姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝 作:気力♪
「武技の泉?」
「絶対碌なもんじゃないでしょそれ、入ったらTSするとかだったりしない?」
「はっはっは! 性別が1/2にはなりませんとも。まぁ、これを持っていただければ分かるかと」
「……フラスコ?」
リオが水の入ったフラスコを手に取る。すると、「あー……こういうのね」と納得をして己達に渡してみてくれた。
フラスコを手に取る。すると、感覚的にとあるスキルの使い方が理解できた。
「『暗殺拳』の、使い方が理解できたぞ」
「スキルを一時的に獲得できるアクセサリーのようなものですか? 私にも使い方がわかりました。まあ私はMAG経路改造の副作用*1で、発動はできそうにないですが」
『火の粉のリング*2』や『アムリタチャーム*3』のようなものだろう。ペルソナ使いの面々が潜っている異界にて発見されるタイプのアクセサリーであると聞いている。特殊な条件でのみ獲得できる『アムリタ螺旋チャーム*4』なる全体バステ回復スキルのアムリタシャワーを習得できるというアクセサリーはとても良いなと思ったのでちょくちょくオークションで探してはいたりする。まぁ、レアであるし見つけても高いので基本手は出せないが。
「で、この水が、武技の泉ってとこから汲んだ奴ってこと?」
「はい。我々『春日部カジュアル連合』が発足した事件、あれは廃マンションに閉じ込められたものでしたが、その際に別の異界に水源が接続していたのです」
どうにも、その繋がった水源というのが、『武技の泉』らしい。
「という事は、コレを飲めば『暗殺拳』のスキルを獲得できるのでは?」
「そう考えて泉の水を飲んだ方々もいらっしゃいました。しかし、体内を作り替えんとする力に耐えきれず、水を飲んだ皆様は亡くなってしまいましたが」
「情報の濃度の問題? 水が想定した使い手の強い肉体に耐えられなかったとか?」と頭を悩ませるリオ。そういう技術的な話はさっぱりなわからんちんなのだが、いくらか分かる事はある。
フラスコの蓋を取り、匂いを嗅ぐ。やはり無臭だ。おそらく無味でもあるだろう。
カグラギ殿がこの水をフラスコに入れ持っていたのはアクセサリーとしての他に毒物として使えるからだ。なのでそこそこの数を持っているのだろう。貴重なものであるのなら、己達が効果を確認してからすぐに返せと言う筈なのだから。
それを確認した己に対してカグラギ殿は、すっとぼけた顔で笑っていた。タヌキ、という奴であるな。
──まぁ、タヌキと聞くと食欲の方が湧く己には、食えぬ人物の例えとしてのタヌキはあんまりピンと来ないのであるが。
「ありがと。つまりこの水の源泉を探したいって話?」
「はい。といっても入り口自体は見つけているのです。入ってから帰ってきたものが誰も居ないのですが」
「一方通行のワープトラップですかね? あるいは、入り口と出口が異なるタイプの異界である可能性もありますか」
「リオ殿、ジエン殿、フジワラ殿、私と一緒にその異界に潜ってはみませぬか?」
「うわ、嫌な誘惑」
「あなた方は、金が欲しくて我々からの襲撃を待ったのでしょう? ならば、より金になる話には目がない筈です」
リオが悩み始めた。普通に罠の可能性は高いのだから当然ではある。
「自分も同行するというのは、罠でないことを証明するためか?」
「はい。異界自体が罠であれば、私も共に死んでしまいますからね。転送先に罠を仕掛けるのであれば、あなた方は普通に食い破ればそれで済むのですし」
「この泉の水がお金になるかは置いておいて、面白そうな話ではありますよ。暗殺拳使いを量産できる程度ならば小金程度にしかなりませんが、『物理プレロマ*5』や『武道の心得*6』などの有用なスキルがあれば価値は跳ね上がります。まぁ、絵に描いた餅ですが」
その言葉に惹かれたのか、リオは苦渋の表情で決断をした。
「おっけー乗るわ。案内しなさいよ、その武技の泉に」
「では、参りましょうか!」
「……え、今から?」
「はい。今からです。あいにくと道が開く時間は長くはありませんから」
「別に消耗はしていない訳であるし、行けると思うぞ?」
「消費したアイテムはカグラギの仲間に使ったアムリタシャワーだけですからね」
「うえー、帰ってACの続きやりたかったー」
そうぼやくリオ。
すたすたとカグラギ殿がさっき追い出された異界に潜る。仲魔集めの際に結構荒らしたので襲撃してくる敵はなく、レベリングをしていると思われるカジュアルの面々とはもう仲良くなっているので「いえーい」とうぇいうぇいして通り抜けられた。
「あ、アンタが今に拘ったのって、追放が周知される前に突っ込みたかったのもあるのか」
「はっはっは、まさかまさか。立ちはだかる敵を薙ぎ払える程度には、強さはありますとも」
さっきまで仲間だった人間を立ちはだかる敵とは良く言うものだ。己は結構得意な方であるが、割り切りがよくできているのだなー。
「……へぇ、月齢で開くゲートな訳ね」
「はい、新月にのみ開く門です。この異界の月齢周期はそれなりに早いので、長くは開きはしませんがね」
「ならば話している暇はあるまい。行くのだ! カグラギ殿!」
「騙すつもりはないと言いましたが、信用されていないようで」
などと言いつつノリノリで踏み込んカグラギ殿。次いでリオが飛び込み、フジワラが飛び込み、最後に己だ。
ゲートを抜けた先には清らかな水が流れる川があり、そこに添った舗装されたような道がある。道幅はそれなりに広く、戦闘の際に困る事は少なそうだ。
足裏の感触からして、道は踏み固められた土である。誤差程度とはいえ、岩やコンクリートよりは叩きつけられて痛くはなさそうだ。
「ついたぞー」
「はい。ジエンが到着するまでに3分かかりました。2秒間隔で入っていたので、この異界の時間速度は元の世界の90倍という事になります」
「んで、帰る道はない。ゲートは一方通行みたいね。まぁ、水源が繋がってるんだから潜れば多分帰れるけど」
「トラエストは行けそうか?」
「はい。ホームポイントへの転移などは問題ありません。遠くはありますが、断絶してはいないようですね」
なるほどなー、と理解する。
先日カグラギ殿の仲間達が突っ込んだ時にはこの異界は閉ざされていた。つまり、ホームポイントとの道が断たれていたのである。そりゃあトラエストストーンなどでは帰れず、情報を持ち帰れない訳だ。
「では、進むか」
「『マッパー*7』によると、この異界は飛び地の多い地形になっています。あそこに見える間欠泉のようなワープポイントを使って移動するタイプですね。私がサポートはしますが、オートマッピングの際には方角を確認し、どのワープポイントがどこに接続するかをきちんと記録しておいて下さい」
「ヤマブキジム方式かー。面倒なのよねぇ……」
「古き良き伝統だな。最短でいけば最奥までの距離が短くなるので、己は嫌いではないぞ!」
「頼もしい限りです」
カグラギ殿はフジワラの視界への情報オーバーレイに戸惑っていたものの、すぐに適応し、オートマッピングなどと合わせてどの情報がどこに対応するかを確認していた。手慣れてこそいないものの動きには迷いはなく、地頭が良いことがうかがえる。
フジワラのマップは向いてる方向が上であり、己のオートマッピングでは常に北が上であった、のような微妙なトラブルは少し考えれば分かることらしい。己は分からなかったがな……
「では、行くぞー!」
でっでっでででで、かーんでででで
と脳内でBGMを流し、ノリノリで進んでいく。
隊列は1番前にカグラギ殿であり、その裏に己、3番目にフジワラであり殿がリオ、いつもの己達の隊列の先端にカグラギ殿を入れたものだ。カグラギ殿への信頼のなさが伺える。
「右前方、敵です」
とはいえ、カグラギ殿はそんな些細なことことがしこりになるような甘い男ではない。
敵が発見できた瞬間に己達から距離を取り、暗殺を取れるポジションへと移動した。己だ敵悪魔の姿を確認し、クイーンメイブ、ペルセポネー、ソロネの3体に仲魔を整える。発見した敵は『怪異カシマレイコ』、呪殺使いであるのでゴグマゴグは一旦ストックに。
今回のカシマレイコには両足がある。肌に火傷の痕があるタイプだろう。
カグラギ殿と目を合わせ、先手は己が取ることとした。破魔使いがいるのでな。
「『マハンマオン*8』!」
天使ソロネの破魔魔法がカシマレイコに放たれる。単体に対して全体魔法なのはスキル枠の都合であるが、しかし威力に変わりはない。
その破魔の一撃が命中するかと思った瞬間に、カシマレイコは『前転*9』をした。
それにより生まれた動揺により、
「馬鹿な、命中した筈だ!」
「あれは葛葉の技! 一瞬だけ自分自身の肉体を世界から隠す技だよ!」
「……よし、驚きはしたがその程度! 動かさなければ問題はあるまい!」
続き、己が『バインドボイス』にてカシマレイコを緊縛で縛らんとする。フジワラの『サードアイ*10』有効だと理解できていたそれは、前転終わりに生まれたカシマレイコの隙を突き、その肉体を縛りつけた。
「ここは私が!」
「トドメ刺してレベル上げたいだけでしょうが」
そして、ペルセポネーの『ブフダイン*11』が命中した瞬間にカグラギ殿が突貫、『S的中の秘法*12』でカシマレイコへの縛りを強くしながら、仲魔との暗殺拳連打にてカシマレイコを始末した。物理耐性のない相手にはめっぽう強いな本当に。まぁ、物理耐性があれば別の手段を使うだけなのだろけども。
「ここの悪魔だと、カグラギを先手に入れて回避封じ仕込んだ方が良さそうね」
「あの前転はなかなかに美しかったな! アレが泉によって習得できたものだと言うのなら、己も身につけたいぞ!」
「それで、死体からのアナライズ結果はどうですか?」
「こんな感じ。まぁまぁやばいよ」
怪異 | カシマレイコ | LV13+43 |
火炎、氷結、電撃、衝撃に強い、破魔弱点 |
驚きの、ベースレベル13である。現在レベル56とか、鍛えすぎでは?
「ベースが13レベルって事で、カシマレイコの死体汚染はワンチャン持ってないかも。火炎弱点もない*13しね」
「ここまでレベルが上がりまくっているコレは別にして、ここの悪魔は出現レベルから強化される傾向があるようですね。共食いが多いということは、MAGの生産量がそう大したものではないのでしょう。……変な事情がなければ、ですが」
「変な事情は絶対あるでしょ。ただのカシマレイコが前転使うなんて異常事態よ?」
あれそんなにすごい技術なの? とカグラギ殿に目で聞くと、「さて?」とはぐらかされた。もしかしたら本当に知らないのかもしれないが、なんか知ってそうな気がするのではぐらかされたのだろう、うん。
「まぁ、進みましょ。敵の平均レベル50ちょいって事は、アンタも普通に予習してる範囲でしょ?」
「もちろんでございます。強者ばかりでありますが、今の世界の平均レベルはこのあたり、万一に備えてはいますとも!」
「レベル上げの餌にしてるものかと思ったのだが、違うのか?」
「たまに遭遇することはありますが、その程度でございます」
何故か自分を侮らせようとする演技を引き伸ばすカグラギ殿。普通に皆気付いているのだし喋っていいのでは? とは思うが、まぁ事情は人それぞれか。
すたすたと軽やかに進む己達。
さして仲魔集めに拘る気はないものの、無料でスカウトできる悪魔が引っ張れるなら話は別。女性型悪魔に
そんな中、少し面白い悪魔が仲魔になることとなった。
女神 | サラスヴァティ | LV39+11 |
・テトラカーン・マカラカーン・マカカジャ・メディラマ・テンタラフー・マハラクカジャ・弱者必滅拳 |
「なにこの……何?」
「悪魔ブローカーの求めた、LV39の両カーンサラスヴァティがベースですね。認知異界のLV50サラスヴァティ*14が混ざっているようです。この場合のカーンはどちらの法則になるのでしょうか?」
「いや、両カーンの方はいいわよ。ムラカミの手持ちにいたから知ってるし。弱者必滅拳ってどっから生えてきた⁉︎」
「そのへんの水からではないか?」
「強そうなスキルでございますねぇ」
弱者必滅拳 | 物理スキル | 敵単体に物理属性ダメージ、バッドステータス状態の相手には大ダメージに変化 |
「あ、これ欲しい」と素直に思うタイプのスキルである。本人もテンタラフーを持っているし、腐らない。
「元々がサラスヴァティであるのだし、威力はたかが知れていると思うぞ?」
「あの、ジエン。このサラスヴァティ39から50までのレベルアップが全て『力』に入っています。普通にジエンくらいなら殺せるレベルです」
「……まじかー」
本人に尋ねてみると、「ふふふふふ、筋肉こそが芸術であり、筋肉こそが知識なのです」と不的な笑みを浮かべている。このサラスヴァティ、相当にトチ狂った性格になっているようだ。
なお、力のステータスこそ25/40*15とめちゃ高であるものの、速が9/40*16とかなり悲惨なステータスである。乱戦の最中に敵に先んじてカーンを張るという役割は難しいだろう。
「……成長分がこれなので、別にこの異界の全てのサラスヴァティがこうではないと思いますよ?」
「というか女神をゴリラに変えるとか、武技の泉、けっこうやばいわね」
「だからこそ! 金になるとは思いませぬか?」
とはいえ、メパトラ使いとか地味にありがたいので普通に採用である。
という事で、召喚進む仲魔を若干変更。ペルセポネー、サラスヴァティ、ゴグマゴグに。
どうにも異界全体が物理だらけな空気なので、物理反射相性のゴグマゴグを盾にすれば幾らか楽だろう、という安直さである。
先に進む、間欠泉型ワープポイントを乗り継いで、進んでや戻っての繰り返しだが、着実に前には進めている。
道中敵対してきた悪魔は、『妖精セタンタ』『幻魔ナタタイシ』『幻魔クー・フーリン』とバリエーション豊かであるが、皆一様に人型に近く、武術を使う。
カグラギ殿に先制発動で回避封じはさせているが、それでも尚ダメージが最小になる受け方をしていたりと技量がエグい悪魔が多かった。まぁ、レベルの暴力で薙ぎ払えば死ぬのだから問題はないのだけれども。
「……マップの90%が埋まりました。以降は最短経路を表示できます」
「ハズレルート全部踏み抜いたとは、言いたくないわよねぇ……」
「はっはっはっ……ジエン殿、自信満々にハズレを引きすぎではありませぬか?」
「運だからな、仕方がなかろう」
まぁ、マップを埋め切れたのは気持ちがいいのはあるのだけどね。
そうして奥に進んでいくと、道の近くを通っている水路の水量が増してきていた。
触れぬように器で水を掬ってみると、カグラギ殿が持っていたフラスコの水よりも明らかに情報が重かった。
しかし、アクセサリーとして単一のスキルを読み取れるようなものではない。複数種類のスキルが混ざり合っている原液のような印象だろうか?
「ジエン、その水はこちらに。分析をかけてみます」
「頼むぞ、フジワラ!」
「やるのはCOMPですので、気にしないで下さい」
3つの水路が一つにまとまるポイントにて小休止。雰囲気的にはもうすぐボス戦である。
「しっかし、川を遡ってきただけなのに、めちゃくちゃ歩きやすくなかった?」
「人型の悪魔が多かったが故に、踏み固められていたのではありませぬか?」
「地霊の類が主なのだと推測するぞ。土地を自分の好きな硬さに整えているのだとな」
「このトンチキ異界が地霊のものとはちょっと思えないかなー」
「主は闘鬼か英雄では? 異界そのものの性質はかなり罠向きですのに、各広間にトラップはありませんでした。頭の回る魔神だとかの類はないかと」
適当に口から出た言葉が、同じく適当に口から出たフジワラの言葉に否定される。とはいえ納得と言えば納得だ。
武術家養成水(仮)に支配されているこの異界ならば、脳筋こそが異界の主に相応しいのだから。
「さてカグラギ、コンディションは整った?」
「はい。実にゆったりと休息できましたとも。皆様以外に襲われる心配がないと言うのは、実に楽でございました」
「己もそうだな! カグラギ殿の間合いにさえ気をつけていればよかったのだからな! 休息には十分だとも!」
はっはっはっと笑いあう己達。うむ、やはりこのノリは好みである。いつ裏切るともしれぬ敵ではあるのだが、友人としてはノリが良く好ましい。
「リオ、私があの友情を理解できないのは女だからでしょうか?」
「じゃないかなぁ……私もさっぱり分からんわ」
その場のノリが9割の関係性を考えるなど馬鹿の極みよ。感じるのだ……
「皆様、水の解析が終わりました」
「お、なんか分かった?」
「はい。この水には人間の思念、おそらくペルソナあたりが溶け落ちているようです」
へぇ、といった感じにフジワラの見せた水を見る。これには、戦うための心の鎧とかそういうのが溶けているのか……
「ならば、上流にてそのペルソナ使いの死体処理でもされているのか? こう、血抜きのような」
「おそらくは。水の中には武術やスキルの情報が大量に存在しているのに、記憶や人格といった情報がありません。ジエンの言うように、抜き取りたい情報以外を水に流しているのでは? と推測できます」
「へぇ、じゃあ武技の泉の源泉はただの達人の記憶だってこと?」
「はい。水自体は情報を溜め込みやすい霊的性質こそあるものの、ただの水です。飲んだ方が死んだというのは、ペルソナの反発作用でしょう。鍛え抜かれた達人のペルソナが人格を食い破って、結果死んだのだと」
「老廃物だけで人格を食い潰すとか、どんな化け物よ」
「そこまでは……」
「まぁ、行ってみれば分かるだろうよ。これほどの技を持つ武人を仕留めた相手が敵だと分かればそれでいい」
「シンプルね。ボスは強い、いつものこといつものこと」
「頼もしい限りです。私は陰ながら支援させていただきましょう!」
「あんたの回避殺しがないと面倒なんだから、ちゃんと前出なさい」
するりと戦闘モードに移った己達、特に緊張もせずに自然体でボスのいそうな空間に飛び込んだ。
大広間に出る。
水路を辿れば、そこには一つのペルソナがある。木の板に貼り付けられ、臓腑から血のような何かが流れ、水に希釈されて透明になっていく。
あれだけド派手に血っぽいのを流しているのにスキルとしての純度が欠片も減った気がしないのは、元々の使い手が強かったからだろう。
晒したペルソナを眺めている、猿っぽいのは「なんでこれで力が抜けねぇんだ?」と不思議な顔をしていた。
「お、侵入者か。珍しいな」
「こうも開けちゃあ奇襲もなんもないか。まぁ多分殺すんだけどさ、アンタ何者?」
「ただの使いっ走りだよ、面倒なサマナーに縛られていてな」
フジワラのアナライズが入る。
敵悪魔は、『破壊神セイテンタイセイ』ある意味順当な、武芸ができそうな悪魔である。ボスではないらしい。
「して、何故にそこのペルソナの血抜きをしているのだ? 食べるのか?」
「食わねぇよ流石に。ペルソナを弱らせて本体を雑魚にする企みだとさ。心変わりなんざする訳ねぇから殺しゃあいいと思うんだが、サマナー的には仲間に引き入れたいらしくてな」
「己にも心変わりとかはするタイプには見えんな」
「私も同意見でございます。魂に刻み込まれ、薄まることのない武芸の数々! 相当な頑固者かと」
「だよなぁ……」
などといいつつ、するりと戦闘態勢を整えるセイテンタイセイ。敵サマナーから仲魔を託されていたようで、召喚術により悪魔を召喚してきた。
「奇襲取りたかったなぁ、これは」
破壊神 | セイテンタイセイ | LV68 |
法王 | ゲンジョウ | LV50 |
隠者 | テンホウゲンスイ | LV50 |
星 | ケンレンタイショウ | LV50 |
剛毅 | リュウメ | LV50 |
セイテンタイセイの後方に4体の悪魔……ではないな、シャドウとかいう人の心から生まれる悪魔っぽいのが現れる。アルカナというのでカテゴライズされているのがその証拠だ。そんなのが現れる。
テンホウゲンスイが豚っぽいので、ケンレンタイショウが河童っぽい。坊さんのようなゲンジョウが、馬のようなリュウメなるシャドウに乗っている。
セイテンタイセイも合わせて、どこかで見覚えがあるような、そんなチームである。
「あ、西遊記だコイツら」
「さいゆうき?」
「中国の三蔵法師という方が、インドまで経典を取りに行く物語でしたか? 世界的に有名な物語だと聞いています。設定を踏襲したアニメなどが山のようにできているとかで」
なるほどなー、と頷く己とカグラギ殿。
セイテンタイセイは誇らしいような恥ずかしいような、微妙な表情をしていた。
さて困った。隙がない。
隙を晒して釣った所にカグラギ殿か己が奇襲を仕掛けて先手を取るつもりだったのだが、まぁ釣られない釣られない。
むしろ向こうの方も釣りをする気な陣形であるので、睨み合いが発生してしまっている。
仕方がないので己が動く。
仲魔の構成を変更、ファフニールとゴグマゴグのみにして、ファフニールの『邪念流動*17』を起動させる。
敵方はその射程延長を見てセイテンタイセイを切先に攻め込んでくる。ゲンジョウとリュウメの乗馬コンビをバックアップにして、セイテンタイセイとテンホウゲンスイとケンレンタイショウの3体で踏み込んでくるようだ。
「チッ、踏み込みが速いか!」
「猿だからな、身軽なのさぁ!」
先手に叩き込もうとしたが、遠距離で攻撃始める前に
「まぁ、これも釣りなのだがな」
刹那の刃 | 物理スキル | 戦闘開始時、敵単体に一定確率で物理属性の攻撃を行う、貫通、即死効果 |
リオの一撃がテンホウゲンスイ《豚》の首を刈らんとする。
手刀による一撃は豚の右腕に防がれたが、右腕を一撃で切り落とすことに成功した。手を刀のように使うが故に手刀とは、よく言ったものだ。
リオが稼いだ隙にクイーンメイブを召喚し、ファフニールの『邪念流動』をプログラムの側から解除する。3人チームに勝手に最適化して発揮されるスキルなので、4人になればプログラムがバグ回避のために止まってくれるのだ。
まぁ、それに先手一手目を使ってしまったのはちと痛いのだけれども。
「『マカラカーン』ダッ!」
ファフニールの叫びと共に『マカラカーン』が展開され、ゴグマゴグはそれに乗じて『ラクカジャ』を発動する。ラクカジャはゴグマゴグの『ラクカオート』が上書きされて二段階上昇で4割防御力向上。そして最後に召喚したばかりのクイーンメイブが『ジオダイン』にて追撃を仕掛ける。
トドメには至らなかったが、%耐性などはなく100%で通るのが分かった。セイテンタイセイ以外のシャドウ連中は全員そんな感じだろうと当たりをつけられるのはありがたい。%耐性は広く知られるようになりはしたが、珍しいものは珍しいのだ。
「妨害を入れましょう!」
しめしめ、と内心ほくそ笑んでいたが、背後のゲンジョウとリュウメ、坊主と馬が『ディアラハン』と『メパトラ』で体勢を整えている。
「そっちの手番に整えさせて貰った。こっちの番だぜ?」
セイテンタイセイが動き出す。この動きのノリは、カグラギ殿同様のアプリ使いのノリだ。
敵方がこの戦法を取るのは一気にこちらの頭数を減らすためだろう。現状サマナー2人に近接バスター1と頭を張れる奴が3人いるのだし。
己に対して攻撃を入れんと、猿、豚、河童の3体が流れるように動いてくる。
先程動いた隙を突かれたので
なにせ、セイテンタイセイは『破壊神』なのだから。
まず、敵方の先制発動スキルが入る。
S骨抜の秘法 | 先制発動スキル | 敵全体の防御力、命中回避率を初期値の25%低下させる |
使ってきた骨抜の秘法は、おおよそ『溶解ブレス*19』だろう。防御と回避を下げてきた。
ただ、カジャの弱体化とは違う計算なようで、二段階上昇している防御力が下げられた感覚はない。
そして、まず
ゴグマゴグは何とか踏みとどまってくれたため、河童は今の一撃で流れを取ることはなかったのが救いか。
そして、ゴグマゴグにはこれがある。弱点直撃でも案外耐えてくれはするのだ。
最後の敵対者 | 自動効果スキル | 自分が弱点を突かれた時、連動効果発動 |
自身のHPを15%回復し、会心状態(次の打撃型ダメージがクリティカルになる状態)を付与する |
三分の活泉で基本体力が高いので15%回復でも馬鹿にならない。回復と合わせてダメージ量は2割程だろう。
カスタマイズは余ってる素材でラクカジャ仕込んだくらいなので、この性能は拾った時のままである。深層悪魔恐るべし。
続いて、
ゴグマゴグの立ち位置を先の黒龍撃にて動かしての本命の己狙いだったようだ。
ファフニールの展開したマカラカーンは生きているので、物理攻撃なのは確定。『骨抜の秘法』で動きにくくなってはいるものの、回避自体は可能。
己をカバーできる範囲にいるのはファフニールとクイーンメイブの2体。先の黒龍撃のダメージ感覚からして、威力自体はレベル相応だ。技の冴えも一見恐ろしいものに見えなくはないが、なんとなく付け入る隙がありそうな雰囲気だ。
豚の一撃は『鎧通し*21』。踏み込みのタイミングでファフニールを突っ込ませて
ただ、それも含めて囮であったようである。
セイテンタイセイはおそろしく良い笑顔で入ってくる。龍を思わせる鋭い目で己を睨みつけながら、その手に持っている『如意棒』を剣のように振るってきた。
朧一閃 | 物理スキル | 敵単体に物理属性特大ダメージ。命中時確定クリティカル。低命中率 |
特大ダメージクリティカルを喰らった己は吹き飛ぶことすらできず、膝から崩れ落ちかける。
とはいえ肉体が吹き飛ぶのは気合いで耐えられたし、珍しいことに食いしばりを切らされてもいない。
この一撃で、セイテンタイセイが『入った』のを感じる。
この戦闘スタイル特有の、2手目の行動権だ。戦闘している時の丁度いい位置や、動きの良さ、そういうのが噛み合うと
ターンとターンの隙間、エクストラターンと言うべき動きのタイミングにて。
そこに割り込むのは、速度とノリの二つが必要だ。5秒もない動きの隙間に差し込める動作速度と、そのタイミングに動ける位置、動ける姿勢で存在する事*22
しかし、己は今セイテンタイセイが放った『朧一閃』を死なずに耐えれた事でエクストラターンに割り込める位置にいる。
それはおそらくセイテンタイセイからの誘いでもあるのだろう。致命傷から遠い小技の差し合いを続けるよりは、互いに深く踏み込んで踊らないか? と。
そういうの、大好物である。
「まぁ、乗れないのだけどな。死ぬし」
「馬鹿に見えて意外と冷静だなこのガキ」
エクストラターンにて、己は『メディアラハン』で全体、というか己自身を回復する。
そこにセイテンタイセイが再びの朧一閃を放ち、致命傷を与えてくる。ダメージは変わらず、食いしばりは温存できたが──セイテンタイセイは『ダブルエクストラ』に侵入してくる。
修羅の宿命 | 種族固有スキル | 3回目の行動(ダブルEXTRA)を行うことができる。EXTRAが付きやすい。 |
こればっかりは人間にはどうしようもない領域である。
なので、さっきの誘いに乗って反撃をしていれば2手目で食いしばりを切らされて、3手目でトドメを刺されたというワケである。
セイテンタイセイは舌打ちをしながら己の食いしばりを使わせようと『ATTACK』で適当に殴ってきたが、なんか見切れたので回避してターンを流す。
そうして、敵チームが体勢を整えるために大きく距離を取る。『ATTACK』を回避されたのが逆に警戒を高めてしまい、追撃の隙は見えなかった感じだな。
「なるほど」
「ジエンくん、時間稼ぎでいいよー」
そんな己とセイテンタイセイたちの戦闘を見て、リオとカグラギが動き出す。二人が見ているのは馬の『リュウメ』とそれに乗っている坊主の『ゲンジョウ』だ。バックアップの回復チームから先に仕留めようという算段だろう。
先手を取ったのはリオだ。
単身で動く事で『刹那の刃』や『闇討ち』での暗殺を狙いやすくする陣形であったが、別に見つかっていてもリオなら物理でやれるのが良いところ。
敵方の戦闘スピード以上のスピードで突っ込んだリオだが、先制発動スキルの展開には間に合わなかったらしい。面倒な障壁を貼られている。
Sテトラカーン | 先制発動スキル | 戦闘開始時、味方全体に『テトラカーン』を展開する。 |
「流石三蔵法師、メジャーどころではあるって事ね!」
即座にカグラギ殿とアイコンタクト。カグラギ殿は矛先をセイテンタイセイに変え、『邪鬼ギリメカラ』と『妖獣トウコツ』のチームに変わっていた。
カグラギ殿のギリメカラが邪鬼の種族スキル『邪念呪縛』により猿豚河童のチームの動きを縛る。『邪念呪縛*23』は一時的に足回りに呪いをかけて、移動をしにくくするものだ。
セイテンタイセイを浮き駒にする作戦だろう。己は己で立ち位置に気をつけよう。
そしてリオは地味に先制テトラカーンで動きにくそうである。先制発動で動いたので、十中八九アプリ使いのテトラカーン仕様ではある。リオは反射を抜ける貫通を持っていないので、有効打点が龍撃系しかないのである。あれは小回りが効いて便利だが、ダメージは中ダメージ規模だ。
「面倒臭いわね、このクソ坊主!」
リオが恨み言を言いながら『火龍撃』を放つ。ゲンジョウは弱点がないっぽいのも恨み言の理由だろう。
等倍で一撃打ち込み、ゲンジョウの『イルゾーン*24』とリュウメの『ミラージュブレス*25』を躱し、先手分の動きやすさ*26でエクストラターンに割り込み二発目を叩き込んだ。
しかし、二発目は馬である『リュウメ』にカバーされた。あの動きの良さはただのカバーでなく『騎士の精神*27』だろう。リーダーの致命打をカバーする自動効果スキルだ。
しかもダメージ量的に火炎属性に耐性がある。
それでも、敵方の動きがうまくいっていないのは確かだった。
「流れあるわよ! 敵の運は腐ってる!」
「……あんま運のせいにはしたくねぇが、二発ぶち込んでどっちも決まらねぇのは運がねぇとしか言えねぇわ」
などと言っているが、セイテンタイセイには余裕がある。現在はどちらも大きなダメージが出ていないが、若干こちら有利の流れだというのに。
そんなセイテンタイセイにカグラギ殿が『ギガジャマ』をぶち込もうとするも、『スタングレネード*28』を投げられて戦闘が流れ、気づけばゲンジョウチームとの合流を果たしていた。
「一塊になった?」
「追撃のタイミングを逃したな、これは」
「合体魔法とか必殺攻撃とか来るわね、コレ」
なんやかんやと己達もまとまり防御態勢を整える。
正直、このターンまでの己達の戦闘に点数を付けるとすれば、赤点ギリギリの酷いものになるだろうという自覚はある。
敵方のアプリ殺法*29の後隙を捕まえられなかったし、先手にて与えたダメージは全て回復され、敵への削りも微妙極まりない。
しかも、敵悪魔の耐久ラインから言って『ボス補正』とか呼ばれているアレを誰も得ていないのだ。つまり、メギドラオン二発くらいで全滅するであろう貧弱チームにここまで粘られているという事でもある。
敵の必殺もこちらに届いていないので赤点ではないけれど、結構ひどい戦闘経過なのである。
その理由としては、カグラギ殿と呼吸が噛み合っていないのはあるだろう。最近
なんにせよ、ここで死にたくないのだから攻め手を変える必要がある。
「よし! カグラギ殿、メインを頼むぞ! 己がバックアップに入る!」
「まぁ、妥当でしょうな。リオ殿、援護を頼みます」
「おーけー、ちゃちゃっと殺して終わらせるわよ」
そう言いカグラギ殿を矢面に立たせる方針を立てた所で、敵に動きがある。
それと同時に、フジワラからの警告が響いてくる。
「皆さん、水源側を警戒してください! 晒されていたペルソナが、起動します!」
「は?」と皆が思った感覚がある。張り付けにされて血抜きをされているあのペルソナが起動した? というのは結構に意味が分からない。
アレだけの拘束をされて、本体からも離されているペルソナが動き出すのは完全に想像していなかった。だがしかし、そのペルソナが踏み込んだ地面がひび割れ、MAGの本流で水源が蒸発したのを見れば予想外だとかは言っていられない。
「来るぞ!」
フジワラのアナライズが入り、ようやく名前が見えるようになる。名前を読み取る事ですらこれほどの時間がかかるとなると、その内に溜め込んだ力の量はどれほど馬鹿げているのかは想像も付くまい。
\カカカッ! /
剛毅 | チンゼイハチロウ | LV93 |
ズンという音が異界全体に響き渡る。その姿は巨大な鎧武者である。というか、もはや巨大ロボットである。身長2メートルの大男が鎧具足を見に纏った結果として、3メートル級の大魔神になっているようだ。
その鎧の内側もただごとではないようで、呼吸と共に空気が歪むほどの熱が吐き出されているのが見て取れる。先程までドバドバ血が流れていた腹にある傷は、鎧に隠されて見えることはない。
「敵影確認、殲滅を開始する」
「問答無用に皆殺しの流れッ⁉︎」
チンゼイハチロウが、背後から折りたたみ式の大弓を構える。その瞳は己達全員を捉えており、セイテンタイセイ共も、己達も纏めてぶち殺すという狂戦士っぷりがよくよく伝わってくる。
「『鬼神覚醒』」
特殊行動 | 3ターンの間全能力が向上し、バッドステータス無効となり、スキル発動のための消費コストが0になる。3ターン経過後にオーバーヒートし、防御力大幅低下し動けなくなる |
あ、これヴリトラ戦車がやってたリミッター解除状態だ。トランザムとかその辺のやつ。
誰が言い出す訳でなく、己達は仲魔を肉壁にしながら後方に走り出した。
矢面に立っていたカグラギ殿はトウコツの『妖光一閃』にて移動力を伸ばして最速で逃げ出し、リオは手榴弾の自爆を使ってダメージを受けながら初速を稼ぎ、己は仲魔を壁に出しまくりつつ鍛え上げられた『速』のステータスで走り、フジワラはダニーに首根っこを引っ張られて高速で逃げている。
全員が全員、なりふり構って居ないのが良く分かる。
物理ギガプレロマ | 自動効果スキル | 物理属性のダメージを大きく増加させる(40%加算) |
会心専心 | 自動効果スキル | 通常時のダメージが低下する代わりに、クリティカル時のダメージが大きく向上する |
龍眼 | 自動効果スキル | 自身の命中率を大きく向上させる |
物理貫通 | 自動効果スキル | 物理貫通を得る |
攻撃の心得 | 自動効果スキル | 戦闘開始時、自身にタルカジャが発動する |
ヤブサメショット | 物理スキル | 敵全体に物理属性小ダメージ。確定クリティカル。貫通効果。 |
チンゼイハチロウの弓から閃光のような何か(おそらく矢)が放たれる。ファフニールとゴグマゴグ、クイーンメイブが良い位置に居てくれたので己達には攻撃は届かない。その代わりとして、3体の悪魔の肉体は蒸発していた。
そして、何故だか知らないがチンゼイハチロウはもう既に弓を構えている。早撃ちってレベルじゃねぇぞ! と驚くまもなく、二射目が放たれる。
ニ身の残影 | 自動効果スキル | バトル中、25%の確率で同じ行動を繰り返す |
……いや、それは酷くないか?
ワープボイントを一つ踏んだ先の広間に、死屍累々の己達がいた。
「……生きてるー?」
「不思議なことに生きております……」
「ジエン、盾をありがとうございました。仲魔達は回収できましたか?」
「ゴグマゴグに情報欠損が起きたな。蘇生はできたが、本人曰くスキル外の強化領域が吹き飛んだらしい。よくわからない物理貫通*30が吹き飛んだそうだぞ」
二発目が放たれた瞬間にスタングレネード、煙幕弾*31、トラフーリボム*32などの逃走アイテムを惜しまずに投げまくってどうにか3射目の狙いを絞らせず、全員仲良く食いしばり1回で逃げ延びた己達。行きがけに敵悪魔を皆殺しにしていたおかげである程度の安全は確保できているが、それもある程度。さっきサラスヴァティに絡まれた。
とはいえ会話対処できたので損耗はない。その上『サマリカーム』を使えるソロネが生きている。体勢を立て直すことはできるのは不幸中の幸いか? と思うことにする。
「はい、1分で反省会!」
「己は前に出過ぎたな。ゲンジョウの先制テトラカーンやらリュウメの騎士カバーなりを殺せる
「私は注意不足ですね。チンゼイハチロウの起動はともかく、ゲンジョウの先制発動スキルはアナライズで見えた*33筈なので、ジエンの立ち位置を変えることはできました」
「私はSテトラカーンのタイミングで手番が浮いたわね。単独行動での暗殺を狙いすぎて、普通の一手が弱くなってた。ジエンくんのギャンブル癖がうつったかな?」
「私は引きすぎましたな! 敵方の攻撃力は私でも耐えられたのですから、先んじてジエン殿をフリーにするべく動くべきでしたとも。ジョウゲンの方に先制テトラカーンがあり、手が出せなくなるという想定ができていませんでした」
1分経ったので、反省会は終わりである。胸の内にある過去の自分への怒りだとか、セイテンタイセイ達への憎しみだとか、そういうのをひとまとめにして口に出し、覚悟を決める
「よし、殺すか」
「はい」
「うん、やろっか」
「我々を逃した事を、地獄で後悔させてやりましょう!」
今この瞬間から、ぎったんぎったんに薙ぎ払われた己達の、反撃を始めよう!
第三章の本筋開始です。まぁ黒幕に一直線! な話ではないのでゆるゆるとした進行にはなりますけれども。
・チンゼイハチロウ
鎮西八郎為朝、あるいは源為朝。FGOにて源氏ロボにされた、弓矢で船を沈めるタイプの化け物。身長2メートルは伝承通り。
iPhoneの予測変換さんがチンゼイハイロウという謎の単語を覚えた結果、誤字がとんでもなく怖い。
・ジエンくん
やらかしマン1号。敵の動きを見てサラスヴァティ召喚してれば完封できていたと結構後悔している。真1仕様のテトラカーンは凄い。鉄砲玉根性が染み付きすぎているので前に前にいってしまう。
・フジワラちゃん
やらかしウーマン2号。アプリ使い、デビサバ系の悪魔との闘いに慣れていない。先制発動スキルの察知を覚えた。
・リオさん
やらかしウーマン3号。『闇討ち』からの即死狙いで楽したいばっかりに、テトラカーン張られてほぼ無力化された。反射とテトラを貫ける貫通が欲しい(強欲)
・カグラギ殿
やらかしマン4号。ジエンくんしかジョウゲンを殺せなかったのだから、ジエンくんを行かせるべきだった、という方針を変なタイミングで出したのがやらかし。突っ込んだ後ならばギガジャマでジョウゲンの妨害はできたし、もっと前ならセイテンタイセイの戦闘終わりのタイミングに奇襲仕掛けられていた。
尚、全員が全員もっと根本的な所でやらかしているのは、次回にて。