姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝 作:気力♪
風切音が鳴る。
風車の合間を縫って扇子がぎゅいんと飛んできた。雷市殿がカバーに入るが、鋭角に曲がって入ったためガードの内側に扇子が刺さり、追加効果の『老化*1』が発症した。
そこに差し込まれる形で、するりと動き出す者がいた。
| 弱者必滅拳 | 物理スキル | 敵単体に物理属性小ダメージ。状態異常の相手には大ダメージに変化 デビサバ2 |
「クソがッ!」
「ゴグマゴグ!」
老化状態でステータス、とくに『耐』が半減している中での直撃は不味いので、カバー待機させていたゴグマゴグを差し込んでいく。
ゴグマゴグには、物理反射耐性がある*2のだが、ダメージがおおよそ3割ほど通っている様子だった。『準物理貫通*3』だろう。
また、ゴグマゴグはバッドステータスを受けていないのにも関わらず、弱者必滅拳でのダメージ量はかなり大きい。やはり、物理特化型であるようだ。
「あいも変わらず音もなしに変形しているなぁ!」
「無駄口を叩いている時間はあるのか?」
風車男の言葉の通り、無駄口を叩いている時間はない。雷市殿、ゴグマゴグのダメージを回復するために『メディアラハン*4』を放ち、ついでセナ殿が雷市殿に『ロイヤルゼリー*5を使い、ダメージを軽減。
そして、遠距離からの『メギドラ』が放たれる。
ダメージはそこそこ、雷市殿は魔力低めなので、老化状態でればレッドゾーンに入るか? と言う程度だ。が、ロミン殿には間違いなく致命傷になるので『防御』をさせている。
今回の被弾は、ゴグマゴグ、雷市殿、己にセナ殿の4名。被弾していなかったシャナイア殿が反撃に銃撃を放つが、またしてもネーデルガンダムは風車の形となっており、ダメージは通らない。
これで、3度目だ。
「おいジエン! まだ分かんねえのかよ!」
「メギドラに被弾した敵が変形すのは間違いない! 変形した後に異界の壁のような破壊の難しい物体になるのもな!」
「だが、どうやって
現在、最初の整列していた風車の群れの中から戦闘を行い、乱れた場所にあるものは
初回、2回目、3回目と共にネーデルガンダムは別の風車を変形させて襲いかかってきた。
レベルの高さから考えて、中身(があるのならであるが)はおそらく一人であると判断できる。体の動かし方、技のに至るまでの鋭すぎる動きからしてみても、あんな怪物が2人も3人も固まっていることは考え辛い。
現役デビバス側は、このレクリエーションに参加している人数が少ないのが理由だ。
「また来たよ! 扇子!」
「シャナイア殿、撃ち落とせるか⁉︎」
「無茶言うな。あんな変幻自在に動き回るものに銃弾なんて当たらない」
開いた扇子が高速回転しながら風を切り飛んでいく様は、ドラゴンボールにあった『気円斬』のようなものである。扇子ってどう考えてもそういう使い方をする者ではないのだが、事実として高速回転しながら飛んできているのだから認めざるを得ない。
で、その扇子が縦横無尽に動く理屈は、風車状態のネーデルガンダムたちがおこす微弱なる風やMAGの流れによるもの。各風車はいずれも回転が微妙に異なっており、周囲からの風をより多く受けて強く回るもの、自ら回転して周囲に風の流れを生み出しているもの、あるいは、不思議な動き方をせず風を受けて普通に回っているものなんかもある。
この閉所の中庭で風車が回るほどの風が来るというのも不思議な話なのだが、今は頭の隅に入れておくだけで放置する。そこを考えるリソースは足りない。
「……今のところ、無理をしなければ事故る要素はないか?」
「……ロミンの奴にメギドラ当たったら死ぬぞ」
「ごめん、私足引っ張ってる」
「構わない、最初に狙われるのがロミン殿か己かくらいの違いだ。大勢に変わりはないよ」
正直、ロミン殿を守っているのは現在膠着状態だからである。敵を仕留められる算段がついていれば、ロミン殿の犠牲を前提として攻め込むのは普通に選択肢に入るのだし。
しかし、今はその攻め手が見えない状態だ。ならば一つでも多くの選択肢を残しておきたい訳なのである。
「待って皆、定期報告の時間もうすぐだよ!」
「シャナイア殿、任せる。他の面子は警戒重点に」
「アンタも私も無様に足止め喰らってるって報告するけど、いいの?」
「事実であるからなー」
そう言いながら、シャナイア殿がとんとんと目の横を叩く。「いちおう私も」とセナ殿も同じ動きをした。
シャナイア殿とセナ殿には『瞳*6』と呼ばれていた通信デバイスが埋め込まれているらしい。この世界の通信規格に合わせるために
惜しむは、幼少期に埋め込まないと効果のないタイプの装備であることだろう。生まれてすぐ埋め込んで、脳や体の成長に合わせていい感じの位置になるようにするらしい。よく知らぬが。
セナ殿とシャナイア殿は似たような技術を使っているものの、同じ世界の出身ではない。いや、ルーツは同じなのかもしれないが、枝分かれして久しいらしい。
ハコニワ戦争と呼ばれるシェルター同士の殺し合いがあったらしい。世界が滅んでから、シェルターを維持するための物資なり土地なりを奪い合うための殺し合いだとか。
そんな戦いにて使える戦士を育てるために人造生命体をひたすらに蠱毒めいた箱庭の中で争わせていたシェルターが、あるいは世界があった。セナ殿の出身のシェルターである。
で、そんな世界から離反して、抵抗活動をしていたシェルターもあったらしい。シャナイア殿のシェルターだ。
そこそこの勢力でそこそこ大きな殺し合いをしていたらしいが、別勢力の悪魔達だとか、なんでも食べまくる妙なのとかに横殴りされた結果共倒れしたとか。そんな壊滅状態のシェルターから脱出艇にてこの世界に転がり込んだのがセナ殿とシャナイア殿らしい。
どちらも一兵卒、あるいはそれ以下の地位であり、さして思想にかぶれてもいない。だから、聖華に入学できたのだと思っている。
「……セナ、通信できてる?」
「繋がらない……これって、通信妨害?」
「ローテーションを組む。ロミン殿、雷市殿、己の順に通信を試みるぞ。その他アナライズなど妨害されていないか確認してくれ」
ちらっと背後を見る。己達がやってきた方向は大まかな方向こそわかるものの、襲撃してきた風車が動いたことによって扉そのものへの視界は遮られていた。
「ごめん、私のスマホもだめ」
「……チッ、俺のもだ。高い割に使えねえんだな」
「ガントレットでの通信もダメだな。データの送信そのものは不可能ではないらしいが、送ったデータがサーバーに届いていない。中庭を巡るMAGと風が電波を遮断しているらしい」
己達のシステムは分散型ネットワークシステムにより、近場の仲間を辿って辿ってメインサーバーのルールー殿の元にデータを送り、ルールー殿の元から同じルートで情報が返ってくるというものだ。
学生組は間に合わせで幾らかの中継アンテナは持ってきているが、そう多くはない。体育館とかの大規模拠点を攻める際の要所要所に使う程度の数しかなかったはずである。
この風のジャミングを超えた先に、己達のデバイスが届く距離にはアンテナはない。通信は途絶しているのだろう。
次いで、オートマッピングを確認する。
しかし、マップデータが破損してしまったようでこの中庭フロア内でのマップを表示することはできなかった。
おそらくこれもジャミングの影響だろう。方式によっては、オートマッピングに使うレーダー波を阻害し、自動記録を妨げるものがあるのは知っている。
要は、ダークゾーンと似たような動きだ。シュバルツバース調査隊の使っていた超高性能デモニカであればダークゾーン内をマッピングすることすら可能*7なのだが、一般出力のCOMPではダークゾーン内のオートマッピングをすることは難しい。
「……ひとまず、引いて報告だけはするか」
「チッ、尻尾巻いて逃げんのかよ」
「アンタだけ残って戦ってれば?」
「それで勝てる相手ならやっとるわ。勝てねぇからウザってえんだろうが」
雷市殿とシャナイア殿が若干ギスりながらも、しかし同じ向きを向いて話し合えている。シャナイア殿の銃撃や立ち回りは正確なものであったし、雷市殿の身体を張ったディフェンスも有用なものだった。
「死ねよクズが」から「使えるクズ」くらいに好感度を上昇させてくれたらしい。良きかな良きかな。
「……ところでさ、私たちってどっから入ってきたっけ?」
「いや、そんなん後ろの扉からだろうが」
「どこの後ろよ。というか私たち今どっち向いてんの?」
「南側の扉からある程度まっすぐ進み、そこから82度左に曲がって500メートルほど進んでいる最中だ。戦闘でいくらか角度はズレているだろうが、向いているのは西側であるはずだぞ」
「けど、『瞳』では、いま目の前が北になってるよ」
「私のCOMPだと、南になってるわね」
ガントレットから工作の課題で作ったコンパスを取り出し見てみる。北を指し示す針はぐるぐると回転していた。
頭上の光を見る。光源は直上のまま、東から登って南に沈むという太陽の軌道を使っての方角認識も出来なさそうだ。まぁ、そもそも光源が太陽と同じ動きをするかといえば微妙なのだけれど。
「私たちを、迷わせようとしてる?」
「提案だ。今から左手方向に直進したい。それで南側の壁に出る筈だ」
皆が頷いたのを確認し、撤退よりの動きを試みる。
「甘いな」
「……そう何度も喰らわねぇよ!」
風車が変形し、ネーデルガンダムになってからの奇襲が入る。しかし、雷市殿が完全に受け流したことでノーダメージで凌ぎ切れた。
……待て、なぜネーデルガンダムの攻撃から入った?
敵の攻撃パターンは常に扇による曲射が先であった。縦横無尽に飛んでくる扇の
で、あるならば……
扇を投げる奴が、他のことに動いている?
「……ッ⁉︎チェンジだ、ゴグマゴグ!」
感じた悪寒のままに、ゴグマゴグを別の悪魔にする。はたしてどうなるかは、流れ次第だ。
ケタケタと、ネーデルガンダムの左の風車の屋根の上から悍ましき笑い声が聞こえてくる。敵影は二つ。おそらく人間1に悪魔1。
一人は、白銀の髪色をした和装の少女。手元には忌々しい扇が畳まれた状態で握られており、彼女が扇をぶん投げていたのは間違いないだろう。
一体は、悪魔であった。感じたのは『堕天使ネビロス』の気配。レベルは隣の彼女と同じくらいので、52とかその辺りだ。
距離は程近く、これまでの影も掴ませぬ魔法狙撃とは異なり戦闘可能な距離だった。そんな中で、まずネビロスが動き出した。
| デビルスマイル | 魔法スキル | 敵全体に『恐怖』の状態異常を与える |
「嘘、みんなに恐怖が入った⁉︎」
「この通り方、いくらなんでも異常よ!」
ロミン殿とセナ殿が、恐怖を抑え込みながらの震えた声で叫んでくる。
こんなバステの命中率、パッシブスキルで成功率を盛っていたとしてもそう起こるものではない。まるで『澱んだ空気*8』でも使われている……ような……ッ⁉︎
「そのための風車、そのためのフィールドか!」
「何を……嘘でしょ?」
シャナイア殿も気づいたらしい。敵方がこの風車空間を生み出した狙いの一つを。
各地の風車の生み出す風の流れによって空気の流れを調整して己たち周辺の空気を滞留させ、澱ませていたようだ。だから、風を受けていないのに風車の羽は回転していた。印象で騙しに来ていたようだが、実際のところ風車というより扇風機としての動きの方が正しかったらしい。
「クソが、クソが! クソがよ!」
雷市殿が『恐怖』を押し殺しながら、叫んでいる。今にも逃げ出してしまいたくなる心を、叫ぶことで留めているのだろう。
「奇襲を仕掛けながら、貴様らの耐性は探らせてもらった。精神バッドステータス耐性が万全でないということは、こういう死に方をするとということだ」
「お金がなかったから、入手する機会に恵まれなかったから、そういう事で防具を確保できなかったことも分かります。ですが、敵はそんな事情を考慮してはくれないのです」
風車の男が淡々と語り、銀髪の娘は綺麗な声で、諭すように告げてくる
そして銀髪の彼女はまるで号令をかけるかのように、己達に扇と力を向けてきた。
「今回の敗北は、勉強ということに」
この攻撃を通したら全滅する。なので、賭けに出る。
「……ククク、その程度で? 敗北を確定させたと? 笑うのか?」
「事実、あなた方はもう終わりです」
「己達とさして変わらぬ歳の頃で、己達とさして変わらぬ経験で、上からの視点で己達を見下しているつもりか? そんなことだから、気付けぬのだよ、自分たちの敗北が間近であることに! 気付けぬのだよ、自分たちが詰みに入っていることに!」
そうして、己は真っ直ぐに指を刺す。その先は、己達の入ってきた入口だ。
「この殺し間の作りはシンプルだ、風車を並べ、全てが同じ方向を向いているのだと錯覚させながら全ての風車の向きを動かして己達の方向感覚を失わせるもの! 奇門遁甲の陣というのだったか? 最近アニメで見たぞパリピ孔明を!」
「なッ⁉︎」
「いかん、耳を貸すな『
トリックの一端を暴いたことで
「こんな戦場の端だが、ルールはルール。全てを制圧しなければならない以上前半戦にて全力で仕掛けるのは常道だ! だからこそ己たちはサマナー1とバスター4という相当な大人数でやってきた! だからこそ貴様らは面倒な下準備をしてこんな狂気の風車林を生み出した!」
「そこまで読んでいるのだから、増援の一つや二つ、呼ばないと思ったか!」
「……ッ!」
「まぁ、呼んでないのだけれどな」
| ムダ話 | 悪魔会話(バロウズアプリ) | 会話に成功すると、敵の行動回数(プレスアイコン)を一つ減少させる |
「相変わらず窮地に口が回りますね、サマナー」
| 孔雀明王 | 自動効果スキル | 全ての状態異常にかからなくなる。自ターン開始時、次の連動効果が発動する。 「味方全体の状態異常を全て回復する」 |
マハーマユリが動き出したことにより、孔雀明王の加護が働いて皆の恐怖がかき消えていく。
「捉えましたよ、貴女!」
| 衝撃ハイブースタ | 自動効果スキル | 衝撃属性で与えるダメージを25%上昇させる |
| 衝撃ギガプレロマ | 自動効果スキル | 自身の衝撃属性での攻撃力を40%上昇させる |
| 慈愛の旋風 | 魔法スキル | 敵単体に衝撃属性特大ダメージ(威力170)を与える。攻撃が成功時、味方全体のHPを中回復する(回復力80) |
マハーマユリのギガプレロマ、ハイブースタの込められた特大衝撃魔法がユメサキなる少女に直撃する。
「マッスルドリンコで耐えられた! シャナイア殿!」
「言われなくても、やる!」
マハーマユリの力を受けて精神の安定を取り戻したシャナイア殿が二丁の拳銃に込めた力を同時に解き放ち、『ポイズンアロー*9』を放った。しかし、隣にいたネビロスがそこをカバーした。あの動きは『騎士の精神*10』のようなオートカバーであるだろう。手番を使った能動カバーはまだ使える筈。
「まだ、行ける!」
続いてセナ殿が踏み込んだ。
巨大なハンマーの柄を収納し、巨大なボールとなったら武器をぶん投げてスキルを発動させていた。
| 金剛発破 | 物理スキル | 敵全体に物理属性大ダメージ P3 |
着弾したボールから放たれた衝撃波をネビロスが『カバー』に入ってユメサキ殿を庇う。
敵のネビロスはおそらく物理無効、銃撃弱点のネビロスがベースになっているタイプの悪魔。それが合体などにより銃撃無効あたりの耐性が入っているのがアナライズに現れている。
ただ、そんな耐性は無駄だった。セナ殿もシャナイア殿も、武器に貫通がついているタイプなのである。COMP改造のそれではなく、装備自体にスキルが備わっているタイプのそれだ。
「セナ、合わせて!」
「うん!」
そして、ロミン殿がギターに付けられているデッキケースのようなものから一枚のカードをドローし、ギターにセットした。どうにも、あのデッキケースの中で力を溜めることで、身の丈に合わないスキルを発動することができるらしい。
デュエルディスクみたいな機構だなーと見ていてずっと思っていたが、本当にデュエルディスクであったらしい。手捌きがモンスターを召喚する時のそれだった。
「スペルカード、『アプサラス』!
「『ワンスモア*12』!」
金剛発破にて炸裂したボールは、セナ殿の元に跳ね返りながら柄をのばしハンマーへと戻る。それを『ワンスモア』の効果を受けて攻撃の反動が消え、動きが加速したセナ殿が空中でそれを掴む。
その跳躍の勢いのまま再び放たれた『金剛発破』は、違いなくユメサキ殿に直撃したかに見えた。
「なっ⁉︎」
「そりゃこうまでたくさん持ち込むわけか
しかし、そんな必殺のタイミングでの一撃は、まさかの相手からのカバーによって防がれてしまった。ユメサキ殿を庇ったのは
アナライズデータには、こう現れる
| マシン | ネーデルガンダムMk.33 | LV48 |
「レベル48?」
「けど、やっつけられた! 風車になってない時は、そんなに硬くないよ!」
ユメサキ殿は、ネーデルガンダムに一言「ありがとうございます」と告げ、『トラフーリストーン』にて転移し、離脱した。ネビロスも共に消えたので、ネビロスのサマナーでもあったらしい。
「ふっ、やはり正しかったようだな。彼らに眠る
「何だと⁉︎」
「問われたのならば、語るとしよう! 彼らの胸にある誇り高き魂の話を」
あ、これ長くなるやつだ。おそらくはムダ話であり、ユメサキ殿が体勢を整えて戻ってくるのを待つのが狙いであるだろう。
しかしながら、こちらにはそのムダ話に乗ることで得られるメリットが存在する。
「
「まるで風車の迷宮をすでに打ち破ったかのような口ぶりだな、少年」
「打ち破ったとも」
「出口は、そこを真っ直ぐ行ったところよカモフラージュの裏だろう?」
今回の戦いでは基本的にハッタリでしか話してなかった己であるが、今回は珍しく根拠のある話である。
「トラフーリによる戦闘回避は、安全だと本人が確認している場への転移だ。ユメサキ殿がどのような者なのかは己は知らぬが、己達が既に制圧している入口付近を安全圏と思い込んで逃走を図ろうとはしまい」
「なるほど、転移の気配を辿ったか」
「そんなところだ。
周りの皆がちょっと引いているのを感じる。コツはMAGの残滓を嗅ぐことだ、とドヤ顔で語って誰にも理解されなかった過去のことを思い出すが、まぁ正直なところ転移の流れを確認できるかは運であるし、転移して逃げた相手に追いつけるかも運である。
「それも、ハッタリか?」
「さてな、行って調べれば分かるだようよ」
「おいジエン、一人でやる気か?」
「己一人でやるのが一番効率がいい。己はこの中で最強であるからな」
「それは甘く見ているな、
「それこそ甘く見ているぞ。この中で己が最も強いが、己を含まぬ皆の方が己より強い。先のユメサキ殿を倒し、部屋の制圧を完了できると知っている」
「……信じているとは、言わぬのだな」
「信じるというのは自明でないこと願ってを言うのだろう? 国語の勉強はそれなりに頑張っているのでそこは分かるぞ」
楽しそうに語るネーデルガンダム。向こうの狙いとしては、最上が己含め全員を足止めし味方の増援を待つこと、次善で己を足止めして己以外を味方がやるのを支援すること。
対して、こちらはその逆。目の前の男を瞬殺してユメサキ殿を確固撃破するのが最上、次善が目の前のネーデルガンダムを己が足止めし、仲間達が部屋の制圧にかかること。
次善と次善が重なり合った現在、奇妙なことに己とネーデルガンダムの目的が一致しているのだった。
「……少年少女よ、行くといい」
「チッ、クソが。勝手に決めてんじゃねえよタコどもが」
そんな雷市殿の悪態に笑みを浮かべるネーデルガンダム。いや、顔パーツは変わらないのだが、雰囲気的に笑っている気がするのだ。
「ジエン、負けたら承知しないわよ」
「大丈夫! 私たち、ちゃちゃっと勝ってくるから!」
「……チッ」
ロミン殿とセナ殿が己に励ましの声をかけ、シャナイア殿は結構派手な舌打ちをして『己に頼るのはかなり複雑だが、それはそれとして己以外に選択肢がないことの苛立ち』を表現していた。
皆、任せてくれたようだ。
皆が、真っ直ぐに奥へと踏み込んでいく。
その背中に目の前の男も、他の風車どもも奇襲を仕掛けたりはしないらしい。
「さて、では約束の通りに語ろうか。この誇り高き戦士、ネーデルガンダムがいかにしてやってきたのかを」
「貴様の語りは真を突く、面白い話になるだろうな。悲しむべきはポップコーンとコーラがないことか」
「こちらにて用意をしているが?」
「毒を飲む気はないよ。胃腸が頑丈故に死なぬだろうが、毒を吐いた後はしばらく舌がバカになるのは避けておきたい。打ち上げにホットケーキパーティーを企画しているのだよ」
「ほう、パンネクック*13か。私はベリーを多く入れたものを好んでいるぞ」
「打ち上げに混ざる気か? であるならば開催場所を変える必要がありそうだな」
学生の有志だけでは食堂に持ち込みして適当に騒ぐだけで良さそうだが、デビバスの面々を混ぜるのならば校庭でやるのが良いだろうか……と考えていた時だった。
「そこか?」
「ゴグマゴグ」
そんな語りの中から放たれた突然の風の刃。『ガルダイン*14』だ。手足の起こりはなく、胸の風車の回転が瞬間的に増大したことによる疾風魔法の発生だった。
とはいえ風車の回転が早まってから魔法の発生までは0.1秒はラグがあったので、普通にゴグマゴグを壁にしてやり過ごす、
固有スキルのために衝撃属性が弱点のままにしているゴグマゴグであるが、疾風属性は通常耐性。普通に耐えて、普通に終わりだ。
現在、己の召喚している仲魔はマハーマユリとゴグマゴグ、加えて
ドッペルゲンガーは敵の視界に入っていない位置で待機できているものの、まぁ気付かれているだろう。チェンジして遠距離に仲魔を置く起点にするか、素直に帰還させるかくらいか?
「まずはデバフからだな。『フォッグブレス*15』!」
敵が奇襲をかけ、それを失敗したことで完全に流れはこちらが取った。
まぁ、抵抗が少なかったので取らされたのだろうなとは思う。
なので、素直にデバフから入る。
続いてマハーマユリ。攻められはするのだが、ここは『ラスタキャンディ*16』を使用、己達に一段階の強化、敵に一段階の弱体が入った。
「ゴグマゴグ、適当にやれ」
そうして、ゴグマゴグが『アースクエイク*17』を発動、『鋭気の権化*18』を乗せており、強化、弱体と合わせて外れることはないだろう。
事実として命中し、敵はわずかながらのダメージを受けた。ダメージが少ないのは物理耐性によるものだろう。ゴグマゴグは深層悪魔の力として『準物理貫通』を持っていることもあるのだが、残念ながら己のゴグマゴグはそうでなく、物理反射のタイプだ*19
そして、ようやく見ることができた。ネーデルガンダムが幾度もメギドラに巻き込まれた理由が。
ゴグマゴグは、COMPに帰還している。攻撃を命中させたのと同時に、強制的に退去を喰らったらしい。
「たしかにこれは、必殺になるな」
「攻撃したものが悪魔であれば、内部の機構にて強制的に送還される。そういうカラクリだ」
「私以下のレベルに限るが」と付け足す眼前のデモニカ兵士。顔貌はネーデルガンダムによく似ているが、色合いは異なっている。かなりスマートな形のデモニカであるが、さまざまなところに接続用のアタッチメントが存在している。どうにも、このデモニカを接続してネーデルガンダムを操作しているらしかった。
眼前の男がいる位置は、先ほどまでゴグマゴグにいた位置だ。
「被弾をトリガーにした自動発動か? 瞬転の舞*20のような位置交換スキルであるな」
「あちらと違い、この技は敵としか替れぬがな」
| 攻防・位置転換 | 自動効果スキル | 攻撃を受けた時、自身と攻撃した対象の位置を入れ替える(P5T) |
「ちなみに、人間であれば?」
「遠隔操作にてシャットダウンすればネーデルガンダムはそのままに敵を捕える牢獄となるだろう。短時間の時空間潜航を可能とするシェルターの耐久性がそのまま拘束具となるわけだ。幾らかの時間をかければ脱出は叶うだろうが、対策がなければ先頭からの脱落は必死だろうよ」
「エグいやり口であるな」
当たり前の話であるが、人間には壁をすり抜ける類の移動は難しい。
なので当然障害物をすり抜けるには、それなりの準備が必要になる。幻魔の悪魔が持っている種族スキルの『夢幻の具足*21』だとかの足場を無視した瞬間転移や、疾風族なる悪魔の技であるらしい『神風*22』でのワープなど悪魔の力を借りるなどが必要になるか。
そういう支援がないまま障害物に囲まれた空間に隔離されてしまえば、それはもう戦闘不能と同義であるだろう。このマップで脱出アイテム使うと場外に出るわけだし。
「だが、何故に己にその種を見せつけた?」
「逆に聞くが、貴様はなぜと思った?」
「方針がブレぬように、情報を渡して縛りをつけるためであろうとは推測した。己はさほど頭がよく見えぬからな、間違った考えからトンチキな行動をしてしまうのを避けたいのだろうとな。違うか?」
「加えていうなら、あらかたの仕掛けに気づいた貴様への手向でもあるとも」
「そうか、光栄だ」
なんというか、地味に面倒な手を打たれた感じがする。奴を仕留めるために攻撃を加えれば、ネーデルガンダムの内部に取り込まれ
己が奴であるならば、仲魔を引き込んだ時点でネーデルガンダムを自爆させる。自爆の高エネルギーをモロに食らった悪魔は紛れなく命を落とすだろう。そういう必殺の手を、敵はあえて晒している。
なので考え方を変える。逆に、この情報を渡された己の方針はどう変わるだろうか?
削りの攻撃に使う悪魔を、マハーマユリにはしなくなるだろう。奥での戦闘で皆が負けるとは思わないが、もし負けていた場合にユメサキ殿の奇襲からの全滅を回避するためにはマハーマユリが置物として必要になる。そうなれば必然的に攻め手は緩み、ダメージ効率は落ちる。
とすると、敵の狙いはユメサキ殿が皆をぶちのめすまでの時間稼ぎであると考えられる。
話の流れで戦闘を再開したが、己もコイツも別に戦闘を焦ってはいないのだ。長期戦ノリノリである。
「ちなみに、この20ある風車全てに生徒を埋めて、怨嗟の声の博覧会をするつもりとかあったりするのか?」
「そんな無駄な真似はせん。降参を促すとも」
「そんな無駄」と発言したあたりで動き出し、ネーデルガンダムの外側にいる今のうちに内側の耐性チェックくらいはしておきたいと攻めかかる。ドッペルゲンガーを
しかし、敵はその射撃を風車状態のネーデルガンダムにて受け止めた。放たれた麻痺針と同じ方向に逃げ、風車の壁をすり抜けることで弾丸を防ぎやがったのである。
おそらくは、移動中の世界への存在感を薄くする類の術だろう。『夢幻の具足』同様、障害物を意に介さない移動方法だ。
| 縦横無尽 | 自動効果スキル
| 地形を無視して移動できる(P5T) |
そして、そんなやり方でネーデルガンダムを乗り換えまくっているからいろんな風車が変形してあれこれしているらしい。案の定というか、手品の裏側には力業があるものだ。
敵のやり方、というかハメ方をまとめると、こういう流れになるのだろう。
まず、周辺の磁気、風車の向きなどを微調整することで方向を惑わせ、奥に辿り着くことのできない心理的迷宮を生み出すこと。その際に奇襲を絡めて情報を暴きつつ、体力の消耗を狙う心算だったのだろう。この時点でも十分に厄介である。
この際の奇襲には壁抜けでガンダムに入ったデモニカ使いがメインにし、その後メギドラに巻き込むことで位置交換を起動、おそらく『メギドラ』を放ったのはネビロスであるから、ゴグマゴグ同様に内部機構により送還され、ユメサキ殿のCOMPに帰還するというやり方だ。
ネーデルガンダムが風車モードになるのは正直どういうシステムなのかはわからないが、内部にパイロットがいない場合の自動防衛機能のようなものだろうと推測する。ガードなどによって耐性などが変化する性質のデビルシフターとは以前戦ったことがあるので、そういう動きなのだろう。
次に、周辺空気の流れをコントロールすることで、
最後に──いや、最後かどうかわからないので次にというが──位置交換を使った戦闘離脱トラップがある。これは、前二つのギミックを打ち破り、勝利を確信した相手を嵌めるための罠であるだろう。ネーデルガンダムは風車モードでは頑強な防御力をもつ。ダメージが入っているか微妙であったのは、本当に異界に根付いて半分くらい障害物としての振る舞いをしているからだろう。
なので、ネーデルガンダム状態でセナ殿の一撃を受けたときは最も容易く破壊されたのだ。
ここまでが、己が理解した情報だ。また、敵が明かした情報である。
「さて、貴様はネーデルガンダムの秘技を見破ったわけだが、何故勝利を確信しようとはしない?」
「知れたこと、手品のタネがわかったところで、そもそも”貴様が強い“という根本的な問題が解消されていないのだから当然だ。レベル82とか
あ、やべ口が滑った。
「……貴様は確かに学友達の勝利のために動いているようだな。しかし、その真の目的は強者との死闘……成長限界か」
「否定したいところだが、な。あいにくと、先日レベル90以上の怪物をぶっ殺してもレベルが上がらなかった。以前から若干の伸びの悪さを感じていたりもしたのだがな」
\カカカッ!/
| 人外ハンター | ジエン | LV72 |
このレベルは、レイドバトルで上昇した時のレベルアップが最後の成長であることを意味する。あんだけやべーの倒したんだからレベルも盛り盛り森鴎外であろう! とうきうきしてレベル解析を行なったのが昨晩のこと。正直結構凹んだ。今回、かなり無茶なスケジュールでこのレクリエーションの参加を決めたのにはそんな理由もあったりするのである。まぁ、楽しそうだったというのが一番なのであるが。
「ふっ、続けるか?」
「いや、どうかな。白状するが、貴様を打倒するための戦術を未だ思いつくことはできていない。そちらの位置変更ギミックがどんな動きをするのかを知らなければ、詰めへの道を描くこともできん」
「当たり程度はつけているだろうに、白々しく良くもいう」
「それが外れていた場合、次に待つのは雷市殿たちが背後からの奇襲で破れる未来だ。己はこれでも、勝手な無茶はやって良いタイミングでしかやらん優等生なのだよ」
などと言いながら、立ち位置を変更する。ドッペルゲンガーが己たちの入ってきた入り口側になるように4方から囲み、壁抜けにて敵陣側に脱出せんとする場合のブロックができるような配置にする。
そして、行うのは「待ち」だ。ここは無理に攻めて勝ちに繋げられるタイミングではない。盤面有利の状況で、会話にて時間を稼ぐのが最上であるだろう。
「わかると思うが、奥での戦闘が終わるまで睨み合いであるぞ」
「だろうな。私としても労せずに貴様を釘付けにできているのは楽でいい」
「しからば話してくれ。ネーデルガンダムという彼の生き様を。結構気になっているのだよ」
話をしようとふっかけておきながら普通に殺し合いを始めてしまったのは、まぁ戦士なので仕方がないことだ。話をしようと言って本当に話だけをする馬鹿なんてそんなにいないわけであるし。
だが、今回は己に主導権がある状況での話し合いだ。敵から奇襲を受けることも少ないだろう。
そうして、デモニカの男は語り出した。かつて時空間移民船の脱出ポッドだった40機のポッドたちが、いかにしてネーデルガンダムとなり、現在この聖華学園にやってきたのかを。
スマホ用にBluetoothキーボード買てみたらすいすい執筆が進んで良い感じです。習慣にしていたタイピング練習の成果が出ている感じがしてなんか達成感。
・ネーデルガンダムの皮を被ったクソゲーギミック製造機、の皮を被った
敵への位置変更スキルと移動不可エリアを組み合わせただけのド級にシンプルなギミック。ゲームだとクソゲー案件ですが、リアル混ざってるのでやる奴出そうだなーと。
脱出手段のない人間はその時点で頑丈極まりないネーデルガンダムの破壊作業に取り組まされることになり、実質戦闘離脱となる。風車型扇風機としての役割もあるので、クソゲー製造機となっている。
詳しい経緯は次回にて。
・ユメサキこと
連絡不要で商用利用もOKなフリー素材キャラクターのつくよみちゃん。合成音声ソフトA.I.VOICEやCOEIROINKにて喋らせたりしていいというキャラクター。『つくよみちゃん』までがキャラクター名
銀髪の和風ロリのキャラであるが、実年齢はそこそこ言っている(独自設定)ひょんなことからネビロスと契約し、その影響で見た目ロリからの成長機会を奪われた。公式のガイドラインにて必要に応じて年齢も変更していいというお達しもあるので、実年齢は19歳くらいを想定。
現在変なオランダ風車とかと絡んでいるが、特に苦とは思っておらず、普通な感じに仲良くしている。
悪魔有利の契約だったのに本人がバカ強くなって主従が逆転したパターンであるが、ネビロスとは良い関係を築けている。超良い子。
以下クレジット
■原作:夢前黎様
■つくよみちゃん公式サイト⇒https://tyc.rei-yumesaki.net/
・ジエンくん一行
実は貫通持ちのハンマーと銃使いがいるとかの凄まじいパーティ。であるのだが、貫通は貫通でも反射で弾かれるタイプの貫通なので、思考停止で最強というわけではない。
ロミンちゃんのデュエルディスクを使ったスペルカードの
セナちゃんとシャナイアの出身世界はだいたいゼノブレ3の感じ。だが運営にエデンの手が入っている。ひたすらに殺し合っている蠱毒であった