姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝 作:気力♪
眼前の敵の攻撃、というか攻撃に映るための予備動作にひとつひとつ対応していく。眼前にあるネーデルガンダムは、巨大な人型ロボット状態で、パイロットである奴が搭乗していることに疑いはないだろう。隠密能力に優れた機体であるらしいが、流石に目の前に捉え続けている相手の感覚を逃すほど間抜けでは無いつもりだ。
「いまこの場にいるネーデルガンダムは、Mk.23一機を除いて休眠状態にある。先程1機目覚めかけたがな」
「戦闘状態であることを仲間に伝えることで覚醒を促したのだな。模擬戦とはいえ、己の仲魔も己も、ついでに仲間たちの一部も結構な外道の類だ。義心あるネーデルガンダム殿が仲間を守らんと目覚めるのも自然な話だと思うぞ」
「なに、自らをそう悪しく言うものではない。単純に敵対する相手からの強大なMAGで目覚めたと言うのが実際のところだろう。仲間である
マハーマユリとかシャナイア殿とかから醸し出されている邪悪オーラがきっかけであるのなら効率的にほかの休眠状態のネーデルガンダムを目覚めさせられるとも思ったが、流石にそれは今語ることではないだろう。オリエンテーションが終わってもまだ目覚めていないネーデルガンダムがいれば試すくらいはするつもりではいるのだが。
「現在、貴様には『ネーデルガンダムMk.23』というアナライズ名称が見えている。先に戦闘体を見たネーデルガンダムは入り口近くにいるはずだが」
「Mk.23とは私が着込んでいるデモニカの外部装甲に由来するものだ。かつて彼らが無事であった頃に、外部アタッチメントにマシンの根幹部分を載せることで機体換装を容易にするという試みがあったのだよ。あいにくと使える人間が今は私しかいないので、私のデモニカに装備し使わせてもらっている」
「借り物の機体で、そのレベルか?」
「なに、侮れぬものだろう?
敵を観察する。
奴の語る内容にどれだけ誠が含まれているかは正直微妙なところであると思う。あのネーデルガンダムたちが魔界帰りであることはおそらく真実だ。語る奴のデモニカにネーデルガンダムとの接続用のアタッチメントが付いていることは、先程見た時に確認している。
が、マシンがそう簡単にLV80とかその辺りになったりはしないだろう。そうであるならば、今頃お巡りさんに1台ずつくらいスーパーマシンが配られ、己達木っ端漂流者は収容所で軽作業でもさせられているはずだ。
手が足りないから見逃され、強いからと一定の範囲で自由を与えられているのが漂流者の実情なのだ。それはあちらとて変わらないだろう。
「して、どれだけの人と悪魔を捧げればそんなスーパーロボットロボットが完成するのだ?」
「Mk.23曰く、彼のいた世界にて生き残っていたオランダ国民全員、おおよそ40万人ほどと聞いている。これは、最後に公開されたオランダの人口状況の、おおよそ1/40にあたるな」
「とんだ妖刀であるな。いや、マシンなので妖機か?」
奴が語るところによると、ネーデルガンダムは40機にて作り出しているデータサーバーにてオランダ国民40万人ををデータとして収容したらしい。悪魔召喚プログラムの応用であり、最近だと己も
その際にストックの人間共に精神活動を行わせ、効率的にMAGを引き出すために『イデアスペース*1』なる技術を模倣して電脳空間を使っていたらしい。最近、アストラルシンドローム関係で似たような電脳空間をあれやこれやしたらしいので、その亜種のようなものだろう。
「ふむ……データのままの人間を
「結果的には、そうなる」
「基本となるエネルギーを魔界風力発電で、中身の
「ほう、随分と辛辣な言葉を使うな。気に障ったか?」
「その方針で皆をこの世界にまで繋げることができていたのなら、是としていただろう。しかし、力が足らず全てを喰らう羽目になったのだろう? それは流石に、もっと良い道がなかったのかと考えたくもなる」
たとえば、人格崩壊ギリギリまでの苦しみを与え、苦悶のMAGを生み出す役割を交代制で行うなどが頭に浮かんだ。あるいは電子刺激で脳内麻薬を分泌させ、幸せや悦びのMAGを吐き出させるのでもいい。人間を効率的に燃料にする手段は結構あるのだから、適当な人権意識とかで手段をえらんでいるようなのは、ダメであろう。
無論、人権とかを守りながら世界を守り切れる現在の世界のような状態が最良なのではあるけれど、現実問題それで勝てても生き残れてもいねぇのだ。
──手段を選んではならないときに手段を選んだ者たちを、己はわりと軽蔑する傾向にある。これは、癖みたいなものなのだろう。事実として、どんな時でも選んではならない手段というのはあるのだと今の己は理解できているのだし。
「で、己にネーデルガンダム殿の……ねがきゃん? をすることが目的でないのなら、もう少し話してはくれないか? どうしてオランダ全てを喰らい尽くしたのかを聞かねば、どうとも判断つかぬぞ」
「……なるほど、貴様混沌の輩であるように見えても、根にあるのは
「敵対組織が
人外ハンター商会の教育というか、洗脳というかそういうのは、中庸の範囲であると己たち下々の者たちを謀っていたが、脱出前にやった大粛清の際に感じたのは結構な暗黒ルールに縛られたダークでロウな世界観だったということである。
この世界の感覚で改めて指令を考えてみると、身内の粛清とかシェルターでの虐殺とか理由があってもやらないよなーと。まぁ己自身の頭でも納得できる理由もあったから、
「で?」
話題の転換のタイミングで仕掛ける動きになっていたので、ドッペルゲンガーを囮にしつつマハーマユリとカバーし合える位置に動くことで、敵が仕掛けた際の予想ダメージをコントロールする。無理してドッペルゲンガーを倒しつつダメージ少しでは、敵もやる気は起きまいて。
結果、敵の動きの流れは止まり、別の動きの準備をしつつ語る口を続けることとなっていた。
「言っておくが、ネーデルガンダムは戦闘能力、および生存能力においては十分だった。ネーデルガンダムがMk.23一機となったのは、
「アナライズを行った際に、悪性情報を叩き込む罠であるな。あるいは、過剰量の情報を一気に叩き込まれたことによる過負荷でぶっ壊れるものもあると聞く」
なるほど、マシン故の敵識別の際にオートでアナライズまで入れるという流れの最中に仕込まれた罠に気付けなかったのだな、と一応納得する。
単一の装備のみで組んでいるとこういう引っ掛かりがあるので、整備とか補給とかに問題が出ない範囲で多様化していた方がいいのよなー。と脇道に思考が逸れるのを戻し、話を聞く。
「アナライズトラップによる情報汚染、それによりイデアスペースは汚染され、その中にいたオランダ国民は一人残らず廃人と化した」
「しかし、そんな状況だからこそ未来に希望を残すために身を捧げたのだ。唯一汚染に耐えたMk.23に全てのリソースを集中し、全ての経験を集約し、全てのオランダ市民の魂を受け継いだ彼は、
――なるほど。そのへんの気合と勢いで起きた奇跡を誰も論理的に説明できないからこそのオランダ魂なのか。とちょびっと納得する。
「そうして魔界にて戦い続け、生き残り続けた彼は魔界が現世に近づいたことでこの世界に座礁し、紆余曲折を経て今に至るという訳だ」
そんなことを言った奴は、どこか優しそうな目でネーデルガンダムを見ている気がした。いや、目線はガンダムで遮られているのでわからないのだが、雰囲気的に。
あと、紆余曲折でこの世界に来てからの話を隠すこともちょっぴり何かを隠していそうな気配がある。嘘を言っている感じではないのだろうけれど、本当のことを全て語っているわけではないようだ。まぁ、ネーデルガンダム殿が凄い人物であることと、結構苦労していたということは理解できたので己としては十分なのだけれど。
「で、ネーデルガンダムは安全なのか? 死者の念とか情報汚染で狂い、皆を襲ったりするのであれば躊躇わず破壊するぞ?」
「安心するがいい、Mk.23の正常性は保証されている以上、何かあれば奴が止める。それで止まらぬ場合は、私が対処するとも。奇縁であるが、今は私がネーデルガンダムのガンダムファイターなのだからな」
「……ちなみにネーデルガンダム殿よ、本名はなんというのだ?」
「彼の名はネーデルガンダムであるとも!」
ガントレットにチャットメッセージが届いた。勢いで押し切られガンダムヘッドに交換させられ、ネーデルガンダムと名前が変わってしまっているらしい。本名は『特殊機動異界走破シェルター“ネーデルランズ”』であるらしい。
微妙に悲哀溢れる文面であったので、たぶん今乗ってる奴の勢いで結構酷い目に遭っているように思えてくる。
こういう勢いの強い者と組むときは自分を下手に隠さず、自分の意志で押し流してやる! くらいに思っておくと結構いい感じのバランスになるぞー
「さて、どうするかな」
「ほう? 何か策でも思いついたか?」
「元より思いついてはいたのだよ。単にこんなレクリエーションで使う手札でないだけでな」
「気が変わったとでも?」
「変わるとも。ネーデルガンダム殿がかつての世界の最強最後の強者であるならば、己も己の世界での最強最後の強者である自負がある。貴様という邪魔はあれど、強さを競いたくなる気にもなろう」
「ついでに言えば、多少の
「……なるほど、確かにアクシデントが起こりやすい手札だ。聞くが、何故にそれを実戦で使おうと考えている?」
「『招来の舞踏*2』ほど便利というわけではないのだが、死んだ仲魔を新しい手数に変えられるのは案外悪くはないのだぞ? それに……」
「今回のように、戦って理解した必要な手札を即席で用意できたりもするのだからな……ッ!」
| 霊鳥 | ヤタガラス | LV62*6 |
|---|---|---|
| ・火炎吸収・破魔無効・氷結弱点・銃撃弱点 | ||
| ・マハラギオン*7・銃プレロマ*8・道具の知恵・攻*9・ジオダイン*10・フォッグブレス*11・ムドオン*12・メギドラ*13・マカラカーン*14 | ||
これまで(肉盾として)散々役に立ってくれたドッペルゲンガーと、転がっていた素材悪魔のアンズーを使い、霊鳥ヤタガラスを合体し、そのままドッペルゲンガーの制御リソースを使って召喚する。
「コンゴトモヨロシク、サマナー!」
「よろしく頼むぞ、足としてなぁ!」
そのままチームを再編成。2体制御、己含む3人1チーム状態に纏まることで、ヤタガラスの効果範囲に己たちがしっかり入り込めるようにする。
「よかろう! 行くぞネーデルガンダム!」
ネーデルガンダムの目が一瞬強く輝き、それと同時に内部のデモニカ使いが内壁をすり抜けて現れた。
こちらが霊鳥の種族スキル『飛翔天駆*15』の飛行、というか存在の位相をずらし、ネーデルガンダムの内側に入って戦おうとしているのを察したらしい。
その際、敵のデモニカからは接続用のアタッチメントが取れていた。ネーデルガンダムとの接続パーツを外したことにより、より白兵戦に特化した形になったように思う。加えて敵ネーデルガンダムは戦闘形態をとったままであり、オート戦闘モード、というか本来の自動戦闘状態になったのだろう。動きの質が若干変わっているが、しかし今までよりも自然な感じがしなくもない。
「さて……そういえば、これはレクリエーションであったな。故に一応伝えておこう」
「己はこれより待機状態のネーデルガンダムの精神を一機ずつ破壊していく。だが、マシンとはいえ死にかけの仲間にトドメを刺されるのは忍びなかろう、何か再起不能を示すルールでも決めておくか?」
「させるつもりはない、と言いたいところだが、貴様ならば万に一つを掴み取れてしまうだろうな。であれば、どうするネーデルガンダム」
「コンソールに張り紙をする程度で抑えてやろうか?」
若干の煽りをかけつつも、実際問題として身の上話を聞いたことで結構困っている己である。ガントレットを接続してハッキング、というかクラッキングをすることは不可能ではない。悪性情報をドバドバ流し込めば大体のマシンはAIが崩壊して暴走するのだから。
とはいえ、これはレクリエーションなのである。
己は肉壁として、あるいは目を騙す影として使い捨てていたドッペルゲンガーと『会話されてふらっと仲魔になってたシリーズ』のアンズーとかであるからリソース消費は軽微ではあるのだが、それでも少なくない出費をかましてしまっている。けれどもそれは己が負けず嫌いを発揮して悪ノリをかましただけのこと。
基本は、あくまで模擬戦であり、トレーニングだ。結果次第で全体の方針とかそういう未来が変わるようなものはないので、味方を再起不能にするのは損しか産まない愚行である。
「迷うようであれば、己から運営に確認を取ろうか?」
そう己が語れば『私たちは所詮マシーンだ。
「……運営側に確認を取らなくていいのか? 正直己はネーデルガンダム殿の仲間を本当に再起不能にするぞ? なんなら見境なしの暴走マシーンにするぞ? いいのだな?」
ネーデルガンダム殿が己を侮っている気がするので、もう少し念を押しておく。その言葉にも、”是“という意思が返された。
「……恨んでくれるなよ?」
「そう貴様が思うのであれば、踏み止まれ。貴様には考える頭も動ける足もあるはずだ」
「いや、己個人としては別に嫌いな手ではないのだよ。ただ、こういう手札を使った後は何故か仲間達に嫌悪される傾向にあるのだ。敵がどう思うかは、生かして逃したことがないので知らぬが、敵からも良く思われてはいないだろう」
「しかし、そもそもの話としてレクリエーションとはいえ
もしや、ネーデルガンダム殿の身の上話をしたのは、己からネーデルガンダム殿への好感度を上げることで、心理的なブレーキを期待したのではないか? とも邪推できなくはない。
「では、失礼」
| ドロン玉 | 消費アイテム | 逃走可能な戦闘から離脱する |
「逃がさん!」
ドロン玉にて生み出した煙幕に対して、ネーデルガンダムが胸の風車を回転させることで風を生み出し、視界を確保した。
「ガラ空きだ!」
「ヤタガラス!」
そうして姿が露わとなった己の背中にデモニカ使いが手刀にて攻撃をしようとする。
しかし、己の方がトップスピードを維持できる距離が長い。それは、ヤタガラスの羽ばたきにより生み出された風の流れが、移動の力を強化しているからだ。
| 飛翔天駆 | 種族特有スキル | 障害物を無視した移動を可能とし、移動距離を+2する(基本移動距離が4なので、移動距離は1.5倍) |
「……ならば!」
そうして敵は移動を中止し、己の向けて投擲物を投げてくる。どこかしらに収納を隠していたようで、投げナイフのようなものをほぼノーモーションで投げてきた。
障害物もなく、背を向けている己に直撃すればすっ転んでダウンしてしまうだろう。
「マハーマユリ」
「はい、サマナー」
ので、肉壁を使って被害を避ける。ダウン絡んでマハーマユリが死んだとしても、しばらくは索敵戦になるので回復する余裕は十分にある。問題はない。
そして、
内部は、シンプルな小型シェルターであった。内部拡張の術の名残がそこかしこに見えているが、しかし故障していそうなものはどこにもない。きちんと修理されているようだ。素人の感想になるが、とても丁寧で、愛を感じる仕事をしているように思う。
「奴のデモニカのアタッチメントの形状から逆算して、接続部位はこのあたり……あった」
そして、デモニカとマシンを繋ぐポイントに己のガントレットを差し込む。結構無理矢理になると思っていたが、規格はそう大きくズレていないようでするっと入ってくれた。
そして、ガントレットでハンターアプリを操作する。それによって
まぁ実際いいのかな? と思わなくはないのだが、実際問題これが有効な手段であり、敵さん側も使用を許可してくれているのだからやらない理由はないのである。
そうしていると、ネーデルガンダムが戦闘モードに移行するさいの変形が始まるのを感じた。間違いなく、己含む見たもの全員ぶっ殺す類のミナゴロシモードであるだろう。さっさと逃げよう。
「お?」
「ネーデルガンダムのセキュリティをこうも容易く突破するか!」
「セキュリティの上からぶっ壊しただけであるぞ。暴走しているだけで、指示を出しているわけではない」
ネーデルガンダムの位置の中心に、デモニカ使いの奴がいた。ネーデルガンダムは位置がするっと変わっており、奴の位置交換スキル『攻防・位置転換*16』が起動したためであるように思う。
暴走した際の乱雑な行動に引っかかってしまったらしい。あるいは意図的なものかもしれないが。
「これ、『幻魔』であったら詰み入っていたな」
『霊鳥ヤタガラス』の加護により、空中でもある程度の機動力は確保できている。『幻魔』でも行けなくはないと思うのだが、突如足場がなくなって空中に放り出された際、飛行するイメージは自然に出るが虚空を踏み抜いて進むイメージはちょっと出てき辛いだろう。その一瞬を見逃す奴ではあるまい。
これまで軽くひと当たりした感覚では、奴個人の力量はゴドー殿クラスの怪物のそれだ。デモニカを使っているのもどちらかといえば学生への手加減の面もある感じすら思わなくない
レベルではなく、技の芯というか、軸が堅すぎて勝ちに繋げられない。そういう気配だ。
奴がハメ技を見せつけているのはある意味遊びであるように思う。事実としてハマれば一撃でチェックメイトなのだが、そんな面倒なことするよりコイツが直接殴って倒した方が強くて面倒が少ないのが実際のところであるように己は見る。
──そんな考えを脇に置いて現状の対処をする。
ヤタガラスの力場により僅かに姿勢をずらし、敵からの距離を掌一つ分程度広くする。奴が空中からの奇襲をしてくるのだとしても、攻撃がクリティカルに当たる距離からは外すことができた。
だが、敵はその距離をコンビネーションで詰めてくる。周辺の空気の流れが変わり、想定より己の位置が右にズレた。
そして、敵は暴走ネーデルガンダムの風車の羽に着地し、一直線に距離を詰めてきた。
位置がズレたことにより、今の奴のスピードからの奇襲であれば己の心臓にクリティカルを叩き込める位置関係になっている。
カバー可能位置に仲魔はいない。ヤタガラスは己の上にそこそこ高く、マハーマユリは地べたをのそのそ歩いている。自力で対処するほかないだろう。
奴の攻撃が、己へと突き刺さるその一瞬前、己は直感に従って身を翻し風に乗る。それにより奴の一撃のクリティカル位置からは僅かに逸れて、心臓粉砕コースの一撃を左胸がぽっかりなくなった程度のただのダメージに抑えることができた。
クリティカルは乗らず、敵は流れに乗れずに勢いのまま着地していく。
己もなんとかギリギリ生き残り、そのまま次のネーデルガンダムを攻略せんと移動をする。
「『ドロン玉』、もう一発!」
そして、逃げる時に煙を撒くのはやっておく。風を操作されてすぐに消えてしまうので視界を完全に切るまではできていないのだが、それでも一瞬の戦闘からの離脱を成功させられる程度の目眩しにはなる。
戦闘からの離れた瞬間に『メディアラハン*17』を入れて全体を回復、そのまま次のネーデルガンダムに入っていく。
まだ視線は切れておらず、仕込みは不十分。
かといって、視界を切るために離れすぎていれば、デモニカ使いがガン逃げ決めて雷市殿たちの奇襲に行った際のカバーができなくなる。
敵陣側への撤退ルートは切れるような位置関係に構えてはいるものの、敵側に速度を誤魔化す術の類があれば、撒かれて皆がやられてしまう。
それを追いかける手段はあるのだが、合体ルートの関係で『ドミニオン』みたいなストックの中のレベル高めの面々を使えず、『悪魔合体ライト』は使えない。そうなると、マッカがバカみたく飛んでいくことになる。
現実問題として逃走ルートを完全に抑えるような動き方は不可能なのだから、いざという時の出費は許容すべきリスクなのだろう。──いや許容できてたまるかレクリエーションであるぞ。
「くっ、何故己がこんなにも財布を薄くせねばならんのだ。可能であることと、やるべきであることと、やりたいと思うことは違うのだぞ!」
「唐突に狂い始めた? ……いや、誘いの隙か。詐術話術で崩しをかける算段か。小癪だな」
己に接近しながら奴が語りかけてくる。移動距離ではまぁ勝てているのだが、移動の隙のなさというか、回転数は向こうが上回っている。
己が6動くのを5回やる間に、奴は5を6回動く、そういう移動の差し合いだ。
だが、現在奴はネーデルガンダムから離れ単独行動を取っている。それはネーデルガンダムが仲間の暴走を食い止めるのに少し手間取っていたからだ。少しの間とて、楽にはなっているらしい。
邪龍などの遠距離攻撃は、動きが鈍る*18ので奴に捕まってしまう。そうなれば己は死ぬだろう。
割とヘイトを稼いできたので敵の攻撃のハードルは『ギリギリロストしない程度』、あるいは『対処を間違えたらロストする程度』になっている気配がある。やらかしには応報があるものだ、うん。
そうして、次のネーデルガンダムへのクラッキングが可能になるタイミングのことだった。
ネーデルガンダム内部にて、ガントレットを差し込もうとした時にコンソールに一つのメッセージが表示されていた。
「うむ、その……己の説明が足らなかった部分もある。その提案は受け入れよう」
ハッキングした際のダメージがなかなかに尾を引く奴で、なんなら一旦ネットワークから隔離して再修理に出さないといけないレベルの壊れ方であったらしい。
なんでも、普通にデジタルに中身を書き換える類の攻撃を想定していたらしく、先程己が言った際は許可、というか『やれるもんならやってみろ! オランダ仕込みのセキュリティ舐めんじゃねぇぞ!』という雰囲気だったとのこと。なので、ネーデルガンダム殿は素直に前言を翻し、張り紙とかで戦闘不能を解るようにする方式で許してほしいという嘆願をしてきたようだ。
己も割とやりたくない気味の作戦だったので、代案が出たのならば受け入れることにした。うん。
という訳で、収納に入れてある色んなサークルのチラシの中で一番上にあったフィットネス落語部のものを接続部位に詰めておく。
制圧完了である。次行こう。
──余談であるが、これがきっかけとなり聖華学園の色んな部活動が学外に知れ渡り、その自由っぷりに戦慄が走ったり走らなかったりしたらしい。面白い部活多いものなー。
そんなこんなな戦い方、というかもう鬼ごっこみたいな戦いになってきた己たちであるが、己は己で、敵は敵でさっさと逃げるなり動いてくれ!と大きく思っている気配がある。
なんというか、さっさと次に行きたいのに目の前の敵が危険すぎて目を離せず、しかし背を向ければ狩られるのは自分になってしまう。というチキンレースの気配だ。
まぁ、己が盤面を変えられないのならば他の皆に状況を変えるのを任せれば良いじゃない!というのノリでひとまずずるずると戦闘を続けていくことにする。
この判断を己は結構本気で後悔することになるのだが、それは少し先の話だ。
「ふふふふふ」
堕天使ネビロスが笑いながら眼前の敵たちと、自身の契約者である
対する学生たちは、一仕事終えたような達成感とともに、攻めきれず、うまく行かない自分たちの戦いについて考えながら、徐々に精神をすり減らしている。
なぜ、こうなったかを語るには、少し時間を遡る必要がある。
雷市たち学生チームが2手に分かれ、ジエンに足止めを任せて残り4人で中庭の奥に突っ込むことで始まった戦いは、仲間からの報告を受けて「もう1人くらい引っ張っててくださいよ」とぼやいた
そこから先手の
その追加効果にて引き起こされた『畏縮*20』の状態異常がシャナイアと雷市に入る。それを治すためにセナが『メパトラストーン*21』を使用し──効果を発揮しなかった*22。
「嘘⁉︎心の状態異常じゃないの⁉︎」
「ちっとキツイが、動けねぇわけじゃねぇ!」
雷市が前に出て、手に持っている装備『蛮族の盾*23』を構えてガードを行う。そしてシャナイアが『ポイズンアロー*24』にて攻撃、ネビロスは合体で弱点を無効に変えられていたものの、シャナイアの『貫通』によりダメージを受けた。
そして、『ハイプレッシャー』を雷市に庇われノーダメージだったロミンは『デ・クンダ*25』を発動する。
「こっちにゃ手数があるからな! そう負けは死ねぇよ!」
「……雷市さん、とおっしゃいましたね」
「あぁん?」
「防御役を気取っている割に、カバーが甘いです。ポイズンアローで動いたシャナイアさんの位置を守り切れていません」
『畏縮』の状態異常の入っているシャナイアに、雷市のカバー範囲を逸れるそうな曲がり方で入ってきた『花鳥風月*26』が直撃する。
『畏縮』の状態異常の効果は、被弾時のクリティカル率の増加だ。
ATTACKが直撃したことでシャナイアはダウンした。それにより
「では、私はこちらにて」
続いて、ネビロスが『メギドラ』を放った。
クリティカルに被弾しているシャナイアは直撃すれば致命傷となる盤面であったが、すかさず雷市がカバーに入る。
「二発目なんざ遠すか!」
「一発も通してんじゃないよ」
減らず口を叩きながら、シャナイアは体勢を整えてラピッドアロー*27を放ち、反射ダメージを受けながらもテトラカーンを剥がそうとする。
「セナ! やれ!」
「……ダメ! 一回じゃなくて1ターン継続のテトラカーンだよ!」
全体テトラカーンを剥がされたところに
「行動を縛るよ!」
| ブラッティチャージ | 補助スキル | 自身に次の物理攻撃の威力を大幅に向上させるチャージ状態を付与する。3ターンの間自身のクリティカル率を向上させるリベリオンの状態を付与する。発動コストはHPの4割 |
「ちょっと今回のレク、私にかかる負担大きくない?」
そうして減った体力はロミンが虎の子の『宝玉輪*28』を使い、回復をする。
戦況は、いちおう互角だ。
シャナイア、セナ、雷市のレベルは40後半から50前半。対して
しかし、攻め切れていない。
「ちょっと待って、あの人たちなんか回復してない⁉︎シャナイアの攻撃の傷が治ってるよ!」
「治癒促進*29……じゃねぇな」
「単に『メディアマイ*30』を使っているだけです。あまりあることではありませんが、互角の相手と戦う際には結構役に立つのですよ」
「『メディアマイ』……あれね!」
「はい、『癒しの調べ*31』を使える悪魔は少ないのですが、感覚さえ掴めれば習得は難しくないスキルだったりするんです。芸事に強いロミンさんであれば、いくらか訓練すればいけると思います。……まぁ、『メディア*32』は意識していないと
そう語っているは、純粋なアドバイスが半分で、もう半分は誘導だ。その狙いは、この物理偏重の面子の中にいるであろう回復使いを見つけるため。
アタッカー2枚に防御役1枚、低レベルの補助役1枚はあまり安定して勝てる編成ではない。アタッカーのどちらか、もしくは防御役が回復を兼業できなければあのジエンという怪物は私を倒せる編成だと判断はしないだろう。そう
殺し合いになるほどの強い殺意を向け合ってはいないが、それでも伝わってくるものはあるのだ。
対して、学生側は詰め路を見つけられない現状に苛立っていた。敵はネビロスと兼業バスター1と別段おかしな編成ではなく、勝てない相手と見えてはいなかった。
しかしながら、常に主導権を取られ続け、後手に回され続けている。かつての世界で経験していた“強い力で押し通す戦い”が通じない現状に、かつての世界で強者だった3人は調子を崩し始めていた。
「あ、いけそうだわ」
しかし、かつての世界でも強者の側ではなく、しかし勝利のための役割をこなし続けた一人の少女は、視点が違った。
「なんと」
「……あ」
ロミンが唐突に走り出し、雷市たちからのカバー範囲から外れた。走った先は、夢前たちが守る部屋ひとつ。
『部屋の中に防衛側メンバーが誰も存在しない状態で敵陣に居座ること』
これが制圧条件であり、敵を打倒することは必要条件ではない。勝てない相手を無理に倒す必要はないのだ。
「え、あれだけマウントとった言い方したのにこんなオチはさすがに嫌なんですけれど」
そんなゆったりとしたことばの中にガチの焦りを感じさせる言葉とともに、咄嗟に扇子を放り投げるも、ロミンはスライディングで滑り込み扇子を回避する。
「セナ! そっちの部屋お願い!」
「え……えぇ⁉︎」
そして、滑り込みながら鳴らした音により発動された『ワンスモア』によりセナが移動可能な状態に戻り、そのままネビロスの脇を抜けて部屋を制圧せんとする。
待ち伏せしていた敵はなし、部屋の制圧は滞りなく完了した。
「……ネーデルガンダムさんの場を作ったせいでリソース不足気味だったの、地味に痛かったですね」
「大差ないのでは? どのみち些細な小細工はあの
「それは……そうですね。ジエンくんはとても強い子ですから」
とはいえ残りを無事に返すつもりもなく、今まで防衛のために割いていたリソースをすべて使い、攻撃に回ろうとし始めた
「衰弱ってのは『メ・ルルド*33』で治るバステなんだってなぁ! 覚えたぞテメエ!」
「人に治されてイキらないでくれる? うるさいんだけど」
雷市のATTACKは夢前に直撃する前に物理無効のネビロスにカバーされた、しかし、二人の位置を一纏めにするという狙いは成功した。
シャナイアは先程までより一歩引き気味に構え、味方の回復を重視する動きになっていた。どうにも彼女が回復役であったらしい。おそらく、『メ・ルルド』を使ったのは彼女だろう。ロミンとセナに目を奪われている最中に動かれていたようだ、とあたりをつける。
「ネーデルさんたちの決着がつくまでに終わらせられるといいのですが」
位置取りを変え、今度は学生たちを中庭に逃がさないようにする立ち位置に陣取り、防衛戦を始める夢前。
急ぐことなく、丁寧に詰めていくつもりになった夢前は気づかなかった。
中庭の方でも、似たような考えのもと長期戦覚悟の泥試合が始まっていることに。
目の前の少年少女も、ネーデルガンダムとその臨時ガンダムファイターも、自分自身すらも、微塵も勝利を諦めるつもりのない負けず嫌いであり、皆負けるつもりはなかった。諦めるつもりもなかった。
しかし、皆自分で盤面をひっくり返すことよりも仲間を信じて託すことを選び、戦局を変えようとする気は薄かったのだ。
こうして、中庭エリアを巡る戦いは、全員が全員相手のミスを待つ長期戦泥試合という、レクリエーション全体を見ても屈指のクソゲー空間となったのである。
二週間かかりましたが、先週一週間で投稿できたので合わせて2話で21日。10日で1話なのでだいたい週一投稿です(欺瞞)
遅れていた理由は6月から生活が大きく変わるとか色々あるのですが、大きいのはマスデュエ再開してガッツリハマり、罪宝勇者アーマードラドンというギミックてんこ盛りデッキ作って暇を見つけては遊んでいたり、インティクリエイツ作品のブラスターマスターゼロトリロジーなんかを始めてしまってどハマりし、跳ぶ戦車で元気に惑星探索していたからなんてのもあります。超遊んでました。
ライプニッツというキャラクターが超好きになりました。けどブラマス3でHP削り切ってからの大暴走は許さん。初めて見た時は特殊武器使いきってたので攻撃を当てられず、負けイベかと思いました、はい。
・ようやく言及できた、Dark-Law基本のやつがLight-Chaosやってるからニュートラル!という割と無茶気味な属性のジエンくん
真4無印にて、ニュートラルルートに入るためには少しだけ属性を傾けた状態で逆のことを行わなければニュートラルルートには入れないというのがありました。なのでDark-Lawの属性からLight-Chaosに動いている結果ニュートラル、というのが描写の根っこにあります。まぁ邪悪描写ばっかりなのでLaw要素は描写しきれている気はしない作者なのですが。
選んでないだけの中立は大きな流れには逆らえない、というイメージです
ダークロウしてた頃のジエンくんのあれこれなどは一話か二話後くらいからちょいちょい出していくつもりですので今回はこの辺で。
・貴様の名前はネーデルガンダムだ!と押し切られたタイプの一般魔界帰還シェルター
40機のシェルターで相互に通信して、イデアスペースを作っていたタイプの魔界探索帰還マシーン。
世界が滅ぶぜ!けど新天地を作れる資材はないぜ!なら出たとこ勝負で生き残れるシェルターにしないと!ならば人型ロボットだぁ!という狂気の連鎖反応で生まれた風車ロボである。
Mk.23が情報汚染から生き残った理由は発見したネーデルランズから最も離れた距離にいたから。つまり運。しかし、生き残ってからオランダ魂を覚醒させ気合いで戦い続けてきたのは当人の実力である。暴走も闇落ちもしていないのは、その胸にオランダの風を力に変える羽がついているから。
とはいえ基本風車になって隠れて、ちょっと進んでを繰り返していただけなので魔界帰還者にしてはそんなに強くはない。生存特化マシンなので。
・年上のお姉さんマウントをとってレクチャーしていたら、脇を抜けられて防衛地点制圧させられた夢前のつくよみちゃん
制圧拠点に雑魚悪魔を配置して時間稼ぎをしなかったのは、普通に制御しきれないから。一般デビバスである夢前のつくよみちゃんはネビロス一体でいっぱいであり、馬鹿と風車はギミックのためにリソース全振りしていたから誰も悪魔召喚のできる人員がいなかった結果。
中庭エリアは主要拠点から結構離れており、奥の部屋もそう多くない。のでぶっちゃけ現役デビバス側からしてみれば別に学生側に取らせて良い拠点であったりする。
のだが、風車と馬鹿はジエンくんを逃せないために戦闘を続けざるをえず、超長期戦になっても続ける気になっている。引くに引けずにMP回復アイテムをガンガン使う羽目になるつくよみちゃんのみらいはどっちだ!