姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝 作:気力♪
ブラックデモニホ教官との討伐数勝負は、なぁなぁで終わった。終わらざるを得なかった。
「デモニホ教官、あの“うねうね”は?」
「言うほどうねうねってないホ。というかそもそも見えてないホ。分からんものに変なネーミングするなホ」
「ならば、あれの名前を教えて欲しいのだが」
「……なんだったか忘れたホ。大体“消滅”とか“虚無”とかそのへんの無っぽいワード言えば大体伝わるホ」う
「無っぽいワード……」
……なにかないか? と考えてみるも、さっぱり思いつかない。消滅と書いてヴァニッシュと読むのはかつて戦ったデマーゼル*1がやっていて地味に気に入っている音なのだが、攻撃とか動詞っぽくなるのでアレの名前としては適切ではないだろう。無難に虚無でいいか。
そんな会話ができる理由。それは、己達の位置にやってくる悪魔が品切れになったからである。
どうにもこのごほうび悪魔達は、ウエノにいるという『天命を奪うセイテンタイセイ』の取り巻きとしての出現だったらしく、シナガワでの出現数はそれなり程度だったとか。それなりな程度でも十分に被害を出せる化け物達なのだが、今のレルムにはそんな化け物を主食にしているデビバスがアホほどいるので、何一つ問題にならないのだ。
「して、
「弱らせた敵に蝗のように群がってくる人間達には恐怖を覚えたホ」
「己達、共に一撃で敵を仕留められる火力ないものなぁ……」
そして、そんなバスター達の存在こそが、己とブラックデモニホ教官との競争を妨げた原因である。一撃で仕留めなくては、横からトドメを掻っ攫われるのだ。
デモニホ教官のメイン火力は『うちまくり*2』という万能属性銃撃スキル。クリティカルが乗る万能銃撃とかめちゃくちゃ欲しいスキルであるのだけれど、敵の雑魚悪魔は五発フルヒットでも足りない程度の耐久であったので意味はない。
己のメイン火力はソロネの『アギダイン*3』や『マハンマオン*4』だ。こちらも弱点込みでダメージを与えても打点は足りないので意味はない。
ダメージを与える事は意味ある行為では? と思うだろう。しかし、横のバスターにトドメを掻っ攫われるのだから即死以外は無意味なのだ。
ならばと他のバスターが弱らせたのをハイエナしようとすれば、互いが互いの邪魔をする。というか、射線が重なって攻撃がぶつかりあらぬ方向に飛んでいってしまう、
己とブラックデモニホ教官の嗅覚というか、戦場で弱った敵を見つける速度はほぼ同速。ついでに互いに牽制しあったりもしているので、そんな余計なタスクのない
「己、戦いの虚しさを知った気がするぞ……」
「オイラもだホー」
尚、現在進行形で互いに互いを出し抜こうとしあっているのは言うまでもない。
ないのだが、局所的品切れなものだから出し抜きようがない。無情である。
「こんな鉄火場ど真ん中で何をやっているんだキミ達は」
「何って……」
己とブラックデモニホ教官の手元を見る。そこにあるのは凧という、風を受けて高く飛ぶ有線式の道具だった。己の世界でも残骸を見たような気がするが、風の少ないトウキョウでは飛ばし方も分からなかったのだろうか? 使われていた所は見たことがない。
「偵察だな」
「センサーを付けて即興の観測機器にしてるホ。あの
「謎のヒーホー5人組のキャラ凧を飛ばしてるようにしか見えなかったわ……」
「伝説のカラーデモニホ達の集合写真をプリントしたホ。カラフルで視認性が高いホ」
そんなこんなを己達に話しかけてきたのは、己と同時にグルルの対処をした二人? 一人と1匹? だ。
少年の名前は『蒼月マナブ』。火炎系の異能者兼サマナーだ。錬金術や化学によって作る薬品を触媒に使い、魔法の効果や火力を高めるスタイルの戦士だ。少し堅物ではあるが、ルールをもって人々の暮らしを守る生き方を選べている、強い人だ。
彼女? の名前はニャンデスター。見た目は完全無欠に猫である。星型の模様が額にあって派手であるが、まぁ猫である。マナブ殿の相棒であり、冷静さと慎重さをもってマナブ殿が道を違えるのを防いでいる面倒見の良い人だ。当然、優しい人でもある。
そして、その二人に着いてくる形でやってきたのは8人の男達。皆一様に同じ顔を持ち、皆一様に同じ武器を持つ戦士達だ。『サスマタ』と全体では呼称されている。コードナンバーが飛び飛びになっているので、全体で8人という訳ではないらしい。
サスマタ殿達は、おそらく技研で雇っているサトー殿とタナカ殿と似たような出自なのだろう。クローン兵士というのだったか?
まぁ親戚が沢山いる人という認識でいるのが楽だろう。細かい事情など知らなくても友人や仲間はやれるのだし。
「して、何用だ?」
「シナガワのグルル付近はひと段落着いたからな。礼を言おうと探していた。……感謝する、キミがいなければ、僕もニャンデスターも死んでいた」
「まだまだグルルは再召喚されているから戦いは終わったわけじゃないみたいだけどね」
「まぁ、今の流れならそうそう事故る事もあるまい。レベルの稼ぎ時だな!」
「感謝の言葉、このジエンがしかと受け取った!」
「偉そうだホ。何様だホ?」
「今は単なる学生様だな。昔はちょっとだけ偉かったが、過去の栄光という奴だ」
皆が懐疑的な目で己を見る。まぁ気持ちは分かる。人外ハンターランク8というのは、己より上の連中が皆死んだり行方不明になったりで転がり込んだ役割なので、ぶっちゃけ信用を積み重ねて得た役割ではないのだ。
いや、仕事は沢山やったし成果は積み上げたぞ? その地位を頂いてからもかなりの敵を殺してきたし。
「地味に過去の栄光に縋ってるホ」
「内心の微妙さが表情に出ているな……」
「この子、大丈夫かしら? 色々な意味で」
酷い言われようである。ただ、戦場の空気なのに戦場になってない微妙な緩さが過去を思い出させただけであるのに。
「それはそれだ。マナブ殿達は食事などは済ませているか? そこそこ長引く空気であるから、カロリーバーなどを補給した方がいいぞ」
「ものすごい鋭角に話題変えてきたわね」
「だが、確かに補給は必要だな」
「ということで、このお徳用チョコレートをお裾分けしよう。チョコレートのカロリーは凄いのだぞ。その上甘い!」
「ニャンデスターが居るのにチョコレートを出してきたか……知らないのか?」
「む? 何をだ?」
「猫って、チョコレート食べられないのよ。私は悪魔入ってるから食べられくはないけど、好んでは食べないわね」
「カカオに含まれているカフェインやテオブロミンという成分は犬猫には毒なんだ。人間よりも体が小さいことで、少量でも悪影響の出てしまう。排泄する機能も少なかったな」
「なんと⁉︎ニャンデスター殿に毒を食わせてしまいかねなかったのか⁉︎すまぬ、知らなかったとはいえ嫌な気分にさせてしまった」
「いいわよ別に。気遣いでカロリー分けてくれようとしたってのは伝わってるから」
そうしてゆるっとした空気に戻っていると、不意にアラートが鳴り響く。凧の先に繋げているセンサーが異常を検知したらしい。
「
「……何者かから襲撃を受けている者が居る! 北西方向、建物二つ向こう!」
「そっちの連中! ぼさっとするなホ!」
己とブラックデモニホ教官が走り出す。凧はとりあえず己が回収。借りパクしないよう気をつけよう。
襲撃されている者の進行ルートを逆算して、援護できるようなルートに行く。
「動き出しの速さは認めてやるホ!」
「そちらもな!」
ブラックデモニホ教官と己が共に駆ける。単純なスピードでは己の方が上であるが、走るルート取りなどで差は広がらない。技巧派な走り方だ。
2頭身のブラックデモニホ教官の技巧派走法は流石に模倣できないのが悲しいところである。良い手本なので後で何が良いのかを分析してリオに聞いてみよう。
「キミ達、息ぴったりだな!」
「合わせてないホ」
「最速のペースが噛み合っているだけだな」
前線バスターあるある。特に合わせてないのに息が合うやつである。みんな達人だったり熟練だったりするので、無意識で処理している“なんとなく”が噛み合うのだ。
戦いの最適解は人それぞれでも、共通項はそれなりにあるのだから。
「次の角! 道幅は狭い! 最初に出るのは襲われている方だ!」
「初手はお前ホ!」
「巻き込まれるなよ!」
ボロ切れを纏った中年が抜けたのを確認してから『バインドボイス*5』を叩き込む。
「ギャガッ⁉︎」
「……何者?」
「通りすがりの、お節介だ!」
「感謝をするなら、門弟を紹介してほしいホ!」
バインドボイスが反射されなかったことに内心ほっとしながら、敵を確認する。
| 造魔 | セイテンタイセイ | LV73 |
レベルはさほど高くない。しかし、敵の動き方、立ち振る舞い、そしてセイテンタイセイという名前には非常に心当たりがある。
「通りすがってんじゃねぇよ、クソガキ」
「通りすがりに防がれる柔な作戦なのが問題では? 猿モドキ」
セイテンタイセイ違いではなかったらしい。
先日チンゼイハチロウに薙ぎ払われながら戦ったセイテンタイセイで間違いない。思わぬところから手がかりがきたものだ。アイツの再召喚か、データを閲覧した別人かは知らないが、同じサマナーの配下のセイテンタイセイだった。
バインドボイスの緊縛はヒットした。その瞬間、逃げていた男が踵を返して貫手をセイテンタイセイの喉元に突き刺した。鋭い動きで、己好みだ。
「敵なのを確認だホ! 『うちまくり』だホ!」
そして、姿勢が崩れたタイミングに追撃の万能属性連射。4発命中し、1発クリティカル。セイテンタイセイは右腕と左目のあたりが消し飛んで致命傷となった。
「……ちくしょう、死ぬしかねぇ訳か」
「だが、これであのクソサマナーの仕込みが発動しやがる。ここのオレが死ぬのも、想定通りってのかよ」
そして、死んだセイテンタイセイの肉体が裏返り、異界へのゲートが生み出される。死亡時に発動するように仕込まれていた時限式のトラップか!
「逃げ切れんか!」
近くにいた中年はゲートに近すぎた。引力圏から逃れることはできそうにない。
そう側から理解した時には、もう既に自分から飛び込んでいっていた。
「ジエン! デモニホ! 逃げ切れるか⁉︎」
「微妙! なので己も突っ込む!」
「了解した! この場の保持は任せてくれ!」
「このタイプだと脱出口は入り口周辺になるからね!」
少し離れたとこのマナブ殿は逃げられそうである。己達は微妙に近く、逃げ切れるか体の一部だけ持っていかれるかは半々という所だろう。
なので、背中を任せて己達は突っ込んだ。背後の「さすまた!」と叫ぶ黒服の皆達はやる気十分で、頼りになりそうだ。
──暗転
視界が戻った時には、目の前には東京っぽい街並みがあった。ヒリつく殺気が過去経験していないレベルにヤバめな異界である。
「無事か?」
「問題ない!」
「で、ココって何だホ?」
「……ここは東京の認知異界『ムナール』と呼ばれているものと現世との間に築かれた隠し通路だ。囚われていた場から脱出する時、ここを利用した」
ムナールと呼称されていたりいなかったりする異界については、ペルソナ使いが零していた情報が記憶に新しい。東京全体に重なるように認知異界ができており、その異界を通っていくと都内の移動が結構時短できるらしい*6のだ。
たまにレベル99の『【死神】刈り取る者』がエンカウントするらしいが、そこはご愛嬌というやつだ。時短の方が価値は高い。
「して、あなたは?」
改めて彼を確認する。纏っているのはボロ切れ、そこら辺にあった布をとりあえず付けている感じだった。肌、髪などは荒れ放題だが体格は良くがっしりしている。ボロ切れしか纏えないような生活弱者という訳でなく、この世界基準で普通の食育をして作られた体である。若干やつれているがお腹には脂肪が残っており、その内側にはパワーのありそうな相撲取りのようなヘビー級筋肉があるのも伝わってくる。
とすると、どこかから逃亡したのだろう。ただごとではなさそうだ。
「俺は『オオノ』と名乗っている。北関東のあたりでデビルバスターをやっていた」
「己はジエン、不良気味に学生をやっている」
「ブラックデモニホ3世だホ」
流れで始まる自己紹介。どうにもオオノ殿は己の名前に心当たりがあるらしい。「技研の野生児か」と溢していた。
「それで、どこの誰に捕らえられていたのだ? あのセイテンタイセイとはかつて殺し合ったが、素性は知らんのだ」
「俺も素性は知らん。『造魔使い』の配下であり、殺しても殺しても次が出てくる妙なのだ。どうにも、あの人格モデルは量産型らしい」
人格モデルを悪魔全書などに記録してコピーペーストしているという仮説と、人格は肉体とは別の場所にあり、遠距離から造魔の肉体を操っている仮説の二つが頭に浮かぶ。
己達が殺したセイテンタイセイの記憶を受け継いでいたので、遠隔操縦型なのでは? というのが若干強いと思うが、あの気軽に使い捨てられるあり方は量産型のそれだ。両方の説のハイブリッドだったりするか?
まぁ、真相は闇の中である。襲ってきたのはもう死んでるし。
「引き込んでからすぐに仕留める、という訳ではないらしいな」
「なら、こっちから異界の主を仕留めるホ。さっさと帰るホ」
「オオノ殿、事情は歩きながらで構わないか?」
「ああ」
てくてくと道を歩いていく。この異界は細い道が長く続く構造であり、しかし曲がり角などがほとんどない。
道幅は狭く二人並べる程度。戦闘に若干の影響あるだろうが、それは後で考えればいい。
足場はアスファルトのような感覚だ。頑丈で、固く、平たい。バイクとかが走りやすそうだ。車は……小さい奴なら?
「俺は、『造魔使い』に囚われていた。今回のコレのように、異界に引き摺り込んで分断し、本人が始末しにくる暗殺スタイルに敗北してな」
「レベル90クラスの近接戦士らしいな。仲魔の操作をしながら自身の戦闘も行っている分割思考の使い手であるとも仲間が分析していた」
「けど、オオノに捕まってなんやかんやされる理由はあるのかホ? お前みたいな強いのはとりあえず殺しておくのが安牌だホ」
「それには、俺が受けた実験について語る必要がある」
モルモットとして囚われていたのかー、とちょっと納得する。オオノ殿は強さが分かりにくいが、弱いということはないだろう。自身の強さ、MAG量を隠す技を持つのはそれを必要とする人に限るのだから。
「俺は、脳に情報を叩き込むようなマシンの被験体となった。奴のぺちゃくちゃ喋った言葉が正しければ、情報の濁流の中に叩き込んで廃人にし、その中に『洗脳』という道標を植え付けるものらしい。手間はかかるが覚醒者が自分から洗脳を受け入れる形になるらしく、強者でも弱者でも成功確率は変わらぬという」
「あー、アレであるな。知っているぞ。地元のヤクザにて使っている奴らがいた。先輩ハンターが何人か寝返っていたし、己もマシンを取り付けられた事があるぞ」
懐かしの我が地元。天蓋だとか外殻だとかの名称で呼ばれている己の世界での話だ。
ヤクザ連中の物資横取りに対して抗議しに行ったハンター達が人が変わったようになってしまったという話があり、数人のハンターと組んで調査をしたのだ。その際に囮にされて敵に捕まり、洗脳マシーン(仮)を使われたのだった。
まぁ、アレ最初の濁流で自我を失わなければ洗脳本体を『へー』と投げ捨てられるし、マシーンを使った側も洗脳が成功したかどうかの判別がつかない欠陥品だったので洗脳されたフリをして物資を根こそぎかっぱらったのだけれども。
現在己が装備している『親皇の弾丸*7』はその時の儲けで買ったものである。
なんであんなものが売ってるのか分からないままだったが、銀座の会員制クラブにて売られていた高級品だった。自分の財布じゃないと思うと散財にも躊躇いはなかったものだ。
「コイツの地元のポンコツマシンと比較するのは何だホが、なんで大丈夫だったホ?」
「慣れていたからだ」
「情報の濁流の中より望むものを掴み取り、自我を取り戻す行為は、『名無し』の中では日常だ。お前もそうだろう?」
「己には『ジエン』という名前があり、名無しではないぞ!』
まぁ、言っていることは分からなくない。寝起きで先人の記憶がぐちゃぐちゃーとなっている時から目を覚ますのにやる事だ。
フジワラの話で初めて知ったが、ケガレビトは先人達のイマージュ? 思念? そういうのを刷り込んで育っているので、それと自分の記憶とを分けられないと自我がぐちゃっとなるのだ。
思えば、己がジエンと名乗る前の名無しだったころは寝起きが悪かった気がする。
「名前があると、洗脳からの寝起きが良くなるのか?」
「名前を
「じゃ、なんで戻って来れたんだホ?」
「俺には宿敵がいる……ッ! 奴を倒すまでは、俺は俺だけだぁ!」
「あ、自分の名前以上に大事なものがあったパターンだホ」
「突如としてヒートアップしたな。だが、嫌いではないぞ!」
倒すべき敵がいること、というかその敵を倒したいという『願い』があると人は結構生き生きとするのだ。パイセンが死んだ後の、シェルターないの皆のように。
「つまり、敵がガバったホね」
「そういうことだ」
てくてくと異界の奥に進んでいく。悪魔……ではなくシャドウはちらほらと現れるが、どいつもこいつも逃げ惑っていて近寄って来ない。レベルは50から60程度だからだろう。ブラックデモニホ教官の76レベの威光から逃れているのだ。シャドウの習性*8らしい。
しかし、逃げ惑う雑魚どもばかりではないらしい。あからさまにやばい空気をしている奴はいて、しかもそれと戦っている者もいる。
「え、誰か居るぞ?」
「この気配……まさか⁉︎」
オオノ殿が先駆けて向かい、己達が後を追う。
そうして向かった先には、神話レベルの戦闘があった。
| 死神 | 刈り取る者 | LV■■ |
| 全ての状態異常無効。即死無効。HP半減系無効 | ||
| 超人 | 琴葉護藤 | LV75(弱体化中) |
| 破魔無効、物耐性、精神無効、神経無効、魔力無効 | ||
| ワンショットキル | 物理スキル | 敵単体に銃撃属性特大ダメージ |
| 防御 | 基本行動 | 敵の攻撃によるダメージを半減する |
| 猛反撃 | 自動効果スキル | 敵の物理攻撃に対して、高確率で反撃をする |
| 三分の活脈 | 自動効果スキル | 最大HPが30%増加する |
| 大治癒促進 | 自動効果スキル | 戦闘中、行動順が回るたびにHPが6%回復する |
刈り取る者の放った銃撃を最小限のダメージで受け止め、反撃の一撃を叩き込む。その手には何も持たない手刀であったが、それによる傷は深い。
刈り取る者に他の傷がついていないことから、喉元一点にのみ手刀の斬撃を重ね続けているようだ。致命の一撃により首を落とすためにダメージを与え続けているらしい。
「ゴドー! 加勢する!」
「……オオノ、まず服を着ろ」
「どうせ千切れ飛ぶのだ! 必要ない!」
そう言いながらオオノ殿は力を解放し、悪魔変身をする。……いや、これは悪魔変身か? 悪魔としての気配よりも、人としての気配の方が強く感じられる。
「覚醒『トビカトウ』、『手裏剣鬼』!」
| 愚者 | 手裏剣鬼 | LV70(弱体化中) | 戦技無効、投具無効、光無効、神経無効*9 | ||
オオノ殿が、手裏剣や忍者を思わせる異形に変化する。デビルシフターではないのは分かるが、なんの技術だ?
「ヒホ⁉︎ペルソナを暴走させて肉体を変化させてるホ⁉︎」
「ペルソナってそんな事もできるのだな! 凄いぞ!」
味方全体の戦闘スタイルを確認。ゴドー殿が最前線での近接。オオノ殿は近接寄りの中距離、ブラックデモニホ教官が遠距離寄りの中距離。とすれば己は中距離あたりからバックアップに回復役をやるのがいいだろう。
「召喚、『クイーンメイブ』! 『ソロネ』! 援護に集中する!」
ゴドー殿は敵に囚われの身では無かったのか? とか、そもそもコイツは何なのか? とか、さまざまな疑問はありすぎる。しかし、不思議と戦うことに迷いはなかった。
レルムでの祭りの空気が抜けていないからだろうか? それとも、久しぶりに強い人に寄生しながら戦えるからだろうか?
どちらでもいいか。コイツ、経験値たっぷり持っていそうだし。
少年のような外見をしている『造魔使い』、自称研究者の辞林は手元にあるエネルギー飲料を飲みながら死んだ目をしていた。
理由はシンプル。タスクが重なりすぎているからである。
一つ目のタスク。これは彼自身が望んだもの。ゴドーの娘、『琴葉リオ』の監視と観測。彼女が魂を震わせればその傾向を記録し、仮説を立てて考察する。彼女を使ってどのように技術の継承を成立させるのかを。
現状分かっていることとして、彼女は素材だ。彼女を元にして作る悪魔、魔人、あるいはペルソナあたりを作り全書に記録し、それを未来の人間に憑依させることで彼女の全技術をインストールする、というのが一番可能性の高い仮説だった。それならば『イデアオーブ』よりも多くの適応者に対して技術を渡せる。
問題は、悪魔なのか、魔人なのか、ペルソナなのか、あるいは他の何かなのか判別がつかない事。想定された作り方を守らねば蒐集された情報の0.13%もの情報欠損が発生するとシミュレートできている。
その後の次の周回への渡し方についても悪魔、魔人、ペルソナにより違う手法となるわけだから、詳しく調べなくてはならない。
捕らえてからの実験では判断できない事実が多い以上、全て余さず観察して判断するしかない。
二つ目のタスク。これは、辞林の所属している研究室にて発生したミスだった。
特殊洗脳試験機7番という、変わり種人心洗脳装置の実証試験をやっていたところ、3名の被験隊が洗脳にかかりきらずに研究室から脱走をしたのだ。研究者それぞれの私兵により追い立てられ、今は全員監視下に置かれているがまだ証拠の抹消などはできていない。
一人の脱走者はレルムまで逃げていたというのだから辞林としては笑えない話だった。
先に四肢を奪ってから洗脳をしないからこうなるのだ。そこそこの戦闘力を持ち、使いやすく捨てても損にならない私兵なんぞを求めるからこうなってしまう。
などと現状研究室で使い勝手の良い私兵として扱われている辞林が思うのだから皮肉という奴だろう。
この問題への対処として、セイテンタイセイと接続した造魔1体を猟犬として派遣した。装備は全て奪い去った後で、回復などもされていない。仕込みもしているので逃す事もないだろう。
3つ目、これは現場での支援要請の話。
ウエノにて発生したカルティケーヤのインヴォーク。その際に暴走し現地民、構成員問わず甚大な被害を誘発した『シャドウ』なる馬鹿の捜索。
辞林の操るメダマノオヤジは観測用造魔であり、視認した情報をすぐにデータ解析することが可能である。
捜索対象の『黒子の歩法*10』『暗殺者の歩調*11』などの隠密スキルをデジタルデータにすることで回避することができるのだ。
そのことを知っている『ブラックフィエンド』の一員から支援要請を受け、生返事で承諾してしまった。
今更断るほど不可能なタスクではないため、ウエノ近辺でメダマノオヤジを捜索に使っているのだ。辞林の適当さが生んだミスである
4つ目、これは完全無欠に予想外の出来事。
上3つのタスクを必死で回している辞林の元に、ある知らせが届いたのだ。
インヴォークなどによる龍脈の変化、高レベル悪魔の連続召喚、連続撃破によるGPの局所的上昇、それらが原因である異界の結界強度が2%低下したのだ。
そして、その低下した2%の強度によって積み重ねられてきた攻撃のダメージを受け流し切る事ができず、検体拘束用異界が一つ崩壊した。
その異界に囚われていたのは『ゴドー・コトノハ』。辞林によって技術の蒐集と継承を目的に刷り込まれた一体の手駒であり──
ペルソナ『チンゼイハチロウ』を取り戻し、体に馴染ませ終わってからてから96時間の間10秒一発のペースで結界の一点を殴り続けた狂気の男である。
最初の1時間は嘲笑され、次の1時間は困惑され、その後の無駄に思える攻撃に存在を無視され、結果、僅かな綻びにより脱獄を許した。
そのゴドーへの追撃と捕縛こそが、現在辞林に課せられている最大最悪のタスクである。
「……無理では?」
思わず辞林が言葉をこぼす。それはそうである。彼の手駒、128体の造魔メダマノオヤジはウエノに出張っている。彼が使える仲魔『セイテンタイセイ』は先ほど死んだ。
そして、現在ゴドーが逃げ込んだのは研究室で管理している移動用異界。認知異界と接続し、『刈り取る者』による排除対象となった事により廃棄された場所だ。
「……装備のないゴドーと検体3番だし、死んでくれるか? いや、ゴドーだしなぁ……」
尚、彼の目『造魔メダマノオヤジ』は全てウエノに存在しているためシナガワでの現状はまだ知らない。報告をするべき『造魔セイテンタイセイ』も先ほど殺されている。死人に口はなく、監視網もない故に廃棄された移動用異界に迷い込んだ一人と一体の事を辞林は知らない。
インヴォークシステムによる
様々な要素が絡み合い、今一つの大事故が生まれようとしていた。
だいたい週一投稿(一週間と4日)という欺瞞。
ポンコツ最新話までスパートかけて一気読みしたり、マリオワンダーやったり、ラストバイブルやったりと遊び呆けた結果です。はい。
今回の話で描いた通り、事故を起こします。誰一人として全体図を見てない中でのジエンくん達の行動を、ご期待ください。
・ジエンくん
凧揚げしてたら異界に落っこちた巻き込まれ人A。後々ジエンくんを心配してるヒフミとかアズサとかに怒られるが、今現在のジエンくんは人命救助のために駆け寄ったら事故っただけなのでセーフ
・ブラックデモニホ3世
凧揚げ眺めてたら異界に落っこちた巻き込まれ人B。ジエンくんとの勝負を何で始めたのかもう忘れている。現地デビバス達にトドメを盗られ続けて結構萎えていた。
それはそれとして人命救助に迷いはない。デモニホなので。
・謎の忍者おじさん
ゴドーの仲間その1。ペルソナを暴走させて肉体を変化させ、3種の鬼となる変わり種の戦士。手裏剣鬼、魔法鬼、轟轟鬼の3種の形態がある。
幼い頃より忍術の修行に明け暮れていた無職だったが、ある日悪魔事件に巻き込まれて以来忍術を実践する無職になっていた。
ゴドーとの関わりは学生時代から。忍術書(木っ端忍者一族の秘伝書)を技研で読んでたりと意外と付き合いは長い。
原作(ドンブラザーズ)だと大声で叫んでいるか弱音吐いてるかの二択なので、フラットなテンションでの会話に困った。
・ゴドー
囚われの姫様枠(自力で脱出しないとは言ってない)