姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝 作:気力♪
異界から帰還して数時間が経った。
春日部の廃マンション異界にて発生していたあの異界──便宜上『水源異界』と呼称する──と接続するゲートは断絶した。月齢を一周させてから再度突入してもゲートは開かなかった。
一応、現実世界と水源異界との位置関係は己達のCOMPに記録されている。しかし、レベル90の怪物チンゼイハチロウが解放されたことで起きた異界の変化は大きく、記録されているデータから再び水源異界に辿り着けるかは微妙である。
もっとも、チンゼイハチロウとの初戦での敗走にて結構なダメージがあったのは無視できない。武器防具のメンテナンスは必要だし、己は壁にした仲魔たちの調子も確認しないといけない。
……とはいえ、悪いことばかりではない。セイテンタイセイ達のMAGを得たことにより、己は68までレベルを戻す事ができた。今の仲魔ストックにおけるツートップであるロキとマハーマユリの制御を取り戻す事ができたのはかなり大きいだろう。
……まぁ、想定される敵の強さから考えると誤差みたいな戦力強化であるだろうが、朗報なのは朗報だ。
「では、私はこれにて」
「うむ! 今日は楽しかったぞカグラギ殿! 達者でな!」
特に付き合う理由もなかったので、カグラギは去っていった。カジュアルの仲間達と合流して異界にて集めたチンゼイハチロウの出し汁をどうにかこうにか加工するつもりだろう。
あの手の謎な液体は遠心分離機にかける成分が分かれて使い易くなる、というのはハンターメモ*1の知識だ。己達も水はいくらか汲んだので、落ち着いたら試してみよう。
「……リオ、ゴドーやその仲間との連絡は繋がりましたか?」
「……親父との連絡は繋がってないわ。一応、親父の仕事仲間との共有アドレスにはメッセージ入れたけど、セキュリティ用に仕込まれてるはずの電霊が機能してない。親父だけじゃなくて、親父のいたチームに問題が出たっぽいわね」
「ゴドーのいたチームというと……北関東から南東方のあたりの即殺部隊でしたか?」
「別に誰が名乗った訳じゃないんだけど、なんかそう言われてるわね。規定レベルを超える異界を出現から24時間以内に消し続けてる化け物集団だって」
噂というのは尾鰭がつくものだ。異界全てを出現と同時に発見する事など不可能だし、実際に踏み込んでみなければ規定レベル以上かどうかはわからない。厳密に言うのであればら規定レベル以上の危険異界をなるべくはやく破壊している集団となる。24時間は“吹かし”だろう。
……ゴドーの振る舞いにはそれぐらいはやってのけそうな風格があるのは、確かなのだけれども。
「で、その即殺部隊との接触は計れるのか?」
「無理。チームの内情の公開なんかしてないし、敵からの襲撃を警戒して行動予定は完全に秘匿されてる。親父の仲間だって自分で名乗る奴がいたとして、それが本当なのかどうかを判別なんかできないわ」
「リオは知らされていないので?」
「記憶読み取る手法なんて星の数……とまではいかないけど、結構な数あるからね。お互いに仕事関係の話はしないようにしてたのよ。……まぁ、昔私が勝手に着いて行ったりした名残なんだけどね」
リオの幼い頃は、微妙に想像が付かない。見た目が変わっていないのは確かだろうが、精神的に雑に落ち着いているのが無い感じだろうか? ……いや、リオの雑さは生来のものだろう。そう変わるまい。
と、思考をゴドー捜索の方に戻そう。
「そういう事ならば、掲示板などで情報を求めるか?」
「正直、それは避けたいわ。親父達が機能不全だって知られたら、他の連中が何しでかすか分からない。親父達の分まで自分たちが頑張ろう、なんて思える強い連中ばっかじゃ無いわよ、人間だし」
キリギリスの皆であるならば、文句を言いながらもゴドーの分まで頑張るだろうとは理解している。日常を守るために滅びを打倒するというお題目を投げ捨てない程度には責任感があるのだし、仕事できない奴に中指を立てながらもそのカバーをしている面々だからだ。
けれど、地方霊的組織やカジュアル気味なバスター、漂流者などは違う。世界を守る側の旗色が悪くなれば、世界を壊す側に鞍替えをするだろう。人間とは、そういうものだ。
どんな地獄が生まれても24時間で対処してくれる、という噂がもたらす安心感を崩れさせるべきではない、という事なのだろう。
「……ちょっと馴染みの情報屋をあたってみるわ。今はレルムでアイテムショップしてるヤツだから、信用はできるし」
「なるほど、同行は必要ですか?」
「近場だし大丈夫よ。というか正直、親父を拘束した奴が来るなら一人の方が逃げやすくて良いわ」
そう言いながらリオは腕装備を『ガネーシャリング*2』に変更する。しかし属性攻撃が弱点となってしまうので、脚部装備の『制蛇の具足*3』にて補っている。制蛇の具足はリオにとって思い入れのある装備らしく、なかなかお目にかかることはない。
まぁ、魔力属性、精神属性のバステ以外も山ほどあるので対策としては不十分なのだけれども。気休めにはなるだろう。
「もうすぐ夜明けですが、今から?」
「今からネットで連絡とってって朝イチでって事になるかな。武器防具も私の奴は問題なかったしね」
武器防具で問題が出たのは己が着けていた間に合わせの胴防具の『熱光学迷彩服(故障中)』だった。『ヤブサメショット*4』なり『朧一閃*5』なり強力な一撃を受けたので、まぁ当然と言えば当然だった。防御力自体は大した事ない*6し。
「ふむ、そうなると己もなにかしらを仕入れなくては危険だな。聖華学園でスプリガンベストあたりが売っていないだろうか?」
「しかし、属性防御に穴が開くのは問題*7では?」
「ヤクトヘルム*8』は念動に耐性がない*9から、どこかで補いたいのは確かだ。だが、ノーマル耐性の聖華学園制服*10よりは強みがあって良いと己は思うぞ」
……マカラカーンを抜いてくる貫通で念動を放たれた場合は考えない事にする。基本レア寄りな属性であるから、使う敵が出てきたら防具を変えればいいのだ。うん。
「でしたら私は別ルートから調べてみようと思います。ゴドーのペルソナがあった場所を支配していたのは『シャドウ』という存在、ペルソナ使いの戦場である『認知異界』にて出現する連中です。ならばペルソナ使いの方ならばチンゼイハチロウを縛っていた『ロンギヌスコピー』や水源異界についての情報を持っているのでは? と思いましたので」
「む? 学園ではそこそこ見るが、前線クラスのペルソナ使いは珍しいぞ? アテはあるのか?」
「はい。以前バックアップ要員としての戦法討論をした方がペルソナに強い方でした。それなりに仲良くはなれたのでメッセージは送れます」
その意見討論とやらに『レスバトル』とか『口喧嘩』とかのとルビが振られていないことを祈るばかりだ。とはいえフジワラは純粋培養のバックアップ要員という訳でなく、後天的にバックアップしか出来なくなった人間だ。純粋支援役との議論は実りとなるだろう。
なので、不倶戴天の敵にならない程度のレスバトルである事を祈るぞ、うん。
「であれば、もう夜もふけた訳であるし、寝るか?」
「親父が動けないとなると警戒シフト入れときたいかも。敵の狙いが分からない以上、ここが狙われる可能性もある訳だし」
「では、私が不寝番をします。どのみち『アリババ』とのコンタクトをしますから」
「……実際問題、そうなっちゃうのよねぇ」
「リオと己は3時間交代でやろう。タナカ殿とサトー殿*11にはここに詰めて貰うか?」
「いや、あの二人まだレベル40程度だから。ガチに襲撃されるってんなら足手纏いよ?」
タナカ殿とサトー殿のレベルが以前聞いた時より上がっているのは、彼らの手荷物の中にある『改造型ドルフィンヘルム*12』と関係があるのだろう。
技研での事務仕事の際に、たまに「おやおや」とか「ジエンは可愛いですね……」とか口が滑っているし。
「40程度あるならば、十分に戦えるのでは?」
「確実に来るってんなら呼びつけてフル装備させるけどまだ疑惑段階じゃない。それなら休ませるわよ。ウチの表の仕事ってサトーとタナカと杏奈だけで回してんのよ?」
しれっと省かれる事務員さん*13よ。まぁあの人の仕事は裏の仕事にどっぷり浸かったシステムの管理と運転であるのだから当然ではある。秘伝書たちは力を持った文書データであるから、管理するシステムにも相応の技術を使わないと悪魔が沸き出て大変なことになる可能性があるのだ。
出てくるのは今の環境では5秒くらいしか保たない雑魚悪魔だろうが、腹いせに蔵書を破壊されたら堪らないのである。
「ひとまず、休息を取りましょう」
「了解だ! ならば己は寝よう! おやすみ!」
話をしていた職場フロアにて寝袋を敷き、眠る準備をする。部屋に戻らないのはどうせこの部屋に全員纏まっていることになるからだ。叩き起こすのにも近い方が良いだろう。
「……この寝袋、何処で拾った奴でしょうか?」
「学校で賭け麻雀やった戦利品だって話してたわ。この子、現代社会に適応する気ゼロすぎてもう笑うしかないわよねぇ……」
「なんだか、私の初登校が怖くなってきました」
「ジエンくんの周りに変な子が寄ってきてるだけだって……多分」
そんな話を耳にしながら、休息を取るのだった。
ジエンがくかーと眠りについて1時間ほど。『マッパー*14』にて周囲に視点を作りながら、『アリババ』なるアカウントとの連絡を取る。
向こうは向こうで他の調べ事に忙しいようだが、それでもこちらとの対話を続けてくれている。おそらくAIにて失言がないようにフィルタリングしての音声入力だろう。時たま本筋の調べ事についての独り言がチャットの中に混ざっている。
雑多に調べた技術とそれなりの値段のPCがあれば誰でもAI技術を利用できる時代とは、少し前の私には想像もつかなかった事である。
互いに求める情報を提示し合い、手持ちのデータから関連情報がないかを検索している最中に、そんな雑談が出てきた。アリババというアカウントはかなりの実力者であるのは話された情報の質から良くわかる。『漫画好き』との面識もあるのだろう。
誰かを思い浮かべたような3点リーダー。音声入力式ではこういうのが出てくるのでキー入力のチャットより若干情報が生っぽくなる。おそらく向こうも私の発言のどこかにそんな事を思うだろう。
アリババにデータファイルを投げ渡す。バックアッパー*15形式での情報ファイルなので情報量はそれなりだ。
アリババから共有された情報にウィルスチェックをかけておく。が、反応がないのは未知のコンピュータウィルスだからなのか、本当にウィルスを仕込んでないからなのかイマイチ判別がつかない。アリババはおもしろ半分で
今回こうして連絡をとっているアカウントが、データを交えて口論をしようとした彼女によるハッキングで繋がったものであるのは変わらない。
『アリババ』からの情報は、値千金とまではいかないがかなり役に立つものなのは確かだ。デビルバスターである私たちはペルソナ使いにしか入れない『認知異界』について知ろうとするアンテナは立てないし、ペルソナ使いはペルソナ使いで自分自身の情報を隠そうとする。『シャドウ使い』と分類されるペルソナ使いは、異界の外においては異能の力を引き出すのには特殊な装備が必要になるらしい。故に、不意の襲撃を避けるための情報の秘匿が行われるのだ。
こちらから送ったデータは、3つ。ここ最近にて遭遇した北欧神話に属する悪魔の動向情報と、秀英戦国技術研究所の蔵書全ての中で『未知の神話』に属する技術の可能性があるもののピックアップ。そして、奥多摩アビスにおいてマザーが「認知訶学」関係技術を使っていたかについて
こちら側からは、どの情報にも『当たり』のはないので心苦しい。
あの時のジエンの蛮行はよく覚えている。
地面に投げ捨てられた反魂香と札束があり、威圧と共に佐々木さんが去って行った中でジエンが唐突に『反魂香』を
「奥多摩アビス攻略完了の打ち上げやるぞ!」と。
当然ツッコミの嵐だった。しかしこのような『楽しい事に人を誘う時』のジエンの『スカウト』の腕は天下一品だったのだ。それに誘われて現代日本に来た私としては、むべなるかなという感覚だった。
ちなみに桃太郎電鉄のプレイヤーは
順調に進めていく
しばらくアリババの爆笑によるチャットの乱れが続く。正直に言って私も顔がニヤけている自覚はある。いくらなんでも面白過ぎた。
とまあ、盛り上がったあたりで意識を切り替える。
友人からの言葉というのはなかなかどうして力をくれるものだ。顔も名前も知らない誰かを友人と呼ぶのは不思議な感覚だが、この広い世界では、そういうこともあるだろう。
「フジワラ、敵はどこだ?」
「……寝ていなかったのですか?」
「寝てはいたぞ、空気が変わったので起きただけだ」
「ジエンくんの野生の感覚、現代社会でも鈍らないもんだねぇ」
リオとジエンが臨戦体勢を取る。
しかし、マッパーで見ている視界からの情報がどうにもおかしい。
「……私の目が欺かれている可能性があります。敵の反応があったのは南西2キロのビル屋上ですが、以降の痕跡が見つかりません」
「光学迷彩の類か?」
ジエンの言葉にてピンと来る。光学迷彩とは、表面に『自分のいない時の光景』を表示する事で行う迷彩だ。
「欺瞞情報を発信して位置を誤魔化しているのならば……」
MAGを強めて探査波とする。イルカなどの使うエコーロケーションのように、モノに当たって帰ってきた波によって敵の位置を調べる技術だ。
『ミスリル』にて原理を教わった、『エネミーサーチ*16』を人力で再現したモノだ。
「……見つけました。西に1キロの地点です」
「なるほど、そういう手管か」
発見した敵にマーカーをセットしようとした瞬間に姿が消えてしまう。『ドロンパ』などで透明になっても存在は消えはしない。故に透明の線はなし。『トラフーリ』のような高速転移だろう。
「見失いました。今探索範囲を広げます」
「やめろフジワラ。これは消耗を強いる『削り』だ。向こうは長期戦を仕掛けるつもりだぞ」
ジエンが確信を持ってそう発言をする。
ハンターになってから現在に至るまで常に戦い続けてきたジエンの戦闘経験は馬鹿にならない。戦士達の
「……理解しました。探査波は1時間に1回を不定期に、探査の深追いはしません」
「これが間違いで、敵が踏み込んで来ていたならば己達がぶちのめす。過度な心配はするなよ」
そうしていると、リオが使っていたPCにメッセージが入った通知が届く。
リオの側の情報屋への繋ぎが取れたのだろうか? ゴドーの手がかりに繋がるといいのだけれど。
「分かりました、索敵に過剰なリソースは割きません。長期戦用に息を入れながらやります」
「よろしく。メール確認したら私5分くらい仮眠取るから、それ終わったらフジワラちゃんも少し寝て。徹夜で防衛戦は体力もたないよ」
「それと、こまめな間食も必要だな。ゼリー飲料をまとめ買いしたものがある、食ってくれ」
深い眠りはできそうにない状況だ。
夜は、長くなりそうである。
あとがき
特殊タグ込みの文字数が三万文字超えたので、分割にて投稿です。
まずは、双葉とフジワラちゃんのゆるゆるコミュニケーションから。
特殊タグについては、チラシの裏にて『特殊タグ練習』のタグで検索をかけると色々面白いのが見えますり
・ジエンくん
漫画さんに幹事を手伝わせようとするチャートを考えついた怖いものなし、とはいえ打ち上げやりたい気持ちは本当なので普通に頑張った。
側から見たらおすすめの打ち上げ場所やダンドリの組み方を教わっただけなので、裏にある企てを見抜いたのは3割くらいしかいない。
桃鉄地獄決戦においては、参加者決めのくじ引きに細工をして自分が確実に選ばれるようにするつもりだったが、ムラカミさんがそれを見抜いて横から参加権を盗み取っていた。
楽しかったので、ヨシ!
・フジワラちゃん
スーパーハッカーの友達がいる。双葉とのレスバの原因はバックアップ役を信用しきれないと言う愚痴スレから。フジワラは情報だけ与えていれば勝手になんとかするだろう、というスタンスで双葉は『仲間との絆』を最大限に活用してこそのバックアップだ、というスタンス。
レスバでムキになったフジワラをちょっとからかってやるか?と双葉が捨て垢で繋がったらなんか仲良くなった。
・ずえど様
本スレにて漫画さんに殴り殺されたやらかしマン。そりゃ保護してた大事な子がお前らにかまけてたせいで攫われた!となったら誰だってブチギレるので本人は多少程度の恨みで済んでいる。
放られた金は全額叩き返そうと思っているので手を付けていない。そんなお金から目を離した結果桃鉄の賞金にされてた。なのでとっても頑張った。
ハーレムメンバーのシスティナさんは漫画さんに怒り浸透で、漫画さんをディスるスレを立てたりしたが論破されて凹んだりもした。