姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝 作:気力♪
ゆるっと地獄を潜り抜けられた己であるが、実のところ消耗は大したことはない。死んだのは
とはいえ、イシュタルは本来の戦いでは死体を砕かれていたかもしれないような死に方をしたので、トドメを刺さないでいてくれた彼のバスターの面目を立てるため、極力使わないようにしたいとは思うが、ルールで禁止されてはいないので、まぁ気にする必要はないだろう。
そんな感じのことを考えながら歩きつつ、体勢を整えておく。雑魚とイシュタルは天使ケルプ*1のサマリカームで蘇生したのでそのMP回復のため連れ歩いておいた方が良い*2くらいか? 『パーティMPリカバリ*3』様々であるのだが、このレベルの天使を連れ歩いていると誰からも警戒の目で見られてしまうのは問題かもしれない。
天使に嫌な目に遭わされなかった人間とか、そんなにいないものなぁ……
閑話休題
現在己がいるのは、異界校舎の第一フロア。ALyCE殿の門が次のフロアに飛ばすものであったから当然ではあるのだけれど、この異界の作り方は第一フロアがかなり広く作られているようなので味方との合流はそこそこ難しい。
現在いる第一フロアが一番大きいタイプであってほしいが、そんなことはまず無いだろう。
「こちらジエン、オートマッピングのデータを送る」
警戒しながらさっくり回ったエリアのデータを司令部に送る。
確認と返信までにかかった時間は約3分。現在の戦闘状況でこの応答速度となるのなら、正直バックアップはないものとして扱ったほうが色々楽だろう。
おそらくだが、情報統括がルールー殿のワンオペではなくなっている。
「誰だか知らぬが余計なことをしやがったな。リスク負ってでも応答を速度最速にせねば使い物にはならんだろうが」
……皆で仲良しこよし協力するのは良いことであるのだが、人が増えればその分だけ処理速度は落ちてしまう。情報チーム内でコミュニケーションが必要になってしまうからだ。
システマチックに組織化され、ツールも最適化されていたのならばコミュニケーションによる伝達ロスを最小限に、人数が増えることでの処理可能情報量を最大限にすることはできるのだろう。が、そんなのは我々学生連中には不可能である。任せられる能力のある者に丸投げする方が、結局リターンは大きいのだ。
ひとまず、近場にて行われている遭遇戦に介入せんと足を進める。
敵方の考えを読むというほど高尚なものではないが、己が顔を見せる少し前くらいに戦闘は流れることになるだろう。
「チッ、10時方向より敵増援! 開幕『オール1』の奴だ」
「……奇襲は成功した、これ以上戦闘する意味はない」
ほら逃げた。なんとなく感じていたのだが、敵からマーカー付けられた臭いのよなぁ……
「うぅ、せっかく僕が華麗に戦ってモテモテになる筈だったのに……ガクッ……」
「銀狼ー⁉︎」
尚、転送ゲートによって出てきた二人組のうち一人は銀狼殿で、普通に出オチさせられて戦闘不能になっていた。食いしばり効果のあるアクセサリー『クイシベリルの耳飾り*4』にて耐えたらしいが、ルール上それは反則なのだ。
「ひとまず、片方は無事で何よりだ」
「あ、うん。助けてくれてありがと、ジエン」
銀狼殿は間抜けな顔を晒して気絶している。食いしばった時特有のガンギマリモードに移行できなかったようだ。アクセサリーでの食いしばり効果ってなかなか変な挙動するのなー。
「改めて。己は琴葉ジエン、サマナーだ。一時の共闘をよろしく頼むぞロミン殿」
「一応私も。霧島ロミン*5。えっと、ばっふぁー? らしいわ」
眼前の少女、ロミン殿がスマホのカンペを見ながら自らの
正直己はどの
ロミン殿は調理実習の際に隣の班にいた程度の仲だ。カレーを作った際に起きたひと騒動にて人類の可能性を見せて貰った。カレーとは凄いのだなぁ……
「で、サマナーって何ができる人なんだっけ?」
「悪魔召喚ができるぞ。コイツのように、悪魔を手駒として操れる」
そう言い、『パーティMPリカバリ』にてMP全回復しているけどなんとなくそのまま召喚し続けているケルプを示す。
ロミン殿は「へー」となんだか分かっているようないないような雰囲気だ。
ロミン殿は、『シャドウ』だとか『イマージュ』とか、そういった悪魔以外とメインで戦っていたタイプだった筈。故に、人によってはドン引くどころか殺意を抱かれる悪魔召喚についてかなりフラットに、そういうのもあるのかと受け入れられている。
まぁ、悪魔自体を倒すべき敵の一つとして思考停止で戦っている気配がしなくもないので、この世界での戦闘経験は薄そうな感じもするのだが。
「ひとまず、近場の合流ポイントに移動するぞ。B22地点だ」
「襲ってきたアイツらを追いかけなくていいの? ジエンって強そうだし、倒せるんじゃない?」
「ガン逃げを決め込んでいる相手を仕留めるのはかなり厳しいのだ。『ルナトラップ*6』のような逃走狩りをするスキルは仕込んでいないしな」
「そうなの。サマナーってのも案外使えないのね」
銀狼殿を適当に道の端に置いておく。生きてはいるのだし、回復だのをする必要はないだろう。
一時の相方となったロミン殿のレベルは25ほど、今回参加している学生の平均レベルより少し低いのでは? と思わなくない弱さであり、本人からどことなく感じる適当さからして付き合いか何かでこのレクリエーションに参戦したように思う。
「何よ、そんな微妙な目をして」
「いや、銀狼殿とロミン殿、どっちが無事だった方が駒得? だったのかとな」
「……正直、どっちもどっちじゃない? 銀狼とかいうのそんなに強くなかったし」
聞けば、二人は余りものペアであったらしい。銀狼殿はそのゲスさからペアを組むのを拒否されて、ロミン殿は友人連中でサマナー以外の数が奇数だったため、ジャンケンであぶれてしまったらしい。
「あんなゲス男と一緒に行動しなくて良くなったあたり、開幕襲撃を喰らって良かったかもね」
などと口を滑らす程度には、銀狼殿はやらかしていたようだ。友人であるから誤解であれば解く協力はするが、多分誤解ではないので銀狼殿はまたしても女生徒からの評判を落とすことになるだろう。
「それにしても、意外と襲撃って少ないのね。最初の時みたいにどんどん襲ってくるもんだと思ってたわ」
「敵方はそんなに数が多い訳ではないからな。己もロミン殿も開始地点が巡回ルートとダダ被りしていただけで、巡回の敵が多い訳ではないのだろうよ」
ALyCE殿のゲートで転移される先は『次のフロア』のポイントである。なので、この第一フロア以降に進むには階段なりワープゲートなりを使わねばならない。
そりゃ、普通に考えたらそういった要所の方に戦力は集中するだろう。アズサ殿のような開幕からの出オチにさせる役割の人員は、そう多くはない筈だ。
なので、このレクリエーションの初戦となるのは次の戦いからだろう。己達の集結を阻みたい敵方と、可能な限り多くの人員で纏まりたい味方側。
どんな嫌がらせが待っているのか、楽しみである。
軽く無駄口を叩きながら進んでいくと、気配を感じた。ロミン殿をハンドサインで静止させ、蘇生したドッペルゲンガーを使って先行させる。
カチリと音がして、ドッペルゲンガーの踏んでいる床が少し沈み込んでいた。
感圧式のトラップであるようだ。『アギラオストーン*7』をかなりの数で使用されているトラップのようで、ドッペルゲンガーは焼け爛れて死体になり、COMPに送還された。
多分、火炎使い系異能者が在庫処分に使った奴だな。ストーン系って使う機会がないとダダ余りするし。
「うっわ、ジエンくんモドキが燃えちゃったよわね」
「うむ、奴の苦悶の意思が伝わってくるが、己の代わりに受けてくれたことを思うと感謝の意が耐えんな」
「……仲魔なんだから、もうちょい大切にしねぇか?」
通路の向こう側から、一人の男が現れる。装備の外見はヘルメットとボディアーマーと軍人めいたそれであるが、見ている姿と感じている感覚に違和感がある。装備の外見をなにかしらの術で変えているのだろう。
昨今のトレンドである、『双鬼冠*8、Aマックス装備*9』を組み合わせたものであると推定、胴はスプリガンベストの可能性が強いが、しかし見た目を隠せているのだから別の防具にして吸収、反射相性を作っている可能性はある。
相性を仮定するならば、火炎、氷結反射50%、破魔吸収、呪殺反射、電撃、衝撃、念動、精神50%、魔力、金縛10%耐性、あたりか?
だが、問題はこの男が囮であるということだ。割り込みでテトラカーンを張られて体勢を崩され、一気呵成に攻められでもしたら目も当てられない。
索敵を重点的にやる必要があるだろう。
「じゃ、行くぜ」
「うむ、やろうか」
どうにも敵はサマナーであるようで、携帯電話型COMPを用いて『邪神アリオクLV55*11』『龍王グクマッツLV58*12』を召喚した。
召喚スタイルとしてはアプリ式に似ているやり方のようだ。遠距離攻撃を付与する邪神と接近攻撃に対処する龍王の組み合わせで、引き打ちで削るスタイルに見える。
こちらが召喚しているのは『地母神ティアマット』と『邪龍ティアマット』、そしてロミン殿の直掩に回した『天使ケルプ』の三体だ。
敵方のスタイルに合わせるという訳ではなく、こちらもアプリ使いの3体チーム戦法で遠距離戦の構えを取る。
「トラップゾーンには踏み込まんさ」
「楽にやれはしないか」
思うに、向こうがわざわざ仲魔を召喚する前に姿を晒したのは己を釣るためであったのだろう。突撃して罠にかかればそのまま近接戦闘用の悪魔を召喚し、罠を躱せば遠距離防衛タイプの戦法に切り替える。
召喚速度に自信のあるタイプかどうかは見るだけではわからない。案外仲間が『サバトマ』あたりで支援している可能性もあるが、可能性の一つとして頭の隅に置いておく程度でいいだろう。
どのみち、敵が一人でいるわけはなく、増援は必ずやってくるのだから。
「距離に付き合ってくれてありがとよ、アリオク! 『混沌の息吹*13』を起こせ!」
邪神の種族スキルにより、敵の射程が通常の四倍になる。こちらは邪龍の『邪念流動*14』にて基本射程が2倍の射程になってはいる。それでも届かないのが、瞬間的に射程を伸ばす邪龍と継続的に射程を伸ばし続ける邪神の違いであるのだろう。どちらも便利だ。
「先手は貰うぜ、そのまま死にな!」
「やってみせろ、そんなに打点はないだろうがその構成!」
バトルスピードの関係というより、待ち伏せをしていた地の利の関係で敵に先手を奪われてしまう。
まぁ、どちらにせよ敵に先手を渡すことで敵の狙いを確かめる時間的余裕はあったしロミン殿の行動順を合わせる関係もあるので先手は譲るつもりではあった。のだが、譲ったと奪われたでは気持ちのノリが大きく異なる。
「おのれ貴様、ぶっ潰してやるぞ!」
「すげー逆ギレされてる気がすんだが?」
敵方の攻撃を見る。
敵の一発目は先生発動スキル『S決死の覚悟*15』
スピード遅めに見える敵チームの弱点を補強しているらしい。
続いて、敵サマナーが『マハタルカオート』*16』を発動、アリオクが『マハラクカオート*17』を発動。敵の攻撃力と防御力50%が上昇し、己達の攻撃力を20%弱体化させられる。こちらからの打点は40%になる訳か? 弱体はともかく、敵の強化解除はしないと打点にはならなさそうだ。
先手にてオート系で重ねるというのはよくある戦法であるが、敵の先制発動スキルの『S決死の覚悟』は珍しく思う。EXTRAが得られないデメリットは『邪神』を使うなら問題もないのだろう。
「……絶対に先手を取りたい理由があるなら、仲魔には速度特化を入れる筈。なにかあるな」
「さてな、深読みしてくれ」
敵側の必殺は置いておいて、小手調べとして攻撃が始まってくる。
アリオクの『デスバウンド*18』が放たれる。物理反射ノックをする前に攻撃してくるのは『サードアイ*19』かなにかのバックアップがあるか、素の耐性がバチクソ強いイシュタルとティアマットに何かしらの耐性付与スキルを仕込むことはないだろうとタカを括られていたかどちらかだろう。
タカを括られていた方だと思いたい所だが、まぁサードアイ系列であると仮定。
デスバウンドの属性は物理属性の剣技属性でで飛んできている。イシュタル、ティアマット、己は皆等倍耐性である。
が、ティアマットとイシュタルは共に尋常でない体力をしているので一発で落ちたりはしない。己は一応受け切れるラインではあるのだが、五発ヒットが全て高乱数かクリティカルが混ざったりすれば落ちかねない。50%カジャが結構痛い。
とはいえ、イシュタルとティアマットが生存していることにより己の位置にダメージは届きづらくなっており、耐久力はいくら誤魔化せている*20。
今回飛んだのは三発、クリティカルはなし。クリティカル確率が高くなる『コロシの愉悦』の類の気配もない。ただ普通の打点で振っているだけのようだ。
「……物理激化もないか? 。55レベルのビャッコから引き継げる筈だが」
そして、敵サマナーは雑に魔石を使ってアリオクを回復し、グクマッツは適当そうにATTACKをし、イシュタルが素で受けて手番は終わりだ。致命傷を受けることは特にない。
「よいしょ! 支援かけていくわよ!」
「サマナー、私は背後からの奇襲に備えます」
ランダマイザを持っているが、射程の関係で敵に届かないケルプは暇なのドッペルゲンガーを蘇生しつつカバー待機、ロミン殿は、エレキギターをかき鳴らし己達に『勇奮の舞*21』を発動する。
そして己達は邪神の射程距離から離れ『邪念流動』を発動、射程を基本の6倍に延長させ、邪神の攻撃の外側からの攻撃を狙う。
「カァアアアア!」
が、戦闘開始時にアリオクの『マハラクカオート』クグマッツの『タルンダオート』に加え、『テトラカシフト*22』が発動する。
「……ん?」
アプリ殺法に付き合っていることでターンの経過が途切れ、強化弱体が消えるのは当然のことだ*23。なので戦闘開始ごとにオート系スキルが起動するというのもわかる。でなければロミン殿とタイミングを合わせて補助を受けてから即攻撃なんて面倒なことはしなくてよかったのだし。
「……いや、やばくないか?」
え、これ崩すの相当面倒だぞ? という弱音が湧いてくる。
かなり嫌な予感がしているが、ティアマットの『シバブー*24』、己の『パンデミアブーム*25』、イシュタルの『マリンカリン*26』の3種の状態異常を放り投げる。
『シバブー』は『緊縛』の属性、『パンデミアブーム』は『身体状態異常』の属性、『マリンカリン』は『神経』の属性だ。
どっかしらのバステが入ってくれないかな? というお祈り行動であった。『風邪』はアリオクにヒットしたが、それだけ。敵サマナーには無効で、クグマッツには有効だが外れた。『奈落のマスク*27』のような全異常耐性の気配がする。
シバブー、マリンカリンは共にヒットせず。両サイドにシバブーは有効ではあったらしいが、やはり通らなかった。マリンカリンは敵サマナーを狙ったが、またしても無効。
風邪、緊縛、神経と3種が無効になったことから、装備にてかなり広範囲の無効耐性をつけているようだ。自前スキルで『身体状態異常無効』なりをつけているか?
Aマックスの全耐性にて50%になっているとか、双鬼冠にて10%耐性になっているとか可能性は判別できなかった。無効で弾かれているので、%耐性というわけではないからだ。
「堅実であるな……」
「近接距離で戦闘を継続すれば、オート頼りの補助は解除できるぞ?」
「地雷原を前に構えてよくも言う! 踏み込んだら罠でボコボコにされるであろうが! さっきのドッペルゲンガーのように!」
まぁ、異界の性質としての罠でなく人間が自前で作った罠であるから、踏みまくって人海戦術で枯らすことはできる。しかし、そうして罠にかかっているところを邪神の射程でタコ殴りにするのは目に見えている。
「実質的な初戦からこれかぁ……あんまり時間は使えんのだぞおのれ」
ので、作戦を変更する。
「行けドッペルゲンガー! ヴァーチャー! 死んでこい!」
タコ殴りにされていい雑魚どもを使った、ゾンビアタックである。
仲魔の構成は切り替えず、追加でドッペルゲンガーとヴァーチャーを召喚する。5体制御モードだ。
先日のレイドバトルで5体制御は己にかなりの負荷をかけるということは理解できている。MAG消費量や、体力消耗の増大だ。
が、雑魚二人を前に送り続けるだけで、かつ己の戦闘を並行して行わないのならどうにでもなる。
「さぁ! 踊ろうか!」
「ハッ、踊るだとか妙な言い回しを……ってホントに踊るやつがあるか⁉︎」
「あるのだよ、踊る必要が!」
唐突に踊り出した己のステップに合わせ、ケルプとイシュタルも動きを合わせてくる。
伊達や酔狂という訳ではなく、『パーティMPリカバリ』によるサマリカームの消耗回復のための行動である。
「……えっと、これBGMとか流した方がいい感じ?」
「おうとも! 頼むぞロミン殿! ノれる奴で頼む!」
「正直ノリに全然ついて行けてないんだけど……」
などと言いつつロミン殿の音楽は勢いのあるものだった。ロックンロールという奴だろうか? 音楽の分類とかは知らぬが、元の世界で親戚と組んで音楽活動をしていたというロミン殿の音楽の腕は確かだあるらしい。
気持ち的に、MP回復の速度が上がっている気がする*28ぞ!
「……ドッペルゲンガー、我々は付くサマナーを間違えましたね」
死んだ目をしたヴァーチャーと、目が影になっているので死んだ目かどうかはわからないドッペルゲンガーが淡々と前に進んでいく。
罠を踏み、ストーンの魔法にて吹っ飛んで、敵サマナーにトドメを刺される。そしてケルプとイシュタルのサマリカームにて蘇生され、己により召喚されられ、また罠を踏む。
「……シュールな絵だが、有効な手筋で腹が立つ!」
「己が踊り続ける限り*29、サマリカームは止まらぬぞ!」
ことここに至っては、己の初戦の戦闘データが敵側に共有されていることが良い味を出している。
ヴァーチャー、ドッペルゲンガーの2体が揃えば『オール1』にて盤面を壊滅させられる可能性が見えており、しかもヴァーチャーは『サバトマ*30』持ちだ。
そして、サマナーの姿を模しているタイプのドッペルゲンガーには、『サバトマ』を所持している奴*31もいる。
2体両方排除しなければ、蘇生されたもう片方を召喚され、『オール1』を発動させられる可能性が見えているのだ。
そうすれば、控えているティアマットの『邪念流動』にて射程を伸ばしたロミン殿が『メギドストーン*32』でトドメを刺すことができる。
無論、敵の『S決死の覚悟』にて先手を取られ合体魔法が阻止される可能性はある。が、アリオクのデスバウンドは物理属性、ドッペルゲンガーの耐性で反射できる。
とすれば、グクマッツの攻撃にて狩りたいところだろうが、タルンダオートを使うタイプのグクマッツは氷結、衝撃使いが多い*33。衝撃はヴァーチャーが無効にでき、氷結は等倍止まりなので一撃で落とされはしないだろう。そもそもこいつも物理寄りのステータスであるから打点出ぬし。
とすれば……
「『刹那五月雨撃*34』だ!」
アリオクが全体小ダメ2〜5回の刹那五月雨撃にてドッペルゲンガー、ヴァーチャーを攻撃してくる。弱点を突かれたドッペルゲンガー*35は普通に蜂の巣にされ、ヴァーチャーも大ダメージを受ける。そして残ったHPを敵サマナーが銃撃にて刈り取る。
グクマッツの攻撃の威力は先ほどイシュタルの攻撃にて測ったので、計算できる。
「『刹那五月雨撃』が『切なさ乱れ撃ち』になるまで、何回必要であるかな?」
「最低回数でも乱数で落ちるだろうが……ッ!」
「最低回数なら乱数で耐えるのだよなぁ!」
『刹那五月雨撃』が最低回数2回で、敵の銃撃、グクマッツの攻撃が低乱数であればヴァーチャーは耐える。ドッペルゲンガーは2発あればちょうどくらいで死ぬだろうが、ヴァーチャーの行動までにバックアップが蘇生可能なので、戦闘前にヴァーチャーが『サバトマ』を行えば2体の状態で戦闘を開始できる。
それで勝ちという訳では決してないのだが、負け筋がありありと見えている状態で攻められるのはメンタルに来る。遠からず盤面の変化が起きるだろう。
「さぁ、消耗戦だ!」
「クソが、こっちがしんどい盤面だってのになんであのガキども音楽鳴らして踊ってんだよ! 良いギターだなぁファンになりそうだ!」
ロミン殿はギターにてアドリブを入れたのか? いつもと違う音が鳴って、ギュイーンという感じに格好良かった。
意味合いとしては褒められたことへの返礼だろう。アドリブもお手のものらしい。
そうして、5分の時が過ぎた
「ねぇ、自分でBGM要る? とか言っておいてあれなんだけさ……疲れた」
「もうちょい! もうちょいでタイミング合うので続けてくれ!」
「えぇ……」
とりあえず、仕掛けられている罠はドッペルゲンガーたちの
が、なんともいやらしいことに異界由来のトラップもきちんと仕込まれていたことが突破を難しくしている。
方向転換のトラップ*36であるのだが、前進する力が別の方向に流れてしまうのは速度を殺す罠としては満点だ。180度回転トラップであるようで背面を敵に晒してしまうのもいただけない。
が、敵側の備えは奪い尽くした。攻め込む準備はほとんどできている……のだが、タイミングが合わない。
『オール1』を狙っている訳ではない。当てられれば嬉しくはあるが、流石に当たるとは思っていないので。
己が待っているのは、『邪龍』、『邪神』の射程延長を使った際に起きる動きの鈍り*37だ。
敵側はヴァーチャー、ドッペルゲンガーを迎撃するために自ら攻撃をしているため、動きが鈍るタイミングは多くある。
敵の攻撃が終わった瞬間に一気呵成に攻め立てるのがこちらが勝つための形であるから、雑魚どもの支援をしながらタイミングを合わせているのである。
が、敵側もそれを理解しているようで攻撃タイミングを遅らせたり、あるいは無理めな攻撃にして早めたりとタイミングを崩しに崩しまくってくる。
その駆け引きがあんまりにも上手いものだから、攻めあぐねているのだった。
──カタンと、どこかから音がした。視界の中にある情報ではない。視界外で、かつそこそこの近さから感じた『空気の変わる音』だ。
この音を発した存在の動きによって、この膠着状態は意味をなさなくなる。それを己は理解した。おそらくは、敵サマナーも。
「ヴァーチャー、ドッペルゲンガー、分かれろ!」
ヴァーチャーとドッペルゲンガーを同一チームでまとめるのではなく、2つのチームとして独立させて突撃させる。
対して敵は、ヴァーチャーたちが一息で近づける距離から離れた。
| ド | ヴ | 罠 | 敵 |
赤 敵攻撃範囲
「たたみかけろ!」
最悪である。的を散らさせ、死んだ方を蘇生して『サバトマ』してから突撃、という流れを叩き切られた。
それだけではなく、己たちからの距離も広げることで、己が突っ込む奇襲の失敗率も高めている。
なので、ここは己を囮にするしかない。己自身が敵の射程内に入ることで、敵に選択肢を与え、迷いを生み出させる。
『悪魔合体ライト*38』を用いて『霊鳥』か『妖獣』を生み出し奇襲をかけることも考えたが、中央の回転トラップがなかなか邪悪に働いており加速したまま一息に戦闘に持ち込むことは難しい。
己だけなら180度回転した瞬間にバック走に切り替えることは可能なのだが、仲魔の動きも合わせるとするならば一呼吸必要になる。そうなれば、敵の行動は間に合ってしまうだろう。最悪逃走アイテムで逃げられて、別の地点で待ち構えられかねない。
奴を仕留めるには、近接戦闘距離で捕まえて2ターン目にもつれ込ませる必要がある。オート系祭りに『テトラカシフト』まで存在している奴の布陣を1ターンで崩すのは、己には不可能なのだから。
先行したヴァーチャーが回転トラップに引っかかった瞬間にドッペルゲンガーを送還し、ヴァーチャーに『サバトマ』を行わせることでチームを再編成、かつ己、ケルプ、イシュタルのチームで可能な限り突っ込む。
罠の上にヴァーチャーのチーム、その一つ後ろに己たち、その向こう側に少し離れて敵がいる。
| ↓罠 | ||||
| ジ | ヴ | 敵 |
距離は4、敵の『邪神』の『混沌の息吹』の射程範囲だ。
この瞬間、側面から強烈な殺気を感じた。小太刀を構えて迎撃せんと体を向けることはできたが、先手は取られてしまった。
「通路そのものを偽っていたかッ⁉︎」
「5分待ちぼうけするとは思いませんでしたがね!」
側面からの奇襲から、戦闘が始まる。
術により偽られていたのは柱が砕かれて中に人が入れるようになっていただけの小さなスペースだ。体をうまいこと折りたたんで隠れていたらしい。
「剣属性が通るのは確認済みです」
まず、戦闘開始時に『刹那の刃*39』が発動。己を庇ったケルプが即死する。続いて『奥義一閃*40』が発動。イシュタルを壁にして抜けるが、即死が入って首が飛んだ。
そして、己の手番が始まるタイミングにて『闇討ち*41』が発動。己の首に敵の武器が飛んでくる。
目端に捉えていたが、敵の装備は鎌だった。スリープハルペーとか言われている鎌っぽい武器だろう*42。
「見切った!」
「……ッ!」
その攻撃をすんでのところで回避して、ゼロ距離で『百麻痺針*43』を叩き込む。
ダメージの通り方からして耐性、それも50%の全対応のものだと直感する。見た目通り、カラミティスーツの耐性であるようだ。
が、
「このまま持っていく!」
「何をッ⁉︎」
そして、緊縛した敵の女を抱えたままトラップに突っ込み、回転トラップにより位置替えをする。己は敵の側に敵の女はロミン殿の側になった。
これで、ロミン殿とティアマトからの遮蔽物は無くなった。『邪念流動』にて遠距離からトドメをさせるだろう。まぁ、今ではないのだが。
「ヴァーチャー、ドッペルゲンガー!」
そして、突っ込ませた雑魚2体が戦闘を開始する。『S決死の覚悟』と『龍胴固め*44』にて殴りかかったことでの先手が取れなくなっていた。
しかし、オート系効果は全て発動する。『マハタルカオート』『マハラクカオート』『タルンダオート』『テトラカシフト』の4種類。
「ロミン殿!」
「OK! よろしくティアマット!」
「おんしの力を、妾が流れに載せようぞ」
| 邪念流動 | 種族特有スキル | 邪龍の種族特有高位スキル。基本射程を2にし、スキルとして発動すると射程を+4する。この射程は、攻撃のみならず回復魔法などの射程も含む。 |
| テトラカーン | 補助スキル | 1ターンの間、味方全体に物理反射結界を展開する。 |
そして、ロミン殿の補助が入って物理反射が入る。これで、この2体を瞬殺するいつもの流れは使えなくなっていた。
「チイッ!」
アリオクが手番を遅らせて、敵サマナーが先手を取って銃撃を放ち、ヴァーチャーとドッペルゲンガーの反射を消費させた。
そして、そのおかげで己が割り込む余地が生まれた。
「『フォッグブレス*45』だ!」
己がヴァーチャーのチームに割り込み、敵全体の攻撃力を弱体化させる。これにより敵の攻撃力はタルカジャ分の50%が消失する。
そんな中で放たれた『刹那五月雨撃』は、弱点を突いてもドッペルゲンガーを仕留めるのに至らなかった。
| オール1 | 合体魔法 | 敵味方全体のHPを1にする。ボスには無効 |
合体魔法が通ったことにより、敵味方問わずこの戦闘区域にいる面々は全員
そして、こんな地獄みたいな状況にて敵に択が生まれる。己を仕留めるか、回復をするかだ。
現状戦闘エリアに未発見の敵はなく、回復を急ぐ必要もない。シンプルに、次に動く手番が敵サマナーのものになるからだ。
瞬きの思考の後に、グクマッツが己を攻撃してくる。
己はそれを、ドッペルゲンガーを引っ張って壁にすることで回避する。物理反射なので、チョッピリダメージが入り、オール1の効果と合わさって致命傷になったのがとてもおいしい。
ようやく、
| 龍王砲 | 魔神転生における、龍王の種族特性。射程距離が5〜7であることを利用した戦法。遮蔽物、距離を無視して攻撃を加えることができる |
| 聖騎士の精神 | 自動効果スキル | リーダーが致死ダメージを受ける時、ダメージの半分で身代わりになる。 |
敵サマナーが動く直前に、どこからともなく放たれた砲撃が放たれた。それをアリオクがパッシブスキル由来の骨身に染み付いている動きでカバーして、ダメージにより爆ぜ散った。
盤面がひっくり返り、己たちの勝利が確定した瞬間であった。
そうして、一息つくかつかないかの瞬間にて起きた事だった。
広範囲に対して回復の力が発生する。
これは、『妖精の粉』だ。
| 妖精の粉 | 種族特有スキル | 3マス以内にいる、全ての味方チームのHPが回復し、加えてまれに 『HP全回復』『クリティカル率大幅UP』『行動順にボーナス』のいずれかの追加効果が発生する。この射程距離は、邪龍、邪神のスキルによって延長することができる。 |
おまじないの効果で行動順が早まった敵の女が『瞬間回復*46』にて緊縛を逃れ、行動を許してしまう。
そして、(恐らくリフトマ*47の効果により)トラップを回避して敵サマナーを回収し、『トラフーリジェム*48』にて脱出されてしまった。
なんというか、どいつもこいつも一筋縄で行かない戦士たちばかりで頼もしいやら面倒くさいやらで複雑な気持ちである。
「また仕留め損なったかー」
「まぁ、勝てたんだし良いんじゃない? この道も通れるようになったし」
「それもそうか」
ひとまず、遠距離からの狙撃をしてくれた棗殿にお礼を言うために連絡ツールを起動する。
ついでに、『絶好のチャンスなのにサマナー仕留められてないでやんの!』と煽っておこう。反応が面白そうだし。
執筆やらに気を取られていると他の作品に対して感想やらコメントやらを書く気が湧かなくなる問題。
自分がしてもらえて嬉しいんだから、コメントやツイートはもっと雑でもバシバシした方が良いとは分かってるんですがねー。難しいです。
・雑魚2匹
ちょい役で登場させてあと適当に合体に使っとくかー、くらいの気持ちで登場させたら今回大大大活躍した面白き雑魚共。
死んでも良い連中が万能即死技とサバトマ持っているのが本当に便利でした。
・ジエンくん
オール1が警戒されたのでオール1を擦って一発屋の印象を植え付けようという狡い手を考えている系主人公。オール1を擦ってるのはともかく、そこに持っていくまでの手筋がエグかったのでバリバリに警戒され始めている。
尚、真4F式召喚なので召喚にマッカは使われないのだが、それを知らない面々からはこんなレクリエーションにてゾンビアタックを使い、アホほどのマッカを浪費している少年として見られている。お金関係ちゃんとできてる? と不安がられることが以降ちらほらあったとか。
ゾンビアタックとかとは別の理由でお金関係をちゃんとしていないので、結果的にその心配は正しくなっている。
攻撃や回復系スキルの射程が4マスになるが、自チームにEXTRAが発生しない。攻撃時の行動順遅延が大きい。移動力−1。