姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝 作:気力♪
関城紗和子、という者がいる。
彼女は漂流者であるが、そこそこ平和な世界からこの世界にやってきたようでレベルは低い。ただ、魔界工学を普通に学校で勉強するような世界での優等生であり、かつ生活態度、成績、常識適応と全てに最速合格点を叩き出したことで、Dr.モヒカン先生のツテで紹介された邪教の館でのインターンシップなるお仕事体験を行っている者だ。
己が友人達とのツテを辿った結果知り合った人であり、真面目に学び、技術を高め、自らの手で生きる糧を稼ぎながら合体技術を発展させていこうという気概のある素晴らしいである女性である。
「……ねぇ、やめない? LV70とかの大悪魔の暴走とかは責任取れないわよ?」
「暴走したのなら力で従えるので問題はないとも! スライム化の合体事故が起きたとしても賠償は求めないとも誓約書を書いたはずだぞ? 何を恐れるのだ?」
「普通はビビるわよ! 使ってる合体機器がこんなのよ⁉︎」
そんな彼女は合体に及び腰になっている。その理由として挙げられたのが、悪魔合体機器だ。
紗和子先輩のお世話になっている邪教の館に変な発明家(紗和子殿談)がもってきた、『車載型悪魔合体マシン(試作型)』だ。それが今、聖華学園の第二グラウンド端に止められているのである。半ば押し付けられたもので処理に困った結果、聖華学園まで流れ着いてきたらしい。奇縁であるなー
「しかし、COMPでの悪魔合体のようなものであろう? 高度な計算とて、車ほどの大きさがあれば十分だとは思うのだが」
「COMPでの悪魔合体は悪魔をデータのまま合体させるものじゃない。これ、エーテル体としての悪魔をあのビニールプールみたいな保護殻内に召喚してやるのよ? 合体途中に反逆されたら私は秒で死ぬわ」
へーそうなのかー、と車の周辺に展開された機器を見る。シモン殿のところでも、ロマニ殿の所でも見た透明の円筒型な素材悪魔を召喚するSFでよくあるものがビニールプールのような下の部分と、MAGがマシマシで魔界のものに近くしている空気で膨らまされたビニール部分でできている。ぱっと見は風船みたいだ。
「これが実用化されれば邪教の館を異界前に出張させると言う全サマナーの夢が叶うのであろう? 危険かもしれんが、実験台になる価値はあると己は思っている。それに、紗和子殿は己が守るが故に、危険はないぞ!」
「……軽く言ってくれるわねえもう」
ついでに言えば、周囲に人払いなどはかけていないので、そこそこの人達が「なんだこれ?」と寄ってきている。己1人で厳しかったとしても助けを求められる環境ではあるのだ。グラウンドの見回りしてる警備員の方もいるので、2ターンくらい稼げば増援は来るし、5ターンくらいで佐瀬殿とか法山殿とかの超一流が飛んで来れるのも確認済みであるし。
まぁ、「ジエン君なら多少事故っても人死には出さないでしょ」との妙な方向の信頼から監督の者が間近にいないのはどうかと思うがな! 紗和子殿結構不安がっているぞおのれ。
「じゃあ、合体を始めるわ。……ホント、頼むわよ?」
「任せてくれ! 己は強いのが取り柄である!」
「法則S3を基本にしての精霊合体。夜魔クイーンメイブと妖精エアロスのパラメータ再確認、COMPからのデータと機器からのデータ誤差なし」
紗和子殿が一つ一つの動作を口に出しながら機器の操作をする。丁寧で、良い仕事である。
「サマナー、ひとつ言わせて」
「どうした? クイーンメイブ」
「楽しかったわよ、貴方といた時間は」
「……それは何よりだ!」
「次の私もよろしくね。……まぁ、合体先に思うところが無いわけじゃないけど、そこは大人な私が飲み込むことにするわ」
「そうか? 可愛く、強く、人気な姿であると思ったが」
「色物に進んでなりたいわけないじゃない。次の『造魔使い』とやり合うのが終わったら、さっさと次のランク上げてよね」
そんな会話を切るように、時間がやってきた。クイーンメイブは、より強い悪魔へと生まれ変わったのだった。
「ヒーホー! オイラは夜魔ジャアクフロスト! コンゴトモヨロシクだホー!」
「うむ! 約束により短い間になるかもしれんが、その力に期待しているぞ! よろしくな!」
| LV66 | 夜魔 | ジャアクフロスト |
| 物理に強い(10%) 火炎反射 氷結吸収 破魔無効 呪殺反射 | ||
| ・メディアラハン・吸血*1・マカラカーン*2・マハブフダイン*3・マハムドオン*4・三分の活泉*5・タルカジャ*6・道具の知恵・癒*7 | ||
ムラカミ殿から貰った、三分の活泉と道具の知恵・癒を仕込まれたエアロスが生きる、回復役兼タルカジャ役だ。
クイーンメイブのタルカジャは中々性能が良いやつで、25%ずつ伸びるもの*8だ。最大2倍まで伸ばせる優れものだが、魔法攻撃にはカジャが乗らない*9のは注意が必要だろう。
「……データバックアップ完了。機器点検……外殻破損なし、殻内MAG濃度正常値まであと10秒……正常値。とりあえず、1回目はなんとかなったわ」
「うむ、では次は、コイツの番だ!」
そうして召喚するのは『天女サラスヴァティ』と『龍神イルルヤンカシュ』
サラスヴァティはテトラマカラを覚えつつも、その強みを放り捨てて物理ゴリラな成長をしていた個体だ。現在レベルは50とそれなりだが、その存在としてのレベルは39*10。合体素材としてはレベルが低い。そんな彼女と合体させる龍神イルルヤンカシュはLV47とそこそこであるが、異界で適当に勧誘した時に、以前どこかの悪魔会話の時に己を良いと思っていくれていた個体のようで、消費はマッカのみで仲間にすることができた*11。
そうして生まれるのが、『地母神ダイアナLV41』覚えているスキルは、テトラカーンとマカラカーンのみに絞ることで、継承優先度問題を解決した地母神だ!
「……ねぇ、これ本当に良いの?」
「良いのだ! このダイアナを素材に行う悪魔合体は継承のルールがとても複雑なものになっているからな!」
そうして、地母神ダイアナLV41と外道ドッペルゲンガーLV36を合体させる。
合計レベルは、77!
「この軸のダーク合体*12とは! レベル合計が7の倍数であるときに2ランクのランクアップが発生するのだ! ムラカミ殿の全書にあったダーク合体用にスキルを菩薩掌のみにしたドッペルゲンガーを組み合わせて生まれる悪魔は! 一気に70レベルに到達する!」
「ふふふ、その通りよサマナー。私の存在は強くなった。けれど、私の魂に刻みつけられた技は、たとえ合体で削除されようと消えはしないの」
「……何っ⁉︎」
「私は地母神イシュタル。サマナー、約束するわ。今度の私も、この拳で貴方の道行を支援すると」
なんだかその言葉に違和感を覚えたので、ガントレットをチラリと見る。
イシュタルのスキル欄には、燦然と輝く『弱者必滅拳*13』のスキルがあった。
「……え、紗和子殿? この軸で継承可能なのは魔法だけであるよな?」
「だから聞いたじゃない。大丈夫かって、ダイアナの時点でスキルから『弱者必滅拳』が消えてなかったのよ」
「……まさか! テトラカーンとマカラカーンのどちらかが飛んだりしているのか⁉︎」
「マカラカーンは消えているわね。この軸のスキル継承優先度*14はテトラカーンの方が高いって話だし、そういう事じゃない?」
「安心してサマナー。マカラカーンなら代わりが居るわ」
「……貴様、己の合体プラン確認した上でやったのだな? 問題がないと」
「ええ」
「覚えていろよイシュタル。活躍しなかったら御霊合体で弱者必滅拳をを消すからな?」
「ふふふ……」
| 地母神 | イシュタルLV70 | |
| 打撃75 技87.5 火炎87.5 氷結87.5神経無効 破魔反射50 呪殺反射50 魔力反射50 緊縛87.5 | ||
| ・弱者必滅拳・マハザンダイン*15・マハジオンガ*16・セクシーダンス*17・デカジャ*18・メディアラハン・サマリカーム・テトラカーン*19 | ||
脳筋サラスヴァティが、脳筋イシュタルへと変化した。いや実際イシュタルの力は27/40と中々に高く、弱者必滅拳もバステかかっている相手に対してはかなりのダメージが見込める良い技なので構成としてはありよりのありである。
「……案外、なんとかなるのね」
「このビニールみたいな見た目のもの、合体機器に使えるレベルでとっても頑丈なのではないか?」
「……次よ。大丈夫、機器のダメージはほぼ皆無だし、レベル70っていっても機器で全く抑えられないわけじゃないわ。大丈夫、大丈夫よ」
門外漢の己が何を言っても、紗和子殿の不安は取り除けないようである。
という事で、ささっと済ませるのが吉と見た。
「長らく世話になったな、ファフニール」
「アア! 次ノ、強イオレヲミテイロ!」
「うむ! 期待している!」
別れはあれど、それは決して悔やむべきものではない。明日を生きるための力として、仲魔達は価値を証明し続けてくれるのだから。
精霊ノームと、邪龍ファフニールが合体される。邪龍にノームを加えると2ランクアップするのがこの軸の強さである。また、この軸の悪魔はそれそのものでは6つしかスキルを持つことができないが、己のようなアプリやプログラムでスキル枠を解放するタイプのサマナーであれば、スキル枠を拡張できる*20のだ。これにより、ファフニールの『マカラカーン』は継承される計算だった。
そうして、その計算に計算外のプラスアルファが加わって今、新たなる邪龍が降臨する!
「わらわは邪龍ティアマット。今後ともよろしく頼むぞよ」
「うむよろしく頼むぞティアマット!」
ぞよ? と疑問に思いながらもティアマットのスキルを確認する。
これは来てしまったかもしれない。時代が。
| 邪龍 | ティアマット | LV70 |
| 技75 火炎50 氷結50 電撃50 神経75 破魔37.5 呪殺50 緊縛75 | ||
| ・ジオダイン*21・マハジオダイン*22・セクシーダンス・シバブー*23・薙ぎ払い*24・メディアラハン・マカラカーン*25・三分の活泉 | ||
ただでさえ体力の高いティアマット*26に三分の活泉が乗り、己2〜3人以上の耐久力があるように思える。攻撃はプレロマなしのジオダインと弱めであるが、マカラカーンにメディアラハンとサポートに強いスキルを持っている。そのうえ、本体の特性として通常攻撃の回数が3〜5回と多い上に、力のステータスが31/40と相当に高い。
巡航火力というのだったか? 1発こそないが、継続的に出せる火力を持ちながら回復も支援も行えるという、相当な仲魔だ。
「サマナー、たまには若い女の肉でも食わせてはくれぬか? そこの女など食いでがありそうでなぁ」
「残念ながら紗和子殿は食い物ではないぞ。手頃な死体があれば食わせる事を約束するが」
「わらわは、今食べたいのだが?」
「諦めろ、せっかくの新しい体なのだからまだ死にたくはないだろう?」
「サマナーにわらわが殺せると?」
「逆に聞くが、殺せないとでも?」
緊張が走る。紗和子殿はかなり怯え気味であり、ティアマットはそれを見てケラケラと笑っている。さして食人に興味がないくせに怯えさせるためだけに遊び始めるとはなかなか愉快な奴である。紗和子殿には悪いが、仲魔としては好ましい。従順な犬よりも、反発できる自我がある方が土壇場の動きは良いのだから。
「しっかし、一瞬たりとも怯えぬとは、邪龍ティアマットも堕ちたものよのぉ」
「心ではそれなりに怯えてはいたぞ? 怯えで体が鈍らないようにするコツがあるのだ」
「修羅の業を当然のように使うとは、ファフニールの記憶で知ってはいたが誠に珍妙なサマナーよ。わらわの主人として不足はないな」
「うむ!」
「此度はそちらの娘の怯えを見れただけで満足するとしよう」
そう言って、ティアマットはガントレットの中に帰還していく。
じゃあくフロスト、イシュタル、ティアマットとなかなか愉快な仲魔が出来上がった。
若干の問題としてはメインアタッカーがマハーマユリ以外居ないことであるが、今の己達の一党は割と火力偏重な所もあるので気にしない事にする。己単独になった場合は耐久で消耗戦仕掛けるか、無難に逃げるかだな。
「……意外となんとかなったわね」
「合体した後の悪魔が契約の縛り以外ないというのが若干の怖いところではあるな。ティアマットのアレもそうだが、サマナー側が悪魔をけしかけて代金を踏み倒そうとしかねん」
「……そうね。合体事故で生まれた制御可能レベル以上の悪魔とかは、普通に暴れそうだわ。改善点としてレポートまとめなきゃ」
「おっと、すまぬ。御霊を作りたいのでもう少し合体を頼む」
「……まぁ、御霊くらいなら良いか。どこのどの御霊?」
「シルフとアーシーズで作れるタイプのクシミタマを頼むぞ。合体事故のカバー用に幾らか手元にいた材料なのだが、肉壁にできるほどの耐久力もないからな。ひとまず補助に使いたい」
「はいはい……スキル継承に変なの入ってないわよね?」
「合体先のマハーマユリの方には深層スキルがあるな。ダメだったか?」
「そっちなら大丈夫よ。存在に深く結びついたスキルとかを持っている悪魔を使うと、合体事故が起きやすいのよ。合体の規格が噛み合わず、力が一つに収束しなかった結果としてのスライム化のやつね」
頼りになる悪魔に深層悪魔のつよつよスキルを他の悪魔に継承させようぜ! という試みは度々掲示板などにて発見される。成功報告がないので、結果はお察しという奴だ。
その数多くある失敗のうちの一つが、紗和子殿の言ったスライム化なのだろう。
ただ、御霊を受け取る側が深層スキル持ちでの合体事故は起こったことがないそうなので安心ではある。
という事で御霊を作ってもらい、ついでにマハーマユリの合体も行った。
その結果が、これだ。
| 魔神 | マハーマユリ | LV70(67+3) |
| 火炎耐性 電撃弱点→無効 衝撃反射 破魔耐性 | ||
| ・衝撃ギガプレロマ*27・衝撃ハイブースタ*28・孔雀明王*29・慈愛の旋風*30・ラスタキャンディ*31・強壮の権化*32・威圧の構え*33・電撃無効 | ||
要は、基礎ステータス補強しつつ電撃無効をつけ、ついでに己の世界仕様の衝撃ギガプレロマを仕込んだ形である。
「ククク、良き力です」
「ギガプレロマを御霊にするためにわざわざ精霊シルフを経由させたのだ。きちんと働けよ?」
「もちろんですとも。もっとも、先ほど合体で作られた穢らわしい邪龍が邪魔をした場合は、その限りではありませんが」
魔神のLight-Neutralのスタンスと、邪龍のDark-Chaosのスタンスはそこそこに合わない。この分だとソロネも似た感じの印象を持っているだろう。
ソロネはもうすぐハイ・レベルアップで『天使ケルプ』になる予定なので、その辺りで関係性のリセットのついでに仲魔の調教もしておこう。鉄火場にてどう動くかの訓練をしておくと、「こいつ嫌いだから死ね!」よりも訓練で叩き込んだ動きの方が優先されるので、あとはガントレットの拘束力で行動の精度を上げれば良い。ゼロから命令するよりもかなり早い、制御の小技である。
まぁそれよりも手っ取り早いのは仲違いなんかしてられる状況じゃない地獄に放り込む事なのだけれど。こればっかりは相手の編成次第なので細かいことは考えられぬ。
「なぁ関城、俺も合体お願いしたいんだけど、大丈夫か?」
そんなことを考えていたら、外野で『己が関わってるから爆発オチになるだろうなー』などとぼやいていた外野の内から紗和子殿に声をかけてくるものが現れる。爆発オチになったのは映像研にてジャンクから作ったカメラの中にグレムリンがいた時くらいなのに、失礼な話である。
それはそれとして、こうして新たに合体を求める者がやって来るのは己の手持ちの情報はどうせ抜かれるだろうからとフルオープンで客寄せをした結果だろう。『関城紗和子殿は70レベル帯の悪魔合体を安定して行うことができる人物である』という印象が生まれたようである。
そして、現在聖華学園のメイン合体施設である化学室はギッチギチであり、行列にすれば三日分くらいの人数の予約が入っている。また、合体をするために授業をサボるといった悪逆極まる行いをする者達がいたり、先んじて予約していた者が何故か大量のマッカを得て、別の者が合体をしていたりする。
そういった違法行為脱法行為は見つけ次第晒し上げられ生徒指導室送りとなる末法の場所、それが今の化学室なのだ。だからこそ、化学室以外の場所で合体ができるという事は、ぶるーおーしゃんだったか? 誰もやってない未開拓販路なのだ。
この発明をした方の想定通りかは知らないが、車載型悪魔合体マシンを学園のグラウンドに置いた者の狙いはそれであるだろう。強かな人だ。
学生であるが知識の量や作業の正確性ならば他の合体師にも引けを取らない紗和子殿にこのマシンを任せたことも含めて。
「む、校舎の方から人の流れが生まれてきているな。紗和子殿、満員御礼であるぞ!」
「……ちょっと洒落にならなくない? 私あんな量捌けないわよ?」
「なに、なんとかなるとも! 皆への説明は任せてくれ! 手持ちが知れる事や、新型マシンであるリスクを説明すれば人は減るとも!」
そんなこんなでライン引きを使って列を作り、列の途中にライン引きでQRコードを複数書いて、己のG⚪︎⚪︎gleドキュメントに作った説明文へのリンクを載せる
あとは、流れでなんとかなるだろう。
「え、ライン引きでQRコード手書きするとか気持ち悪いんだけど」
「そこは素直に褒めてくれぬか? 頑張ったのだぞ?」
尚、最初に並んだ者達の列の半分くらいが終わった所で車載型合体機がぷすぷすと異音を発し出したので合体は中止となった。
マシンの利用料金として使用分のMAGを頂いていたが、それが黒字にならないギリギリの所で終わってしまったので『この合体マシンの使用の際のガソリン、マッカ、MAGは全て己が負担する』という契約を黒字で踏み倒すという若干の野望は露と消えたのだった。
おのれ、車載型のくせに複雑な作りにしやがった発明家殿め……己で直せる程度の簡単な作りであれば黒字で終われたと言うのに……ッ!
最終下校時刻が近くなり、マシンの故障箇所の割り出したり、写真を撮ったりなどの作業を終わらせて車の中にマシンを詰め込んでいく。
紗和子殿の指示の元であるが、複雑めな作業を全てやり切った己は結構な達成感の中だ。
「……びっくりするくらい上手くいったわね」
「己としてはもう少し頑張って欲しくはあったが、まぁ安全第一であるな」
紗和子殿が心配していたビニールみたいな保護殻は、暴れ出した『妖獣ガルム』の爪牙で傷一つない凄まじさであった。
頑丈さだけなら高レベル帯の防具にも引けを取らないだろう。というか案外防具のリサイクル品なのでは? と思わなくもない。このマシンところどころにジャンク品使っているっぽいので、金のある発明家には思えないし。
「……で、その……あっちの報酬の方は、分かってるわよね?」
「うむ! 紗和子殿の親友とこの世界で仲良くなる手助けをすれば良いのだな!」
「違うわよ! ……平和な世界で普通に生きているならそれでいいのよ。私みたいなのが今の緒方理珠に近づいていい理由にはならないわ」
「私は、緒方理珠を見捨てて生き延びた外道なのよ?」
「その辺りは己は知らぬよ。紗和子殿が親友殿に命を救われたという事実と、もしもう一度出会えるならばまた仲良くなりたいという願いは聞いているがな」
「それは……私に都合が良すぎでしょ、その解釈」
「そんな紗和子殿の細かい事情など己が知る所ではないぞ! 後で後悔するのが見えている妥協などゴミ同然なのだから、最上の結果以外をを狙ってどうするのだ!」
「……面倒な子ね。けど……」
「その、お礼は言ってあげるわ。ありがと」
色々複雑ではあるようだが、己が紗和子殿を慮ってやった行動だと思われてしまったらしい。己が気持ちよく生きるためのことであるから、紗和子殿のためでは全くないので少し訂正しておこう。
「既に対価は貰っている。 デビルサマナーとして契約を守るのだぞ。 己のやり方でな」
「……え、嘘。今ので照れたの?」」
「……照れてはいないぞ?」
「結構ガッツリ照れてるわねー……そういう所年相応なんだから」
「だから照れてはいないぞ?」
「はいはい」
照れてはないぞ?ホントだぞ?
そんなこんながあった後、己は生徒指導室に来ていた。今回は珍しく反省文の缶詰でも問題行動への説教でも友人の処分への抗議でも誰かの悪行への証言でもなく、待ち合わせである。あれ?来る理由多くないか?
「や、待たせたね」
「うむ。今回はよろしく頼むぞ佐瀬殿」
「それにしても、僕に話通してくるのは結構意外だったかな? 事後承諾とか報告書に書かないとかそういう狡い手を使うと思ってたから」
「まぁ、突発的に危険地帯に行く場合ならそうしたのだけれどもな」
「その殊勝な態度は奥多摩のアレとか本気で問題になりかけたからかな? 保護者に感謝しなよ本当」
「もみ消す側に回った教員達も、擁護する側に回った教員達も皆己や己を見て動く生徒達を思っての事だと理解しているぞ」
「なら家で黙って寝てなって……もっとも、それができるような人間ならとうに死んでいるだろうがな」
あ、ちょうど最終下校時刻が過ぎたので佐瀬殿の仕事モードが切れたぞ。今日は定時がこの時間であるらしい。
佐瀬殿は己の入学試験の頃からの付き合いのデモニカ剣客居合い使いである。警備員兼教員というなかなか珍しい仕事のしかたをしているが故に、戦場で『使える』と断じられている己にそこそこ便宜を図ってくれていたりする悪い大人である。
最近はもっぱら教師としての仕事が多いようで、デモニカを着ているのは地味に久しぶりだった。
今回のカチコミに誘ったら二つ返事でついてきて、ついでに己が明らかに対人戦することの監督役としての役割まで受けもってくれることになった。
曰く「実際に外出して色々経験させた見せたほうが楽そうな連中に体罰できなくてフラストレーション溜まってるんだよねー」と。その者達が誰かはあんまり知らないのだけれど、仮にも生徒である己に言うことではないと思うぞ?
まぁ、気安く思われているのは己的には良いと思う。敬うとか丁寧に扱うと言うのは人間関係には良いのだが、戦う際に隙になる。生まれる隙など瞬き以下のものでしかないのだが、そういうのが積み重なって死ぬハンターもそれなりにいた。
己が単に気安いのが好きというのはもちろんあるのだが、それはそれとして気安いのは良いのだよ。
「して、何故に生徒指導室に呼んだのだ?」
「お前を呼ぶのにはあそこが自然だろうが。敵の所属がわからん以上、目は何処にでもあると思っているべきだ」
「聖華学園でも、間者の類は紛れられるのか?」
「お前が来る前に起きた『学園受胎』。あれの最中に警備員に扮した悪魔が暗躍していたと言う記録がある。それ以外にも、それなりにな」
「なるほど……」
「というか、お前が分かってない訳はないだろうが。今日の公開合体では既知の札と見せ札だけを出して、生徒指導室で追加の合体を行なっていたお前にはな」
「手癖な故に深く考えていた訳ではない。して、何故にそれを知っているのだ?」
「デモニカを通して監視カメラで見させてもらっただけだ。安心しろ、きちんと手元は隠されていて合体内容は見えていない」
正直なところ、今回の合体で作ったジャアクフロストもイシュタルもティアマットも、弱点がないこと以外にさしたる強みはない。レベルが高く、回復ができる程度だ。マハーマユリに関してはレイドで一番槍として戦った際に使っていた手札であるので隠す意味はあんまりないというのもある。
己の持ってるハメ技はペルセポネーの『悪化』絡みのコンボであり、『ザクロの制約*34である。なので、極論ペルセポネーさえ隠せていれば良いのだった。むしろセクシーダンスが2体にあるから魅了を軸にしてくる可能性を見せられるので、見せたことが得になる可能性すらある。
無論これは、己がこの世界にやってきてから新たなハメ技新たな殺法をあまり身につけられていないということであり、あまり良い傾向ではないのだけれども。まぁ、仲魔とは縁でできるものであるからなー。
カタログスペックで欲しい! となった仲魔がポンと手元にやってくることなどありはしないので、あるものでなんとかするしかないのである。
そんな事を考えながら歩いていると、駐車場へと辿り着く。ここの職員や警備員達が思い思いに車をカスタマイズしているので、同じ車は一台となく見ていてなかなか面白い。
あいにくと己は車について詳しくはないが、自動車同好会というサークルではどの職員がどの車に乗っているのか? というのが記された裏リストがあるとのウワサだ。「この先生はハンドリング重視のカスタマイズだ!」とか「この先生は最高速度に狂ってるぜ!」とか「この先生の車明らかに人を轢いた後があるんだけど!」とか言っている自動車同好会はとても楽しかったのは覚えている。仮入部だけで本入部はしなかったのだがな。
そして、佐瀬殿の車は珍しい部類のものだと聞いたことがある。ト⚪︎タのiQという車種がベースだそうで、なんか他の車と比較すると半分くらいの大きさに見える小さい車である。見た目が可愛くて良いと思うぞ。まぁ乗ってみたらそこそこ狭かったのだけれども。
「佐瀬殿、デモニカ着ながら運転は邪魔ではないか?」
「最近デビルバスターが襲撃される事件が多い、雑魚狩り用の装備にしていなければ、いざという時面倒だ」
「む? デモニカは雑魚狩り用なのか?」
「耐性や防御力にこそ優れるが、土壇場の技の冴えには限界がある。だからこその部分展開とアーマーパージ機構を積んだのだがな」
「あー……」
訓練でたまに見るデモニカの部分展開は、見た目が格好いいという理由だけではなかったのだなー。アーマーパージの方は見た事がないが、そっちもそっちで格好いいのだろう。うん。
「で、俺の他に誘ったのはどんな連中だ? お前の事だ、真っ当な奴ではないのは分かるが」
「技研でゴドー殿に雇われたブレイド殿とツギハギ殿の2人は別にすると、ダークサマナーをやっているムラカミ殿、アプリ使いで元カジュアルのカグラギ殿とその仲間たち、奥多摩アビスで一緒になっていた
「……多くないか?」
「加えて、敵異界を囲んでから掲示板やSNSでカチコミの報告をする予定だから、流れに乗って来る者や、
なにせ、戦いの理由が売られたケンカを買いに行くという正義もへったくれもないものである。己の知り合いで時間があるものがやってくるとか、その程度であろう。
「……お前というか、お前にその生き方を教えた者は、対した奴だな」
「?」
「声をかけた程度でそうそう人が集まるものか」
「そうか?」
「そうだ」
「人を動かすのは結局のところ信頼だ。お前の生き方が紡いだ繋がりは、信頼できると思える程度にはマシなのだと胸を張れ」
「……つまり、パイセンはすごいという事だな!」
「……それで構わん。だが、それを口にはするなよ?」
「何故だ?」
「お前が自身を低く見ているように見られかねん。お前が自身を普通に、他者を高く評価しているだけというのにな」
「あ、それ元の世界でも先輩方に言われた事があるぞ。自分をゴミのように思うのは良いが、戦力計算はちゃんとしろとな。己割と自分のこと大好きなので、的外れ過ぎて混乱したぞ」
なんでも、戦場しか知らない子供で、パイセンの骸を悪魔に使い、常時戦い続けている戦士が自分を労わらず他人ばかりを褒めているとそう見られてしまうらしい。
そんな断片的な情報だけで人間を測ることなど出来はしないだろうに妙な話である。類型と一言にいっても色々あるだろうに。
断片だけで語るなら、ブレイド殿とか故郷で一軍の指揮官であり邪悪に走るマザーをぶった斬ろうとした正義の反逆者であるぞ? 中身は己とどっこいの知識とコハク殿への愛で溢れた若干面白めなお姉さんであるのに。
あれ、これも断片によるレッテル貼りによって人間を測るやつであるな。難しい。
「まぁいい、そろそろ着くぞ。準備をしろ」
「すいすいと抜けるものだから、こんなパワーのなさそうな車であるのに早く着くのだな」
「日本の道路は狭い。優先するべきは取り回しの良さだ」
「へー」
佐瀬殿の運転はリオの運転と異なりかなり丁寧であった。相当に注意をしていなければ曲がったりすれ違ったりの際にぶつけると考えているからであろう。邪推であるが、佐瀬殿運転にあんまり自信ないと見たぞ。
そうして、集合時間ギリギリに異界への侵入をする。すると、たまたま時間が重なって
奥多摩アビスで大変やらかして現在漫画好き殿に多額の借金を抱えている
システィナ殿の作った会社の職員という形でまとまっている彼らは、聖華学園の生徒であったグラツィエ殿をインターンシップとして引き抜いて
「やぁジエン。元気そうだね」
「うむ!
「メダマノオヤジだったっけ? 大量の造魔制御システムは僕らにとっても利益になる。構わないさ」
「して、いくらかのびのびしているように見えるのは、成功したからか?」
「ああ。佐賀県で見つけた
「正面から礼を言われると、照れてしまうな」
「存分に照れてくれ、褒めているんだからね」
「
加えて今は、短期間で装備を整えたゴドー殿のチームの生き残りであるオオノ殿がムラカミ殿とコンビを組んで斥候をしてくれている。
とはいえ事前調査であらかた分かっているので、最終確認のようなものであるけれど。
と、そんな時だった。今回の作戦用の通信チャンネルにリオの音声が入ったのは。
「はい、傾聴。技研の琴葉リオです。私たちに喧嘩を売って来た造魔使いをぶちのめすカチコミ作戦ですが、敵側の情報収集能力の高さからいって備えられてはいるものと考えて下さい」
「なので、真正面から食い破ります。敵の狙いは私の身柄なので、正面からやり合いたい人は私の側に、そうでないなら、自由にどうぞ」
「脳筋か?」とぼやくサーペンタイン殿。嫌そうな顔しているが否定しないあたり、脳筋作戦の自覚はあるらしい。
まぁ、本命の作戦は己達下っ端には通達せずにやるという通達はあったのだけれどそれはそれである。表の作戦で仕留められるのが一番なのは変わらないのだし。
「じゃ、カチコミ開始で」
「いょし! 暴れるぞぉ!」
前半は変なマシンを使っての合体パートでした。関城紗和子ちゃんは『僕たちは勉強ができない』での白衣少女です。ちょっぴりドリフ設定を入れて学園都市のように魔界工学を普通に学んでる世界出身にする事で合体師にしてみました。
70レベル帯の悪魔合体をやれているのは技術ヤバすぎないか? というのはありますが、そこは車載型の性能ということでどうか。
後半はゆるっと戦場に入る奴です。カチコミメイン組から離れて準備する関係でジエンくんは特に詳細を知らされない形での参戦とのりました。準備不足、調査不足な気配のある襲撃ですが、技研側としては防衛側で戦ったら10割負けるので突っ込むしかないんですねー。
・ジエンくん
ジャンプの某暗号漫画でQRコードが手書きできると知った結果生まれた一発芸がライン引きQRコード作成。ジエンくんは技のステータスが準特化クラスなので、スタープラチナクラスの精密動作性を持っています。ただ、オタクくんサマナー世界は岸辺露伴がピンクダークの少年を描いてる世界なので『スタープラチナ級の精密動作性能だぁ!』って言わせられないのでここで供養。
・佐瀬甚介先生
影が薄い感じになっている、ジエンくんの入試を担当して以来の担当先生。ひとでなし係数が高いのでジエンくんについての評価は正確な方。裏13生徒会のやんちゃっぷりが、社会なんて関係ないぜー! というノリで生きてて山爺との楽しい殺し合いを逃した黒歴史を刺激されるのでとてもお辛い。なのでストレス発散に戦いにやってきた。
・関城紗和子ちゃん
緒方理珠が幸せだったのなら、この平和な世界で会うつもりはなかった。シェルターに押し込まれた際に、運動などからっきしだった彼女の献身により1人生き延びてしまった命なのだから……
とかいう真っ当なトラウマ系漂流者の流れから秒で蹴っ飛ばされた系の女子。Dr.モヒカンといい邪教の館の人といいジエンくんといい、ちゃんと良い子な関城さんなので良い流れの中にいれる。