姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝 作:気力♪
病院にて、日常に帰還したリオの一幕
「杏奈、来たわよー」
「リオ、例のものは?」
「持ってきてる持ってきてる。安産祈願のお守りもついでにね」
「それは別に良いかな。私頑丈だし」
「お腹の子が無事に産まれるのを願ってるんですー。アンタが死んで死ぬような輩じゃないのは重々承知よ」
ここは、杏奈が入院をしているとある個人病院だ。技研と提携している病院であり、杏奈の検査などをしている魔界医師の拠点である。
そんな所にやってきたリオが杏奈に渡すのはあるタブレットだ。
杏奈が技研で使っているもので、複数人の電子書籍アカウントを一箇所に集めた結果、技研の面々の性癖詰め合わせとも言える娯楽用タブレットとなっているものである。
杏奈は技研が安全でないからと無理に時期を早めて入院をした。そのためにかなりの準備が不十分なままの入院だったのだ。タブレットを持ち込むことが出来ていななかったのはそのためだ。
なお、それとしてこの機材は技研の秘匿データを外部に持ち出せる端末として購入された機材である。機材の私的利用である上に情報漏洩の可能性もあるのででコンプライアンス的には真っ黒だ。しかし親類経営による独裁により成り立つペーパーカンパニーのために咎めるものは誰もいない。そんな小さな暗黒コーポレーションが『秀英戦国技術研究所』である。
「ところで、ジエンくんたちは?」
「学校だよ。聖華で現役デビバスによる生徒との模擬試合があるんだってさ。私はまぁ行けなかったから、ツギハギとかを保護者役にしてフジワラちゃんにも見学させてるわ」
「へぇ、参加はさせてないんだ」
「ツギハギもブレイドも
「ふーん」と杏奈が生返事をする。ご近所のよしみでそれなりに仲良くやれているツギハギ顔の彼や雷霆の彼女は、この世界にとても良く馴染んでいる。鉄火場への踏み込み方は漂流前と変わらず迷いのないままに、この世界のルールを守り、社会に適応し、強くなっている。
それは、妊娠してからずっと戦えず、技術も能力も衰えているばかりの自分とは大違いだ。という杏奈の自嘲を引き出していた。
杏奈はもともと、鉄火場に踏み込むための強い心を持ち合わせているわけではなかった。リオたちに救われた恩返しと、友人を死なせたくないという想いから無理に戦いに出ていただけだった。
新たに頼りになる仲間が現れリオの力になってくれているという安心感が杏奈の心を鈍らせた今では、戦うべきときに戦えるかも分からない。そう、杏奈は思っていた。
「へぇ、ツギハギとかに嫉妬してんの?」
「それは……うん、してるかも。凄い勢いで強くなっているからさ」
「死ぬような戦いしかしてないから強くなってたってだけなのよねぇ……今更思うけど、杏奈と私で組んでた時は安全第一が過ぎてたわ」
「……いや、安全第一は守りなよ。ジエンくんたち悲しむよ?」
杏奈の素直な、ある種常識的な言葉を聞いて一瞬悩むリオ。杏奈が迷いなく『リオが命を捨てればどんな苦境でも逃れる事ができる』とリオが犠牲になること前提に考えていることだった。
大人の責任として、仲間達を大切に思っている一個人としていざという時に捨て駒になる覚悟は当然ある。しかし、その後にどう思われるかについてはあまり考えていなかったリオだった。しかし、すぐに結論は出る。
「んー……多分フジワラちゃんは悲しむけどジエンくんは悲しまないわね。あの子、アホほど前向きなので隠れてるけど、結構傷だらけだもの」
「傷だらけなのは分かってるけど、悲しまないのは違くない?」
「前向いて走り続けていないと生きてられないのよあの子。学園に押し込んで、日常の中で回復させようなんてことしたら逆に悪化するってカウンセラーのキアラ先生も言ってたわ。先公やってる佐瀬の奴も、私も同意見。ジエンくん身体は健康そのものだから無理矢理押し込んで休ませる理由もないってのがアレだしねぇ……」
しみじみ言うが、事実としてジエンはこの世界に適応し、心身共に良くなってきているのは事実だ。周囲から拾った子供を最前線に放り捨てる外道と思われることも少なくないリオだったが、後悔の類はないのであった。
「大変な子なのに保護者にこんなのがやってくるとか、ジエンくんも不幸だ」
「しまいにゃ怒るわよ?」
などとじゃれあいながら、ゆっくりとした時間を過ごしていく。久しぶりの気の置けない同士での会話であり、二人の表情はどちらも明るい。
そうしていると、タブレットの画面に杏奈の指が偶発的に触れた。それにより秘匿情報閲覧用のアプリが起動する。
杏奈生体情報がタブレットからスキャンされ、正常な状態であることがタブレットに認識される。生体認証と、状態異常スキャンの合わせ技だった。
「あ、開いちゃった」
「ここのセキュリティはそれなり程度なんだから、開く前には気をつけなさいよ? まぁ、今更隠す情報はないんだけどさ」
「情報が抜かれて、敵組織に筒抜けになったから?」
「そゆこと。表に出るのはちょい控えて、隠し玉用意しておかないと普通に暗殺されるわよ私ら。ひっどい世界よねー」
そんな風に、手札をフルオープンにした戦いについて気になった杏奈は、敵の情報を閲覧する。
ジエンが実際に戦闘を行ったデータを解析した結果のアナライズデータがこれだ。アナライズジャミングの突破は結局出来なかったため、かなり憶測交じりではあるとの注釈が入っているのが見て取れる。
| 造魔使い | 辞林 | LV90 |
| 破魔無効 魔力無効 神経無効 精神無効(装備不明、画像解析にて判別できないタイプの未発見、あるいはかなりの高レアの装備とペルソナの耐性の組み合わせと思われる) | ||
| ・ | ||
| ・アリ・ダンス*8・闇討ち*9・刹那の刃*10・ハイパーカウンタ*11・猛反撃*12・龍眼*13 | ||
「手数多いね、リオみたい」
「同じタイプだからね。まさか私と親父以外にクソ流派盛り合わせセットをやる奴がいるとは思わなかったわ」
「言い方ひどくない? まぁわかるけどさ」
リオは、技研に舞い込んできたあらゆる流派を一定レベルで納めている。技研に入ってくるような秘伝書は、基本的に本流になれなかった不人気流派であったり、根本に問題を抱えていて使えない技術であったりと問題のあるものしかない。
正しく皆が後世に伝えるべきと思ったものならばヤタガラスやクズノハ、ガイア本流の根願寺など様々に託すべき先があるからだ。
武術を一つの大きな樹木として見た場合の、成長の過程で剪定されるべき枝葉たち。
そういう、価値のないものたちだ。
そんなのを自分達以外に蒐集している変態がいるとは思いもしなかったのだった。
「マジで、あいつが集めたり書いたりした技術書は見つけたかったわ。クソみたいな流派アホほど身につけてるわよアイツ」
「割とシンプルに意味分からないよね。劣ってるって誰の目からもわかる技術を進んで身につけるの」
「趣味なんだからしかたないじゃない。親父の場合は『造魔使い』に刷り込まれた結果だったらしいけど、私はシンプルに楽しくてやってんだもの」
「そういう意味だと、アイツのメダマノオヤジ戦法は毛色が違ったのよね」
「ねずみ算方式に制御数を増やしていくやり方だよね。メダマノオヤジっていう造魔が悪魔とCOMPの半々みたいな動き方をしていた可能性、なんてコレには書かれているけど」
「悪魔の制御能力を持っている造魔って仮定していたんだけど、それだと製造コストが高くなりすぎてる感じがしたのよ。アイツ金がないのをひーこら言ってる感じだったから」
「イメージの話?」
「見て感じた印象の話。単体が高性能造魔だったらウチで再現できないからって願望入ってるかもだけど、フジワラちゃんも同意見だってさ」
願望込みで判断をするというのはあまり良くないのはリオも承知しているが、しかし『造魔使い辞林』に金がないのは諸々の情報から伝わってきている。
例えば、異界各地にあった物資集積所。
隠し通路を用いて隠匿されていた倉庫は複数個あったが、そのうち2つが魔石が数個入っているだけだった。さながら、マインクラフトなどのゲームにて大きなチェストに物資を移動した後の余りのような、侘しさを感じさせるものだ。
また、物が入っていた倉庫についてもマッカの類はまるでなく、弱めの武器防具アクセサリーとメタルカード*14などのあまり使い道のないアイテムが転がっていただけだった。
必要でない物で現金化できるものは現金化したのだろうな、という気配漂う倉庫なのなった。
「なんか、書類見てる限りだとなかなか不憫というか、憐れみというか、そういうのが見えてくるんだけど」
「ぶっちゃけ私も思ったわ。適当にやった異界ハックが3点で結ばれて水没するとか割と爆笑もんだしね。……ジエンくんが巻き込まれてなかれば」
「ジエンくんなら大丈夫でしょ。あの子が殺されて死ぬようなまともな子ならリオに付きまとわれてないし」
「いや、あの子は割と死ぬ姿が想像できない子だけど、死ぬ時は死ぬからね? ちゃんと見てないとダメよ」
などと言うが、ちゃんと見ていなかったが故にジエンを水没させかけたのはつい先日の事である。リオは一応自戒を込めて言っているつもりだったが、杏奈からすれば「何言ってるんだコイツ?」というものだった。過ちを繰り返さないのは大切である。が、それはそれとしてお前が言うのか?という話なのだ。
「で、この『造魔使い』の経歴、目的、所属組織、その他もろもろ一切不明ってどういうこと? 倒したんじゃないの?」
「殴られたから殴り返しただけなのよねぇ……よくわかんないけどぶちのめした、ってまとめられちゃうわけ。まじでなんも分かんなかった」
「蛮族スタイル?」
「まぁ……うん、情報戦全敗なのを暴力で倒したから、蛮族スタイルねコレは」
異界より回収した物品から辞林のバックを辿れないか?と調べもしてはいた。しかし今回の襲撃で得られたものの大半はカグラギたちの入手したものだ。カグラギは外部の協力者との共謀に意図的いくらかの情報を共有していない。そのため、リオ達襲撃側は『造魔使い辞林』が何者であるのかを知る事ができていないのだった。
とはいえ今回リオ達が勝てたのは、リオ達の事を敵が侮っていたからだろう。対策はもう十分であるとして、増援を呼ぶなどの追加の準備を行わなかったことが主な理由だった。
情報戦が十分に行われず、互いに知らない状態であったからこその勝利なのである。
──その結果として
「口走ったのが正しいならコイツの目的って技研と同じなのよね。剪定される技術をアーカイブして後世に残すってヤツ。ぶっちゃけバックがまともじゃなくても交渉から入られてたら普通に協力したと思うわ」
「コイツ、この動き的に割と悪の組織というか、他人の被害を無視してるような外道じゃない?」
「それでも技術は繋がるじゃない。外道の所でもアーカイブ残って未来に繋がるなら別に良いんじゃない? 独占するような使える技術じゃないし」
「それはホントそうだね」
度々言うが、技研に持ち込まれるような技術書秘伝書は剪定されるようなモノである。リオや辞林、ゴドーの本体性能が高いことと、あんまりにも酷いのは使っていないという事で実戦に用いれるのであって、その武術自体が強いな訳ではない。
クズノハの古式悪魔召喚術。『召し寄せ』や『隠し身』、体術としての『前転』など技術として戦闘システムを一変させるような特級の御業で、外道共に利用されて大きな被害が生まれるようなものでは決してないのだ。悲しいことに。
「いつも思うんだけど、なんでこんなの使ってるの?」
「……まぁね、私にとっての最適な技を探していくヒントになるかなー? って最初はやってたんだけどね? 気付いたら手段と目的が逆転していたというか」
「うん、わかんない」
バッサリと断ち切る杏奈。何度聞いてもわからないものはわからないのだ。
「そういえば、コイツがリオを狙った目的に関して『不明』ってなってるけど何で? なんかペルソナ使ってロマサガ2*15やるシステムをゴドーさんがやってたんでしょ?」
「先帝の無念は晴らそうとはしてないっての」
「すっかり忘れてたんだけど、昔ペルソナ使い覚醒への
「何それ知らない。ペルソナって心の闇とかを気合いでなんとかする奴じゃないの?」
「親父がバカみたいな顔晒してたのは覚えてたんだけど、その理由は忘れてたのよね。その日ACVDの発売日だったし」
「……いや、なんでそのことは覚えてるのさ」
「……どうでも良いことって、連鎖的に思い出さない?」
「それは、そうかも」
リオの語ったことは、全てが正しくはない。
リオはペルソナ様遊び以外にもマインドマンサーによる集合無意識への接触儀式だったり、認知異界によく似た特性を持つ祭儀上にてシャドウとの対話を行う儀式だったりをやっている。どれも、ペルソナ使い、あるいはシャドウ使いになるためのものであったが、その全てにリオは失敗していた。
儀式を行ったのが彼の者の力が弱まってからであったが故に、ペルソナ使いへと覚醒することはなかった。また、儀式を始めた14歳の段階で琴葉リオの精神は成熟していたが故にシャドウ使いにも覚醒はしなかった。
強い
もっとも、シャドウ使いに成れた所で目的の『ペルソナを他者に継承させることでその技術を伝承させるシステム』は成立しないので意味はなかったのだが。
「……じゃあ、なんで付き纏われたの?」
「知らないわよ。私がマイナー武術魔術を習得しているからじゃない? その記憶を脳みそこねこねしてフジワラちゃんのイデアオーブみたくするとか? ……ないわね、うん」
「酷いアンジャッシュの匂いがする……」
「ま、案外私に秘められた力とかがあったりするんじゃない?
「秘められた力……
「うっさいわ同い年。アンタの方もセックスレス受胎とか意味わかんないことになってんじゃないの」
「もしかして……昔そこそこ遊んでなかったら処女懐胎になってた?」
「メシアンのトコ行きたいなら手配するわよー。過激派のメシア教会にも多少のツテができたし」
「え、どんな流れで?」
「親父の仲間のルセアって綺麗なのの古巣がメシアンなのよ。なんか見た目が理由で芸能界絡みの闘争に巻き込まれて、その中でイマージュっていう妙なのに取り憑かれたせいで放り出されたとか。ま、殺されてないだけ関係は良好みたいよ」
「メシアンも大変なんだね。で、その……イマージュ? っていうのはどんな悪魔なの?」
「イマージュってのはシャドウみたいな雰囲気の奴ね。芸事とかで生まれる
「しては?」
「……後方腕組み彼氏面?」
「えぇ……」という言葉が思わず口から出ていく。おおよそよく知らない相手に対して言うセリフではなかった。
「どんな理由で?」
「アイツがルセアの奴を見てる目が、なんかこう……キモい」
「いくらなんでも酷くない?」
「いや、本当そうなんだって! ルセアの奴の背後霊見たく出てきて、意味ありげな穏やかそうな目でルセアとその周りを見つめてるのよ? ジエンくんとか見て、『あぁ、守れたんだな……』みたいな空気醸し出してるのよ? それで顔面包帯まみれのバケモンなんだからキモく感じるのもあるでしょ!」
「いや、私実物見た事ないし」
当然ながらリオによる10割の偏見である。ミラージュの顔の部分は仮面や包帯などで顔が隠れていることが多いというのはあるが、それをどう思うかは個人の感性だ。
「というか、ゴドーさんの仲間について知っても良いの? 情報切ってたのゴドーさんが安全に動けるようにするためでしょ?」
「それは平気になっちゃったわ。北関東で親父が特級異界の首狩りする必要なくなったみたいだから」
「え、そうなの?」
「親父が捕まってても何も問題なかったあたりで分かってた話なんだけど、北関東のデビバスがもうバリバリのバリバリに育ってたのよ。新規でブラックフィエンドだったりな漂流者が入ってきたので人が足りてる……訳じゃないけど、そっちも現地の連中がちょっとの無茶で大丈夫になったらしいわ。それに、日本全体のGPが安定したのもあって、一時期の『高レベル異界を1秒でも長く存在させていたら日本が滅ぶ』レベルのアレじゃなくなったのもあるわね。時間かけていいなら、今生きてるデビバスならどんな異界も余裕でぶっ壊せるでしょ、普通に」
「……そうなんだ。やっぱり、その辺の肌感覚分かんなくなってるなー」
「それで良いのよ。あんたコレから悪魔ぶっ殺すより大変な仕事すんのよ? 育児に専念しなさいっての」
「まぁ、その辺りは色々頼るよ。司とか育児めっちゃ得意って自慢してたし」
「でもあのババア現代に適応しきれてなくない? 古い常識でなんか変な事されたらちゃんと訴えるのよ?」
「ババアは酷くない? 司は……まぁ色々古い人だけど、見た目は若いよ」
「今言葉を濁したあたりでアンタもおんなじ事考えてんじゃないの」
「ほうほう、人の事を随分と好き勝手に言ってくれるじゃあないか」
「げ、噂をすれば」
「やっほー司。いつもありがとね」
「どういたしまして。まぁ着替えを持ってきただけなんだけどね」
病室のドアを開く。軽く武装した状態の桜色の髪の少女、『由崎司』が入ってきた。その背後には夫である『由崎星空』が少しバツの悪そうな顔を覗かせている。
技研の近所にある銭湯、『草津温泉風湯布院』にて居候している新婚の由崎夫婦だ。
「まぁ、深くは突っ込まないとも。司ちゃんはそこの喪女と違って生活に余裕があるので」
「はいはい私は喪女ですよーだ……今はね」
「リオが喪女じゃなくなったとしたらガチで事案になるからあと六年は我慢してね、フリじゃなく」
本気で深刻な顔で杏奈は言う。リオが満たされると言うことはジエンがリオの毒牙にかかり捕食されるという事だ。やむに負えない事情があったとしても、許されるべきことではない。そう杏奈は考えている。
「や、でもMAG補給とかレベリングとか色々、あるじゃない? こう、チャンスはさ」
「割と僕そっちの業界の価値観分かってないんだけど、これジエンくん技研に置いてちゃダメな奴じゃない?」
「正直微妙なトコなんだよねぇ……リオがヘタレじゃなかったらジエンくんが12歳のパパになりかねない案件なんだけど、リオだし」
「ねぇ司、喧嘩売ってる?」
「おや、もう忘れたのかい? 先に喧嘩を売ってきたのはリオの方なのに」
「まぁまぁ、その辺で……」
ナサがとりなした事で司とリオのじゃれあいが終わる。どちらも不完全燃焼であるようだが、ナサというマトモな感性の人間が居たことで醜い罵り合いの不毛さを思い出せたようである。
「けど……リオさんと喧嘩してる司ちゃんも、コレはコレで可愛いよね」
「ナサくん⁉︎」
「……やっぱ恋って人を盲目にするの?」
「いや、ナサのやつは元からそこそこおかしいかったしあんま変わってないんじゃない?」
「そこ、醜い罵倒の連鎖にだんな様を巻き込まない」
それはそれとして、司達が持ってきた着替えを置き、パイプ椅子に座って談笑ムードに入る。
「リオさんがこうして来られたって事は、そっちの問題は解決したんだよね?」
「ばっちし。まぁ、所詮一般デビバスのトラブルだから、普通に数集めた方が勝つって話よ……なんか敵の練度がおかしかったけどさ」
「とすると、杏奈のサポートどうする? 約束通り私たちで最後までやるか、リオたちに任せるか」
「ちなみに、私たちはどっちでも良いかな。杏奈のお腹の赤ちゃんが育っている事でウキウキしているだんな様は、可愛いので」
「いや、でもしょうがなくない? エコー画像とかで大っきくなってるの見ると、すっごくあったかい気持ちになるじゃん」
「ほら可愛い」
「杏奈はどうしたい?」
「……リオ達皆に任せたいかな。司たちは私にすっごく良くしてくれたけど、家族って訳じゃないから」
リオ達が杏奈の支援を司に頼んだのは、自分たちが敗れて死ぬ可能性が十分にあると踏んでいたからだ。そのことは杏奈も理解しており、我を通す場面ではなかったがゆえに闇病院に入院し技研から離れる事を選んだ。
だが、彼女が家族と思うのはやはり技研の者達なのだ。どれだけ良くしてくれていても、他人は家族の代わりはできないのだ。
「……ったくもう、別に血が繋がってたりとかないんだからその辺り適当でいいでしょうが」
などと口では言いながら、少し嬉しそうな表情をするリオ。彼女の中にも、多少は家族に頼られたいという気持ちはあるのだ。
「そうしたら、司ちゃんが作ったこの注意書きをリオに進呈しようじゃあないか」
「司ちゃん凄いんだよ。僕が妊婦さんのお世話に何していいか全然分かんなかったからこんなの作ってくれたんだ」
「だんな様はときたま常識がなかったりするので、お嫁さんとしてはこのくらいはするのです」
ちなみに。杏奈は世話になっていたが故に口に出す事はなかったが技研に戻りたい理由がもう一つある。
それは、由崎夫婦が病室でも割と事あるごとにいちゃつくのを煩わしく思ったからだ。
別段、悪いとは思っていない。仲の良い事は素晴らしい事だとも思っている。二人のことを嫌っているわけではもちろんない。
しかしながら、シングルマザーとして出産する事が確定している杏奈にとっては側にアツアツの新婚夫婦が居続けて、『まぁ、私がだんな様の赤ちゃんを授かった時は……その、よろしく』みたいな事を言われたりすることは微妙な苛立ちを産むのだった。
「ねえリオ、今からでもTSして父親代わりなってくれない?」
「気を抜きすぎてパッパラパーになってんじゃないわよバカ杏奈。男になったらジエンくんの赤ちゃん産めないじゃないの」
杏奈が無意識に口に出してしまった弱音にリオが思いっきり口を滑らす。この時の病室内での全員が、『リオをこの世から抹殺するべきでは?』と思ったのは無理もないだろう。
そんな、一幕だった。
投稿遅れた上、結構短めの話でした。
遅れた理由は、中気功のスキルカードがシャッフルタイムで拾えてから限界ギリギリまでタルタロスで稼いでいたからです。
少し後に宝石で買えるようになってたり神社で複製できたりとか先進めた方が正解だったんですが、まだ戦えるSPがあるとなかなか帰る気になれないんですよねー。風花のオラクルのSP回復もありますし。
これ執筆当時のP3R進行度合いはコロマルが仲間になったくらいです。スキル変異で生えてきたマハオート系全部のせを作ってたりして相変わらずタルタロスから帰れませんぜ……
・リオさん
口は災いの元だと理解しているが、それはそれとして口が滑るアラサー女性。
よく分からないけど、ひと段落したし、襲撃の気配もなくなったから杏奈のお見舞いに行って良いよね!という流れ。
それはそれとして病院周辺にはゴドーとオオノが詰めており、襲撃が続いている場合についても備えていたりする。多分後続はいないと踏んではいるが、警戒はしていた。
辞林関係のゴタゴタがひと段落したことで気が緩みまくっており、口も緩くなって失言が増えた。これが心の闇のない成人女性の姿か?
・杏奈さん
初期プロットから遠回りしまくった結果病院でのんびりすることになった系の女性。
今入院している病院は、魔界技術を用いての治療、病気の解析などを行っている医院である。裏の技術を使っているため健康保険が効かないが、悪魔由来のヤバい身体でもしっかり診て貰えるので利用者は多い。
杏奈は、お腹の中にいる子が本当に安全なのか不明であるため一般の病院にかかれないため、こういう所にかかっている。
辞林のゴタゴタで技研から離れた結果、由崎夫婦と非常に仲良くなった。が、それはそれとして新婚カップルのイチャイチャが心の毒になる部分もある。
今ではもう、戦場から離れた日常の人だ。
・由崎夫婦
子供って良いよねーとなった結果、夜が激しくなっているとかいないとか。幸せいっぱいの新婚夫婦である。