姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝   作:気力♪

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聖華学園大激闘その1 署名は全無視するくらいで丁度いい?

 現在、己のHP(体力)1(死亡寸前)。召喚した仲魔は壁にしたのと普通に殺されたので全滅している。さらに敵は4人おり、量産装備とガスマスクで個人認識を隠した3人に加えて銀の長い髪がきれいな少女、白州のアズサ殿が各々の武器を構えて立ち塞がっている。

 

 模擬戦闘が始まってからはや5分にて、マジでくたばる5秒前?とかいう大ピンチ状態だ。

 

 なぜ、こうなったかというと……

 


 

 始まりは、工作室での『技術』講義の際、己が爆速で課題を終わらせたのちに勝手に作っていたテルミン*1を教室で演奏していたときだっただか? 

 

 造魔使いを相手にする際の準備期間だというのに何をしてるのか? とは思わなくないが、まぁ学校って意外と暇な時間多いし問題はないと思う、多分。

 

「失礼、署名をお願いできませんか?」

 

 ノックして、「失礼します」という声かけの後に入ってきた彼女の名前は『ルールー・アムール』。

 初等部の最強サマナーと名高い『夜叉神天衣(やしゃじんあい)』殿の仲魔であり、人の手によって作り出された存在、『造魔』である、美しい紫の髪の少女だ。

 

 夜叉神殿の無茶振りに振り回されているように見えているが、無表情の中にも暖かい親愛の情が見て取れて見かけると少しほっこりするタイプの娘であるので、己は好ましく思っている。

 

 とはいえ己とあまり仲が良いという訳ではない。ルールー殿含む『夜叉神一派』の面々とは微妙に考え方が合わなかったのが主な理由である。心情の違いがあっても仲良くなれるとは思うが、それは互いに必要や余裕がある時のこと。

 向こう側に仲良くする理由も必要もなさそうだったので、ほどほどの付き合いに落ち着いているやつである。

 

 ──いや、夜叉神一派のレン殿になかなか妬まれているというのはあるのだけれどね? 

 力があって、環境に恵まれてこの世界で好きに生きられている己はそこそこいろんな漂流者から良く思われていないのだ。仲良くなって己がどんな闘いをしてるのか話したらだいたいドン引きされて慈しみの目を向けられるようになるが、レン殿とはまだしっかり話せていないので普通に妬まれているままである。

 

 なんだなんだ? とテルミンの演奏をしながらの己が首を突っ込むと、己の演奏を聴いていた面々も顔をこちらに向けてきた。

 署名という話だし、人を集める手助けくらいしてもいいだろう。

 

「我々第13生徒会は現在、外出規制の緩和を求める嘆願書を作成しています。ぜひ署名をお願いしたく参りました」

「ほう?」

 

 ルールー殿の言葉を聞いての周囲の反応は、歓迎半分「……正気か?」とルールー殿の頭を疑っている反応が半分だ。いや、酷くない? 下級生クラスからシステムを変えるためにルールに則って上級生に協力を求めているのだぞ? 

 

「具体的に、どんな内容を変えるつもりなのだ? 能力がなくても外部に行けるようにする、というのなら流石に反対させてもらうが」

「私たちが改善を要求したいるのは、学外活動の際の『引率役』の条件の緩和、あるいは条件付きの撤廃です」

 

「あー」と納得の声がちらほらと湧いてくる。例えば、映画を見にいく時。外出制限かかっている皆は事前に申請してあれこれしなくてはならない。そういう手続きが地味に面倒だと映研の皆が言っていたのを覚えている。

 その結果、学内掲示板にいついつに映画を見に行くので誰か来る? と誘いをかけて手続きをまとめてやってしまおうという試みがやられており、しかもそれを利用してのナンパ目的で参加しては映画の方に心を奪われて脳を焼かれる面々が居る、など色々話は聞いている。面白そうだよなー。

 

 そんな一時外出とは違い学外で本格的にドンパチやりたい場合には責任能力のある大人を引っ張り込まなくては自由に動くことはできない。学内の依頼を受けて一時的外出とかはできなくはないのだが、学外で敵組織にカチコミかけたり学外に拠点を作って外部協力者と商売をするとか、そういう本格的な活動のには責任者となる引率の方を引き込まなくてはならないのだ。

 

 己の場合はリオが引率の責任者という事になる。大体の場合保護者がそのまま責任者になる流れが多いと聞いているが、そう細かく規則を読み込んだ訳ではないのでこの辺りはぼんやり理解だ。

 

「先ほどジエン様が懸念したような、能力がない方々でも野放図に飛び出せるようにするものではありません。ご理解をお願いします」

「……いや、でも外で通用する力とか俺らにあるわけないだろ。そっちの子も強そうな気配はあるけど、外は大怪獣が湧きまくってんだろ?」

 

 そんな言葉を皮切りに、ちらほらと諦めの声が上がってきた。このクラス特有の、常識の違うところからやってきて、未だ社会のルールに適応しきれていない敗残兵である事実がそんなマイナス思考を生んでいるのだろう。

 

 それは、よくない。

 

「そんなことはないぞ! 前線で戦うために必要な能力というのは、実はそんなに高くないのだ! レベル30くらいあれば余裕で戦えるぞ!」

「……何言ってんだお前?」

「ワンパンで死ぬんだから能力もクソもないだろ」

「ならば、どの程度の体力ならワンパンで沈むかは知っているのか?」

 

 ので、データで殴るターンである。

 

「この火炎ビン*2のようにダメージが定量の物がある。コイツを50ダメージとすると、中威力で150、大威力で300、特大威力で400以上という感じの威力分布になるのだよ。まぁ魔法の種類によっては全体魔法が弱かったりすることもあるが、概ねこの400のラインを耐えられれば問題はないな」

 

「400ってどの程度の悪魔の耐久力なの?」

「だいたい50〜60レベルだぞ。己の地元*3の天使パワーとかはレベル33で400のライン超えをしているので、高くはあるがさほどとんでもない数字ではないな」

 

「いや30って割と高いからな!」という声はあえて聞き流す。今回のは扇動、怯えて縮こまっている皆を奮い立たせるためのものであるのだ。細かいのはスルーである。

 

「しかし案ずることはない! 己達人間にはコレがある! 『マッスルドリンコ*4』だ!」 

 

「『マッスルドリンコ』によっておおよそ2倍まで体力を盛れるが故に、基礎体力は200もあれば大雑把な攻撃には耐えられるのだ!」

「けど、二発目以降はどうすんだよ。体力のドーピング消えたら普通に消し炭になるぞ?」

「そこも問題はない。継続タイプの『ドーピング*5』で最大体力は約3割かさ増しすることができる上、バフでバフを乗っければ敵からのダメージも少なくなるからな。メジャーな2割バフデバフのものであると、合計二段階で40%の威力減衰があればダメージは240となり、200の基礎体力をドーピングした260で十分に受け切れる計算だ!」

 

 黒板にチョークでカリカリ数字を書いていく。なかなか書くのは難しいが、数字なので伝わるように書くことはできている。

 

 そこ、字汚いとかぼやくな。傷つくぞ。

 

「で、この200という耐久ラインを満たす悪魔だと、『妖鬼オニ*6』なんかがレベルが低いな。レベル13だ」

「……えっと、耐久特化じゃないやつだとどのくらいのレベルなの?」

「20あたりだな。耐久低い奴だとこれ以上でも下回る可能性はあるので少し高めに見積もって、30レベルもあれば即死はしないな。そうなればアイテム係など様々な役割で戦闘に貢献できるな」

 

 己の言葉に皆はなかなかに懐疑的な視線を向けている。おかしい、ちゃんとデータを示したというのに。メギドラオンのこととか()()()()()()()を見抜かれているのか? いやその場合は普通に文句を付けてくる。ないだろう。

 

「……無論、これは特大威力の全体攻撃、全体バリオンあたりを想定しているダメージ計算であるから、マハラギダインとかその辺りの攻撃が想定されるボスであるともう少し耐久ラインは下がるな。300の40%軽減で180、コレをドーピング込みで耐えられるのは140くらいか」

 

 計算してみるとなかなか夢のある数字であるように思える。6レベの夜魔フォーモリアが基準を超えている*7ので、この世界のGPなら覚醒した時点で超えている者も多いだろう。

 

 そんな『自分より格下の悪魔でも耐えられるなら、本当になんとかできるのではないか?』という楽観が漂い始めてきたので、雰囲気の改善は成功である。

 

「うむ! いけそうだな!」

「──あの、少しよろしいですか?」

 

 そんな時、署名を求めにきた筈なのに蚊帳の外になり、いち観衆となっていたルールー殿が声をかけてきた。無表情なのは変わらず、淡々と疑問点を告げるように。

 

「そのタイプの攻撃アイテムの威力を50とした場合、メギドラオンなどの威力は500から600となる計算なのですが」

 

「あ、やべ」と口を滑らせた瞬間ギロリと皆が睨んでくるのが伝わる。これはダメそうな気配になってきたが、一応言い訳くらいはしておこう。

 

「……うむ、言われた通りメギドラオンの威力は560ほど*8。以前己の地元のやべー奴に薙ぎ払われた時食いしばった感覚からの数値化だが、そう間違ってはいないだろう」

「お前、クラスメイトを騙そうとしやがったのか⁉︎そんな命に関わるようなダメージの話で⁉︎」

「嘘ではないぞ。特大威力はピンからキリまであるというだけだ」

 

 実際特大威力の弱い方である全体バリオンとか単体へのダイン級とどっこいな威力しかないので、癒し行動と言われていたりしなくもない。

 

「まぁ、加えて言うならこの計算式はカタキラウワでも大魔王でも同じ守備力となる己のような防御力のない人間を基準にしたもの*9だ。魔力や体のステータスでいろいろ変わる人は考慮に入っていない」

「そんな計算式でよくもまぁ大丈夫だとか言えたな手前! 俺たちを殺す気か⁉︎」

「威力560としても20%の強化か弱体を三段階入れたら威力は224。さっき言った260のラインで耐えられる奴であるからな。端折ったぞ」

「端折るなや!」

 

 ヘッドロックされたりゲシゲシと蹴られたりしたのですごすごと黒板前から引き下がる。ついでにテルミンで敗北っぽい音楽でも奏でてみようかとも思ったが、流石に暴力の矛先が物に向いて破損でもしたらガチの喧嘩になるので自重しておく。

 

 ──想像と少し違ったがルールー殿が受け入れられる場は整っただろう。でしゃばるのはこの辺りにしよう。

 

 最前線は怖くないよーという話題に持っていって、外への意欲のために署名するという健全な流れになるのが理想だったが、今のようにルールー殿がちやほやされて署名に繋がるのも悪くはないだろう。

 

 どのみち、万全の準備があろうとなかろうと死ぬ時は死ぬ。学園に引きこもって守られ続けることが実は真綿で首を絞められているような結果になる可能性もある。だったら、生徒が好きに動けるようにできる仕組みの方が死んだ時にも納得はしやすいだろう。

 

 守るために必死を尽くした先生方や警備員さん達が、「お前のせいで私たちは死しか選べなくなったのよ!」とか言われる未来は辛いしなー。

 

 あ、それはそれとして署名はした。別段悪い流れでも不正をしている感じでもなかったからな。知らないやつからの署名ではなく、ルールー殿からの求められた署名なのでリオの言いつけも守られているしな!

 


 

 というのが、少し前の話。

 その後生徒会長やらと夜叉神殿らの交渉の結果、現役デビバス対有志生徒連合の模擬戦が組まれることとなったのだった。

 

 有志生徒の条件は退魔生徒会に参加していないことなどなど。参加にはさして厳しい制限はなく、ルールー殿の署名に協力した者たちはだいたい皆有志として参加しているのが実情だった。

 

 なお技研、というかゴドー殿にも現役デビバスチームとしての参加要請は来ていたりしたが、己たちの陣営昨日の戦いの疲労で己以外皆戦闘は厳しい感じになっていたので模擬戦には不参加となっている。己がデビバスチームとして参加するのもアリなのでは? と思ったが、『生徒側から裏切り者出すのは流石に……』という事で己は普通に生徒としての参加である。両陣営の参加権を持っていれば生徒もデビバスもどっちとも戦えると思ったのだが、うまくいかないものであった。

 

 まぁ、『ナマ言ってる雑魚どもに現実ってやつを教えてやるよぉ!』というニュアンスが若干見えるような気がしなくもないがそれはそれ。ルールを決めた学園とか生徒会とかに喧嘩を売ってる側であるのは事実だし。

 

 そんな感じに周りを見ながら靴を履き替えていると、銀色の長い髪の毛が視界に入ってきた。

 

「あなた、大きな仕事があるから参加できないかもとか言っていなかった?」

「おお、エーデルガルト殿。無事勝利したが故に、模擬戦への参加は問題なかったぞ。敵は強かったし面倒だったし味方に殺されかけるとか散々な目にあったが、生き残ったが故に」

「……死ぬかもしれないから、模擬戦は難しそうだと言っていたの?」

「そんなところだ。必勝が約束されていたなどとは口が裂けても言えんような戦いであったからな。普通に死ぬなーくらいの危険度だったぞ」

「……それは作戦を見直しなさい、死にたいの?」

 

 こんな感じに声をかけてきたのは『エーデルガルト=フォン=フレスベルグ』という己に馴染まぬ西洋風のフルネームを持つ彼女であった。

 なかなか正義感が強い少女であり、だからこそ力がある自分が皆を守るために戦えないことを気に病んでいるタイプだ。これもまたよくある漂流者のスタンスではあるのだが、それなりに高い実力を兼ね備えているというのが他の面々と違うところだ。聞くところによると、将棋もそこそこ強いらしい。

 

 エーデルガルト殿はかなりの規模の集団を率いていた経験があるらしく、人を纏めるのが得意であり、気質でもあるようだ。そんな彼女を頼って、あるいは放っておけずに人が集まり、自然とクラス委員長になったと聞いている。

 

 己たちのいる『話は通じるけど常識が通じてない連中』を一纏めに押し込めたようなクラスとは違い、普通に常識も適応できている漂流者のクラスとなれば自然と頭の良い者も多い。そういう連中は得てして無知を知らず、内輪で想像の現実を膨らませ妙な方向に向かっていくものであるのだが、エーデルガルト殿はその辺りの舵取りをしっかりできているため妄想を常識と思い込むことが多くない。それでダメになったシェルターを幾つか知っている身として、本気で尊敬している一人であった。

 

 そんな彼女は素直に己を心配して声をかけてくれたので、ざっくばらんに昨日の戦いについて語ってみた。するとエーデルガルト殿はなかなかに苦虫を噛み潰したような表情になりながら、「……いや、戦闘の後なら休みなさいよ」と自分の常識の中と合わせて無難な感じの忠告に落ち着かせていた。

 

 内心? マークがたくさん浮かんでいるんだろうなー。『造魔使い』は本気でおかしい奴だったので『怪人』とかにカテゴライズしたくなる奴だったし。

 

「こんな楽しそうなイベントに参加しないなんて勿体無いことができるわけなかろう!」

 

 とりあえず、動きのキレも問題ないと言うことを示すために軽く踊り出す。うん、絶好調だ。MP回復量もそれなりにあるし

 

「まぁ、問題ないのなら構わないわ。業腹だけどあなたは強いもの、頼らせてもらうわ」

「うむ。こちらもエーデルガルト殿を頼らせてもらう。義に厚く、願いのために突き進める強い意思を持つエーデルガルト殿が味方なのは心強いからな」

 

「……あなた、誰に対してもそんな褒め言葉を使っていない?」

「素直に言っているだけなのだが……」

「別に責めているわけじゃないわ。誰に対しても美点を見出せること自体は良いことだもの」

 

 その言葉の裏には、『皆を好きということは、皆を平等に好きじゃない』とか『八方美人してんじゃねぇぞテメェ!』とかの意味が隠れているのだろう。昔そこそこ言われたので、おんなじニュアンスなのはよくわかる。

 

 これでも個人個人を好きになる理由がちゃんとあって好きになっているので、皆を一纏めに好きと見なしている訳ではないのだがなー。

 

 

「それじゃあね」とエーデルガルト殿ががクラスの面々の元に戻ったのを見て、己も適当に参加するメンツに絡もうと適当に歩いてみる。

 

 現在は模擬戦の説明開始時間までそこそこ時間があるのでまだ来ていない面々も多いが、やる気のある面々はもう来ているだろう。

 

 まず目立つのは、己のクラスにやってきたルールー殿が所属している『夜叉神一派』だ。

 

 大将格をしているのはルールー殿のサマナーである『夜叉神天衣』殿。レベルは90周辺の感じで、デビルバスターであるらしいと聞いている。身長が低く力が高くないのは己含む子供のサマナーによく見られる性質だが、夜叉神殿は強い魔力を持っているように見える。普通に己より強いだろう。

 

 あれほど幼い身でありながらそこまでの強さを身につけたのは並々ならぬ道のりではなかったと思う。素直に尊敬できているサマナーだ。

 

 次に、『棗イロハ』殿。封魔管を使う古式召喚術? なる技能と運用コストバカ高そうな戦車を巧みに操るデビルサマナーである。その強さは強いということ以外に知らないが、棗殿について知っていることは少しある。

 

 それは、聖華学園におけるポケモンスリープ図鑑コンプ勢の一人であることだ。

 

 学内掲示板でイキった奴が『イェーイ! ポケモンスリープ完全クリアー! こんなヌルゲー寝ててもできるんだよなぁ!』と言った瞬間に『は? 私も図鑑コンプしたんですが?』とかそこそこの人数が食いついたらしい。どう見てもネタ投稿なのにガチに食いついたことでプチ祭りになったとか。

 

 そんなこんなでそこそこ人がいると分かった結果、毎週のスコア競争*10とそれに用いた睡眠改善のための現実で行った工夫などが書き込まれている良き睡眠情報交換スレッドとなっており、密かに読んでいる者も多いとか聞いている。

 

 お次は『空条承太郎』殿。硬派なペルソナ使いである。空条殿の大柄身体に違わぬパワーに加え、かなりの精密動作性能を持つペルソナ『ヘラクレス』を持つ。『ペルソナのトレーニングにはペルソナを使って絵を描くと良いらしいぜ!』という与太話を検証していた際、その辺に飛んでいたショウジョウバエの超精密なスケッチを5秒で提出したというエピソードのある人物だ。

 

 特にペルソナ使いでもないのに参加していた己は一瞬見えたペルソナヴィジョンを描いたのだが、そこそこ似ているという評価を得た。その辺りから顔を合わせれば話す程度の軽い友人関係である。

 

 次いで、『スレッタ・マーキュリー』殿。

 彼女は少し気弱めに見えて以外に面の皮が厚い性格だと噂される『造魔使い』である。デモニカスーツを着込んで本体性能をかさ増ししつつ、造魔『カヴン』を複数体召喚して補助や偵察をして仲間達を勝利に導くという味な真似をする戦法を得意とするらしい。

 以前行われた『造魔カヴン』の戦術討論会? にて壇上に上がり、慣れないながらも丁寧に造魔について説明をしてくれていたのを覚えている。

 

 討論会のメインになっていた『造魔カヴン』の使い方、倒し方は監視を掻い潜って本体を暗殺するくらいしか思いつかなかったが、彼女の戦術を知っていたことは『造魔使い辞林』の戦術を理解するための助けになったのは間違いないので昼食一回奢っても良いと思えるくらいの感謝は感じていたりする。まぁ身に覚えのない感謝とか普通に怖いのでこっちから声をかけたりはしないけれども。

 

 最後、年齢偽装しているのでは? と思わなくない小柄なアプリ使い『レン』殿だ。

 

 正直仲は良くない。彼女のスタンスと己のスタンスは方向性が似ているようで違うのでなかなかに噛み合わないのである。

 原因としては、暮らしていた環境の差であるだろう。『天蓋のトウキョウ』は悪魔が湧くことを除けば住居スペースには意外と困らなかったが、『砂漠のトウキョウ』では砂嵐やらを凌ぐことのできる居住可能シェルターはそんなに広くなく、食料などの物資に加えて住むところまで奪い合って年がら年中人間どうしの殺し合いをやっていたという話だ。

 

 年がら年中の殺し合いになるほど人間が多くも強くもなかった『天蓋のトウキョウ』育ちの己としてはシェルターなどの設備は改造バリバリして良くして組織力を高めた方が結果的に個人での生存率は高くなるが、拠点をカスタマイズした結果を掠め取られることの多い『砂漠のトウキョウ』のスタンスでは必要パーツを持ち運びつつ他の連中が砂で死ぬように設備を破壊していくほうが個人での生存率が上がったらしい。

 

 己の意見も砂漠に関しての意見もどちらも生存性バイアスのかかりまくった偏った意見なので一概に正しいとは言えないが、スタンスが違うのはそこそこ大きいのだった。

 

 とはいってもレン殿の貪欲に強さを求めて努力することができる意思の強さや、劣悪な砂漠の環境でも装備のメンテの必要パーツを集め続けられた物資収集力、この世界にやってきてから新たに手にした『悪魔召喚アプリ』を使いこなす適応性など尊敬できる点は多い。機会があれば話くらいはしたいと思っているところだ。その先で仲良くなれるかは別の話だけれど。

 

 というのが、夜叉神一派の主な面々である。

 

 それに対抗……してはいないが、そこそこ大きな集まりになっているのがさっき話したエーデルガルト殿のクラスの面々だ。

 

 エーデルガルト殿の他に『砂狼シロコ』殿、『乾オサム』殿、忍者の『リップル』殿などなどかなりの粒揃いであり、己を殺し得る実力者だらけだ。味方が強くて嬉しい限りである。

 

 対して、己のクラスからの参加者は少ない。

 己が聞かれて話した外の話を聞いて萎縮してしまった者が多いからだろう。ルールー殿の人柄とかで署名には協力してくれはしたが、模擬戦にまで首を突っ込む馬鹿は少なかったようだ。

 

 己のクラスから参加してくれたのは、レン殿と同じ『砂漠のトウキョウ』タイプの世界出身でこの世界ではサッカー部に爆速で入部した『雷市陣吾(らいちじんご)*11』殿、川沿いの集落の生まれで舟の扱いなら村一番だったとの話の『銀狼《ぎんろう》*12』殿くらいか? まだ来ていない可能性もあるが、今校庭に集まっているのは二人くらいだった。

 

 己のクラスは漂流者生徒の受け入れ第一陣であり、ここで常識を学ばせてから他に分配するというシステムになっている関係で年齢層はバラバラである。というか現代日本に酷似した世界からの出身な7~8割くらいの漂流者はスルーできる段階なので変則的な人数のクラスにならざるを得ないとか聞いている。

 

 己含めクラスの面々は『色んな人とクラスメイトになれてたのしー!』としか思ってないだろうが、色々あるらしいのだ。

 

「よぉジエン。お前が暴れんのを直接見るのは初めてだな」

「まぁ、僕も強いし? ライチもタフだし? 現役のデビバスが強いっていってもたかが知れてるって!なんとかなるなる!」

「うむ! 死んだ後に死体が砕けぬように気を配ってくれるらしいからな! いつもの百倍らくちんだ!」

「またまたー、怖がらせようったってそうはいかないんだからねー」

 

 若干現状を舐めている感覚のある銀狼殿、とにかく暴れたい雷市殿と色々だが、まぁなんとでもなるだろう。何を思っていようがどれだけ強かろうが死ぬ時は死ぬのだし。

 

 

 そんな二人と適当に駄弁っていたら、拡声器越しのヒナ会長の声が聞こえてきた。案外時間が経っていたらしい。

 

 ルール説明が、始まった。

 


 

 やる夫まとめくす様 その694

 


 

あとがき

 

ユニコーンオーバーロード発売までにP3Rクリアできるか微妙な作者ですが元気です。真VVの発表とか色々ありましたから、メガテンというかアトラスゲーム欲は高まりつつあります。とはいえ、ゲーム欲が高まると執筆時間が少なくなるのは悲しいですねー。

 

一応、今回のジエンくんがルールーをほったらかしてやった講義についての補足です。

今回のダメージ計算まわりはジエンくんが正常な判断力を持っている生徒たちを地獄に引き摺り込もうと画策して意図的にガバを拡大しての超ガバガバ理論にしています。間に受けることのなく自分で確かめてからダメージ計算はしましょうねー

 

・ジエンくん

昨日『造魔使い』と殺し合っているのに疲労もなにも感じていないタフネスお化け。他人の長所を見つけるのが得意。

『技術』とか『工作』とかの時間にテルミンを自作した理由は特にない。暇だったから手持ちのジャンクで何かおもちゃを作ろう!程度のノリ。基本必要なものは自分で作っているタイプの子なので、略奪だけで生きていたヒャッハーとは根っこが噛み合わない。

 

尚、本人は気にしていないが、外に出れてレベルも高く自由に生きられているように見えるジエンくんはそこそこ妬まれていたりする。……模擬戦前の今の段階では。

 

・『夜叉神一派』あるいは『クズリュウ派』

本編にて恐るべきホラー展開を引き起こした一団。大人の押し付けて自由と可能性を奪われていながらも戦い続けられていた少年少女たち、であるのだが今作品では普通に学生している面を強調したい。イロハのポケモンスリープとか。

 

作者はクズリュウ派に限らず、他人のキャラをなるべく崩さずにいかに胡乱な設定を追加できるかのチキンレースを勝手にしているので、読み返した時に説明や描写が変わっていたらそういう事だと思って下さい。

 

 

*1
世界初の電子楽器アンテナと手の距離で静電容量を変化させ、スピーカーから流れる音の周波数や音量を変化させ音楽を奏でる楽器。自作キットとかも売られていたりする

*2
ペルソナ5 敵単体に火炎属性で50のダメージを与える

*3
真4F版

*4
真1 一時的に最大値を超えてHPを回復する。ただし最大値の2倍を超えると半分に減少する

*5
真4 補助スキル 味方全体の最大HPを30%上昇させる。

*6
真4F 妖鬼オニLV13のHPは269 かなりの耐久力を持っている

*7
真4F 夜魔フォーモリアLV6のHPは190 

*8
真4F LV99のメタトロンの軍勢にて確認 魔力147でプレロマない状態でのダメージ

*9
真4シリーズには防御力に関係するステータスはなく、LV100以下ならどれだけレベルや魔力が高くても受けるダメージは等しくなる。なお、防具はHPの数値を伸ばすことで耐久力を高めている。

*10
ポケモンスリープは1週間の睡眠やカビゴンのお世話そしたスコアがエナジーとなっての合計が月曜の朝に

*11
原作 ブルーロック

*12
原作 Dr.Stone

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