姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝 作:気力♪
ごちゃまぜシステムを使ったいじわる問題の気がありますので、適当に見ていてくださいな。
「ヒーホー! そこのド素人にオイラが訓練をつけてやるホー!」
そう宣う彼の名は、『ブラックデモニホ3世』。なんちゃらに呼ばれしグルル*1をめっためたに撃ちまくってリンチした己の前に現れた、謎のフロスト族である。
何故こうなったのかというと……何故なのだ?
ヒフ……ファウスト殿の指揮により『沈黙のささやき*2と群れ集うバスターの群れを突破したグルルを待ち伏せてぼっこぼこのずったずたにしたまでは普通だった筈だ。
そうして、勝利の勝鬨を上げて、ファーストランサー(絶対皆の内心には人柱という言葉があったやつ)として己が胴上げされてから、己の推薦でファウスト殿を胴上げしようとした時だ。
ズンと己を引き寄せる力が発生し、河川敷にある広間へと引っ張り込まれたのだ。
「何事か⁉︎」
「こういうことだホ!」
| てっけんせいさい | 物理スキル | 敵単体に物理属性中ダメージ |
「あ痛ッ⁉︎」
殺気がないというのもあるが、それ以上に動きが鋭く回避ができなかった。かなりの実力者……実力ヒーホーだ!
「お前みたいなへなちょこは、このままだとなにもならずに死んでしまうホ! だからオイラが訓練を付けてやるホー!」
「気持ちはありがたいが、月謝の類は払えぬし、早く帰らねばならぬ予定がある! 訓練は受けられん!」
「遠慮して生きられるほどお前は強くないホ! つべこべ言わずに訓練を受けるホ!」
「じゅじゅちゅで見た奴だとぉ⁉︎」
「これが、伝説の1体、“ヒーホーオブザヒーホーズオブザヒーホーズ”より受け継がれたデモニホ訓練場だホ! 抜け出すには訓練を完遂するしかないホ!」
「あの、アズサちゃん。あれ何です?」
「すまない、私も知らない。誰かの仲魔ではないか?」
「そこのガトリングの方、知っていますか?」
「彼からは凄まじい“銃気”を感じます。只のヒーホーではないでしょう」
ガヤガヤと『領域』の外側に見物人がやってくる。念のため逃れられるか? を確かめてみた所、内側から外に出るのは難しそうだ。
外には音は伝わるし、光も遮断はされていないので助けを呼べば伝わるだろう。
この! 唐突に始まった面白イベントに割って入る空気読み人知らずが入ればの話だがなぁ!
「グルルとの戦いは見てたホー! 5体召喚なんて自分の限界を超えた無茶を、必要じゃないと気にしたお前の性根! 修正が必要だホー!」
「それは……そうだな!」
「認めるんですか⁉︎」
「事実、動きは目に見えて酷く隙だらけだった。素人かと思えるほどにな」
アズサ殿がまぁまぁ酷い事を言っている。自分の失態は知っているが、それをビシバシと広めてくれると心はちょっぴり痛いのだぞ?
という恨みを込めて、数回領域の恥を攻撃する。結構な力を入れての攻撃だったが、びくともしない。
己の能力では訓練を完遂するしか脱出する方法はないだろう。腹を括るしかない。
「して、何をするのだ?」
「仮想訓練だホー! 一度自分自身のスペック頼りなんて甘えから抜け出すべきだホ! 馬鹿じゃないんだから、頭を使うホ!」
その言葉にピンとくるものがあり、スキルを発動しようと力を込めてみる。しかし『百麻痺針』のみならず全てのスキルが発動できる状態でなかった。
夢の中で自分でない身体になっているような感覚が近いかもしれない。速度は遅く、技も低く、しかし力は強くなっている。まぁ力は元々の力が低いだけであるが。
「して、この場で倒れるとどうなる?」
「普通に死ぬホ。死なないで強くなれるだなんて甘えはないホー。まぁ、蘇生はしてやるから安心はするホ」
「割と辻斬りの類であるな?」
どうにも、拒否権はなさそうだった。
領域の外を見る。ファウスト殿……でなく、偽りの面を脱ぎ捨てたヒフミ殿がアイテムを構えている。他にも闇医者っぽい人が「やれやれ」と言った感じでスタンバイしていた。キャンプ用のいい感じの椅子を持ってきて優雅に座っている、
けれどその闇医者は『寄付のされすぎで脱税への関与疑われたんだが!』というとある孤児院からのスレッドにて容疑者候補に上がっていた一人だった。ムラカミ殿が容疑者候補に上がっていたのでよくよく調べたのを覚えている。
まぁ、腕は良さそうなのでいいだろう。
「では、始めるホー!」
「うむ!」
敵詳細
| 凶鳥 | グルル | LV70 |
| HP3033 | ||
| 銃撃、貫通、破魔弱点。火炎、氷結、電撃、衝撃耐性。精神、神経無効。呪殺反射 | ||
| 【特殊耐性】ATTACKを確定で回避する | ||
グルルへのダメージ
LV50以上による攻撃
耐性なし : 50
耐性 : 25
弱点 :100
LV5からの攻撃
耐性なし : 10
耐性 : 5
弱点 : 20
グルルの攻撃によるダメージ
LV50への攻撃
耐性なし :100
耐性 : 50
弱点 :200
LV5への攻撃
耐性なし :200
耐性 :100
弱点 :400
行動
3ターン目:カマイタチ、疾風陣
4ターン目:獣の眼光、カマイタチ、マハザンダイン、ヒートウェイブ
5ターン目: 獣の眼光、カマイタチ、マハザンダイン、ヒートウェイブ
特殊行動
自身の攻撃を反射された次のターンの以降の行動は、必ず『貫く風の闘気*7』『マハザンバリオン*8』 (全体に400ダメージ)
味方
| 訓練生 | ジエン | LV50 |
| HP151 MP0 | ||
| 氷結弱点 衝撃耐性 破魔無効 | ||
| アイテム | ||
招来石*9 魔反鏡(真3)*10 物反鏡(真3)*11 | ||
初期配置:訓練生ジエンのみ
| 妖精 | ナジャ | LV5 |
| HP50 MP0 | ||
| 氷結弱点 衝撃耐性 | ||
| スキルなし | ||
| 妖鳥 | カラドリウス | LV5 |
| HP50 MP0 | ||
| 銃撃弱点 呪殺弱点 | ||
| スキルなし | ||
| フード | カタキラウワ | LV5 |
| HP50 MP0 | ||
| 物理弱点 火炎弱点 氷結弱点 電撃弱点 衝撃弱点 破魔弱点 | ||
| スキルなし | ||
| 霊鳥 | スザク | LV50 |
| HP200 MP70 | ||
| 火炎無効 氷結弱点 | ||
| 火炎ブロック*12 | ||
| 堕天使 | デカラビア | LV50 |
| HP200 MP30 | ||
| 電撃に強い*13 | ||
| マハザンマ*14(MP7) テトラカーン*15(MP6) グランドタック*16(MP11) | ||
| 天女 | サラスヴァティ | LV50 |
| HP200 MP30 | ||
| 剣攻撃が効き破魔・呪殺が無効*17 | ||
| テトラカーン(MP6) マカラカーン*18(MP6) グランドタック(MP11) | ||
ガントレットに渡されたアナライズデータと、この夢空間? VR空間? そんなのの中で己が召喚できる仲魔データを確認する。
この感じは、人外ハンター商会にて行なっていたVR訓練*19に似ているだろう。まぁ、あれは人外ハンター商会全盛期には無料でできていたらしいが、落ち目であった己の時代では有料になっていてあんまりやったことはないのだけれど。機材調整の仕事の後、テストで数回やった程度だ。
初期状態にて召喚している仲魔はなし。先手は己からであり、戦闘開始は己のタイミングで良いらしい。特に通信とかは制限されていないので、バックアッパーを用いて周囲にデータ共有はしておく。
周囲の面々の頭の回転が早ければ、助言くらいはしてくれるだろう。
あ、リオからメッセージ来てた。返信しとこう。
「なにか来たな」
「敵HPは3000オーバー。大ダメージ級攻撃の基本ダメージを50とするのならば、先ほど仕留めたグルルよりは大分弱いようですね」
「5ターン以内での撃破が必要というならば、攻撃で倒すのは現実的ではないな。4体が弱点を突き続けても2000ダメージだ」
「MP制限もあるな。グランドタックはMP消費型で11消費。サラスヴァティとデカラビア、2体で4発、400ダメージが限界だ。3000ダメージには足りないぞ」
ざわりざわりと議論が広がっていく。その中で気になった単語は、『召喚限界数』『GUNは無効化されるのか』『4ターン目全反射でもダメージは足りない』というもの。
あからさまな低レベル悪魔がストックにいる事から、反射でトドメを刺せというのがメインの流れであろう。アイテムの方の魔反鏡、物反鏡は攻撃をその属性で反射するものだから、グルルの耐性で衝撃、火炎を反射しても1体あたりのダメージは50、3体召喚で4人で受けても200ダメージ。プレスターンを崩して3回反射しても600だ。
反射した次のターンから
「ひとまず、最初のターンにできることはこれだけだな」
プレスターンの呼吸のままで、デカラビアを召喚。召喚の勢いそのままに攻めることはせず、『ガード』を行う。今は攻めるタイミングではない。
グルルからの攻撃は、『カマイタチ』と『マハザンダイン』。
己は耐性防具により100のダメージ。デカラビアは75%耐性で150、それをガードして76ダメージだ。デカラビアは75%耐性で受けたダメージは切り上げて一発38ダメージだったようである。地味な不利だな。
それはともかく、反撃時間だ。
「なるほど、
「あの小僧、元々はそういう使い手か。5体召喚で鈍い動きを見せていたのは誘いだったか? 味な真似をしやがる」
「いや、アレはなんとなくできそうだからと5体召喚をしたと言っていた。ただのアホだ」
「あ、さも実力者っぽく語った言葉が秒で論破されて赤面してる! 拡散しなきゃ!」
「ぶっ殺すぞ手前!」
「きゃー」
外野でわーわー言うの楽しそうであるなぁ! というのを置いておいて、プレスターンの呼吸のままに2手分*20の行動を行う。
「手数を揃えるまでは、押し続ける!」
「ヒーホー! 良い覚悟だホー!」
己の手番、召喚するのはスザク。
そしてデカラビアが『グランドタック』1回目を放つ。デカラビアの残MPは20であり、次がラスト一発だ。
そして、スザクは『火炎ブロック』を発動し、己はサラスヴァティを召喚する。これで仲魔は3体。
己含んで4人がメインで戦うのが、プレスターンの呼吸を維持できる限界数だ。
グルル ダメージ量100 残HP2933
2ターン目の敵の行動。敵グルルのヒートウェイブは火炎属性攻撃なので、スザクの火炎ブロックにて防ぐことでサラスヴァティ以外は防御。
後から召喚されたサラスヴァティは75パー耐性なので、少し軽減して75のダメージ。残りHP125。
そして、己たちの3ターン目。敵は火炎ブロックにて行動が潰れたことでの動きの鈍り*21により、『疾風陣』を展開することができていない。攻撃チャンスだ。
「スキルがなくても、GUNはあってな!」
己の放った拳銃での一撃は命中し、グルルに100のダメージを与える。仮想空間の処理の都合とはいえ、このダメージ量を与えられる銃とか、結構欲しいぞ。
そして、スザクはパスして、デカラビアは『グランドタック』。100点ダメージを追加。サラスヴァティも『グランドタック』100点追加。大ダメージだ。
そして、己はGUNを放ち、MPの切れたデカラビアと攻撃スキルのないスザクはガード。サラスヴァティは最後のグランドタックを放って、100点追加。これで、このターンのダメージは500
グルル ダメージ量600 残HP2433
「さぁ、こここらが正念場だ!」
グルルの放つ『カマイタチ』。これを全員が素受けする。ガードしたのはデカラビアとスザク。己は耐性受けして50ダメージで残りHPは1。サラスヴァティは75%耐性により75ダメージ、残りHP50。デカラビアは75%耐性にガード込みで38ダメージ。残りHPは87。スザクはガード受けにより50ダメージ、残り150
問題なく、全員生き延びた。
「無茶をするのはここからだ! 召喚、カタキラウワ!」
そして、ここからは結構無茶する今回の回答の本題である。3体召喚制限では絶対にダメージ量が足りない以上、これをしろというオーダーだったのだ。
己の未熟、5体制御を何でもない時に無駄に浪費した事を気付かせるための、厳しくも優しい教導だ。
カタキラウワを召喚したことで、プレスターンの呼吸は乱れる。これ以降
だが、十分だ。
スザクはカラドリウスと『チェンジ』、デカラビアはテトラカーン、サラスヴァティはマカラカーンを発動。両壁により、このターンの全ての攻撃は反射される!
「皆大好きな、相性無視反射でなぁ!」
「ヒホ! よく調べていたホー!」
これにより、反射ダメージはこのようになる。
| ジエン | デカラビア | サラスヴァティ | カタキラウワ | カラドリウス | |
| マハザンダイン | 50 | 75 | 75 | 400 | 200 |
| カマイタチ | 50 | 75 | 75 | 400 | 200 |
| ヒートウェイブ | 100 | 25 | 75 | 400 | 200 |
| 反射合計ダメージ | 2400 |
カマイタチ、マハザンダイン、ヒートウェイブの三発を全て反射したグルルは、数値にして2400ものダメージを受けた。
これまでに与えていたダメージ量は600
残りHPは、33
「この土壇場ラストが早撃ち勝負とは、スパルタであるな、ブラックデモニホ教官!」
「作戦は作戦だホ! 最後の最後、勝利を掴み取るのに必要なものは、自分の実力だホ!」
「道理だ、な!」
グルルが高速で動き回り、『貫く風の闘気』にてチャージ中の隙を隠そうとしているその最中を、手のひらにある拳銃で狙い撃つ。
優勢時に数発当てたことで、拳銃の癖は把握している。狙ったところに素直に飛ぶ拳銃だ。有り合わせで作られた感のある己の拳銃『.50マグナム』とは大違いである。頑丈さでは、間違いなく己の愛銃の方が上であるだろうけれどな。
銃声が鳴り響く。
ドスリと落ちるのは、脳天を撃ち抜かれて生き絶えた凶鳥グルル。
「ふっ、完璧だな!」
「貴様、胴のど真ん中狙ってたホ」
「当たったので、完璧なのだ!」
そんなこんなで、己に唐突にやってきたブラックデモニホ教官の押し付け訓練は完了したのだった。けっこうためになった気がするぞ。
「ヒホ! “守り刀”の持ち主の癖に雑魚だったから鍛え直してやろうと思ったホが、早計だったみたいだホ」
「守り刀?」
「お前の短刀ホ。姫を守るために全てを捧げる戦士の証ホ」
なんぞそれは? と思いつつも短刀といえば己の手元にあるのは『備前の短刀』と『銘刀肥後守*22』くらいだ。
「……まさか、この肥後守が⁉︎」
「いやどう考えても短刀の方だろ馬鹿」
「……アズサちゃん、ジエンくんには口が悪くなりますよね」
ちょっとしたモノボケに外野からのツッコミが入る。いや、分かってはいるのだよ? ただ、ゴドー殿からふらっと渡された短刀が曰く付きのモノとは思いたくなかっただけなのだ、うん。
「この短刀と、その持ち主のことを知っているのか? 今、己と仲間たちはゴドー殿を探しているのだ」
「昔“デモニホ2世”が訓練をつけていた一族の一人前の証がその短刀だったというだけホ。今そいつが何処にいるのかは知らないホ」
「むぅ……」
空振りというか、順当に知らないブラックデモニホ教官であった。まぁ、当然なのだけれども。
「……うむ! なんにせよ訓練は良い経験となったぞ! 浮ついていた感覚も引き締まり、より一層の戦士になれたであろう」
「そんな小さく自分を定めるもんじゃないホ。お前の大器は、オイラが思わず鍛えたい! って思えるほどのウルトラ級だホ! 戦士よりも隊長、隊長よりも将軍を目指すべきだホ!」
「別段、地位は要らぬぞ?」
「地位や責任が人を成長させるんだホ。オイラだってただの訓練ヒーホーだったのに、今じゃ一端の教官をやれているんだホ」
「なりたい自分があるのなら、それが必要な場所に自分を捩じ込んでしまうのは一つの手なんだホ」
分かるような、分からないような話だ。とはいえ、『人外ハンターランク8』という人類最後の戦士の肩書きがなくなって身軽になっていたのは割と事実。それが己を死に向かわせていると見たのであれば、間違ってはいないだろう。
まぁ、将軍になるつもりはないけれどな!
「心得た! ひとまず己は『不良学生』という役割を全うしてみることにするぞ! 戦えるだけの戦士より、戦いながら学べる学生の方がお得だからな!」
「絶対不良は要らないホ」
「いや、不良でなければ戦えぬぞ? 良き学生というのは校則、ルールを守るのだからな!」
「そう言われれば……そうなのかホ?」
と、話し込んでいると周囲からのガヤがいつのまにかなくなっている。というか、少し遠くから戦闘音が聞こえてきた。
「……祭りの第二陣が始まったのか!」
「雑魚がわーわー沸いてきているホ! 早速訓練で鍛えたい力を見せつけてやるホ!」
「うむ!」
「時に、そこに構えたカメラは何に使うのだ?」
「宣伝だホ。お前の動きを動画にして、オイラの訓練を受けるとこんなに強くなるって証拠にするホ。これでブラックデモニホブートキャンプへの志願者がバシバシ増えるんだホ!」
「なるほど! 出演料は弾んでくれ!」
「まかせろホ! ひとまず現物でくれてやるホ!」
そう言って、一つ渡されたのは防具だった。この世界に来てから地味に穴であった足防具、それも己の魂が反応して
それを認識した瞬間、制服のズボンを脱ぎ捨てて脚部防具を換装する。
| ブラックデモニカ | 下半身防具 | HP80、速が17上昇する。銀座の会員制クラブにて購入できるおしゃれ装備 |
「完璧だ……今、己への確定数か一つ上にズレた確信がある!」
「お前、防具に拘ってないの
ブラックデモニホ教官が告げた言葉は、真実だ。つよつよ防具である『大天使のブラ*23』を装備していた時のダメージ感覚と、『熱光学迷彩(迷彩故障中)*24ソウルハッカーズ 防御26回避24 ノーマル耐性』という微妙防具を装備していた時のダメージ感覚は同じだった。
デビルチルドレンやシフターなど、防具が完全に機能しないタイプの人間は存在するらしい。ウィスパーに適性のある人の一部*25だとか。
なんでも、防具の防御力よりも上側に自分の魂の防御力が出ているからだとのこと*26。正直よく分からないが、おかげでボロ切れでも最低限の防御力を確保できていた訳なので己の命を繋いでいた仕様でもある。
「アズサ殿より借り受けたこの『エージェント・Y*27』と合わせれば、中ダメージ一発分くらいのHPが伸びた! 紙装甲からふつう装甲くらいにバージョンアップしたのだぞ!」
「お前気にしてたなら戦場に出る前に変えるホ! 中途半端な装備で死にたいのかホ⁉︎」
「金がないのだから仕方があるまい! 完璧装備になるまで借金をしろとでも言うのか⁉︎」
「命あっての物種だホ! 優先順位を間違えるなホ!」
「命なんぞ然程の価値でもなかろうが! 人はさらっと死ぬものだ!」
「終末の価値観からアップデートするホ! お前みたいな強い奴の命にはそこそこの価値があるホ! 死に時を間違えるなホ!」
「生きているから間違えていない!」
「なら無駄な危険に飛び込むなホ!」
「強くなるためには無限に危険に飛び込む必要があるのだ! 戦わなければ強くはならぬぞ!」
「安全マージン考えるホ!」
「そんなものを考えていて死地で命を拾えるものか!」
脳死で言葉を発していたら、いつのまにか言い合いになっていた。ブラックデモニホ教官は己を慮って言っているのは間違いないのだけれど、そんな風に気を遣われて育った奴は死地で動きが鈍るのだ。
いや、基礎固めの時にはしっかり気を遣われた方が伸びるらしいのだけれどもね。パイセン含む先輩ハンターはそうやって育てられていたらしいし。まぁ、皆死んだが。
「よし分かった! オイラが教育してやるホ!」
「上等だ! ぶちのめして己の糧にしてやる!」
ヒートアップしたので、当然殺し合うことになるだろう。
しかし、それを許さなかったのは周囲の状況だ。
「まだやってたのかバカ共」
「ジエンくん! 敵はもう来てますよ!」
ヒフミ殿とアズサ殿が少し遠くから声をかけてくる。その向こうには、『狂気に駆られたガンガー』『狂気に侵されたレギオン』『狂気に駆られたラフィン・スカル』などの妙なのがちらほら来ていた。
名前が長いが、そのおかげでアナライズデータの共有に紛れは起きないだろう。ありがたい。
「では、討伐数勝負としようか」
「上等だホ! トリプルスコア付けてけちょんけちょんにしてやるホ!」
ちなみに、ここまで寄り道しまくっている理由はシンプル。さっきの巨大悪魔のドタバタによって電車が止まっているので帰れないからだ。
……いや、走って帰るのでもいいのだけれど、リオからは『問題なし』とメッセージ来ていた上に、リオ達の情報収集の帰りに車で拾ってくれるということになっている。
つまり、暇なのだ。
「掲示板に敵悪魔の殺し方が載っているホ!」
「火炎と破魔が有効のようだな!出番だソロネ!」
尚、討伐数バトルが行われたことでブラックデモニホ教官はレイドで活躍する己を撮影することができなかった。そのため別日に撮影の約束を取り付けられたのは、また別の話である。
あとがき
メインクエストが進んだら、発生するのはサブクエ祭りだぁ!
ということで、しばらくはジエンくんに起きる妙な事を描いていきたいと思いますぜ
真Vの千代田区の時のように、大戦争が起こっている中で進む若干のんき目なサブクエが好きなんですよねー
・ジエンくん
ブラックデモニホ教官に訓練の押し売りをされた一般不良男子中学生。
品川近くのレルムに居た理由は、普通に帰り道だから。普通に電車で帰るよりもレルムで全力で走ったほうが帰宅タイムが早くなるという事実を帰宅部ガチ勢より聞いて試していた。
教官の指導によって、前線に4体目を召喚することによるプレスターン崩しという荒業を身に着けた。ガントレットの性能的に最大効率でMAGを運用できるのは3体召喚なのは変わらず、プレスターンの呼吸を統率するのは4人パーティが限界なのは変わらない。しかし、面白めな手札が増えた。
なお、唐突にVR戦闘を押し付けられたことを訓練と、正解を見つけられなかったら死ねというスパルタを教育と呼んでいるのは前の世界での経験から。悪魔王や救世主との決戦で死に損なった先輩ハンターたちはだいたい指導下手だった。まともなのはパイセンくらいである。
・ブラックデモニホ3世
ヒーホー族に伝わる伝説の1つ。世界の滅びを打倒する救世主の仲魔であり、数多のひよっこを一人前の兵士に成長させた初代デモニホ。そんな彼に鍛えられた5人の色付きデモニホを祖とするヒーホー族の末裔がブラックデモニホ3世である。
彼はデモニホが多くの兵士を鍛え導く姿に憧れて努力を重ねたデモニホであるが、教官としては未だ英雄クラスの兵士を導けてはいない。その原因を異界にて待ちの姿勢でいたからだと断じた彼は、レルムにて訓練の押し売りを始めたのである。
―――当然だが、そんな訓練の押し売りをされて殺され、恨みを感じない者はいない。故に彼の首にはそこそこの懸賞金がかかっているのだった。
レルムにあるとあるカフェ。スターでバックスな所をリスペクトしたオシャレさを売りにしている一角だ。味も相当に似ているし、店員の質も高い。リスペクト元がレルムに直接出店することへのリスク回避のためにパチモノを作ったのでは?と噂されていたりする。
なんだかんだと、皆からの要望は多かったのだ。このコーヒーショップの出店は。
そこに、一人の少女(に見えるアラサー)とツギハギ顔の中年、そして仮面の女性がいた。一見奇妙な組み合わせだが、奇妙なのが普通であるこのレルムにおいてはよく馴染んでいる。
問題があるとすれば、それは周囲の光景。
数多くの悪魔の死体が散乱し、首を切られた者、胴体を殴り抜かれた者、雷で焼き滅ぼされた者と多くの死がそこにある。
「リオ、店員からのご好意のコーヒーだ」
「好意はありがたいけど、この惨状でコーヒーブレイクはしたくなくない?」
「悪魔が飛び散らせたMAGで食欲が起きるかどうかだろうな。悪魔からの侵食度合い次第では、こういう惨状でこそ腹が減るらしい」
「ツギハギ、アンタそんな感じだっけ?」
「元の世界で面倒を見ていた連中が、そうだった。付き合うこちらとしては少し負担だったな」
「……付き合っていたんだな、血まみれコーヒーブレイクに」
「……漫画のタイトルにありそうね」
そうこうしていると、「Bow!」とマシンドックの声がする。店の奥から少女、フジワラがやってきた。
「検死、終わりました」
「おっさんの死因は?」
「背後からの打撃で心臓を内側から破裂させたものかと。
「こんなドタバタが始まってなきゃ普通に蘇生されたでしょうに。運がないわねぇ……」
などと言うが、誰一人としてこれが運の悪さが原因での蘇生不能死体であるとは思ってはいない。
犯人は、レルムが大混乱に陥ると分かったからこそこんなカフェのど真ん中にて暗殺を行ったのだから。
「リオ、火事場強盗の方は?」
「一応蘇生させて、そこに転がしてるわ」
「石化はさせているがな」
血まみれになったテラス席の一角、そこに両親指を結束バンドで縛られ、膝をついている石像がある。彼らは、つい先ほどこのカフェに強盗をしかけた面々だ。
レルムにて戦える面々が巨大悪魔の方に行ったからこそ、自分たちのような弱者でも悪さができると思ったのだろう。という浅い考えの裏に、そこに誘導した何者かの意識が見えている。
「しかし、あの店主が暗殺されたとはな。惜しい人を亡くした」
「ツギハギも知り合いなんだっけ?」
「ああ。アイテムの大量生産を試みていた御仁でな。ゴドーのチームに消耗品の類を提供していた。量産試供品だと言っていたが、根っこの方に戦士達への敬意があったのはよく伝わっている。少々昔気質な奴ではあったがな」
「……ジエンみたいな言い方をしているな、ツギハギ」
「奴の他人の評し方は見習うべき点だからな。常に他人の長所を語るのは、なかなかできん」
「……確かにそうだな。私も見習おう」
「素直か」
リオたち一行がこのレルムにやってきた理由は、囚われの身であるゴドーの情報収集のためだった。
「僕、この人知ってるかも。僕らの世界でJPTトラストの社長さんだったジャスレイ・ドミニコスじゃない?」
「……ただの兵隊にに政治の話をしてくれるな、RoRo」
「ブレイド、お前さん一家の大黒柱だろう?もう少し頭を使って生きろ」
「努力はしている」
「というか、JPTトラストって商社さんだから政治の話ではないよ?お買い物の話だね」
「……むぅ」
「私ブレイドが本当に隊長やれてたか心配になってきたんだけど」
「……俺もだ」
この場で暗殺されたのは、一人の男。
元々は情報の元締めであったこの男は、あるバスターから過去周回におけるアイテムの効率的な量産システムを入手し、それを元に工場となる異界を作りアイテム業界に参入した。
レルムにて展開されている『デラマンチャ*28』にて売られていた『リカームシガレット』や『タル・カジャゼリー』、『デ・カジャミスト』を卸していたのがジャスレイの会社JPTトラストだった。
レルム建設の流れに乗って大きく利益を得たレルム成金として、一部界隈ではそこそこに知られていた男である。
「で、そんなジャスレイという男が何故殺されている?敵は多そうな顔をしているが」
「知らないわよ。事業の方は今ノリノリだから、競合他社からの暗殺じゃない?ガイア系列の資本だから、メシア系列でも乃木系列でも他のベンチャーでも邪魔に思って殺したくなってたとは思うけどね」
「人間同士で足を引っ張り合える現状か?」
「絶対違うと思うわ。レルムがこれだし」
テラス席にてコーヒーを飲むリオであったが、遠方からの戦闘音は激しくなっている。銃声や破壊音は止まらない。
現在リオ達のいるウエノでも、ジエンのいるシナガワ同様に
「リオ、あちらを」
| 造魔 | メダマノオヤジ | LV1 |
「見てるわねぇ……」
「隠れていないのは、監視していることをアピールしているからか?」
「でしょうね。ああして一体見せ札にしているだけで、私たちは動けなくなってる訳だし」
「横槍でデバフをかけられたら死ぬからな。迂闊に動けん」
「そういう意味では、迂闊に動きがちなジエンがこの場にいないのはある意味有り難かったですね」
「……絶対巻き込まれてるから心配だわ。あの子こういう死んでも次がある戦闘だと本当にポンポン死ぬじゃない」
「それは……そうだな」
そんな中、ブレイドが『ターゲッティング』からの『GUN』にてメダマノオヤジを攻撃し、マーク状態を付ける。そこにダニーが背面に取り付けたマシンガンを発射してトドメを刺した。
しかし、死体は隠れていたメダマノオヤジにより回収されて、送還される。
必殺の手札を温存しての迎撃であるために、死体を完全に破壊するには至らなかったのだ。
「とりあえず、向こうからのちょっかいは無いみたい。状況みながら判断しましょ」
「リオ、ジエンからの返信です」
「他人の回線無断で監視しない。……で、なんだって?」
「ブラックデモニホ教官との訓練が終わり次第、帰るとのことです」
その時、この場の全員と、影から監視している辞林は、同じ気持ちとなるのだった。
『いや、ブラックデモニホ教官って何だよ……』と