姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝 作:気力♪
眼前のシャドウ融合体ゴジョウオン。奴は糞の塊だ。これを作った存在の正気を疑うレベルの害悪である。
強くはない。コイツのやっている事は毎ターン開始時に『アンティクトン*1』のハズレの方*2を放って、エナジードレイン*3を使って、
思考回路はセイテンタイセイ達西遊記チームだった頃とは比べものにならないほど固く、今までこのルーチンから外れたのは初手くらい。『パニックボイス*4』なんてデレッデレのデレ行動であったが、マハーマユリがバステ無効アンド回復*5ができると確認してから一発も撃たなくなった。
「だからといって防御はないだろう、防御はぁ!」
「クリティカルも通らん。地道に削るほかあるまい」
尚、負ける要素がなくなったのでカグラギ殿達は離脱させ探索に向かわせている。現在己達は全能力永続カジャが四段階積み終わっており、敵は全能力弱体四段階入っている。メダマノオヤジとかの奇襲でデカジャデクンダがあれば危険そうにみえるが、そもそもの話としてコイツのアンティクトンは能力強化を受けていなくても耐えられる。
連射ができるのを隠している可能性はあるのだが、むしろこちらとしては連写してくれるのを待ってさえしているので問題はない。
現在こちらのMPはからっけつ。前衛にはひたすらガードをさせて全体攻撃の壁にしつつ、
エナジードレインで吸収できるMPはないので、アンティクトンのMP消費を考えればきっともうすぐガス欠をしてくれるだろう。
もう、
「ガード状態の相手に対して特攻になる技があると噂で聞いた*6が、こういうクズを仕留めるための技なのだろうな」
「佐瀬殿はあまり前に出てくれるなよ。己達で庇っているのだから*7」
「当たり前だ。貴様もなるべく後衛狙い攻撃は躱せ。HP回復も馬鹿にならん」
そんな事を言われるが、前衛の立ち回りの制御に集中しているのでそう容易く躱せるものではない。仲魔たちのフラストレーションが溜まりに溜まっているので、結構気を使うのだ。マハーマユリはロウ属性なので、表面上はそこそこ従うが内心バチバチにキレているのを感じている。
不満を言いまくるのはニュートラルやカオス属性だが、最初に爆発するのはロウ属性になるというのは経験則だ。気をつけてやる必要がある。
現在前衛にはマハーマユリ、ゴグマゴグとマスターテリオンの3体。バステ防御用のマハーマユリと、合体で強化できなかった若干能力足りないコンビである。いや、どっちの能力も敵には通じるから問題はないのだけれど、それはそれとして強化したいがリソースが足りなかったという話だ。おのれ貧乏……
ガード状態のゴジョウオンがいつも通り『アンティクトン』の構えをとる。しかし、発動はしなかった。次にエナジードレインを発動しようとする。しかし、それも発動しなかった。
そして、最後の手番。奴は──あろうことか──アイテムを使用した。アイテムを使えるのならどう考えてもデカジャの石なりデクンダの石なりを使われるので、無意識のうちに可能性から排除していたクソ行動だった。
| チャクラポット | 消費アイテム | 味方単体のMPを全回復する |
「あ゛ぁあああああああ!」
「……ソーマでないだけマシか?」
強くはない、強くはないがひたすらクソだぞこのデカブツ!
キチゲ解放? なる儀式を行なってみたくなる程度にはクソゲーである。
とはいえ、仕留められない訳ではない。エナジードレイン相手に馬鹿正直に戦うのはMP回復アイテムが馬鹿みたいに掛かるから
あるのだが、これはお行儀の良いコロシアムでのお遊戯ではなく、横槍不意打ちなんでもござれの実戦なのだ。そんな長時間戦って邪魔されない訳はない。
カグラギ殿らに先に行かせたのは、一応横槍を防いで欲しいからだった。が、定期通信の声の感覚からして何か見つけているようで、そちらにかまけて横槍を通す可能性はめちゃくちゃにある。
「というか、メダマノオヤジは何故にこの戦闘の横槍に来ないのだ?」
「……来れない理由があるのか?」
「かもしれぬな。思えば、初めにセイテンタイセイらと戦った時もメダマノオヤジは見ていない。奴の性格とメダマノオヤジの性質からして、2匹くらいは付けていてもおかしくはなかったろうに」
「どのみち時間はかかる。試すか」
「マハーマユリ、ゴグマゴグ、マスターテリオン、押し込んでメダマノオヤジを戦場に巻き込むぞ。反応を見たい」
ガード状態の仲魔の立ち位置を数ターンかけて動かしていく。
ノックバックが効かない大型ボスなので押し込むには苦労したが、『アンティクトン』、『エナジードレイン』ともに射程ギリギリで放つルーチンであるから、押し込むこと自体はできた。
そうして、メダマノオヤジが居たと確認できていた茂みのあたりに押し込む。
『デカジャ』、『デクンダ』、『静寂の祈り』、あるいはバフデバフを反転させるという『天命の反転*10』が飛んでくるか? と思ったが、なんと、メダマノオヤジは消えていた。
「カグラギが仕留めていたか?」
「警戒は続けるが、メダマノオヤジへの注意は少し下げても良さそうだな。制御プログラムの干渉があるとかゴジョウオンの邪気などがメダマノオヤジに悪い、とかにしておくぞ」
「根拠のない仮定を信じれば痛い目を見るものだが……まぁ、今はいいか」
そうして、ゴジョウオンを動かしながら戦い続けていると、ふいにゴジョウオンが姿勢を崩しかけたのが見える。
どうにも、場所を動かした過程で川に身体の一部が当たってしまったようだ。……いや、川の水がゴジョウオンを取り込もうと動いたのか?
川に波が起こり飛沫が上がるのは普通のことだ。しかし、それが全て『ゴジョウオン』の方に飛んでいたのならば話は変わる。
「ワンチャン強化される気はしないでもないが……」
「落としてみるか」
「うむ、やろうか」
そういう事で、己の『メディアラハン』で全員が回復しているターンにて、『ATTACK』にて川に突き落とそうとしてみる。
すると、2度目の攻撃でバランスを崩して水落ちした。水に浸かったゴジョウオンの肉体は恐ろしい勢いで溶けていき、大きなダメージを受けたようだ。
それによりかなり大きさは小さくなってしまったようだが、今までの黒いスライムがぐちゃぐちゃに積み重なっていたシャドウ集合体という見た目から、ゴジョウオンという個体になったように見える。黒いスライムのような肉体は変わらないが、人型を形作るようになっている筋肉が見えるようになった。
余分が水に溶けて、ダイエットに成功したのだろうか?
「……クソが、クソが、クソが! お師匠様が、沙悟浄が! 猪八戒が! リュウメが! 水に食われやがった!」
「お、セイテンタイセイであるな」
「一か八かの合体で悪い方になっていたらしいな。これはダメージで削った方が良かったか?」
「ダメージでも合体の結合が解けたのでは? なんにせよ、騙しが通じるようになったのなら楽でいい。ルーチンワークにも飽きていた頃だ」
ゴジョウオンの残り体力は4割程。水落ちしてHPが半分くらい消し飛んだらしい。やっぱり危険だなあの水は。
「所で気になっているのだが、あの水は何故に心を食らうのだ?」
「あ? ……確か、普遍的無意識、心の海に繋がってる水から色々抜いてるかららしいぜ。それを補うために色々な要素を取り込もうとしてるって話だ」
「……塩水から塩を取ったから砂糖を溶かせるようになった、みたいな話か?」
「俺が知るかよ。……つーか、何普通に答えてんだ俺は。サマナーと勘違いしたか?」
「己がアレと似てるとか生まれてきてトップ3くらいにムカつく罵倒であるな。喧嘩なら言い値で買うぞ。売られなくてもやるが」
『.50マグナム*11』を構え、ゴジョウオンに割と本気の怒りを向ける。
まぁ、罵倒の質としては高い方ではあるけれど、罵倒の本質は誰にどんな状況でどんな思いを告げられたか、なのでムカつき具合は普通くらいだ。うん、キレてはいないぞ。殺すが。
| 葦名十文字 | 物理スキル | 敵単体に物理属性大ダメージ2回。ペルソナシリーズ十文字切りより派生 |
「チィッ⁉︎」
「話で隙を作れるのは楽でいいな、防御が解けている」
「……それなら、アレとかいけそうであるな」
己がマハーマユリに『チャクラポット』を与え、次のターンからスキルを使えるようにする。エナドレ一発で吸われるMPは中威力程度、全回復すれば余裕で残る。
敵の手番が始まる。行う行動はいつも通り『アンティクトン』から。薄々勘付いてはいたが、まともな攻撃スキルは『アンティクトン』しかないらしい。強い方ならそれで良いとは思うが、弱い方だと悲しみ溢れる戦法だ。
「貴様らの強さは小技の多さと鋭さだというのに、無様な事だな」
「ウルセェ! このパワーを受けてみろ!」
続いての攻撃は、またしても『アンティクトン』。と、ここでまさかのゴグマゴグが回避を成功させる。前衛に出ている連中はアンティクトン二発を受けても余裕で耐えられる体力があるので命拾いとかは別にないのだが、攻撃面では超絶なるファインプレーだ。
「『慈愛の旋風*12』!」
マハーマユリが貫通衝撃魔法で一発当てる。%耐性はなく、ダメージは素通し。回復があるが、どうせメディアラハンしないと体力足りないので計算は不要。
マスターテリオンが『パス』して行動を回し、ゴグマゴグが『ATTACK』を叩き込む。
先程の回避によりゴグマゴグの魂は高揚し、『ニヤリ状態*13』であるので、攻撃は必中クリティカルだ。まぁ、MPないので攻撃スキルがMP発動のゴグマゴグはただ殴るしかないのだけれど。
そして、再びのマハーマユリの手番。『威圧の構え*14』にて敵を牽制する。先の『慈愛の旋風』のダメージはそれなりのものなので、警戒もひとしおだろう。
最後に残ったマスターテリオンが適当に『ATTACK』して前衛のターンが終わり、後衛の己が『メディアラハン』で全員を回復、佐瀬殿が隠れて『チャージ』をしてターンが回る。
「くたばれよ、塵どもが! 『アンティクトン』二連打ァ!」
「間抜けか?」
「どうやら知性も水に流してしまったらしい。楽でいいな」
敵は、おそらく敵の情報をしっかりと与えられているのだろう。
その計算は正しいが、
「前衛は旋風と構えのローテ、MP回復はマハーマユリのみで良い」
「ダメージを稼ぐために、俺も前に出るか?」
「回避され勢いが削がれる方が問題だ。それでニヤリでもされたら目も当てられん。後衛からのヒットアンドアウェイに徹してくれ」
「心得た」
腐っても万能特大威力、弱体込みでも2連射耐えるかはなかなかに怪しいダメージ量だ。それなのに耐えられるのは、学園での合体で
ウィスパーイベントが起きた後ならスキルを持たせておく必要はないのだ。
「さて、慈愛の旋風外した時用に、もう一体出しておくか。マハーマユリ先頭なら、3パスで半手残る*15からな」
敵の残り体力はそれなりにあるが、ガード耐久ゲーを仕掛けて来ないので余裕で仕留められる。
今のダメージ量から考えて、あと5分はかからないだろう。
水の中で感じる神聖で吐き気がする気配を辿りながら、水により削られる痛みを耐える。
忌々しいことに『コアシールド』でこのダメージゾーンは防ぐことができず、そこそこ進んだ今では『メディアラハン』の3回目が必要になるほどのダメージ量となっている。
──COMP内で召喚せずに仲魔のスキルを使えるのはなかなかの機能だ。新調した甲斐がある*16。
でなければ、魔法を発動する前に溶けて爛れて死んでいただろう。
「だが、ペルソナ使いならば耐えられる」
「耐えられるというより、餌を与えているというのが正しいな」
オオノの言葉を少し考えて、それもそうだと納得する。
この水は、見た目こそ普通の水に見えるが、内包する情報量がまるでまったく足りていない。その足りない情報はシャドウを生み出すような『心の闇』であったり、優しさや勇気といった『心の力』と呼称されやすいものであるのだろう。
肉体を溶かすのは心の力を引き出すための副次効果。だからこそ、ペルソナを身体の外殻として発動していれば、ペルソナの力しか貪らない無害な水だ。現に、オオノは水で受けるダメージを全て
こうして泳ぐたびに死にかけているのは、俺が真っ当なペルソナ使いでないからだろう。イデアオーブにより植え付けられた、中立を保ち人類の未来のために戦い死ぬことを強要する『マッハ』の皮を被ったナニカの思想。
本音を言えば気に食わないが、今の所俺と“思想”は同じ方向を見れている。問題なく利用できるモノだ。
──遠くない未来、このペルソナが俺に牙を剥くことは理解している。それでも力を得るためにコイツを受け入れたことを、間違いだとは思わない。マッハの力が無ければ間違いなく死ぬような戦いしかなく、その戦いに負けて踏み躙られるのは未来のある命達なのだから。
「ムラカミ、見ろ」
「海底に、フロア移動のワープポイント?」
ペルソナを使い、水中で会話をする。
3つほどの流れが合流するポイントにて、ワープボイントを発見した。聖なる気配はそちらの方に続いているが、地上にて見た間欠泉とは異なりかなりガタついている。
突貫工事というか、ジャンクで作られた有り合わせの門という印象だ。
「飛ぶぞ」
オオノとタイミングをずらし、ワープポイントを使用する。
抜けた先は牢獄のようなエリア。檻があり、多数のカメラにて監視されている修道服の女がいた。
ワープ先は牢獄エリアの角にできていた水場だ。糞尿を放り捨てるために使われるものだろう。水底まで鉄柵が降りているが、檻の中から水場に通じるような穴が空いている。
考えてみれば、この異界にてアライメントLAWの気配を漂わせるなど、囚われたゴドーの仲間しかない。囚われの身から干渉できる地点にしか飛べないのは当然のことだった。
「チッ」
即座に切り替え、水中から魔法を放ち監視装置の類を破壊する。即座にセキュリティが反応し、敵が召喚される様子はない。
「そこの、生きているな?」
「はい……あなたは?」
「逃げのびたオオノの連れだ。水中にある妙なワープポイントに入り、ここに来た」
「……ありがとうございます。私はルセア、神官をしています」
そのタイミングで、オオノが転移してくる。
「おお! ルセアか!」
「はい、無事で何よりですオオノさん」
「再会の挨拶など後にしろ。貴様、この異界に何を仕込んだ?」
「この廃棄水の流れの中に、私の信仰から生まれるMAGを用いて流れを作りました。僅かな道ですが、彼と同じように龍脈の流れに乗っての転移が可能です」
「……水中であれば、監視も薄いという話か」
「して、そんなことをしていたのに何故に逃げ出していない?」
「……ベルドルベルが、敵の洗脳に乗りました。彼を解放する手段を探しています」
COMP内のデータを確認する。フジワラのデータ共有によると、そのベルドルベルとやらはもう既に倒されているらしい。
「無用な真似だったな。そいつはもう琴葉が倒した」
「……なんと」
「理由がないならさっさと逃げるぞ。俺たちは敵に死んだと思われている。長居はできん」
一瞬迷いを見せたルセアとやらは、即座に切り替えて脱出を決めたようだ。
「……私が開く事のできる道は2本あります。貴方がたがやってきた浅層への道と、より深く、より奥に繋がる深層への道が。どちらに?」
「決まりきった事を聞くな。深層だ」
「我らの目的は本体の暗殺だ! ルセアはレベルの下がった身で辛いだろうが、付いてきてくれ。1人で浅層に向かうよりは死なんだろう」
「はい。貴方がたを信じます」
そう言ったルセアとやらは、ペルソナによく似ているが、しかしどこか異なる奇妙な戦士の像を発現させ、檻を破魔の斬撃でぶち抜いた。
「……弱体しているのか?」
「私自身は。ただ私に憑いている『レイヴァン』は傷を負ってはいません。彼に合わせれば力は問題なく」
「おおよそ守護霊使いに似たようなものだと考えれば良いさ」
そうして、眼前のルセアの姿は変わる。修道服の姿から、神官戦士のコスプレのような装いに。
「私は神官としての私と
「なるほど、アイテム係くらいはできそうだな」
「はい」
ルセアの作った道を通り、転移というには些か身体機能に頼りすぎな水路を渡って先に行く。
瞬間移動するような転移ではなく、この水の中で所在地を見失い、そのまま進むと別の場所に出るような、神隠しに似た転移だった。メシア系神官の術の作り方ではないように思えるが、些細なことかと流しておく。
元々はレベル70オーバーの異能者だ、隠し球の3つや4つは持っているのが普通なのだから。
「出ました」
「水路が途切れている。これは……ダムか?」
「はい。彼の治水によるものでしょう。深層にはここ以外にも多くの“逆流を防ぐ処理”がありますね」
高さは10メートル程度、さほど大きなダムではない。形はシンプルで、水を堰き止める壁に穴が空いているというもの。
別段、妙な細工の類は見つからない。
「囚われの身であるというのに、よくも調べたものだな、ルセアよ」
「拷問を受けている時、レイヴァンに近くに居て貰う必要はありませんから。可能な限り周囲を探らせていました」
その言葉を素直に信じられはしない。『造魔使い』は目端の利く男だ。守護霊モドキがコイツの元を離れていて気付かないことはないだろう。
謀りか、泳がされているか、警戒を一段階上げる。
オオノは素直に信じているようだが、この男は積み重ねた
この異界で少し組んだだけの俺すら信じるド級の阿呆だ、この女に騙されていたとしてもおかしくはない。
水から上がり回復をかけ、ワイヤーフックを壁上にかけてダムを登っていく。奇妙なことだが、上に登っていく度に深く深く落ちていくような感覚がある。
COMPとリンクしているスマートウォッチを確認するが、そちらでのデータはそれを裏付けるものだった。この異界ではZ座標が反転しているらしい。高ければ高いほど低い位置にあり、低ければ低いほど高い位置になる。
天地が逆さまになっている、というほどの無茶苦茶ではないようだが、山の奥深くにあったであろう泉を頂上近くに持ち上げ、この排水システムを作り出せる程度には好き放題やっているようだ。
「……あるいは、認知異界。頂点こそが底辺であり、底辺こそが最も尊い、そういう認識か?」
「そのようです。彼自身は単に水の利用のために心を操作しているとしか思っていないでしょうが、彼は強いもの、多くを持つもの、優れたものを見下してします。彼が近くに人を置かないのもその為でしょう」
「……メダマノオヤジの妙に低いレベルは、単に低コストの為ではないということか?」
「彼自身、無自覚でしょうがね」
ぼやいた考えを、ルセアが拾いオオノが広げていく、些か座りが悪いが、敵を理解するためには必要な話だろう。
「……造魔合体の際のレベルは混ぜた悪魔と同値になる。均一にレベル1になるようにする方が手間だな。レベル10までなら素材としての価値など大差ない」
オオノを先に登らせ、サインを見てからルセアを持ってダムを登る。10メートル程度なら一つ跳びで行けなくはないが、ワイヤーを伝い壁を走った方が途中で回避が楽だった。
着地、敵を警戒する。仕掛けるならば見晴らしの良いこの辺りだろう。
「……何故来ない?」
「妙なことになってきたな。ゴドーとジエンが陽動をしているにしても不自然だ」
「もしかすると……どこかで龍脈に対しての干渉を行っているのかもしれません」
ルセアが水に手を触れて、意識を巡らせている。この水が龍脈の流れに強く影響を受けているのか、龍脈がこの水の影響を受けているのか知らないが、似た流れになっているのは先のワープポイントが流れの交差点になっている事で良くわかる。
「……龍脈が2点から汚染されています。浅層エリアから一点、機械的ながら、
「……メダマノオヤジの無力化はもうできているのか?」
「この分なら、纏めて破壊するのも可能ですね。オオノ、マップのこの辺りへ行きましょう」
「む? 何かあるのか?」
「この地点からなら龍脈に干渉し、3点で力の流れを循環させることができます。そうすれば、内部では
3点あれば面ができ、内部に対して干渉ができるようになる。魔法陣などを使う術の基礎だ。
「だが、所詮人の技だ。内部全てを焼き尽くす破壊にはならんだろう」
「水の流れを調整しているダムさえ破壊できれば良いのです。そうすれば、心の海は奪われた要素を取り戻そうと、彼が管理する源泉に逆流するでしょう」
「……どの程度MAGが必要だ?」
「8000程、工面できますか?」
「問題ない。使え」
COMPを操作し、ルセアに10000のマグネタイトを渡す。どうせこの手の奴は最小値しか言わないのだから、多少多めに渡したほうが後が楽だ。
「オオノ、彼は、なんというか……」
「ルセア、それを口にするなよ。理由はわからんが、そう言うと拗ねる」
「誰が拗ねるか。多少何かを言われた程度で態度を変えるほど子供ではない」
そうして、ポイントにたどり着く。そこには大型のシャドウが存在していた。別段妙な行動を起こそうともしない、楔のような役割の存在だろう。
「一瞬でカタを付ける。貴様にかかずらう時間は無駄だ」
| 獣の眼光 | 特殊スキル | 自身の行動回数を1回増加させる。永続効果 | |||
| アクセラレート | 特殊スキル | 自身の行動回数を1回増加させる。永続効果 | スマイルチャージ | 補助スキル | 自身にニヤリ状態を付与する(真4F式) |
| 殺風激 | 魔法スキル | 敵単体に衝撃属性特大ダメージ。ニヤリ時貫通効果を付与 |
| 物理スキル | 敵単体に物理属性特大ダメージ。クリティカル時威力上昇(真V式) |
| ガード | 基本行動 | ダメージを半減しクリティカルの発生を無効化し、弱点命中時のプレスターン増加を無効にする。 |
| 猛反撃 | 自動効果スキル | 敵の物理攻撃を受けた時、確率で反撃する |
「ほらほらどうしたのー? 私はガードしてるだけですけどー?」
「苛つくなぁ……ッ! 人が急いでるって時に!」
戦場から逃げるゴドーたちを発見し、追撃戦を始めてからすぐに異界にて異常が発生した。浅層エリアのメダマノオヤジの制御が効かなくなったのだ。理由はおそらく中継アンテナの破損による通信障害。
残っていた監視カメラ映像を確認した所、破壊される数分前に透明状態特有の揺らぎと思わしき映像が残っていた。
ドロンパ系統の使い手では、剣客の所のアプリ使い共の中に1人いるのが思い当たる。ゴジョウオンが足止めをしくじったのだろう。ゴジョウオンの方にはさりとて期待していなかったが、拠点の隠匿が破られたのは正直信じられない。あそこへのセキュリティは『ゲートサーチD*17』レベルの特級だ。カジュアル上がりのクズ共の使える技術レベルでは、絶対に突破することはできない。
あの剣客のデモニカはかなりの高機能型だった。剣客が持つマスターデータをコピーしたのか? とも考えるが、カジュアル共にコピーしたメインアプリを稼働させられるデバイスを持っている様子もない。
「ほうらそこ! 親父が狙ってるわよ!」
「邪魔くさいなぁもう!」
| ヤブサメショット | 物理スキル | 敵全体に物理属性小ダメージ。確定クリティカル。貫通効果 |
| アリ・ダンス | 自動効果スキル | 攻撃してくる敵の攻撃力を大幅に低下させる |
遠距離から放たれるチンゼイハチロウの矢を躱し、『逃走*18』を試みる。
その逃走ルート上に、ツギハギが刀を構えて立ち塞がっている。逃走は中断、背後からの『奥義一閃*19』で即死が入るのは間違いなく死ぬ。
「逃走アイテムは使わんのか?」
「あいにく切らしていてね! 雑魚に使うとは思わなかったからさ!」
「……自分のヘマを大声で喧伝するとは、とうとうメンタルがおかしくなったか」
手元に逃走アイテムがない理由はある。メダマノオヤジの半数に逃走スキルを持たせているので、自分自身が逃走アイテムを使う必要はないというのがひとつ。ドロン玉の内職は下積み時代に死ぬほどやったから2度とやりたくないという感情論が一つ、そしてなにより、高級品とはいえ所詮は造魔。この体とて使い捨てて問題がないというのが一つだ。
問題なのは、本拠地より新しいのを向かわせるよりここから向かった方が5分以上早いということ。
あの位置の龍脈と、5分という時間があれば異界の切り崩しなど猿でもできる。認知異界として、自分自身を核にして泉の周辺を覆っているがこの世界が世界の一部であることには変わりはなく、大きな龍脈の集積点でしかない。
本流からの流れを断ち切られれば、異界全体が崩壊し僕の家が吹き飛んで消える。研究データなどはエデンの研究オンラインデータベースに上げているので何も問題はないが、僕の私物が吹き飛ぶのは耐え難い。本拠の部屋に入りきらなかった蔵書がそれなりにあるのだ。
「……あ、なんかわかってきたかも。アンタの弱点」
「は? 僕に弱点なんて……まぁ結構あるけど、お前に突かれるようなのはないんだけど?」
「あるんかい」
琴葉リオの煽りのような何かを受け流しながら、念の為自己分析プログラムを走らせる。
僕の弱点は、人間のスケールで戦わない相手にはめっぽう弱いことだ。武術魔術の類が利にならず、純粋なパワーだけで勝敗が決する場面では僕はそこらの雑魚と変わらない。十把一絡げの、有象無象だ。自覚はしている。
が、そんな怪獣規模の戦術をコイツら程度がやれる筈はない。これ以外の弱点をなにか見つけたらしい。
あるいは、詐術の類か。弱点でない場所を弱点と欺くことで、それを補おうとする動作の隙を狙う技。
いくつかの零細流派の中でそれを奥義と言い張る馬鹿がおり、後継がレスバの弱さから継承を失敗したケースは数個知っている。ゴドーが集めている奴もそうだが、本流になれず廃れた武術達には廃れるに足る理由が大いにあるのだ。
などと考えながら敵の動きを待つ。仮面女が動けば、その背後のメダマノオヤジを呼び寄せて『トラフーリ』にて逃走が叶う。
逃走失敗の隙だらけな姿を晒せば、当然攻めてくるだろう。
「……なるほど、弱点か」
だが、攻めてこない。奇妙なまでに待ちの構えだ。
たしかに、ガードを続けていればクリティカルからの連撃で死にはしないだろう。だが、それで戦局は変わらない。ガードを崩して始末する手段は、『石化追加*20』付き『千烈突き*21』や『奥義一閃』など多岐に渡っているのだから、こちらが有利の盤面でしかない。
現在少ないながらもメダマノオヤジの監視網は生きているので、戦場にいる人間全てを認識し続けるすることはできている。奇策の類があれば、視認できている筈だ。
──一瞬考えた後、この盤面が嫌な流れの中にあると仮定する。
メイン造魔へのリソースを半減させ、本体近くに置いていたバックアップ4番を起動、本拠地から浅層に『龍脈渡り』にて転移し、その後走って向かわせる。
中層の戦場ではほぼ防戦一方の琴葉リオ達に対して即死狙いをかけるだけなので、テトラジャを使われない限り行動は手癖で問題ない。
そう判断して進めた結果──突如起こった異界全体を揺るがす巨大な揺らぎによって、各地の造魔の制御が乱れ、数瞬停止した。
| 物理スキル | 敵単体に物理属性特大ダメージ。クリティカル時威力向上 |
戦闘用造魔が魂ごと砕かれたのは、その瞬間だ。リンクしている僕の魂まで届いた一撃。『食いしばり』で耐えた直後に一撃が合わせられて死亡した。
操作が遮断された瞬間に、パクったらしい模倣の无二打を直撃させて一撃で致命まで持って行ったらしい。猛反撃などの細かいダメージの回復を怠ったツケだろう。
「痛ったいなぁもう……通信の妨害で一時止まるのか弱点ってわけ? 急なトラブルな時が弱点とか人類みんなそうだろ……」
現在、拠点に作業用の造魔はいない。仕方がないので、本体を動かすことにする。前に動かしたのは、確か4つ前の世界の研究所で起きた爆発事故で造魔が全滅した時だったか?
……あぁ、早く仕事を終えてすぐに眠りに着かなければ。
休眠状態から動くことで寿命が消費されるのは別にいい。けれど、ベストコンディションのまま固定していた肉体が変化するのは、正直言って耐え難い。調整にはまた長い時間が必要になるだろうからだ。
「でも、久しぶりに全力出すのも気分転換にはなるかな? ここ最近酷いことばっかり起こってたし。気分のリセットもかねて皆殺しにするのもいいか。琴葉リオのデータは完全じゃないにせよ取れているんだし、実証試験はこの世界で適当なの拾って次の世界で確認すればいいし。間違ってても単なる僕の趣味だから問題ないし」
正直、自分でも旗色が変わるたびに琴葉リオを殺すか確保するかの方針がブレまくっているのは重々に理解している。けれど、さすがにここまで詰められたなら他とまとめて皆殺しにする他ないだろう。ちょっと出目がいいからと高目の結果を狙ったのが今回のガバだらけ祭りだ。仕方ない。
と、内心で決めても心のどこかにはまだ高目の結果を狙おうとする欲がある。こればかりは性分なので仕方がないだろう。理性でシャットアウトする。
「じゃ、カジュアル上がりのゴミ共は区画ごと水流し込んで殺してから、Q地点に予備アンテナ立てれば残りも問題はないかな。家だけ異界から切り離して自爆させよ」
古来より、僕のところやゴドーのところに入っていないようなちゃんとした流派の秘伝書達にはよくよく書かれていることがある。『勝てない相手とは戦うな』と。
どうにも不思議なことに、この世界のゴミどもは基礎レベルが高く、しぶとい。無難に殺せる戦力評価だったが、こうまで生き延びられているのはその戦力評価の際に入力したデータに誤りか、足りないところがあったのだろう。なので、かなり上に見積もって敵は僕を殺せる実力があると認めることにする。業腹だが。
なので、そんな面倒なのとは正面からやり合わずにギミックで殺せばいいのだ。人間の世界の常識的な範疇の話として、武術家はミサイルに勝てないのだから。
そうして各地の造魔を操作しながら自室を逃すための作業を始めようとしたところ、そういえば、何故異界が大きく揺れたのかの考えを忘れていたことに気付く。殺したいが故の苛立ちから、物事の優先順位がブレていたようだ。
そうして周辺状況を確認したところ……
異界各地に作っていたダムが砕けた結果、異界各地に仕込んでいた高低逆転の仕掛けを無視した勢いで、廃棄水が川を遡り源泉に逆流していることを理解した。
言うまでもなく、ここである。
「はぁあああああああああ⁉︎」
え、何で? と暴走する感情を無視し、まず自室の切り離しを無制御で行い資料を保護する。再び見つけるためにどれだけ時間がかかるのか、あるいは魔界に落ちて砕け散る可能性すらあるが、ここにいたら100パー消失するので、ワンチャンに賭けて秘伝書たちの原本とデータはどこかに投げる。
次に、異界龍脈に何が起きたかのデータ確認。異変が起きたのは通信がブチ切れた瞬間。その時間に起きたデータを確認する。
まず、深層にて異界龍脈の安全弁にしていたシャドウ融合体『生ゴミ3号』が殺されていた。下手人は何故か生きているオオノ、ムラカミ、そして捕らえていた筈の女男のルセアだ。
女男が何かしていたのは知っていたが、魂をあれだけ切り刻んだから妙なことにはならないだろうとタカを括っていたのが問題だったらしい。安全弁を破壊され、龍脈に干渉されていた。
次に、アンテナが吹き飛んだ浅層の拠点で起きたこと。方法は不明だが、そこからも龍脈に干渉があり、メダマノオヤジの操作に対してのジャミングと異界機能の阻害を行っていたらしい。監視網は死んでいるので周辺データからの推測だが、相当の術者からのバックアップがあったのかもしれない。
最後に、さっきまで造魔が戦っていた中層から異界への干渉、というより汚染が確認された。そのMAGは超高純度のDARK-LAW。おそらく邪神系統のMAGであるだろう。とすれば、やったのはバックアップの雑魚人形だろう。先程の戦闘では連中の背後に隠れていたが、何かの作業をしていたようには見えなかった。マシンドッグが傍に控えており、遠隔でやった訳ではない。
いや、映像をAI処理する前の生データの方には妙な点があった。3点からの映像が
―――通信ラグやメダマノオヤジの個体差によって、同レベルの映像処理でも0.002%ほど映像にズレが生まれる。主に
ハードウェアの問題をソフトウェアの工夫で補正するためにAI処理を使っているので僕が見る分には問題はないのだが、生データには必ずズレが生まれるようになっている。
ズレがないということは、これはダミー映像。映像データを流し込むタイプのハッキングであり、傍のマシンドッグがやっているのだろう。
とすれば、本体が龍穴に干渉していたとしてもおかしくはない。シャドウがそこそこ蔓延っているこの異界で、戦えない雑魚一匹が単独行動するという暴挙ではあるが、あの連中ならやるだろう。
「……3点で龍脈の流れを遮断つつフィールドを作って、力を循環させることで莫大な破壊力を生み出す現象ってマジ? 異界規模で『トライバングル*22』でも起こしてるの⁉︎どんだけのチームワークだよ!」
これは積みだ。この破壊現象はもう止められない。異界への干渉は止まり、低きに流れるエネルギーが正しく働くようになることで、廃棄水はさらに大きな力で源泉に流れて来るだろう。
その余波により生まれたエネルギーは、メダマノオヤジを操作するための思念操作を妨害し、なんなら浅層に向かわせていた戦闘用造魔とのリンクすらぐちゃぐちゃになっている。この分では、激流に巻き込まれて死んでいるだろう。
……今、フィードバックが来た。最後に見た光景では、異界全体がここを中心にした大きな大きなすり鉢上の地形になっているのが見えていた。
浅層、中層、深層にこの異界を分けていた『隠れ場*23』現象が崩れ、重なり合って一つの層に一体化したらしく、浅層、中層の連中が深層にだけ存在していた研究区画にアクセスできるようになりやがっている。
「巫山戯るな、こんなのが僕の死だと⁉︎」
認められない。認めなくない。けれど、認めざるを得ない。
あと数分持たず、僕は死ぬ。なにかの奇跡が起こり、脱出のための道具が空から降ってこない限りは……
「これが、スカイダイビングという奴であるな! 風を切る感覚が気持ち良いぞ!」
「馬鹿を言え! 味方の策で落下死しかけているんだぞ! この黒いのの死体がクッションになるとはいえ、洒落にならん!」
「なぁに、死んだらその時だ! 死んだ時の後悔など死んだ後にすれば良い!」
あ、なんか来たわ。生き残れそう。
SEEDの映画のネタバレ怖いけれど告知のためにはTwitterないしXを開かなければならないという恐怖。ガンダムチャンネルに投げられてた都市伝説の関さんのC.E.世界観の解説動画とか面白い広告もされていますよねー。
という雑記は置いておいて、次回決着(予定)です。
隠し場とトライバングル組み合わせたら面白い絵にならないか? という発想と、サムレムでやった地脈取り合いが混ざり合った結果、トライバングル要素が三角形以外消えましたが、些細な事です。些細な……事です……ッ!
・ルセアさん
ムラカミさんに女と思われたままの男性。出典は【FE烈火の剣】です。持ち霊ならぬ持ちミラージュのレイヴァンも同様烈火の剣出典であり、FE系統の人なので幻影異聞録のミラージュマスターシステムが混ざった異能者です。
戦士と神官をスイッチできるというのは独自設定。ミラージュマスターはミラージュの力を降ろして戦闘フォームに変身するので、元の人間が純粋なカラテを持っていれば別系統の技も使えるのでは? というもの。女子小学生がアーマーナイトに変身するゲームなので、肉体性能とミラージュ性能ではミラージュ性能の方が優先されそうだなーという考えです。
ゴドーさんのチームはゴドー、オオノ、ベルドルベル、ルセアとかなりバラバラの方向性ですが、これはオタクくんサマナー世界特有のアライメント違いでも協力できる、というかしなければ世界が滅びるという感覚からです。一体感がない方が、初期から戦ってきてなぁなぁで協力してチームになっていた感が強そうなので。
・辞林くん
自爆スイッチは研究者の嗜みだけど、押す前に研究所がぐちゃぐちゃになる事が確定したマン。大怪獣決戦でモブくらいの動きしかできないのが弱点だと自分で思っている。が、メダマノオヤジによる観測だったり普通に貫通物理で打点があったりで普通に役に立つ。なので本人が思うほど弱点にはなっていない。そこは。
・水さん。
この異界で散々好き勝手利用させていただいた、心の海から溢れ出た水。ペルソナ2罰でたっちゃんが自分の罪の上映会をしたアラヤの岩戸、あるいは岩戸山であった水が大元。その水を汲み上げて、必要な要素だけを抽出した残りを廃棄したものがこの異界にて流れている川とか水とか言われているもの。実のところ、工場排水のようなものである。
要素が足りないので、足りない分を埋めようと貪欲に色々取り込もうとする。が、限界量は存在するのでチンゼイハチロウを溶かし切るには時間がかかったし、ムラカミやオオノ、ルセアのようなイカれた精神力を表に出す能力持ちの肉体を害する能力は低くなる。
辞林自身、あるいは辞林が浸けた他の実験体達は心が弱ぇヤツばかりだったので、普通に溶けて養分になる。
辞林くんにお金がないのは、ちょびっと水が出てる程度の異界をでっかくなるように大工事をしたから。こんな地獄みたいな排水の出る場所に自室を置いているのもそのためであり、辞林くん以外の研究者がここに全然いないのもこのため。