り捨てる流れとなる。そんな空気だった。大きな話はなく、非認可ドリフター
……何故安堵した?
その疑問から口を突っ込もうとしたら、ブレイド殿が己を目で見ていた。『言うな』という事らしい。
どうにもそれは
そうしていると、車の音がした。この見知った駆動音は、リオが乗り回しているいつもの車だ。カウンセリングその他を終えたフジワラを拾ってきたのだろう。
「来たわよー」
「うむ! これで全員揃ったな!」
「……全員? ずえど様は見えねんですけんど」
「まぁまぁ、さっさと行きましょ。システィナ達もレベリング頑張ってねー」
そう言って、自然体で異界内部に進んでいく。このチームも、そこそこに慣れてきたものだ。
そうして異界内部に入ったのちに、ガントレットを操作して仲魔と
この男は、ストーカーが面倒だ、という理由で己のガントレット内部に逃げ込んだのだった。
「君、僕が邪魔できないからって僕の事を堂々と探りすぎてないかい?」
「探られて痛い腹ならば治療する事を薦めるぞ! 皆、良い人ではないか」
「……そんな皆だから、合わせる顔がないんだよ。他人の空似なのか、生まれ変わりなのか、僕の中で折り合いが付いていないんだ」
「ふむ?」
「死ねば折り合いは一生つかぬぞ?」
「知っているよ。だから最大限、君たちを利用するのさ。君たちと同じようにね」
格好をつけられなくなっている
「さて、彼女たちが追ってこれないほどの深部まで進みたい。それで構わないね?」
「言い方はともかく、己は賛成だ。キリギリスの報告によると、ここの周辺異界にもこの異界の化け物悪魔が流れ出ているらしい。原因の排除をしなければ、ここの連中が野に放たれるぞ」
「私も異論は……言い方以外はないな」
「……君ら、後で覚えておきたまえよ?」
女性から無様に逃げ回っている貴様が言えたセリフか? というのを皆が飲み込んで、先に進む。
第一フロアの悪魔への対処法は確立している。基本的に奇襲に来るのは飛行型悪魔であるため、己のスキルとダニーのミニガンで瞬殺。弾薬の出費はかさむが、安全だ。
第一フロアにて、奇襲に来る出現悪魔には銃撃反射は存在しないため、結構気軽にぶっ放せるのだ。一応銃撃反射のアールキングはいるが、動きが遅いので奇襲にはならない。戦域に入る前に
そうして戦闘を最小ターン、最前手で終わらせれば横からのカシマレイコなどは奇襲の機を失う。そうすれば逃げ帰ってくれる訳だ。逃げない奴は破魔で始末するともいう。
「ここまでのルートは安定したね」
「最短ルートで、戦闘回避しながらだからね。まぁ、ここから先はそうはいかない訳だけど」
「以前の探索では、『女神キクリヒメ』、『闘鬼ヨモツイクサ』、『邪龍ヤム』が確認できました。いずれも基礎レベルは低いですが、レベル上昇によって60近くになっています。また、邪龍ヤムはチームに狙撃能力を付与する力*5を持っています。『マリンカリオン*6』『ジュオン*7を狙撃距離で放たれるので、ダニーのカバー範囲から出ないようにして下さい」
「ワン!」
「そして、それの対処でターンを使った後に、ヤムのあのスキルが飛んでくる訳だ」
| ナハルの裁き | 自動効果スキル | 2ターンごとの自分ターン開始時、連動効果が発動する |
| 敵全体に氷結属性威力120の魔法型ダメージを与える。命中時、敵全体の回避と命中を20%減少させる | ||
「アンズーと同様の2ターン毎の連動攻撃です。衝撃弱点を付いて1ターンでの排除、それができなければマカラカーンを」
「まぁ、キクリヒメの個体が『異能』って奴だと後攻発動のテトラカーンオート? *8があるのよねぇ。あれマジで怖いんだけど」
「貫通を素通しする性質ですが、その場合反射障壁が消失しない仕様です。*9ゴグマゴグのアースクエイクが通った後だからと油断しないように」
しれっと言われたが、己の拾ったゴグマゴグは物理貫通を習得した。同種のゴグマゴクを複数倒した結果、存在の純度が上がった為だと思われる。それに伴い、貫通物理で殴られたら一回だけ回復とチャージが発生する凄まじい効果まで獲得していた。*10合体やら儀式やらの特別な強化をしたゴグマゴグではない、この異界で拾った仲魔である。なんだこれ……
尚、己のゴグマゴグがこの能力を獲得するということは、今後見るゴグマゴグ全てがこの能力を持っている可能性を考慮しなくてはならないのだ。
なので、ゴグマゴグは会話対処にするというのが現在のチームの方針だったりする。
「話していても仕方があるまい。先に進むぞ」
「結局、情報出揃うまで出たとこ勝負しかないのよねぇ」
「資金難により対策が取れない場合もありますしね」
「すまんな。ギガプレロマ持ち衝撃使いの確保は間に合わなかった。高魔力のザンダインではあるので、許せ」
そう言いながら、召喚している『魔王ロキ』を見る。レベルは68となり、それ故にマハブフダインを習得した。そして、何故か知らんがザンダインも追加で習得したのだ。まるで、氷結使いとして定まっていた軸がブレているかのように、多属性使いとしての能力が目覚め始めている。
いや、その結果として氷結ハイブースタと氷結ギガプレロマの両セットという浪漫をぶち壊したのは本気で怒っているぞ貴様。高適性ザンダイン使いとして使い倒してやるが。
| 魔王 | ロキ | LV64+4 |
| 氷結吸収 火炎弱点→無効 呪殺無効 | ||
| ブフダイン ザンダイン アギダイン 氷結ギガプレロマ 火炎無効 トリックスター 道具の知恵・癒 マハブフダイン | ||
へらへらと神経を逆撫でする表情で笑うロキを睨みながら、奥多摩アビスの第二フロアを進んでいく。
第二フロアだからと第一フロアと別段変わったことはない。ちょっと四方八方からバステ狙撃されるだけだ。しんどい。
「前方にて敵を確認、邪龍ヤムを中心とした集団……いえ、あれは?」
と、フジワラからのアラートによって意識を切り替える。
──そこに広がっていたのは、蹂躙の痕だった。
見る限り、合計20体以上の大勢力。広間にて待ち構えており、複数の邪龍ヤムが分散して作っていたであろう殺し間。それが、薙ぎ払われていた。
目配せして警戒モードに。フジワラの索敵をメインにして、リオの武装COMPによる死体解析を待つ。
「やっばいね。電撃無効のアンズーが電気で焼かれてる」
「電撃貫通か。感覚ではマハジオバリオンレベルの一撃によるものに見えるな」
「……ゾッとしないけど、これ単なる力押しじゃない。武装COMPの強化に使う部位とか、所持アイテムとかその辺のパーツに電撃が通った形跡がないよ。全部綺麗に剥ぎ取られている」
チラリとアンズーの死体を見てみる。確か有用部位は牙。名は『凶鳥の禍牙』だったか? 銃タイプの武装COMPの攻撃力強化に使う素材だった筈。
「これだけの強さを持つ個人、あるいはチームが武器素材の収集をしているらしいな。入り口の見張りをすり抜けられたか?」
「正規の入り口を使っていないかもしれないよ? 周辺異界への悪魔流出があるということは、その道を使って他所から何かが入ってくるのもありえるね」
「あるいは、深層からだ。異界の深いところに何らかの勢力が漂着した可能性もある」
敵でないと楽でいいのだが、というどうせ敵わない願いを持ちつつ周辺探査を続ける。
「うん、最低でもLV80だね。85オーバーのF.O.E.*11と考えるのが無難かも」
「現状の戦力では足りんが、間に合わせるしかないのだよなぁ……」
調査中に襲撃はなく、大部屋の調査はつつがなく終了した。
「痕跡を見つけました。追跡しますか? それとも、まさか回避を試みますか?」
「一度、見てみようじゃないか。この面子なら即死はしないだろうしね」
「アクセサリーで電撃見切りをセットできる者は交換しておけ。貫通持ちには耐性よりも役に立つ」
フジワラの「ビビっているのですか?」との問いかけに、
流石に90かかってるのを餌にするのは難しいのでは? と思う冷静な自分と、この面子でなら勝機は十分にあるだろう、という楽観的な自分が心の中に存在する。いつもであればノリノリで挑もうとする所だが、パーティ全体のバランスを考えれば、己はビビり気味に動く方が安定するだろう。
「うむ! やってやろうではないか!」
だが! そもそも安定とかその辺りの真っ当な考えをしているのならこんな異界には突っ込まないし、いつ背後から殺しに来るかもわからない
「決まりだね。ただ一応情報収集優先にするよー。一当てして情報抜いて、メタって仕留める。そんな感じで」
リオが全員を纏め、動きを始める。
警戒しながら、痕跡を追跡する。足跡はないが、タイヤ痕は存在していた。数は4つ。自在に動く4つの足先についたタイヤで動いているらしい。多脚戦車とかの痕跡だ。
なので、浮遊、あるいは飛行しているタイプの悪魔が仲魔にいる可能性を優先するべきだろう。タイヤ痕によるとそう重い訳ではないので、戦車に何人も乗っているというのでも無さそうだ。
そうして痕跡を追っていくと、奇妙な音が聞こえてきた。いや、異界という環境でこそ奇妙なのであって、この世界の日常的には普通に思える音だ。
「重機の、音?」
ドリルでも使っているのか、『ガガガガガガ!』と連続的な掘削音が響いている。
そして、その音が聞こえる辺りで視界にアラートサインが映る。
フジワラからの警告で、監視カメラを発見したらしい。視野角の概算により警戒エリアが表示されていた。
「見たことがなタイプの監視カメラです。これより広い可能性も考慮して下さい」
「こんなドギツイ異界のなかで工事するとか、建設業界もやるもんだねぇ……」
「ブラック労働、という奴だな」
警戒を掻い潜って奥に進むのは難しそうである。ここで偵察用の仲魔を出すかは迷ったが、制御数に余裕を持たせたい事とフジワラの索敵で必要情報は取れることからやめておく。
召喚しておくのは、『クイーンメイブ』、『ゴグマゴグ』、『ロキ』の3体。『メディアラハン』と、『ラクカオート』と、道具係だ。
一応交渉できる可能性も考慮して、監視カメラには布を被せるくらいで先に行く。
すると、ピープ音と共に1体のマシンがやってきた。足回りの感じから、先の痕跡の戦車であるだろう。
「自立型多脚戦車かッ!」
「どうやら、この異界に来た甲斐はあったとうだねぇ!」
ブレイド殿の困惑と、
「
| 電撃サバイバ | 自動効果スキル | 電撃属性のダメージを15%増加する。自身が死亡するとき一度だけHP1で踏みとどまる |
| 電撃アクセラ | 自動効果スキル | 電撃属性のダメージを15%増加する。自身のバトルスピードへの影響が20%増加する |
| 電撃エンハンス | 自動効果スキル | 電撃属性のダメージを15%増加させる。弱点を突いたとき、電撃属性のダメージを10%増加させる |
| 天地を塞ぐ者 | 自動効果スキル | 電撃貫通を得る。電撃属性で与えるダメージが25%増加する。*12 |
| マハジオダイン | 魔法スキル | 敵全体に電撃属性大ダメージ |
「先手を取られたッ⁉︎」
「
「それだけじゃない! ヴリトラ型は食いしばりを内蔵した『サバイバ』系統もインストールしている!」
「その上で、電撃貫通持ちって? 馬鹿げてるわねぇ!」
マハジオダインを素で受ける。耐性を貫通してくるので素で受けるしかないともいう。
「分かっていたが、火力は高いか!」
「こんだけ火力増強積んでるなら、そりゃレベルが上に見えるわよねぇ!」
全員命中、ダメージは同レベル帯のダイン級二発分ほど。普通に致命傷だ。というか己はマッスルドリンコを飲んでいなかったら一撃で飛んでいた。ラクカオートで防御一段階上昇しているのだけれどなぁ!
「もう一度全体魔法か?」
「……ッ⁉︎死ぬ気で躱せぇ!!!」
ブレイド殿の叫び声が、己の反応を加速させる。
眼前に迫る敵の電撃には、カシマレイコの一撃に似た絶殺の波動が備わっている。汚染能力持ちの一撃なのだと推定。
故に、気合いで躱す!
| 雷刃吼龍掌 | 魔法スキル | 敵単体に電撃属性魔法型威力240のダメージを与える。攻撃成功時、2ターンの間敵全体の防御力を20%減少させる。このスキルによるダメージは死亡時に食いしばる効果を無視する |
| 獣の反応 | 自動効果スキル | 命中、回避率を上昇させる |
| はったれバッチ | アクセサリー | 極・電撃見切り(電撃属性の回避率が大幅に向上する)の効果。賭博ゲーム『はったれ五右衛門』のクリア報酬 |
「あの一撃、己たちへの天敵だなッ!」
「食いしばり多用しがちになってるからねぇ! 敵が強すぎるからだけど!」
「あのスキルは外部からの蘇生を阻害しない! 蘇生を準備するんだ!」
とはいえ、敵の行動は2手。無茶苦茶に動き回る訳ではない。丁寧にいけ。
「『フォッグブレス*13』だ!」
己がフォッグブレスでデバフを一つ。ゴグマゴグが『ラクカジャ』で防御を上昇。正確なダメージ感覚ではないが、これで
「電撃は反射だが、物理は素通しだ!」
「殴り合いだよ! 殺られる前に、殺る!」
| 鎧通し | 物理スキル | 敵単体に物理属性中ダメージ。貫通効果。命中時防御力を一段階弱体化する |
| ブレイブザッパー | 物理スキル | 敵単体に物理属性特大ダメージ |
リオが鎧通しで装甲の接続を緩め、そこにすかさずブレイド殿が大技を叩き込む。
ダメージは大きいが、まだ余裕そうだ。こいつ相当頑丈だぞ。
「より重い、一撃を」
「ハイ・アナライズ完了です。手番を与えず、速攻で決めて下さい!」
| マシン | 多脚戦車ヴリトラ型 | LV82 | 異能 |
| 氷結耐性 電撃反射 衝撃弱点 破魔耐性 | |||
| 電撃サバイバ 天地を塞ぐ者 雷刃吼龍掌 電撃エンハンス マハジオダイン 電撃アクセラ アクセラレート 会心の眼力 オルギアモード | |||
「デカジャデクンダないよ! バフデバフで詰める!」
「攻撃は、回避していけばいい! 攻撃を恐れすぎるな!」
先手を取るのは相変わらずの敵戦車。『アクセラレート』にて行動を加速させ、一手行動を増やす。この手のスキル持ちは長引かせると地獄になるのはよく知っているとも!
| 会心の眼力 | 補助スキル | 自身に、次の物理攻撃に確定会心状態、必中状態のチャージ効果を付与 |
| 雷刃吼龍掌 | 魔法スキル | 敵単体に電撃属性魔法型威力240のダメージを与える。攻撃成功時、2ターンの間敵全体の防御力を20%減少させる。このスキルによるダメージは死亡時に食いしばる効果を無視する |
そして、放たれた単体への必殺スキル。対象は己。サマナーであるから当然ではあった。
ゴグマゴグにカバーさせて、ダメージを見る。不味いな。ゴグマゴグでも二発を耐えぬぞ。マハジオダインの後に放たれれば、本当に誰も耐えぬ。
「だが! それは今だけのこと! 弱体を増やせばそもそも当たるまい!」
己が『フォッグブレス』、ゴグマゴグが『ラクカジャ』の支援を重ね、待ってましたとロキが『ザンダイン』を放つ。弱点にヒット。ダメージ多し。
「このダメージでは、あと1ターン必要だな」
「安心するといい。もう紛れは起きない! 『アギダイン』!」
コンセントレイトからのアギダインが直撃し、敵にさらなるダメージを与える。続いてリオとブレイドが『鎧通し』、『ブレイブザッパー』にて追撃、敵の体力はレッドゾーンだ。だが、クイーンメイブの火力ではトドメをさせないこと、敵に『電撃サバイバ』の食いしばりがあることから回復を優先。行動は『メディアラハン』だ
そして、このターンに開始時に敵の増援がやってくる。浮遊している球型ドローンのようなもので、一見強そうには見えはしない。
しかし、奇襲の準備をしていたようで、その動きは速かった。
| デクンダミスト | アイテム | 味方単体の弱体効果を解除する(SH2) |
「やりやがったなあの丸いの!」
「気合で回避するよ!」
己は、ゲーム『はったれ五右衛門』をクリアし、掲示板で噂になっていた極・電撃見切りを内蔵したアクセサリー『はったれバッジ』を獲得した。いや、秋葉原のレトロゲーム屋『超男爵*15』の試遊で3時間ほど居座ってクリアしたら、店を追い出されるついでに押し付けられたものだったりするのだが、能力に貴賤はない。うん。
そうして、狙われたのは己だ。サマナーである己を確実に始末しようという冷徹な殺意が込められていそうだ。
| 電撃サバイバ | 自動効果スキル | 電撃属性のダメージを15%増加する。自身が死亡するとき一度だけHP1で踏みとどまる |
| 電撃アクセラ | 自動効果スキル | 電撃属性のダメージを15%増加する。自身のバトルスピードへの影響が20%増加する |
| 電撃エンハンス | 自動効果スキル | 電撃属性のダメージを15%増加させる。弱点を突いたとき、電撃属性のダメージを10%増加させる |
| 天地を塞ぐ者 | 自動効果スキル | 電撃貫通を得る。電撃属性で与えるダメージが25%増加する。*16 |
| マハジオダイン | 魔法スキル | 敵全体に電撃属性大ダメージ |
| 雷刃吼龍掌 | 魔法スキル | 敵単体に電撃属性魔法型威力240のダメージを与える。攻撃成功時、2ターンの間敵全体の防御力を20%減少させる。このスキルによるダメージは死亡時に食いしばる効果を無視する |
| 雷刃吼龍掌 | 魔法スキル | 敵単体に電撃属性魔法型威力240のダメージを与える。攻撃成功時、2ターンの間敵全体の防御力を20%減少させる。このスキルによるダメージは死亡時に食いしばる効果を無視する |
| 獣の反応 | 自動効果スキル | 命中、回避率を上昇させる |
| はったれバッチ | アクセサリー | 極・電撃見切り(電撃属性の回避率が大幅に向上する)の効果。賭博ゲーム『はったれ五右衛門』のクリア報酬 |
「ッ!? なんだこの軌道はッ!? 見切れていても、回避できんッ!」
「嘘、必中効果!?
「サマナー! 私を盾にしろ! 」
ギリギリで入ってきてくれたゴグマゴグの
そして、2撃目は、ゴグマゴグの死体を貫通して己に直撃する。
……これは、死んだか。気合で食いしばろうにも、食いしばるときの気合パワー*17が入らない。とはいえゴグマゴグの死体が壁となってくれたので、ギリギリ蘇生可能範囲に収まりそうだ。
騒がしい少年、ジエンが防御に使った仲魔ごと電撃に貫かれて息絶える。
正直に言えば、僕は
とはいえ、僕と少年が二人きりになったことは少なくない。なのに彼が未だ生きているのは、『誰も信じていない』からだ。
僕だけじゃなく、ブレイドも、仲魔も、あのリオとかいう女性でさえも、彼に対しての害意を内に秘めている。だから、常日頃から警戒を続けている。どこの誰が裏切っても、即座に対応できるように。
だから、現在生き残っている彼の仲魔たちは、潜在的に敵として見たほうがいい。僕らを殺すかもしれないという意味でも、少年を喰らうかもしれないという意味でも。
| デスマーチ | インストールソフト | 主人公が瀕死・石化になってもゲームオーバーにならなくなる (DSJ) |
「だが、それはこいつを始末した後だ! 奴を仕留めるぞ!」
「同感だ!」
| アギダイン | 魔法スキル | 敵単体に火炎属性大ダメージ |
| ブレイブザッパー | 物理スキル | 敵単体に物理属性特大ダメージ |
僕の火炎と、ブレイドの斬撃が命中する。強力な力を持ったマシンであっても、回復していない現在は死亡寸前だった。これで、食いしばりが発動する。あとはリオがとどめを刺せば……
その時、心を奮い立たせる歌が聞こえた。もう懐かしく思えてしまう、彼女の声で。
「
「……どこまで、彼女を愚弄するッ! マザーァァアアアアア!!」
「感情論は後にして! 連動が来るよ!」
| 自動効果スキル | 味方が食いしばりをしたとき、連動効果発動 | |
| 味方のHPMPを全回復し、スキルの封印状態を解除する | ||
| 天地を塞ぐ者 | 自動効果スキル | 電撃貫通を得る。電撃属性で与えるダメージが25%増加する。自身が敵を倒したとき、連動効果が発動。 |
| 自身のMPを3/10回復し、敵全体に電撃属性の魔法型ダメージを威力70で与える。 | ||
「アナライズに更新があります! 体力が全回復して、能力にも変化が!」
「……ロキ! 諸共死にたくないなら! 動きなさい!」
「……残念です。まぁ、機は熟していなかったので喰らったりはしませんよ。まだね」
| 反魂香 | アイテム | 死亡した味方単体をHP100%で蘇生する |
そうして、少年が蘇生する。そして瞬時に現状を把握し、クイーンメイブに回復を命令。蘇生から命令まで0.1秒も経っていない。本当にいかれた状況把握能力であり、思考速度だ。見た目と普段の行いで騙されがちだが、この少年は真正の化け物だ。疑う余地なく、人間として壊れ切っている。けれどその現実しか見ていない姿は、復讐の熱に浮かされていた僕の頭を冷やすものだった。
一度だけ、意識して呼吸する。あのドローンから流れる歌を一瞬でも早く根絶やしにしたい。だから、冷静に。
「分かれるぞ! 丸いのの他に増援の気配がある! ヴリトラ戦車は己がメインだ!」
「支援ボットは僕とブレイドがやる! 増援対処も!」
「行くよジエンくん! 敵は衝撃弱点! ハメ殺す!」
神速でもたらされる『勝利への最適解』。一瞬の思考の後に、僕もブレイドもうなずいた。勝利のための道のりをこうも素早く描くものだから、戦場にいる者たちは自然と彼の指揮に従ってしまう。本当に凄まじいし、羨ましいとすら思えてしまう、その戦闘への嗅覚は。
それを身に着けるまでに払った、おぞましい量の犠牲を感じさせないことも、含めて。
己とリオ、クイーンメイブとロキの4体を前衛にしての銭湯再開。
ここから反撃だ! とい行きたいが、その前に、敵の行動が開始される。
3手行動、電撃貫通の化け物戦車の攻撃が。
一手目、『マハジオダイン』
これも、回避することができない。必中状態が消えていないらしい。
理由は不明だが、気になる行動は一つある。アクセラレートで加速する
「クイーンメイブ!」
二手目『雷刃吼龍掌』
単体を攻撃する電撃属性必殺スキル。これを受け止めるのはクイーンメイブ。己への攻撃をその身で防がせて、攻撃を凌ぐ。
「いつもの事ですが、勝ってくださいね。サマナー」
当然クイーンメイブは感電死し、その電撃が余波となり己たちにダメージを与えてくる。『天地を塞ぐ者』の連動効果ダメージだ。威力はブーストされているとはいえ、元の威力がマハジオ*20以下なので、致命傷にはならない。
三手目『雷刃吼龍掌』
当然狙いは己である。だがこれを防げるものは戦域には存在しない。
たった一頭の、勇敢な戦士を除いては
「Bow!」
「感謝するぞ、ダニー!」
フジワラの元で護衛をしていたダニーは、マハジオダインのダメージを受けていない。故に、1発だけならその体でカバーすることができるのだ。
「くたばれ、タチコマ擬きぃ!」
「我が衝撃を、受けなさい!
| 風龍撃 | 物理スキル | 敵単体に衝撃属性中ダメージ ダメージは力依存 |
| ザンダイン | 魔法スキル | 敵単体に衝撃属性大ダメージ |
衝撃属性の連続攻撃が入り、一瞬の呼吸の中での連続攻撃の結果、ロキが持つ『多属性使い』の軸として力が発動した。呼吸を操る、道化の能力だ
| トリックスター | 自動効果スキル | 敵の弱点を突いたとき、20%の確率でプレスターン減少がなくなる |
その連続攻撃の手ごたえが、リオとロキに
──この流れを最大現に利用できる衝撃使いの仲魔のストックは、存在しない。しかし、現在のストック内部と己の68という上昇したレベルが、新たな選択肢を選ばせた。
| 悪魔合体ライト | 特殊行動 | ハンターアプリにより解放。戦闘中に悪魔合体をする。その際、合体した悪魔を召喚することも可能 |
「セット! 『鬼神コウモクテン』! 『精霊ノーム』!」
狙いは衝撃使いのLV65の『鬼神ジコクテン』だが、この悪魔合体ライトは基本的にとんでもなく事故るので、まっとうにコイツが出てくることはない。しかも素材にしたコウモクテンはデビルソースを抽出できるまで手元で育てたかったから心の方も辛い!
だが! 生き残るためならば! この程度の損耗は許容する!
ガントレット内部から力が漏れ出し、そのままシームレスに召喚へと移行する。
「……縁というのは、あるものだ」
「さて、別の私と重ねられたところで、迷惑だけですよ」
「その力以外を重ねてはいない! 己に従い、力を示せ! 『魔神マハーマユリ』!」
| 魔神 | マハーマユリ | LV67*21 | 加護 |
| 火炎耐性 電撃弱点 衝撃反射 破魔耐性 | |||
| 衝撃ハイブースタ 孔雀明王 慈愛の旋風 ラスタキャンディ 強壮の権化 グランドタック 威圧の構え | |||
「風よ! 荒れ狂い我が敵を滅ぼしたまえ!」
| 慈愛の旋風 | 魔法スキル | 敵単体に衝撃属性威力170の攻撃 攻撃成功時、味方全体を回復力80*22で回復 |
衝撃ハイブースタの乗った魔法がダイレクトに当たり、特大威力クラスの衝撃で敵戦車の足の一つが吹き飛んだ。流れが完全に出来上がる。
「ほら、『ザンダイン』です」
「ぶっ壊れろ!
ロキが崩れた姿勢をさらに押し流す形で衝撃魔法を叩き込み、リオの一撃のダメージを100%敵に伝えれるように誘導する。そして放たれるリオの一撃は胴体を貫通して致命傷一歩手前の大ダメージを与える。
「さぁ、終いです!」
マハーマユリの一撃が、ギリギリ保っていた戦車の外殻をバラバラに分解して、塵にする。
一先ず、己たちの勝利だ。
「マハーマユリ!
「元気なお方だ。いいでしょう。貴方を主人と認めます。私は魔神マハーマユリ。今後とも、どうぞよろしく」
「今は要らぬぞ!」
マハーマユリとの契約を確認しながら、戦闘エリアへと赴く。
そこにいるのは、多脚戦車が2台。レベルは先ほどの戦車と同じ。使用する技は、先ほどの戦車と同じ。
ヴリトラ型多脚戦車が2台、その強さをそのままに元気いっぱいで動き回っていた。
「フジワラ!」
「理解しています。
「……クソッ! まだ、僕には力が足りないのかッ!」
「これほどの戦力で何をするつもりだ、『マザー』……」
二人がフジワラのトラフーリの範囲まで引いたのを確認してから、己たちは第一フロアまで撤退する。
正直、洒落にならない。
現在、奥多摩アビスは豊富な戦力を受け入れている。それは、強敵すぎる悪魔との戦闘で魂の研鑽を行う者達だったり、そんな彼らを対象としての商売の為だったりとそこそこだ。
その受け入れた全てが、奴らの利になりかねない。人員も、物資も、仲魔たちも。
「……想像で構わない。あのヴリトラ戦車は、あとどれくらい存在すると考えられる?」
「そう多くはないだろう。連中は執拗なまでに素材を集めている。だから、現在は5台程度だと考える」
「流石、『マザー』の犬をしていただけある。慧眼だね」
「……
「これは、失礼」
「事実だ……加えて、あの多脚戦車のコアユニットには、特殊加工した人体を用いている。故に、素材が集まったとてすぐにあのレベルの戦力になる訳じゃない。機械の軍団だからな。『マザー』の軍は」
そう、寂しげに言うブレイド殿。かつての仲間に一つの言葉なく襲われたのだから、当然か。
「つまり、次に奴らがやるのは人狩りかい? 正義の軍隊が笑えるね」
「我々が早期に発見できたのは、幸運であり、不運だ。これで連中は隠密行動を徹底しなくなる。上層での襲撃も始まるだろう」
「そして、それに対応する準備期間も存在してるって訳ね。おっけーおっけー」
「まぁ、連中もあれだけヤバい戦車を乗り回していて消耗ゼロって訳はないでしょ。こっちから攻めてたら、案外勝手に干上がるかもよ?」
「……だと、いいのだがな」
このまま第二フロアの探索を続けるより、敵情報の共有を優先することにしたので今回の探索は終了となった。
しんどいことこの上ないが、しかし今回の探索は結構な黒字だから心は若干軽かったりする。あの戦車強いだけあって色々儲けが美味しいぞ。やったぜ。
この金で業魔殿のチケットを買い、悪魔合体をしてやろう! ジコクテンがマハーマユリに化けた今の己は、合体事故の運が乗ってきている! 満月で合体事故からの英雄猛将を狙ってやるぞ!
あとがき
人が増えて楽勝ムードが漂ってきたのでダンジョンにF.O.E.を放流しました。やられて死体が攫われたら、何故か敵が一体増えます。不思議だね!
ジエンくん。
コウモクテンのデビルソースを諦めて合体したら事故った上に上振れたオリチャー採用型の生命体。信頼していない奴にも普通に背中を預けるけど、預けた背中が撃たれる想定はいつもしている。
マハーマユリを仲魔にした事で、『ミスリル』でたまに話すノイマン達共闘した人たちから割とドン引きされた。「切り替えが早すぎるだろ!」と。
ずえど様
取り繕った見た目の裏側は結構グズグスになっている系王様タイプイケメン。COMPの中では情報体だから吐瀉物の類は残らない、という利点がある事を知った。
ファンや親衛隊には結構な塩対応をしている。なのに溢れ出るイケメンオーラと、腹の底の奥に残っているハーレム王ムーブが漏れ出るので、ツンデレとして広く語られつつある。風評被害……でもない?
トンボさん
テクノシャーマンレベル$10^{-10}$、あるいはアバチュのセラがテクノシャーマンレベル100億。とかそんなレベルの技術格差で作られたシャーマン。大いなるモノの言葉の100分の1しか理解できないなら、100体のシャーマンを用意すればいい!という方針によって生み出された量産型である。つまり、ただの資源の無駄遣いである。
降霊しているラーメン屋の爺さんとの関係は良好。自分の技全てを叩き込んでやる!と動きの癖を肉体に記憶させつつあるのだが、本人の知るところではない。
マハーマユリさん
魔丞マハーマユリとは完全に別人。ぶっ殺した時の『お前を認めてやるよ……』という
魔界に近く、D2環境の悪魔がゴロゴロ転がっているトンデモ異界での合体により、軸がD2の方に引っ張られた。
ロキさん
軸がブレる(合体時にD2スキルを考えてなかった事への言い訳)により氷結ギガプレロマと氷結ハイブースタの2種のかかったニブルヘイムで氷結特大ダメージだぁ!という技が消えたマン。トリックスターの20%運ゲーは都合良く使いまくらないようにしますが、たぶんバインドボイスでくらい便利に使い倒します。弱点のある相手にはなぁ!(意図的に書かなかったら弱点なしがデフォルト)