姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝 作:気力♪
ここは、業魔殿のある豪華客船に存在するレストランの一角。
ゴドー殿の合体は明後日である。己自身が業魔殿での合体を予約できたという訳でもない。ならば何故己がここに居るのか? といえば目的は素材悪魔のトレード。および宝石をマッカで売り払う事である。
襲撃を警戒しながらであっても素材集めやら宝石集めやらのために異界潜りはしており、その中で己は『ガーネット*1』を4つほど確保できた。しかし、皆と持ち寄って9個所持効果を試してみたところ、己の被ダメージも確定数も何一つ変わらなかった。
防具の防御力*2と同じように己には効果がないステータスであるらしい。なので、とりあえず前線を張りつつ耐久力の必要なリオに1セット渡してあとは各自で保持となっている。
己みたいなウィスパー型の戦士ってちょくちょく悲しみ背負っているなーと思うアレだった。
己と同タイプの異能者でいい防御力の装備をしている人を見かけたら、生暖かい目で検証をおすすめしよう。うん。
「お、来たな! 先にジュースをご馳走になっているぞ!」
「……このレストランでジュースを頼むだと⁉︎」
「む? そんなに妙なことなのか?」
「このレストランで提供されているジュースは、ザックームの果実を使われているという話だ。正気とは思えん」
「そうだぞ。ザックームは麻薬なり赤玉で頭ぱっぱらぱーにするといい味の果実になるのだよ。加工が面倒なので己は自分でやらないが、かなり美味しく祝い事の席では定番だったぞ。己の世界での話だがな」
「……その美味いは、お前の悪食によるものではないのか?」
「普通に『な⚪︎ちゃん』とか『Q⚪︎o』などと同じ領域で勝利できるものだ。美味しいとも」
「ラリったザックームはオレンジ系統の味なのか……」
ムラカミ殿は一瞬遠い目をしてから、タブレットでジュースを注文していた。味が気になったらしい。
まぁ、素のザックームの味は悲しいくらい苦い味なので食べるものがない時以外は食べないのが利口である。栄養価はあるのだけれどね。
「あ、一応補足だぞ。ザックームの果実はそのまま食べると腹の中で暴れ回り食い破ろうとしてくるが、食べる前に魂を砕いておけば問題はない。ミキサーなりすり鉢なりでぐずぐずにするのでも大丈夫だ。まぁそのまま食っても死にはしなかったがな」
「……元の世界での苦労は知らんが、今はちゃんと食い物は選べ」
「無論だ。不味いものを食ってもさして心が痛まないタチであるが、可能な限りは美味しいものを食べたいとも」
普通に美味しいものを食べたいと思いザックームジュースを選択しただけである。
ムラカミ殿がジュースを飲み「……美味いな」と溢したのを聞いて内心ガッツポーズをとりながら、ささっとトレードの準備をする。ガントレットに通信用のUSB-Cケーブルを繋ぎ*3、それをムラカミ殿の用意したノートPCに差し込む。
COMPそのもののセキュリティをムラカミ殿はあまり信用していないらしい。繋がれたノートPCは霊的防護、電子防護、カスタムメイドのウィルスバスターなどなどの相当お高いものが仕込まれているらしい。
そんなPCに、ムラカミ殿が武装COMPを接続した。以前見たものとは異なるので、どうにもCOMPを新調したらしい。
ガチャガチャと変形しそうな見た目からして、グランギニョル社などのものか? と一瞬思ったが、細部に癖しか見えないパーツが見えている。原型があそこのブルジョワ専用変系おもちゃであるが、さらに何者かの手が入っているようだ。
「ムラカミ殿、それの整備地獄では?」
「……言うな。性能も武器威力も魔晶装填数も耐久性も、全てが要求水準を超えてはいる。その上召喚性能、制御性能も高水準だ。どこかに皺寄せが来る」
ムラカミ殿の苦虫を噛み潰したような顔から出る言葉は、武装COMPというか、変系武器に偏見を持ちまくっている己の想像通りのものだった。
「実際強いし対応力上がるしで良い点も無数にあるのだろうけど、異界での年単位の遭難とかを想定したら選択肢には上がらないのだよなぁ……」
「待て、年単位の遭難となったら大体の武器は使い物にならん」
「鉄鉱石なりくず鉄なり魔鉄鋼なりを見つける必要はあるが、砂型と器があれば相当長い間戦い続けられたぞ?」
そう言って、溶かした鉄を砂型に流し込んでパーツを自作できると説明をしたが、ムラカミ殿からは信じられないものを見るような目で見られてしまった。
「どんな武器を使っているのだお前は……」
「これだぞこれ」
そう言って、己の武器である『.50マグナム』を見せる。
| 50マグナム | 銃 | 威力208 技+29*4命中率が低いが、クリティカル率が高い。真4Fのチャレンジクエスト達成数20個の報酬 |
「……恐ろしく簡素な作りだな」
「分解してメンテして組み直すまで5分掛からぬぞ。パーツの作りも簡単なものだから、製造も簡単だ。貧弱な生産ラインの中で生み出された傑作武器で有望な人外ハンターに与えられるものなのだ」
「威力の面では申し分無さそうだが……これ、弾は真っ直ぐ飛ぶのか?」
「飛ばぬから、まれに
.50マグナムのガワを……テセウスの船だったか? あんな感じに取り替えまくったから……というのとは関係なく貰った当初から弾は真っ直ぐ飛ばなかった。己が銃撃スキルメインでなかったら絶対に握っていないと断言できるポンコツ武器である。
「悪いことは言わん。まともな武器をメインにしておけ」
「己もそうしたいのだけれど、装備して『技』のステータスが伸びる武器でコイツより強い武器全然見つからないのだよ」
脱線しまくった話を置いておいて、素材の交換をする。交換する素材は主に宝石ハンターしてたときに拾った仲魔だった。
当人達との了解は取れているので死亡状態にしてのトレードとならず済んだのは幸いだろう。一応合体前に蘇生して一声かけるが、その時反逆されたなら死体にするしかないだろう。
── ムラカミ殿の出してきた奴らのうち2体ほど死体だったのはおいておくことにする。よくるよくある。
死んでると事故率上がるらしい*5からあんまやりたくないのだけどなー……やるけど。
「して、メッセージで送った『アレ』参加で良いのか?」
「構わん。それなりの金になりそうだからな」
「騙すとかはしたくないので言うが、奴からは金の気配は全くしなかった。むしろ借金の気配すらあるぞ」
「他人の債務状況を気配で読み取ろうとするな。10割の偏見だぞ」
言われてみれば、確認できない事を適当に言いふらすのは偏見からのレッテル張りであった。反省反省。
「まぁいい。俺はこれから合体の予約が入っているが、時間は余る計算だ。お前のチャートが固まっているなら、1〜2体ほど作れるかもしれんが……どうする?」
「無論、行くとも! ありがたい話この上ないな!」
ワンチャン滑り込めないか? とこちらから切り出すつもりだったが、ムラカミ殿から話を振ってくれたのは結構ありがたい。こちらから要求をする場合対価を渡す必要があるが、向こうから誘われたなら対価ではなく『お礼』として持ってきたものを渡せるからだ。
まぁどちらにしてもモノが変わるわけではないけれど、気持ち的にアドバンテージが取れるのは悪くない。それすらも見抜いて向こうから言ってきた可能性はまぁあるが、その時は気付かなかったフリをして自分のアドバンテージを守るとしよう。
「悪魔が集いし邪教の館へようこそ……なんてね」
「やぁやぁムラカミ。キミが子連れとは珍しいじゃないか」
「黙れダヴィンチ。コイツは琴葉の娘の所のだ
「という事は……あぁ! キミ奥多摩アビスで結晶体食べようとした子かぁ!」
「あぁ、あの動画の。良いCOMPを使っていたね。どこの製品だい?」
「出所不明だな。己の元の世界で、妙に身なりの良い人間の死体から剥ぎ取ったものであり由来は知らん。中の破損したドキュメントによると、なんとか教会*6という所らしいが、教会とだけ分かっても候補が多すぎて実質情報なしだ」
「ふむ……確かにどちらかといえば
そういう話をしながも、ムラカミ殿の武装COMPを格好良さげな機械に繋いでの準備は淀みない。
彼らは、合体師のロマニ・アーキマンことDr.ロマン殿と、エンジニアのレオナルド・ダヴィンチ殿だ。穏やかな振る舞いの中に確かな知識と経験を感じさせる合体師と、最先端知識により磨かれた技術と、天才と呼ぶべき独創性を兼ね備えた名エンジニアのコンビであると聞いていた。伝え聞いた人物像に間違いはなかったようである。細やかな所作に澱みがまるでない。
こういう所から合体師としての有能さが分かるという話があったりする。事実として、己がよく行く邪教の館のシモン・ムーラン殿はあらゆる所作が綺麗なのであながち間違っていないだろう。
「それじゃあ、合体を始めるよ。事前に貰っていたチャート通りで良いんだよね?」
「少し省略できた。3番から6番はこれを使ってくれ」
「3番と6番っていうと……」
「良い感じのビャッコとスザクが居たのだ! 異界由来の謎スキル付与であったが、合体にも使える奴だと己のガントレットは言っていたぞ!」
「継承可能スキルなのかの判別ができるのかな?」
「深層悪魔のスキルだと存在と深く結びついているとかで継承できないスキルも多いからね。地味にありがたい機能じゃないか」
「そうであろう! ガントレットはなかなか凄いのだぞ!」
「……さっき死体から剥ぎ取ったと聞いたが?」
「命を預けた相棒であるからな。元の持ち主が誰かなどは些事であるとも」
若干納得がいっていないムラカミ殿は置いといて、合体は進んでいく。
ビャッコとスザクという素材から分かる通り、ムラカミ殿が作成しようとしている悪魔は『龍神コウリュウ』だ。
漫画殿もそうであるが、ムラカミ殿もダークサマナーであるから*7
近接やら魔法やらでガッツリ集中している間に、じゃじゃ馬に指示出すのは難しいという話だろう。己は割と本体性能が高くないのでその辺は適当にやれているが、特大威力クラスのスキルを覚えるとなると重要そうだから気をつけよう。
「それじゃあ、合体するよ」
ロマニ殿の声と共に合体装置が唸りを上げる。原理はさっぱりよくわからないが、このハイテクな動きは好ましいと思う。なんとなく見ていて楽しいぞ。
「私は『龍神コウリュウ』コンゴトモヨロシク……」
\カカカッ! /
| 龍神 | コウリュウ | LV78*8 |
| 火炎耐性 氷結耐性 電撃耐性 衝撃耐性 破魔無効*9 | ||
| 五行思想*10 メギドラオン*11 ニ段の猛速*12 ラスタキャンディ*13 勝利の雄叫び*14 真・物理見切り*15 | ||
「おお! 深層スキル引き出し成功であるな!」
「魔界に深く繋がることで引き出せる、悪魔と深く結びついたスキルだね。おおよそ継承できない代わりに強力なものが多い」
「合体で引き出す場合だと結構コツが要るんだよね。スキルを3と1と2に分割して、本体に根付いたスキル、
「まぁ、魔界に近い異界で成長してればそこそこの確率で覚えるらしいんだけどね」
いまだに謎が多い深層スキル。数多の試行錯誤で引き出すためのテンプレートは作れたものの、それが本当に必要であるかは微妙なのだとか。型にはめないやり方で発現したこともあれば、型通りにしても発言しなかったこともある。つまり、よくわからない奴だ。
ただ、コウリュウの『五行思想』はびっくりドッキリな万能反射魔法であるから、量産のために検証を沢山されている。
『メギドラオン』、『ラスタキャンディ』、『二段の猛速』を仕込んでスキル枠を絞っていればそこそこの確率で発現するという検証結果だ。確率に負けて『マハンマオン』になることもそこそこにあるらしいがそれはそれ。乱数に負けた奴が悪い。
今回己が持ってきたスザクが『二段の猛速』を、ビャッコが『真・物理見切り』を持っていたので提供をさせてもらった。
耐性こそ他のコウリュウより貧弱気味であるが、主要4属性耐性と破魔無効は普通に強い部類なので問題はないだろう。強い連中はどうせ貫通してくるから耐性はあんまり拘る意味ないのだし。
「で、少年も合体をするんだろう?」
「うむ! ムラカミ殿の予約に便乗させて貰いたい! 無論、そちらが宜しければであるが」
「大丈夫だよ。サマナーをサブにしてる人たちの予約が続いたからね。体力には余裕があるんだ。……いや、寝た方が良い気はするんだけど、キミのCOMP見たいし」
ありがとう己のガントレット……お前の珍しさが己の手持ちを補填するのだ……
という事で、合体である。
まず、堕天使ネビロスを別軸*16の堕天使にずらし、サラマンダーと合体させて2ランクアップ。堕天使アガレスLV55*17そこからさらに別軸*18にずらしてエアロスを精霊合体でランクアップ。この軸にはLV55にデカラビアが居るのでLV55からのランクアップでそっちになる可能性もあったが、元々の素材にしたネビロスの要素を引き出すことにより、上のランクへと昇華された!
「ふっふっふ。私は堕天使ネビロス。私から私になるとは些か妙な気分ですが、コレもまた縁。あなたが屍を晒すまでは付き合いましょうとも。改めて、コンゴトモヨロシク……」
「うむ、よろしく頼むぞネビロス! お前はそこそこ頼りにしているのだ」
必中万能雑魚掃除要員から、必中万能魔法アタッカーに昇格だった。
\カカカッ! /
| 堕天使 | ネビロス | LV67 |
| 物理反射 衝撃弱点→無効 破魔弱点→無効 呪殺反射 | ||
| 会心の眼力*19 テトラジャ*20 サバトマ*21 ディアジャマ*22 メギドラ*23 衝撃無効 破魔無効 物理反射 | ||
今の段階ではさほど目立った仲魔ではないが、ネビロスには『死霊の呼び声*24』『栄光の手*25』『悪魔の産声*26』といった深層スキルが確認されている。この軸のネビロスがLV70で万能プレロマを覚えるのもあって、将来性が見込める仲魔だ。
また、ムラカミ殿からアプリ系列の『鬼女ランダ』を素材として経由させた精霊を貰ったので、『物理反射』という強スキルに『ディアジャマ』というピンポイント採用スキルも習得できている。
きっと燻し銀な良い活躍をしてくれるだろう。
「時間ちょっと余ったけど、もう一体合体は難しい感じだね」
「こればかりは仕方があるまい。ムラカミ殿の合体に相乗りしてるのに、無理はできぬからな」
「そういうわけだロマニ。コレでも吸って休んでおけ」
「……これは?」
「ウィッチドクターの連中の売っていた疲労回復用のアロマだ。『ツカレトレール*27』ほど劇的ではないが、ゆっくりと持続的に効果が発揮される」
「……エナドリの差し入れは多かったけど、変わり種で来たかぁ」
「アロマの差し入れとか面白いところから来たね。部屋で試してみるよ」
「む、それならばこんなのもあるぞ! ムラカミ殿への贈り物のつもりであったが、いくらか余分に作ったからな!」
そうして己が出したのはシンプルなクッキーである。
「へぇ、キミお菓子とか作れるんだ」
「初めて作ったものだ」
「初めて作ったものを贈り物に使うとか勇者すぎない?」
「あ、味は保証するぞ。学園で何人かに食べて貰ったが、『普通に美味しい』との評価であったからな」
現在生徒会長をやっているヒナギク先輩や裏13生徒会の承太郎先輩、ダンシ先輩にGV先輩など、その辺で会った人に食わせてレビューを貰った結果なので、そこそこ信頼できると思う。世の中にはまごころを込めて作った食事はたとえ不味くても美味しいと言わねばならぬという邪悪と表裏一体の騎士道があると聞くが、サンプルをたくさん取れば良いのだ。うん。
「で、なんで菓子作りなどを やった? お前は食う専門に見えたが」
「己が割と食ってばっかりなのはそうなのだが、しかし小麦と砂糖に縁があったのでな。ならばクッキーだ! という流れになったのだよ」
「ほう?」
「学園の園芸部の一派である屋内チームにて、LEDライトでの成長促進と豊穣の祝福を組み合わせることでの一月で収穫できるようになる小麦を作っていてな。作業の手伝いをしたお礼に沢山分けてもらったのだよ」
屋内チームとは、屋内園芸というより室内野菜工場では? と思わなくないやり方で植物を育てているチームで、最近発足した園芸部の一派閥である。
漂流者生徒の中にほぼ無傷の機材を持っていた者がおり、学園に寄贈されたのだとか。
なので、非常時の備え半分新しい技術への興味半分で色々やることになったのだ。ちょうど漂流者生徒という人手が増え始めてきた頃であったし。
とはいえ多少のメンテナンスや設置作業が必要であったため、己含めたシェルターでそういうののメンテナンスをしていた経験のある生徒たちによって課外授業となったのである。
野菜工場は奴隷の仕事だ! という者と、野菜工場は貴族の責任だ! という者に戦闘の余波でぶっ壊したので修理をさせられた経験がある者など色々いてちょっとした価値観のズレはあったが、皆で楽しく作業できたので漂流者生徒の学園適応の支援プログラムとしてはなかなかの成果だっただろう。色んなところに友達ができると、学園の景色は鮮やかに変わるのだし。
「……砂糖の方はまっとうな材料だろうな?」
「砂糖は学園で希望者を集ってのワークショップで作ったものだぞ。学園の異界にて、沖縄系? 琉球系? そういう神話系統のフロアが現れてな。そこのショートカットを開通するために草刈りをしたのだが、刈った草がサトウキビであったのだよ。なので、せっかくだからと砂糖にしたのだ」
「……なるほど?」
若干のサバイバル訓練の気配のするワークショップであったが、これもまた楽しかったので問題はない。いざという時甘味が作れるのは非常にに役立つしな。
「あ、美味しい」
思いっきりガッツポーズを取る。横でムラカミ殿が武装COMPの機能でアナライズしている中でクッキーに手を伸ばすとはなかなか豪胆な方である。これまでのやり取りで己を信じられるとは思えないのでそう思うあれだが、案外仲間への接し方で己を見抜いて……いや、己仲魔に対してはそこそこぞんざいに扱っているからそれはないな。Dr.ロマンは意外と豪胆であると覚えておこう。
優雅に笑うダヴィンチ殿と、食べカスをつけながらも朗らかに笑うロマン殿に手を振り、業魔殿を歩いていく。
噂には聞いていたが、なかなか豪華で綺麗で住みやすそうな船である。これを方舟として見る人の気持ちもわかるというものだ。
とはいえ、この船が方舟として使われないのが一番である。己もできることを出来る限りで頑張ろう。
もっとも、レルムでレイドのあった日からGPはなんでか落ち着いてきているから、己が頑張る必要はないかもしれないと言われ始めてきているのだけれども。そこは、不良として勝手に動いて勝手に頑張るだけである。
「ところで、お前は業魔殿まで1人で来たのか?」
「いや、知人の由崎夫婦と一緒に来たぞ。突発的に襲撃されるケースがちらほら聞こえているからな」
「由崎……ああ、あの若作りか。いつから生きているのかは知らんが、技の冴えはなかなかだった」
「それはお嫁さんの司殿であるな。旦那さんのナサ殿はプログラミングも物作りもできるすごい技術屋さんなのだ。とても賢い上に、人の長所をよく見つけてそれを素直に尊敬できる素晴らしい人格を持っているのだよ」
「……自己紹介か?」
「む?」
「失言だ、忘れろ」
「おっと、それは忘れるには惜しい話じゃない?」
「そういえば要ちゃんにもたまに言われるよね。僕とジエンくんが似てるって」
ムラカミ殿にとってはタイミングの悪い時に、由崎夫婦がやってきた。集合場所の道中ではないので、完全無欠に偶然の遭遇であるようだ。
ムラカミ殿が割と本気な舌打ちをする。
「そういえば、イラついた時に舌打ちをするというのは『イラついた時には舌打ちをするものだ』というステレオタイプなイメージからであるらしいぞ」
「流石ジエンくん。ムラカミのアホの煽り方を分かってるね。コイツ意外と型にハマる奴だから」
「たかだか数回組んだだけでごちゃごちゃ言うな若作り」
「己、ここでクソババアとかネガティブに強い言葉を使わないあたりになかなかの仲の良さを感じるのだけれど」
「僕もちょっと妬いちゃうかも。デビバスやってる時の司ちゃんの姿ってあんまり見たことないからさ」
やんややんやと言いながらちょっと移動してデッキに出る。海の上にこれだけでかいモノが浮かんでるのは、かなりの驚きである。いや、原理としては知っているのだけどね? 水に沈んでる体積の分だけ浮力というパワーがあるとかで。
「しかし、似ているな」
「ジエンくん漂流者だし、案外旦那様の親戚だったりするかもね?」
「いや、己とナサ殿はあんまり似ていないぞ。肌の色もこんなに違うしな!」
「それジエンくんの肌が日焼けに弱いだけだよね? 出会った時はこんな感じで、今はこんなだもん」
「己、この世界に来て初めて太陽を浴びたものだから肌が太陽に慣れていないのだよ」
「あー」
「で、由崎。お前らはどうして業魔殿に? 技術屋と刀使いが来る場所ではないだろう」
「いやいや、それが旦那様クラスの凄い人ならお呼ばれもするんだよ。何がどう凄いのかは司ちゃんさっぱりだけど」
「ちょっと知り合いの武器屋の人から剣とか槍とかの量産について相談を受けてね。武器にMAGやら魂やらを込める作業工程を悪魔召喚プログラムの応用で自動化できないか? って奴。で、その時相談に乗ってもらった村正さんに先行量産品とお土産とかを渡しに来た感じかな」
ナサ殿は検証勢にシステム技術者として協力している。そして、そこで生まれた他の技術屋の面々との繋がりが強くなり実質技術屋チームのようなものなっているらしい。名前こそないが、サークル活動のようなものだろう。
そこに持ち込まれた話として、前線バスター達に適した武器が足りなくなりつつあるというのがあった。
昨今のGPの落ち着きによって生まれた準備期間。そこでデビルバスター達が一時落ち着いて自身の強化を図ろうとするのは必定だ。だが、そもそも武器が存在しないのではお話にならない。
ならば、新たに武器を作ろうぜ! というノリになったのである。そして、その武器の出所としてはナサ殿に心当たりがあった。
己がこの世界に持ち込んだ、『ハンターメモ*28』である。そこには己の世界で一戦級であった装備の製法がテキストデータだけだが載っている。己の使っていた『モータルナイフ*29』も含めそこそこの高レベルデビバスの使用にも耐えられそう*30なデータだった。
最前線組には足りないが、中間層に行き届く量産装備として注目した人がいたのだ。あの劣悪極まりないシェルターの設備で生産できていた事から、他の一級装備に比べて作りやすいものであるとの認識らしい。
「で、その武器は?」
「『モータルナイフ』ってナイフと、『ロータスワンド』っていう鈍器だね。先行量産品は村正さんに渡しちゃって手元にはないけど、そのままでもそれなりに使える強さと頑丈さがあって、握りとかの細かいメンテナンスをすれば十分な武器になるって。装備効果の『力』の上昇効果もなかなかだって」
「ま、全部『数打ち物にしては』って言葉がついたけどね。鍛え割れ*31とかなかったら、妥協案として使っていいか? くらいな物だよ。命を預ける獲物には不足があるって」
「え、量産品の装備とか最高ではないか? 使い捨てても同じものがすぐに手に入るのだぞ?」
「武器の熟練度は変わるだろうが。慣れた武器でなければ、威力が落ちる」
「いや、同じ武器であれば熟練度は変わらないと検証結果は出ているはずだぞ*32?」
「……なに?」
「え、そうなの?」
「……そう言われると記憶違いな気がしてきたぞ」
皆で掲示板なりシロエwikiなりを確認して、颯爽と輝く『検証中』の文字を確認する。アタックナイフ、備前長船、プラズマソードなどの検証報告が上げられているが、稀に熟練度による威力向上効果のないものがある。現状よく分かっていないようだった*33。
「仮説であったのかー」
「武器威力の検証は使ってる人のレベルアップもあって難しいからね。アナライズで熟練度はどれくらいかを確認するなんてできないし」
「まぁ、そのうち分かることだな。己はスタイル的に武器はナイフしか使えぬし」
「そうか? 片手をCOMP操作に使うとしても、片手剣くらいなら使えると思うが」
「身長の問題だぞ。己のタッパでは、片手剣の長さでも邪魔になってしまうのだ」
飛んで跳ねて転がって滑ってという戦闘スタイルでは、武器の取り回しの良いものでないと落っことしてしまうのである。昔はリーチが欲しくて槍とか大鎌とか使ってみたこともあるが、重いし長いし邪魔だしで3分でぶん投げたことを覚えている。
大鎌は宴会芸として活躍したのだが、残念ながら前の世界で戦っていた時にトラップの素材として使ってしまったのでもう手元にはない。
体躯の小さい者が大型武器を振り回す姿は映えるというのは全世界共通のお話らしいので大鎌は探してみよう、うん。
そんなこんな雑談をしながら適当に別れ、ナサ殿の車に乗って業魔殿から離れる。
決戦が迫っている割には、ゆるゆるのんびりとした一日だった。
P5T二周目ラスボス前到達したんですが、バトンタッチ10回と20回睡眠付与あたりの実績が面倒になりトロコンは放置中です。稼ぎが面倒になって放置する奴ですねー……
というのは置いておいて、合体回前編です。ムラカミさんをカチコミに誘いつつ合体素材を整えている話でした。
・ジエンくん
AA変更は日焼けに弱いという設定で押し通します。そういうものです。
お菓子作りなどの料理については、レシピ通りにやるくらいならば問題はない程度の腕。目分量でミリ単位を合わせる離れ技をするし、焼く時間なども体内時計で合わせられるので、レシピの記憶違いをしていないならば間違えることはない(1敗
このAAがなぜか特殊タグの中に入らないことが判明した。このAA内部のどの文字が悪さしているのかわからないが、使いやすいAAなだけに若干悲しい。
・トニカクカワイイ由崎夫婦
夫婦の時間が取りたいから大学もキャリアアップもどうしようかな? となっている原作ナサくんに比べて結構活動的になっている。夫婦の時間は大切にしているが、できる範囲で夫婦で世界崩壊に立ち向かうのもやっている感じ。
・ムラカミさん
家がなくなったので業魔殿に数日泊まることにしたダークサマナー。ジエンくんには言っていないが、家がなくなったのはガイア再生機構による襲撃によるもの。正義のダークサマナーなので邪魔なのである。
人質作戦などは未然に防がれたので、エターナル共を普通にぶっ殺してレベルアップし、コウリュウを召喚できるようになった。
その際に色々となくなったので、武器とCOMPを一緒に補える新型武装COMPを装備することにした。整備にとっても苦労しているが、戦力としては上がっている。