姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝 作:気力♪
かつての、世界の話だ。
急速に変化した地球環境により発生したと言われる多くの疫病、それに対応するために無害化した悪魔の遺伝子をワクチンとして摂取するという試みが行われていた。世界を又にかけるカドゥケウス機関というのが主軸となって作ったもので、その実は悪魔から情報汚染対策として人間の体内に無害化されたデビルソースを打ち込み無意識的な覚醒を促すものだった。
後から知った話だが、それはデビルソースの合成、加工技術を持つマザーが世界に自らを売り込む為の企みの一つだったそうだ。このワクチンとそれに伴う流通システムの変化の中でマザーの端末は全世界に感染し、マザーは世界に王手をかけたのだから。
ただ、時間のない中で行われた無茶無謀には当然闇はある。野良犬の血であり、異能者に覚醒するリスクの少ない浮浪児の多くはこのプロジェクトにて大量に消費されるようになった。高級市民に対して安全に悪魔遺伝子を取り込ませる為の、程の良いモルモットとして。
今『ブレイド』と名乗っている私は、そんな野良犬の一人だった。
「……あなたは、第七世代悪魔遺伝子に適合しました。あなたのデータを元にして、多くの人の治療が可能となります。あなたの献身に、感謝します」
そんな私に、目をかけてきたのがマザーだった。当時はただの新薬開発サポートAIとして潜り込んでいた奴は、機械だろうに人間味のある柔らかい声色で奇妙に思えた事を覚えている。かつての物を知らなかった私は、そんな印象一つで騙されてしまったのだ。
……マザーが異世界からやってきた機械存在とはその時は思わなかったし、その異世界が過去の周回だなんてこのは想像の埒外だったけれども。
そのような流れで私はマザーの使いやすい駒となった。学はなく、力はそこそこで、金さえ与えれば裏切りはしない便利な駒に。家族を生かす金さえあれば、どんな実験にも協力したし、家族の安全を守る代わりとして、どんな敵とも戦った。
マザーの世界支配を妨害しようとする戦士たち、封剣士、メシアン、ガイアーズ、ヤタガラス、クズノハ、敵を数えれば多すぎただろう。コハクと同じくらいの歳の子と殺し合ったことさえあった。しかしそれでも、マザーの言う人類の存続という大義を信じる事のできていたあの頃の私は、迷わなかった。
──信じられなくなったのは、クズノハのレイという女子の面影を新型造魔に見たからだろう。私が殺した、少女の影を。
マザーは言った。強力な戦士の戦闘パターンをトレースするには、性格そのものをコピーするのが正しいと。目的をマザーの意に沿うように設定し、マザーの結論に沿うような情報をインストールし、自分の中で正しいと結論を導かせれば、戦士の100%の戦闘思考を
対皇国、対マザーの戦争が起きた時、敵ネームドの遺体より抽出した『マインド』よりパターンをコピーして、調整し、敵の敵として争わせる。死んだ味方のネームドは、死んだ後でも戦うことを強いられた。マザーに反旗を翻した者でさえも。
それは人の心を踏み躙り、人の願いに泥をかけるような。邪悪だった。
愛した人に対して捻じ曲げられた信念でぶつかっていく事の邪悪さは、彼らを率いていた私にしか分からないだろう。マザーの正しさを信じながら、敵も味方を血の涙を流して殺し合うことになっていた。
それでも戦うことをやめないのは、『するべき事』を投げ出さなかった戦士達の魂だから。模造品だとしても、その気高さは本物だった。
気付けば私だけがマザーの操作を受けていない人間になっていて、しかしマザーが正しくないと叫ぶにはマザーから沢山のものを貰いすぎた。造られた存在であるかどうかの違いこそあれ、マリオネットなのは同じだったのだろう。
それでも大義が正しいのならば目を閉じて操られ続けることはできた。犠牲も、未来のためならばと受け止めることはできた。その先の未来で、家族が生きていられると信じたから。
だが、結果としてマザーの大義は多くの敵だけを作り、世界を破壊するだけとなった。私の世界の生き残りは
それでも、私は私の恩人のことを信じたかったのだろう。けれどそんな思いは降下するリフトの窓から『あの戦車』を見つけた瞬間に吹き飛んだ。
私の妹の魂すらも踏み躙った、あの邪悪の存在尽くを滅殺しなければならない。マザーに手を貸した、過去の亡霊の一人として。
| 自動効果スキル*1 | 食いしばり発動時、次の連動効果が発動 | |
| 自身の内部の第七世代悪魔遺伝子、モデル | ||
コハク殿の操作によりエレベーターが動き出して一息、といったタイミングであった。
現在位置は第四フロアあたり、周辺で飛んでいるアンズーのうち一体が己達の動いているエレベーターの窓を突き破って現れた。
なにかから逃げようとしてる結果としてのものであるようで、その顔は恐怖で強張っているままだった。
そんなエレベーターに空中から突っ込んできたのは、ブレイド殿。電磁力により空中での機動力を得ているという話だったか?
ソレにしたって空中ダッシュはやり過ぎだろうとは思わなくもない。
「お姉ちゃん⁉︎」
「ブレイド殿か。無事であったか?」
ブレイド殿は、一瞬己達を見る。そうして、ドス黒く濁った殺意を己達に向けてくる。これは、会話での対処は不可能そうだ。
「……ジエン、そこをどけ」
「どかせたいのなら、理由くらいは話してくれ」
「そうだよお姉ちゃ「黙れ」……ッ⁉︎」
「私の妹は適性がなく、覚醒できない愚者だった」
「マインドの切除への耐久力も、マシンの身体を自在に動かせる適応性も、コハクには存在しない。ソレは、ただ使いやすいところにいた人格パターンを使用しただけの、マザーの手駒だ」
「……それは……」
「コハクのフリをして、手を伸ばす誰かの善意に付け込むな! それは、許されてはならない邪悪以下だろうが!」
どうにも、ブレイド殿は『許せない』と感情で押し流されてここに来ているらしい。珍しく、勢い任せだ。
「だから?」
まぁそんな感情で押し流される程度ならば、己は信じることを決めてはいない。信じるというのは、裏切られて死んだとしても笑って許せる時にする行為だと己は理解しているのだから。
「……何?」
「己はこのコハク殿の願いを信じ、味方すると決めてここに居る。人間でなかった程度の事で、曲げるつもりはないぞ」
「分かっているのか。そいつの発言も! 思想も! 感情も! 全てはマザーの意に沿ったものでしかない! 人の心の全てを踏み躙るのが奴のやり方なんだ! お前のような善人が、そう思うように設計された紛い物の感情にすぎない! そんな邪悪を、生かしておけるわけがないだろうが!」
ブレイド殿は仮面越しにわかるほどの血走った目で己達を見る。感情で、
「……ブレイド殿は、マザーを殺したいのだな?」
「奴を破壊しなければこの世界は踏み躙られる。それを、私は許せない」
チラリと後ろのコハク殿を見る。コハク殿の機械の身体は震えており、コハク殿の精神体は現実に怯え切っており、しかしそれでも、その瞳は死んでいなかった。実の姉からの激情を叩き込まれたとしても、自分のルーツがぐちゃぐちゃにされたとしても、どこかに譲れないモノがあるからだろう。
「うむ、平行線だな」
「私は、お前を殺してでも、ソイツを、マザーを破壊する」
「念のために聞くが、マザーとの交渉が終わるまで待ってはくれないか?」
「待たない。お前は1秒前の味方とも悠々と殺し合える悪鬼の類だ。一瞬の心で敵を変えられるお前ならば、マザーによりお前が人類への敵へと変じかねん」
「ならば己を殺して退けてみるがいい。コハク殿を助けるのが、己の今の目的だ!」
「ジエンくん……私は……ッ!」
「己はブレイド殿への言葉を持たぬ。殺し合いを拒むのならば、ブレイド殿を説得してみせてくれ」
ブレイド殿は、身体に流れる電撃をさらに強化させ、漆黒の力を解き放ちつつある。明らかに正気や肉体を食い潰すような、禁じ手の類だ。
「死んでくれ、コハク」
「己越しに、殺せるかな!」
己とブレイド殿の会話からの抜き打ち速度は互角。しかし、仲魔との速度を合わせた関係で先手はブレイド殿に取られてしまう。
| 雷電真剣 | 武器スキル | 刀に長時間電撃属性を付与する |
| 黒色帯電 | 自動効果スキル | 電撃貫通、魔封無効を得る。魔封状態の相手に与えるダメージ30%増加。自身の生存時敵の電撃属性の被ダメージ40%増加。連動効果はスキル適合失敗により機能停止 |
| 空間殺法 | 物理スキル | 敵全体に打撃電撃属性威力140のダメージ |
開幕から飛ばしてくるブレイド殿。持っている剣をギミックにより蛇腹剣へと切り替えて、エレベーター全体を巻き込むように斬撃を放つ。咄嗟にコハク殿を下のフロアに押し込むも、己はダイレクトに被弾してしまう。かなりのダメージだ。
今の全体斬撃で3階建エレベーターの1番上のフロアは切り裂かれ、外のアンズー達からは丸見えとなっている。奇襲は警戒しておかなければ。
ダメージの中の物理属性は軽減できるものだった。しかし付与されている黒い雷は貫通効果があるようで、電撃吸収属性のあるプロテクター*2の耐性を易々と貫いてくる。
ゴグマゴグのラクカオート*3と事前に飲んでいたマッスルドリンコがなければ死んでいたレベルだが、一撃で全滅はしなかった。
問題は、問答無用とばかりに攻め続けるブレイド殿から
2手1手の、3行動だろう。ブレイド殿が2手であり、ブレイド殿に力を与えているモノが1手だ。使い手だと言う話が正しいのならばガーディアンのバックアップだろう。
| マハジオダイン | 魔法スキル | 敵全体に電撃属性威力120のダメージ |
「押してくるか!」
「お前に構っていられるか!」
そうして放たれた黒いマハジオダインを好機と見る。連続行動の呼吸の切れ目になってくれたので、このタイミングで手番は取り返せる。
それに、電撃属性というのがとても良い。己は『はったれバッジ*4』を装備しているため、マハジオダインの軌道はとてもよく見える。回避は十分に可能だ。
「ここ!」
己の仲魔、ロキ、ソロネ、ゴグマゴグの全員が薙ぎ払われ、あっさりと死亡した。しかし、まだ己は生きている。
ストックからファフニールを召喚し、そのまま『モータルジハード*5』を打たせてみる。ブレイド殿のデスバウンドと仕様が同じならば、体力を消費する『空間殺法*6』の筈だからだ*7
「甘い!」
しかし、ちょっと予想だにしない方法にて対処される。モータルジハードは命中したはずなのに、ブレイド殿の姿が陽炎のように掻き消えていったのだ。
| 自動効果スキル | 攻撃してくる敵からの命中率を大幅に低下させる*8 自身の身体を一時的に電子に変換することでダメージをシャットアウトする回避術 |
「そこだ!」
ブレイド殿が『ATTACK』にてファフニールに反撃。電撃属性、剣属性共に87.5耐性なのでダメージは通常だが、ダメージは大きい。二発でちょうど落ちそうだ。
だが、ブレイド殿の攻撃はスキルではなくATTACKだった。広域スキルの連射は2回が限界らしい。深層悪魔の連発制限*9だろう
しかし、斬撃から次の動きへの接続がとても早い。電撃スキルにより全体を焼き払うつもりらしい。
……今の己は電撃を見切ることができる。狭い足場のギリギリをすり抜けるような動きになるが、不可能ではない。
──己が不利気味な膠着状態になりかけている。決め手がない。運が良ければ生き残れるだけで、ブレイド殿の防御を抜いてトドメを刺せる方法がない。
ブレイド殿は、黒い雷の反動で常にダメージを受け続けている。良いのを一撃打ち込めれば
だが、あの回避能力を抜かなければ、机上の空論だ!
ブレイド殿の放った『マハジオダイン』にギリギリで生き残ったファフニール。『三分の活泉*10』はいい仕事をしたらしい。
トドメを刺すつもりだったブレイド殿は若干苦い顔をしている。どうにもあの明らかに身体に悪い黒い雷は、ポーカーフェイスを失わせる程度の精神疲労を起こすらしい。
長期戦でミスを誘発する戦法を考え、すぐに却下する。己はそんなに長く生き残れないだろう。極が付いていようとと見切りは所詮見切りであり、見切れていても避けられなければ当たるのだ。
ならば、狙うは先手での確実な命中。打点こそないもののアイテム攻撃の軌道は恐ろしく鋭い*11ものになるので、回避はほぼ不可能だ。攻撃の起こりが見え辛いからだろうか?
と、とっておきのメギドラストーンを放り投げようとしたタイミングで、外にいたアンズーの急降下からの電撃攻撃が開始される。嫌なタイミングだなおのれ!
| 天命の雷光 | 自動効果スキル | 2ターンごとの自分のターン開始時、次の連動効果が発動 |
| 敵全体に電撃属性の魔法型ダメージを威力120で与える。攻撃に成功した場合、2ターンの間、敵全体の回避と命中を20%減少させる | ||
己は胸部プロテクター*12の電撃吸収にてダメージを回復。ブレイド殿は電撃吸収耐性により傷が癒える。
天命の雷光は4体のアンズーから飛んだので、電撃無効ではないファフニールは焼き滅ぼされ塵になる。己はHP全開で、ブレイド殿も8割ほどの体力に戻っている。これ以降仲魔召喚に手番が回らなさそうなので戦闘速度を上げ、
とはいえさっきはアイテム攻撃でトドメを刺せるタイミングであったから、現在の盤面はなかなかにに悪くなったと言えるだろう。
しかし、決してマイナスだけではない。
「『雄叫び』ダ!」
「『溶解ブレス』ヲ、喰ラエ!」
「電撃ガ効カナクテモ、噛ミチギレバ!」
「死ネェ!」
ターゲットが己達両方であるが故に、雄叫び、溶解ブレスはブレイド殿にもヒットしている。アンズーの仕様は一段階が限界だったので、己もブレイド殿も『ランダマイザ』を食らったのと同等に全能力一段低下。
「デバフを重ねようか! 『フォッグブレス』!」
「チィッ!」
アンズーの
「……邪魔だ!」
| 空間殺法 | 物理→電撃スキル | 敵全体に打撃属性威力140のダメージ |
「二度目であれは、抜けられるな!」
アンズー達を巻き込むように振り抜かれた蛇腹剣のワイヤー部分を飛び越えて回避、蛇腹剣を操る電磁力の影響で外に飛ばされるも、胴を切られて致命傷となっているアンズーを踏んでトドメをさしながらエレベーターに帰還。
そのまま『百麻痺針』でブレイド殿を狙う。己の吐いたフォッグブレスにより生み出された霧がブレイド殿を隠すが、ブレイド殿が発する黒い雷はよく目立つので己の狙いには問題はない。
しかし、確実に命中したタイミングであっても
己の着地に合わせてブレイド殿が切り掛かってくる。通常のATTACKに見える動きだが、剣に付与された雷は消えていない。
『極・電撃見切り』で電撃の軌道から斬撃を逆算し回避しようとするタイミングに合わせて、ブレイド殿が懐のGUNに切り替えて来た。やばそうな拳銃を隠し持っていたしい。電撃見切りでの知覚を餌にして、確実に弾丸を命中させるつもりのようだった。
| 獣の反応 | 自動効果スキル | 命中回避率が上昇する |
だが、不意打ちの銃撃程度ならば引き金を引くタイミングで動きを変えれば回避できる。己の反射神経はなかなかに凄いのだ。
そして、その銃撃の瞬間に反撃のタイミングがあった。そんな僅かな隙に差し込める己のスキルは、構築の軽い初級魔法のみ。
初級魔法ならばこの僅かな隙に差し込めるだろう。そして、己達と組んでいた時と装備が大きく変わっていないならば、有効な属性は火炎、衝撃、水撃。メジャー耐性でないという理由で、選択するべきは!
「『アクア*13』!」
「……ッ!」
そして、その水撃が弱点にヒットし
「終われ!」
「……ッ!」
そして、『百麻痺針』をダウン状態のブレイド殿に叩き込む。上振れが乗って3命中に緊縛付与成功。
己は、乱数の神様に完全勝利したようだ。
緊縛が入り動けないブレイド殿は、血の混じった咳をしていく。黒い雷が体を蝕むペースはおおよそ1ターンに25%。致命にはおそらく届かないタイプだろうが、それでも僅かなダメージすら被弾したら暴走した力のコントロールが外れ爆発四散する状態とか己はあんまり好きでは……いや結構好きだな。ダメージで死ぬ前に勝てばノーダメージだし。
「……トドメを刺せ」
「断る。補給はしたが、反魂香は多くない」
「お前は、あのガラクタの味方なのだろう? 私が動けるようになれば、必ず奴を破壊するぞ」
「ならば己がマザーに騙されぬように見ていてくれ。己一人では間違いに気付かぬかも知れぬが、マザーの悪辣さを知るブレイド殿が横にいるならば安心だ」
「……先程まで、八つ当たりでお前を殺そうとしていた女だぞ? 何がどうしてお前は私を信じられるのだ」
「己はブレイド殿を知っている。愛が深いが故に家族を真剣に想い続け、気高きが故に進んで邪道には走らない。そのような強い人だ。共に戦う中で己はそれを理解できている。一度殺し合った程度でその信頼は崩せるなどと思うてくれるなよ」
「……人格そのものを否定するような冷徹な殺し方をしてきた奴とは、思えぬが」
「そうか?」
なんだかんだとありつつも、周辺の飛行悪魔はブレイド殿の斬撃と電撃の余波で散らされた。
そして、上から吊っているワイヤーは天井ごとぶった斬れている訳であるが、下降する分には問題ないようでエレベーターの動作に影響はない。下から浮き上がらせる力だけでどうにかなっているようだ。
「……ジエンくん、お姉ちゃん」
「……私はお前の姉ではない」
「所詮は呼び名だ。呼びやすいようにすれば良いのではないか? と己は思うのだが」
「それよりも、ブレイド殿が言った人格コピー体というのは本当か?」
「……わかんない。けど、私は私がマザーから離れたときの事を、
困惑の表情であるが、己達の戦闘が終わって落ちついてはいるらしい。まぁ、自分自身がマシンである程度の事は、これからの無茶無謀に比べれば些細な事だ。
「むしろ、気軽に命を使い捨てられる分だけ気が楽ではないか?」と口をするする滑らそうとするタイミングでペルセポネーからの思念が入る。召喚して欲しそうにしていた。一瞬思い止まってみると考え直してみると、なかなかに人の心がない感じの文脈になってしまっている。反省だ。
この辺りの言い方をうまいことやってくれるのだろうと、ペルセポネーの召喚を許可し実体化をさせる。
「……機械のアナタ」
「な、なんですか?」
「あなたの胸にある『やりたい事』は、アナタのルーツを知ってから変わりましたか?」
「そんな事ない! あの子がこれ以上苦しむのは、絶対に間違ってる! ……あれ?」
「迷ったところでどうなるわけでもありません。それならば、心に従ってみては?」
「うん……うん! そうだね! ありがとう半分この悪魔*15さん!」
「死神ペルセポネーと申します。コンゴトモヨロシク」
「よろしくね!」
迷いに迷っていたコハク殿の表情が一変する。真っ直ぐ適当にやれ、みたいな事を柔らかく言っているだけなのにこうも様変わりするとは、さすが人の心を乱す悪魔というところなのだろう。
あんまり心のない言葉でコレを汚すなとジトっとした瞳で己をみるのはやめて欲しくはあるけどもな。
「……これを見せるためか、悪魔」
「貴方が勝手に負い目を背負っているだけに思えますが」
「……所詮私は私か。殺すと決めたマシンにすら、情を抱いてくるとはな」
「まぁ、ブレイド殿は負けたのだ。しばらくは勝者のノリに従っていてくれよ」
リカームシガレットでソロネを蘇生して、サマリカームで仲魔を全蘇生し、全回復。そして階段でタップダンスをしてMPを回復*16してみる。このエレベーターは意外と降りるのが遅い感じだった。
きっとスピードよりトルクを優先しているからだろう。マシン共はそこそこ重そうだし。
「ジエン……何故踊っている?」
「MP回復の舞だ。チャクラウォーク*17での回復効率がよいダンスはキリギリスで研究されていてな。この動きは最小の体力消費で最大のMPを生産できるらしいのだよ」
「私には同じところをくるくるしているだけにしが見えないが……」
「踊ってみると、なかなかに奥深いぞ?」
「……踊らないさ、私はな」
ブレイド殿が横を見れば、うずうずとしているコハク殿がいた。シャルウィダンスと学んだ英語で誘ってみたくなる気分であったが、そろそろ最下層に到着するらしかった。残念。
エレベーターは、ガシャンと地面に墜落をした。地面から噴き上がる上方向のエネルギーのおかげで大事はなかったが、エレベーターとしては普通に壊れているだろう。吊っているワイヤーが斬られているからな。
「……なんか、新感覚!」
「普通に立っていても上に飛ばされそうだな。大ジャンプできそうだ」
「……龍脈のエネルギーだろう。おそらくな」
地面にはMAGの流れが光になって見えるほどに濃いエネルギーが流れている。これだけのエネルギーを好き勝手に使えたのならば、80レベルのマシンをある程度とはいえ量産できるというものだな。
「……うん、こっちだよ。マザーの感じがする」
「ひとまずマザーの無力化はする。奴が自由な力を振り回せてしまえば、キリギリスとしても生かしておく事はないだろう」
「そこまでは私にも異論はない。だが、私は奴を生かしている事自体を認めている訳じゃない。故があれば、必ず破壊する」
「うむ! 心強いな!」
キュルキュルとコハク殿の車輪が回る音がする。
深部には凄まじい量の霊的エネルギーが集まっており、己には想像も付かないようなテクノロジーが集まっているのだろうと推測できる。もしかして、異界の時間が加速しているのもそのあたりの影響なのかも知れない。
コハク殿がなにかをして横開きのドアを開け、先に進む。
一際大きい広間には、己と同じ程度の少女の姿があった。彼女は両手のあたりに巨大なクローをつけており、背面のフロートユニットと合わせて見ると球体が開かれてその中に人が入っているかのような印象になる。
その傍らには、太陽の男がいた。
虚な瞳に狂気を宿したままに、己達を見つめている。
「……マザー、貴様ッ!」
「僕には、やらなければならない事が、あるんだ」
「消えてもらうよ、ジエン」
「やり合う前に理由くらいは話して欲しいものだがな!」
考えることは多くあるが、ひとまず火炎属性への対策として、『パンチdeバッジ*18』にアクセサリーを換装するのだった。
薙ぎ払われた悪魔の死体を横目に見ながら、ズンズンと深部へと進んでいく。
基本レベルの高さというのは凄まじいが、それ以上に『漫画好き』の指揮能力は群を抜いていた。ジエンの敵への殺意と勢いで意志を統一させるやり方でなく、冷徹な計算と厚い信頼による連携補助。
まさしく、デビルサマナーだ。
「いやー、フジワラちゃんのルート検索で道中が楽ちんだねぇ」
「ホシノの目*19の影響もあります。もっとも、それ以上に先走った連中のせいでしょうが」
「レベル上げしたかったから無理やり突っ込んだらしいけど、別に私たちと一緒でもよかったんじゃないの? 初対面の人と合わせられない人たちじゃないみたいだし」
「ドリフターの二人、ブレイドと
「まぁ、キリギリスなんて馬鹿が適当につるんでるだけだからね。なんか大組織みたいに言われてるけど、権限とかは特にないし」
「それを信じられるのか? って話ですね。知らない人から見れば、十分に謎の組織なのでしょう」
「実際はオタトークしてるだけだったりするんだけどねぇ」
ゆるい話になりながらも、周囲の警戒は怠っていない。歳こそ私程度の若さに見えるが、『漫画好き』以外の面々も経験はとても豊富そうだ。高いレベルは所謂MAG太りというのではないらしい。ヤクザ連中と敵対した時に見た、MAGだけでレベルがブーストされている訳でない、魂の強さがそこにある。
……その魂の強さを引き上げているのは、間違いなく『漫画好き』なのだろう。MAGの強さはただの高レベルであるが、魂の強さを見た時に私は自分の正気を疑い始めることになった。
それは、鋼よりも硬い何かだった。人の魂などふわふわうつろうモノだというのに、彼の魂には鋼鉄以上の硬さと鋭さがあるように見える。ジエンのようにただ強いだけの魂でなく、人のまま、幾度も鍛え直されたかのような精神だ。レベル100オーバーとは、そういう存在なのだろう。
そんな怪物の魂をしているのに、人の話が通じるというのだから不思議な話だと私は思う。
「……それでフジワラちゃん、野生児くんからの情報は?」
「完全に途絶えていますね。第四層あたりで最後の通信があったようですが、マップデータの更新もありません。おそらく、ジエンがサボったか、手持ちのバックアッパーを切らしたかでしょう」
「大した信頼ですね。普通に死んでるんじゃないかとは思わないんですか?」
「ウチのちっちゃい先輩がごめんねー、悪気はないんだよー」
「信頼していると考えて下さい。まぁ、ジエンが死ぬというのが想像できないというのもあるのですけども」
そういうと、ホシノは「まぁ、あり得ないことが起きる世界になっちゃってるから、ちょっとだけ急ぎめで行こっか」と警戒レベルをそのままに少しだけ早足になり、可奈美は冷たい瞳のままに「本当にで死んでいると考えてないんですね。驚きました」と私とリオを見る。
「さて、ジエンの示した目的地はマップのこの辺りです。この階段を下ってからすぐですね」
「地下5階か。最下層じゃないんだよね」
「はい。敵集団がこの異界に座礁したポイントだそうです。そこに、敵のマシンコアが存在すると」
「……警戒しながら行こっか。罠の可能性も一応見ていて」
気になるのは、悪魔の死体の死に方が火炎によるモノだけに変わっていること。
合流して
「……ジエンくん、無事じゃなかったら許さないからね」
あとがき
かつての敵が味方になり、かつての味方が敵になる。みたいなぐちゃぐちゃ盤面が好きな作者です。
描き切れるカラテがあるかは好き嫌いとは別ですけどね! 難しい。
ジエンくん
アリ・ダンス派生を転ばせるコツを掴んだ。ペルソナ系のスキルなら、弱点で転ぶシステム的な弱点もある筈だ! と。
基本的に金のある人は弱点を潰しているので滅多なことでは転びませんので、あんまり関係はない。
コハクちゃん戦車
お前はただのコピーなんだよ! と言われてショックを受けたが、ペルセポネーの一声により「まぁいっか!」になる心で動く子。
マザーの人格複製体のエグさは結論を導くまでの道を偽造するだけで、結論そのものを設定しないこと。英雄的な存在ほど結論を曲げないので、マザーの意のままに動く。
ブレイドお姉ちゃん
コハクちゃんを名乗る不審戦車を見てガチ切れしたお姉ちゃん。拘束されてからのなぁなぁで仲間になったので内心ぐちゃぐちゃのまま、裏切ってマザーを仕留めるタイミングを探っている程度の繋がりだが、仲間である。
殺すと決めたマシンにすら情を抱いてしまう人なので、彼女は部下を本当に大切にした。敵のネームドの精神が入っていようが、裏切り者の精神が入っていようが。共に戦う味方として、生きて欲しい仲間として扱った。それが伝わっているからこそ、
漫画さん一行
かなみんとフジワラの会話のトーンがわりと似てるので、結構困った作者がいるらしい。そんな中、おじさんの使いやすさはすげえや。
……あれ、リオさんは女子か?