姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝 作:気力♪
今回の話内で行われているダメージ計算はダメージ数値が見えない中で行われている概算です。
そもそもの計り方がゲームとは異なっていることをご容赦ください。
また、本文中に出てきたデータはジエンくんの憶測混じりのものです。実際のデータと異なる場合があることもご容赦を。
「三分経ったので再開するぞー。改めて、今までの流れはこのような感じだな」
| クティーラ | ルルイエの呼び声*1 | 敵全体消沈*2 2行動威圧 |
| クティーラ | スク・フレキシー*3 | スクンダ1段階 |
| 1ターン目 | ||
| テトラカーン | 味方全体1ターン(DSJ) 物理反射状態 | |
| サバトマ | ALyCEを召喚 | |
| 2ターン目前 | ||
| ダゴン | 海神の理*4 | ターン開始時 スクンダ1段階20% ラクンダ1段階20% 自身に会心チャージ
|
| 2ターン目 | ||
| クティーラ | トリスアギオン*5(真V) | 反射貫通 火炎特大 |
| カバー | 灰色 特大威力1 | |
| ダゴン | 氷砕裂破*6 | 敵全体 氷結物理 特大威力 クリティカル |
| 被ダメ累積 灰色、特大ダメージ2 その他特大ダメージ1 | ||
| ダゴン | 1more*7 | (D2式は テトラカーン無視) |
| デスカウンター*8 | 大ダメージ反撃(真3) | |
| ハイパーカウンタ*9 | 武器攻撃反撃 クリティカル (DDSAT) | |
| ALyCE | 怨讐*10 | 受けたダメージと 同等のダメージ |
| 被ダメ累積 ダゴン 特大ダメージ1、大ダメージ1 | ||
| ダゴン | ビダルジャ*11 | 体力上昇 HP2~3倍に |
| ヒュドラ | 龍眼 | 命中2段階分上昇 (カジャとは別枠) |
| ヒュドラ | 龍王砲の真髄 | 射程7まで移動 |
| ヒュドラ | 悪魔攻撃 | 【1D7:3】回攻撃 |
| ALyCE | 友愛の加護*12 | 灰色をカバー 小ダメージ |
| 被ダメ累積 ALyCE 特大1 小ダメージ1 | ||
| 友奈 シロコ乱入 | ||
| 仕切り直し 0ターン目 | ||
| クティーラ | 誘拐*13 | 友奈 シロコ |
| シロコ | 誘拐の交渉失敗 | 攻撃*14 |
| ダゴン | カバー | クティーラをカバー 無効耐性 |
| リカームドラ | 味方全体の HPMPを全回復(真3) | |
ぱっと映し出した表を見せる。
敵の悪手こそあれど、まぁ順当に漫画殿……じゃなかった、灰色殿が死ぬ流れの奴だった。
「まず、皆が爆笑して見逃していたであろう灰色殿の致命打を庇ったこの動きは、『友愛の加護』と呼ばれている忠誠度効果だ。『仲が良く、愛の深い悪魔はいざという時に体がすっと動いてくれる』ということらしい。邪魔になる場合もありそうだが、今回は問題なく使える盤面だったな」
サマナーが『デスマーチ』などを持っている場合、『友愛』の仲間には『カバー』よりも『リカームドラ*15』などを使うための生存を指示したい場面もあるだろう。なので、悪魔の自発的行動によるカバーというのは魅力的ではあるが、思考停止で頼っていいものではない。と己は考える。
己の仲魔は己からの影響で性格が『狡猾』に寄ってしまう*16という事実からの現実逃避では決してない。合理的な判断からだ。ちくせう
「だが、このカバーの感覚というのは『致命打に反応』ではなく『体力危険域』のサマナーへの攻撃』に反応であるのは気をつけてくれ。マッスルドリンコで増強しても確定二発が変わらなかった時などで、友愛カバーが発生せずに死亡した例があるそうだ」
「てことは、一撃即死みたいなのには無意味ってこと?」
「聞いた話によるとな。なので敵の仲間が『吟醸ゆめざくら*17』や『大吟醸九段仕込み*18』の匂いをさせていたら、小さめの技で3割程度のダメージまで削ってからデカいのでトドメを刺す。というのを余裕があれば行うと良いだろう。また、『友愛の加護』持ちが味方であれば、そのような事態にならない様に能動的なカバーの指示を出すか、あるいは灰色殿のように仲魔をカバーする事で自身の体力を危険域まで削る、というのも良いと思うぞ」
己も調べていて大変ためになった話をしつつ、背後の映像が流れていく。なお、『友愛の加護』の発動条件をどのよう調べたかは明らかとなっていないが、そうとう
──メインの戦闘が再開する。
「仕切りなおした後の今回は、敵側に先手を取られたな。この動きでも
敵が先手を取ったことで、またしても複数の効果が発動する。
「して、まずは舌戦が始まった」
「今回は、敵側が洗脳系の会話スキルによって砂狼殿、及び高嶋殿を無力化しようとするのが狙いだったようだ」
「あれ、他人の仲魔って会話ダメ*19なんじゃなかったっけ?」
「あと、人間もだよな。デバフ持ちの会話系スキルは人間には通じないって聞いたし、見たぞ」
デバフ持ちの会話スキル、というのはおそらく『魔神ミトラ』にて確認されている『死の契約*20』がパッと思いつく。
他人の仲魔は、契約で縛られているので会話自体が不成立となり、契約による石化は通らない。そういう仕組みだったはずだ。
「コイツホントクソだわ」
「いや、高嶋殿はわからんが砂狼殿は悪魔混じりだ。このクティーラの覇気や、周辺環境によって『悪魔』が出やすい環境、その他利害の一致などでクティーラ側につく可能性はゼロではない。ゲームのように全てのルールが正確無比、という訳ではないからな」
「で、アンタならやる?」
「あのガンギマってる砂狼殿を勧誘できると思うのはよほど他人の顔を見ていない人間だけだと思うぞ」
「ああ……」と最近の砂狼殿を思い遠い目になる者たちがちらほら。元からちょいちょい変な人ではあったのだが、今は暴走の矛先がある程度定まってしまったことでより“凄み”が増している。いい人であるが、彼女と彼女の愛する人を敵に回したくないなーと思うレベルだった。
「とはいえ会話でのミスは最小限。
「割と致命傷じゃない? 高嶋も砂狼も若干消耗してたし、コイツらのダメージも回復してるじゃん」
「クティーラの勝ちから遠ざかりはしたが、普通に挽回できる程度だ。現に
「あの、ジエンくんはどうしてアレの擁護をしてるんですか? どう見てもただの悪手ですよね?」
「悪手を刺すには、それだけの故がある。表層情報だけを見て「素人がよ!」と言うのは別に悪くはないのだが、それより悪手を放ったロジックを理解した方が
そういうと、皆は「怖っ……」と反応する者と、「めんどくせー」と反応する者に分かれた。
殺す相手の事を深く知るというのは、やはりそれなりに苦痛であるらしい。殺す相手の事は覚えていてもしんどいだけなのはそうなのだが、少々寂しい話であった。
「と、ここで皆に謝らせてもらう」
「え、何?」
「笑ってはいけないパートに尺を使いすぎて、微妙に時間が押している。戦闘の流れは黒板に書くので、細かい質問は後にしてくれると助かる」
「バカじゃないの?」
「ノープランよりタチ悪ぃぞこれ」
夜叉神殿が口火を切ってからそこかしこで己をバカだアホだとのたまう声がするが、事実だからしょうがないな、うん。
『説明は端的に』としようとしていたが、ちょっと興が乗ってしまっていたのだった。
「それでは、敵の1ターン目の動きを描くぞ。映像見ながら参照程度にこっちを見てくれ」
| クティーラ | ルルイエの呼び声 | 敵全体に10%の 割合ダメージ (HPとMPに) |
| クティーラ | スク・フレキシー | スクカジャ1段階20% |
| ダゴン | 海神の理 | ターン開始時 スクンダ1段階20% ラクンダ1段階20% 自身に会心チャージ |
| クティーラ | ロスト・サニティ*21 | 全体、万能特大 緊縛魅了効果 |
| 被ダメ累積 灰色、 ALyCE、ミトラ耐性により中ダメージ 灰色、カーマ、緊縛状態 | ||
| クティーラ2 | 宝玉輪*22 | クティーラ側 全回復 |
| ダゴン | 氷砕裂破 | 敵全体 氷結物理 特大威力 クリティカル |
| 友奈 | 猛反撃*23 | 5倍反撃(物理貫通) |
| ALyCE | 怨讐 | 受けたダメージと 同等のダメージ |
| 被ダメ累積 ALyCE、 灰色、 友奈、シロコ 特大1.5(ドーピング分消費)
ダゴン 特大ダメージ2 | ||
| ダゴン | マハーブフラ*24 | 敵全体 氷結特大(LB3) |
| AlyCe | 怨讐 | 受けたダメージと 同等のダメージ |
| 被ダメ累積 ALyCE、 灰色、 友奈、シロコ 特大2.5(ドーピング分消費)
ダゴン 特大ダメージ3 | ||
| ヒュドラ | 移動 | |
| ヒュドラ | 見果てぬ龍王砲 | 射程∞ |
| ヒュドラ | 悪魔攻撃 | 6発 |
| カバー | 友奈 | |
「では、最初の戦闘との相違点をざっくりと」
「今回も、『ルルイエからの呼び声』、および『スク・フレキシー』が発動した。今回は先行を取った場合の効果で、敵全体に所謂『割合ダメージ』を与える効果と
「割合ダメージってどんなのなん?」
「耐久力ってか、防御に回してるMAGがアレルギー反応みたいに動く原理って聞いたよ。まぁ、『天罰』食らった時は普通のダメージとの違いわかんなかったけどさ」
「それ割合じゃない天罰*25食らったんじゃね?」
「かなぁ?」
「で、敵の先手だ。ターン開始時にダゴンの『海神の理』が発動。ダゴンが会心チャージに、灰色殿達が防御、回避1段階弱体だな」
「あれ、『消沈』って奴は?」
「あれが起動するのは灰色殿らが
「……なんで消沈で叩き込まなかったの? オートで威圧できるなら、自発的にも威圧できるでしょ」
「マジでわからん」
「あ、ジエンくんが匙投げた」
これについては本当に分からんのである。
スキルだなんだと規格化して考えているが、結局はただの力だ。相手を『消沈』にさせる
悪魔だから悪魔としての型にハマっている? 半分くらい違う気がするのだよなぁ……
「はい、分からんことは無視!」
逸れ始める話題をぴしゃりと一刀両断する。口に出すことで己自身からも切り離すやつである。
「で、このターンのメインはクティーラの『ロスト・サニティ』だ。万能属性大〜特大威力の全体魔法で、緊縛、魅了の2種バステ付与、及び
「強くない?」
「この手のスキルは消費MPが重いと相場が決まっているが、それに似合う強さはあるだろう。己も割と欲しい」
バステと攻撃が同時にできるのは正義である。削りつつ『盤面崩し』に繋げられるのはとても強い。一手で2行動分の負担を与えられる可能性があるのは、敵の手数を削る際にもとても良いのだ。
「で、これにより緊縛が入ったのは2名。
「で、クティーラの二手目はなんで『宝玉輪』?」
「ビビリだからじゃね?」
「クティーラがどれだけの高乱数を狙っていたかは不明だが、『攻め』に傾倒する場面ではないと判断したのだろう。事実、高嶋殿にはWプレロマの乗っている一発があるからな。バステで敵の動きは崩している今なら『100%無し』な手ではない」
完全に乗った高嶋殿なら、宝玉輪で全快してしても削り切られるのでは? というのは考えない。耐久紙ペラ勢の肌感覚であるし。
「で、ここよなぁ……」
「ジエンがまた無理めの擁護を投げ出してる!」
「ちゃんとしろー。お前の実況がないとクソ手ばっかのクティーラさんが可哀想だろー」
「いやこれはどうやっても無理であるだろうが! 完全離脱して超遠距離から攻撃できるのは凄まじいが、やってる事ただの『悪魔攻撃』であるぞ! せめて『双手』とか『至高の魔銃』、あるいは封技追加とかの“通常攻撃を強化、変化させる付加効果”がないと雑魚オブ雑魚手であるぞ」
「ちなみにあなたなら何を追加します?」
「『S・狂戦士の魂*27』」
棗殿がなんかふわっと聞いてきたので即答する。
「通常攻撃をメインに使う理由は、『龍王』の射程延長の効果範囲がスキルに乗らない*28からだ。ヒュドラは他に魔法の使う場面もないだろうからMPを効果的に火力に変換できるスキルが適している。ここに『双手*29』や『至高の魔銃*30』が加えるのが最適だが、ヒュドラ自身の攻撃回数の多さを考えれば攻撃そのものを変化させるよりも総合火力が高くなるのは『S・強戦士の魂』であるように考える」
「……なるほど」
己は龍王砲というクソゲー殺法自体は高く評価しているつもりだ。異世界シャナイア殿の『奈落落とし(命名己)』は正直己があの手この手で抹殺した多くの敵対者を順当に始末出来るほどのポテンシャルがあったからだ。
だが、そんな強くなる余白のあったヒュドラには遠方から横槍がぶっ刺さってくる。
陸八魔殿の
「高嶋殿、砂狼殿の参戦と同時に狙撃ポイントを確保し、ヒュドラを確実に分断できるタイミングで攻撃を始めたのだな。この横槍は正直見事としか言いようがないぞ」
「アルちゃん、ほんとヤベー存在になっちゃったよね」
「ここ、ヒュドラはなんで分断されたんですの?」
「端的に言えば、距離が離れすぎた状態で横槍を受けたからだな」
「どゆこと?」
「危機感の共有ができないから、って聞いた事あるかも」
「うむ。これだけの距離が離れれば当然見える世界は変わる。一つの陣営としてまとまるためには、指揮官の下でいつ攻める、いつ守るという感覚を共有しなければならない。そうしないと呼吸が合わないからだな。プレスターンでやってると特に思うが、動きのタイミングが合わないと邪魔で邪魔で仕方なく、なんなら消えてくれとすら感じるぞ」
無論、真に絆を結んだチームたちだったり、戦場全体を指揮下にいれるような怪物指揮官の下であれば超遠距離での単一チーム行動が可能かもしれんが、そんな例外中の例外は無視で良いはずだ。今回は。
「おおよそ指揮官から100メートル前後の位置を基本のポジションにしていないと連携は難しい、くらいだな。まぁ己150メートルくらいなら指揮下でブン回せるが」
「言った端から例外を口に出してんじゃねぇよ」
「例外を言わねば『あ、こいつ200メートルくらい外れてるからボッチだ! 狩ろ!』みたいな流れで死人出かねぬではないか! 人間は他人から教わったことを自分に都合のいい様に曲解して理解する生物なのだぞ! とくに若いのは!」
「はい、次行きますねー」
ぱしんとフジワラがハリセンで己を叩きつつ、次の解説に移る。いい音が鳴るが、悲しい程に威力がない。力が足らぬよ力が!
まぁ己もフジワラに腕相撲勝てない貧弱パワーなのだけれどね。
「しっかし、陸八魔先輩いい技持っているよなー。龍王の射程は700メートル以上ということは、1キロ射程くらいか?」
「ああ……うん、ソウダネ」
岸波殿がなにか遠い目になっている。つまり、もっと長いのだろう。2キロくらいか? 同系統スキルの使い手には十分警戒しよう。
フジワラが手元のハリセンをぱしんと鳴らしたので「こほん」と咳払いして次に進む。
ヒュドラの悪魔攻撃は高嶋殿を狙ったが、灰色殿にカバーされた。それにより『食いしばり』が切られてしまったが、あの人『不屈の闘志』併せ持つタイプの人なので軽傷と判断していいだろう。それは、皆もなんとなく理解しているようだった。
「ということで、灰色殿たちの反撃が始まるぞ」
「そして、この1ターンだ。己は、正直これを見せびらかしたいが為に討論会を開いたまであるぞ」
「え、そこまで?」
「うむ。そこまでだ」
ということで、表をぱーんと出す。
やっている事自体はシンプルなので、これまでの表よりは描くのが簡単だった。
| クティーラ | ルルイエの呼び声 | 敵全体消沈 |
| デカジャ*32 | クティーラのスクカジャなど解除 | |
| 友奈 | メパトラストーン*33 | 灰色、カーマ行動可能に |
| ALyCE | ネクロ・ドグマ*34 | 敵全体に万能大ダメージ 防御1段階(20%)上昇 |
| メディアラハン*35 | 味方全体、全回復 | |
| シロコ | ダークブレス*36 | マカカジャ1段階 ラクカジャ1段階 |
| クイッカ*37 | 対象友奈 確定反撃状態に |
「やった事は、実のところさして多くのことはない。『デカジャ』によるバフの解除だ」
「あれ、スクカジャとかしかかかってなくない? ふれきしーって奴の」
「前の戦闘からの引き継ぎで、『ビダルジャ』があるな。『ドーピング*38』であればデカジャは効かぬが、『ビダルジャ』は名前に『ジャ』とか付いているのだ。有効なのだと思うぞ」
「あー、最大体力削りか」
「この後の詰め方を考えると『ランダマイザ』で良かった気はするが、これもまた好みの話だな。『ビダルジャ』を消すか、攻撃1段階弱体化を優先するかの話だ」
ビダルジャを消す理由は、『体』のステータスを参照する攻撃の可能性を潰すこと、後続が殺しやすいように、などが考えられる。
全ての技を知っている訳ではない己には、体力を威力に換算する『八相発破*39』や防御力を威力に変換する『アースクエイク*40』、『マッスルパンチ*41』など同様に、『体』の強さを威力に変換する攻撃がないとは言い切れない。ので、ここも好みの問題であるだろう。
「続いて、バステを解除の『メパトラストーン』だ。無難であるな」
「普通だねー」
「……あ、アムリタシャワー*42じゃなくて良いんだ」
「緊縛ってパトラでいけたっけ?」
「緊縛にもいろいろあるらしいけど、基本はパトラで大丈夫よ。逆にヤベー『緊縛』*43ならアムリタシャワーでも回復できないね」
「……怖ッ⁉︎」
「仕様違いってヤツです? やめてください」
「そして、ALy……金髪の彼女殿の『ネクロ・ドグマ』なるスキルだ。効果としては万能攻撃のついでにラクカジャが発生するものだな」
「あ、便利だ」
「これも
「え、3分でクレーム入ったの?」
「うむ。なのでヘタクソとは言い過ぎたかもしれん。最大値がカスというべきだったな」
「まぁ、比較対象が450%*44とかの意味わかんない上昇値になるっすからねぇ」
「続いて、カーマ《カーマ》殿の『メディアラハン』による全体回復。そして、砂狼殿の『ダークブレス』である。これは味方全体にラクカジャ、マカカジャの効果のスキルで、ラクカジャのタイプは魔法防御もついでに上がるタイプのものだ*45。で、先ほどのネクロ・ドグマの分の防御上昇によって防御弱体が解除され、これで防御、魔防、ついでに魔攻が1段階上昇となる」
「この『ダークブレス』の倍率ってどのくらいなの?」
「防御力の定数化は検証勢でも難儀しているらしいが、同系統のタルカジャ、マカカジャの倍率が四段上限最大250%となっている。ので、防御力も最大2.5倍と考えるのが自然であるぞ。端数は違うかもしれんが」
「今回の場合、1段階上昇になっているので、防御力はおおよそ1.5倍、ダメージはおよそ3割減ということになるな。まぁここから弱体入るので計算は無意味なのだけれど」
防御力1.5倍になると、90のダメージを60で受けられる。1/3だけダメージは減少する……と己は思っているのだが、ダメージの定数化はざっくり『大威力』とか『中威力』と判断していた。だいたい小威力2〜3回で中威力、中威力2〜3回で大威力、特大はなんかやばいと計算しているので、33%減少と言われてぱっと頭には浮かんでこなかったりする。
というような思考が流れるが、切り替えて次に行く。
「して、トドメとなったのがこの『クイッカ』である」
「うわ出た」
嫌な感じの言い方をしたのは、RABBIT小隊の『空井サキ』殿。灰色殿こと漫画殿と戦闘経験のあるひとりである。
「グッドステータス付与魔法だっけ?」
「グッドステータス……あ」
「うむ。『ウルバーン』や『ドロンパ』同様のグッドステータス付与スキルだ」
「グッドステータスかかってる人って、普通のバステにかからなくなるんだよね。猛毒とか石化とかの重度のは弾けないけど、緊縛、魅了、感電、凍結あたりは通じなくなる*46んだよ」
「感謝するぞ岸波殿。とはいえこれはバステが重ならないタイプの人間をベースに検証した物なので、己や一部悪魔の様に複数のバステを並列にかかったりかけたりできる連中*47がどうなるかは要検証だ」
どうにもグッドステータスが他のバステを弾くのって、既になんかのバステを受けている者が他のバステを受けない時の挙動に見えるのよなー。
複数バステを重ねてかけたりかかったりできる己のような者*48が、グッドステータスでバステを弾けると断言するのは危険であると思っている。案外弾くのかもしれないけどね。
「とはいえ、高嶋殿はこれにて緊縛、及び魅了にかからない状態となった。防御は1段階上昇で、敵ターン開始に一段下げられるので0段階防御になる。命中・回避は1段階と『消沈』で実質2段階弱体化」
「これで、クティーラの詰みになった」
「……マジで?」
「ということで、ようやく本題だ! なぜ、この段階で詰みになったかを説明できる者はいるだろうか?」
夜叉神殿、及び棗殿が嫌そうに手をあげる。いや、体験した奴が手をあげるのはその通りなのだけれど、流石に指名して話せとは言えぬ。
「ということで、計算するぞー」
「計算……耐久力の話か!」
「あ、わかったかも」
己がちらっとヒントを言えば、岸波殿や他の指揮官組がちらほらと手を挙げてくる
「うむ。現在、高嶋殿が敵主力バステを弾ける状態となった。で、
「で、デバフ対策にラクカジャが1回、回復のためのメディアラハン、あるいは宝玉輪が1回。これが次のターンを今のターン同様のダメージ量に抑えられる最低要件となる」
「この時点で、詰めへのパターンとしては」
| ① |
| ラスタキャンディorデクンダorデカジャ→メパトラストーン→宝玉輪→ドグラマグラ(ラクカジャ1段階) |
| ② |
| ラスタキャンディorデクンダorデカジャ→メパトラストーン→宝玉輪→ダークブレス(ラクカジャ1段階) |
| ③ |
| ラスタキャンディorデクンダorデカジャ→メパトラストーン→招来石(ALyCE蘇生)→メディアラハン |
ホワイトボードにパパッと描き、3つの最低ラインを示す。
「これによってラクカジャ2段階乗った状態でターンを奪えるようになるので、次のターンからラクカジャ1段階ずつダメージが減る。そうなれば詰みだ」
「『デスマーチ*49』とかあればサマナー死んでも大丈夫じゃない?」
「そうだが、灰色殿が指揮官だからな。クティーラとて流石に指揮官が死んだ瞬間の混乱くらいは突けるので、『机上論では全滅ではないが実質全滅』くらいの塩梅だと思うぞ。いや、高嶋殿なら普通に指揮官スイッチとかできる気はするのだが、仕切り直されて
クティーラにはアイテムを使える知能があるので、漫画殿を仕留めた瞬間に『トラフーリジェム』とかを使われたら大惨事待った無しなのである。認知異界であったあのクズリュウ派聖華学園校舎にはそれなり予備の兵力はあったので、立て直されれば厄介であっただろう。殺したが。
「いや、逃げた所で他のデビバスとか先生たちに殺されて終わらない?」
「己もそう思うが、一応な」
なお、それなりに厄介(勝てるとは言ってない)である。己に
「とまぁ、こんな感じの盤面ならば勝ち確になる訳だ」
「けど、これまでのターンでちょいちょい瀕死者出てない? 敵が舐めプやめて攻撃したら普通に崩せそうなんだけど」
「ボスだし『龍の眼光』とか使わない? 半プレスを4つ増やす奴とか、突然1回行動回数増える奴とか」
「それも含めて詰めた……と言っているはずだ」
「と言うわけで、概算での計算をしていくぞー」
「ここからは、小威力を50、中威力を100、大威力を200として計算する」
「あれ、なんか前聞いた時とより威力減ってない?」
「仕様違いだと考えている。前の計算式でやった所、灰色殿の耐久値が1200とかになったので流石にこれは人間じゃないと思い、計算を変えてみた」
なお、当然ながらダメージを数字で表せる訳ないので単なる机上論である。いい一撃貰って首が飛んだら5ダメージでも人は死ぬし、腕や足が飛んだら次の動きは鈍くなる。
「という訳で、ダメージ計算していくぞー」
「まず、敵側の基本攻撃は、『ロスト・サニティ』、『氷砕裂砕』、『マハーブフラ』だな。打点はロストサニティが200、氷砕裂破が200、マハーブフラが300くらいか?」
「なんで疑問形?」
「攻撃の数値化なんてふわっとしかやっていないから、言語化すると脳がバグるのだ。許せ」
「馬鹿じゃねぇの?」という目が半分。そうやって無理にでもダメージ計算しないと「説明できないんだなぁ……」という生暖かい目が7:3くらいだった。かなしい。
あと、ロストサニティの打点が何か低いことも微妙に見られている。これはマジで謎だった*50。
深層悪魔は全体攻撃の威力が低くなりる。という奴だと仮定している。
「こちらのダメージは、アナライズで見えていないプレロマやその他スキルでの補強を終えた後の数値です。この上にタルカジャやラクンダなどのバフデバフが乗る形ですね」
「これまでの戦いでのダメージ量を示すぞ」
「まず、最初のターン。灰色殿は1段階(20%)弱体で、トリスアギオンと氷砕裂破クリティカル*51を耐えている。トリスアギオンは特大として300とすると、700の1.2倍で840ダメージを受けて立っている訳だな」
「メギドラオン二発でギリ死ぬライン?」
「どうだろうな? 防具の関係がある。以前見た時は『ヤクトシリーズ*52』の装備をしていたから、最低で属性魔法75耐性、更新していたならAマックスで万能含む50耐性はある。先ほどまで学内レクでの戦闘をしていたと考えれば、手加減の意味を考えてヤクトシリーズの75耐性ではないか? と考えるぞ」
なお、録画データの映像処理の関係で装備情報は確認できていない。ついでに言えば、「戦闘データばら撒くので装備の情報おくれー!」とか全面戦争待ったなしなので、ただでさえ無理を言っているこちらとしては確認はし辛いのである。
まぁ、耐久力の数値化とか机上の空論にそこまで労力をかけたくない、というのもあるけれど。
「三発目の龍王砲を『友愛』でカバーを貰っていることから、760に耐性弱体が入って630、これで半分くらいの耐久は減っている*53とわかる訳だな」
「あー、友愛の加護の条件か」
「なので、灰色殿は最小631、最大で1260の体力数値がある訳だな」
「……なんか、1000以上って数字に違和感ある*54んだけど」
「スキルによる『ドーピング』や、活泉スキルでの基礎体力向上の影響だと思うぞ」
なんでも、固定ダメージっぽいアイテム*55を悪魔に使うと、活泉のない悪魔は7発で沈むが活泉のある悪魔はそれ以上に耐える可能性がある、という検証結果があったりする。
「で、二度目攻撃、食い縛りで耐えたターンだな」
ラクンダ入った状態で、ダメージ20%上昇。とホワイトボードに改めて書く。
「これに、ロストサニティで万能240、氷砕裂破クリティカルで480とマハーブフラ360が、75耐性で630。870に『悪魔攻撃』を6発受けて食い縛りを切った訳だな」
「あ! 悪魔攻撃は軽減できないって教えられました……サツバツナイトに!」
悪魔攻撃の一発は30くらいなので、六発受けれて180の2割増し、216が加算される。およそ1000程度のダメージで落ちる、という訳だった。
「とまぁ、これでサマナーの耐久ラインが算出できた。ここで大事なのが20%のラクンダを受けてこのダメージであること。だいたい1000だったのが、833のダメージになる。よって、900くらいの耐久力があれば、敵の猛攻を耐えられるのだ」
これは、これまでのターンのダメージから算出できるデータであるなー、と言うと「おー」とちらほら声がした。
数値化するとびっくりよなー。20%のバフの感覚で殺せると見れるのは。
「で、ヒュドラが消えたことで打点は減少、しかしクトゥルーが2連攻撃をすることで打点を再計算。基礎値としては、万能が400、氷結が700だ」
「灰色殿は900で耐える。カラミティスーツ着てるシロコ殿は550、高嶋殿はシュテンドウジの87.5耐性で400+595で995、とギリギリだが、仕掛ける前に継続する『ドーピング』を受けていただろうから、十分に耐えられそうな値だ。
万能耐性を持つ
「……いや、要求耐久高くない?」
「ダメージを数字で表すというのが若干無理めな試みであるからな。妙な値になるのは許せ」
いや、己の肌感覚では普通に死者が出る盤面なので気持ちはよくわかる。が、現実から逆算するとこうなってしまうので、認めるしかない。
しかし、その耐久力を産み出す仕掛けについては心当たりがある。
漫画殿らがかつて見た時よりもレベルが低くなったのは何かのトラブルによるものだろう。
だが、その下がったレベルを上げる際にただ無策でやる訳はない。
『仲魔強化パック・力*57』などの成長効果を増大させる技術、あるいは、レベル1になると使えるかよアホが! と一部の邪教の館で愚痴られている『デビルリユニオン*58』なる手法、その他己の知らぬ強化手段での戦力強化をしているのだろうと思う。
いや、純粋にお香ドカ盛りの可能性もあるか? 『推し悪魔への香の量! それは愛のパラメーター!』と叫んでいた者もいたし、愛の深そうな漫画殿であれば大量のお香を与えていても全然不思議ではない。
「で、本当にこれで詰みなの?」
「詰みだ。ラクカジャ2段階、敵ターンに1段階乗った時点で死者は出ない。900のダメージが2割減で720。万能攻撃を
「で、先ほどちょっと話題に上がっていた『龍の眼光』について」
「今回クティーラが習得していたのは、『行動回数を3回にする』と言語化されているタイプだな。再発動までには相当の時間を要する*59、切り札と呼ぶべきタイプだ」
「基本の思考速度を向上させ、行動回数を継続して増加させるタイプ*60、一瞬の目利きにて半
「なんで?」
「まず、クティーラは貧乏性だ」
「開幕人格攻撃やめない?」
「……そうね。必要な消費、必要なリスクを必要なタイミングで振れてない奴よ」
己が端的に言いすぎてしまったことを、夜叉神殿が補足した。感謝するぞ。
「クティーラが初手、あるいは二手目で眼光を切っていないこと。これによって基本行動速度加速タイプの眼光は除外される」
あのバケモンみたいな効果の眼光は初手に使わないなら持っていないと断言して良い。基本数値が増えるタイプは初手で使うのが1番行動回数増加の恩恵を受けるからだ。使ったターンも1回は行動できる*62し。
「続いて、4半呼吸増やすタイプの『龍の眼光』。これについては使用回数の制限がない。1ターンに複数回使われた*63、という報告もあるスキルだ」
「小手調べの1ターン目で温存するのはある。だが、クティーラの火力で殺し切れるか微妙だった2手目では眼光を使わない理由がないのだ。『ビダルジャ』によって増加したHPの回復などやることも多かったからな。それで殺し切れなかったとしても損はないのだし」
加速タイプ、瞬間タイプの二つの眼光を除外した場合、残っているのは『再発動までが長いがどんな状況でも3回の行動になる』と言語化できる切り札タイプのみ。
「……このサマナーさん、ここまで読んでたの?」
「……あの人なら、あるいは」
漫画殿との交戦経験のある『月雪ミヤコ』殿が、慄きを秘めながらそう言った。『判然とせずに負けた』と言語化できなかった敗北の輪郭が見えたからだろう。
『攻撃への安全マージンを確保し、反撃する』
そんな基本を狂気の域までに研ぎ澄ませた刃が、彼の戦いであったと。
「異論ある者は?」
己の言った言葉に、具体的な反論を出せる者は居なかった。
「はーい」
それを見てから、岸波先輩が手を挙げる。
「ボスの中には、体力減少や時間経過をトリガーにスキルを使ってくる奴はいるよね。普通に戦ってたのに突然パターンが変わるってタイプ。このクティーラはそう言うのじゃないの?」
「うむ! それについては……」
「てんて分からぬ!」
集中していた皆が、ズッコケた。
「アホか! お前講義みたいな空気出してたんなら最後までちゃんとしやがれや!」
「全て分かっているなら討論会ではなく動画形式で発表するに決まっておろうが! 皆をここに集めるよかそっちの方が早い! 」
「ということで、この辺までが己の考察、偏見が混じりに混ざっている事前データだ。では、決着のターンに移るぞー」
「いや、事前データの提示長すぎない? もっとちゃんと時間配分しなさいよ」
「なんなら、そこの表だけ先に渡すんでも良かったよねー」
「というか、そもそもの話としてジエンが仕切り役って時点でもっと考えるべきだったわ。情報の出力され方がおかしいんだよコイツ」
「……私あんまりジエンくんのこと知らないんだけど、そんななんだ。納得はするけど」
ちらほらと、「そういやアイツ食券偽造したことあったわ」だの「さすが、指を詰めればイカサマをして良いと思ってる奴だ」だの「他人の仲魔を食用加工しようとしたことあったよな」だの己の過去の余罪諸々をここぞとばかりに広めている連中が現れた。
食券偽造は、『現代のお札に比べて偽造が容易いぞ、大丈夫なのか?』と教師に尋ねるために作ったのであって、悪用目的ではないときっぱり断言できる。
他のも含めて、学園に来て間もない頃は今よりこの世界のルールに馴染んでなかったのだ。うん。
「話を戻すぞー」
「はーい」と皆が答える。
「では、実際に『詰み』となってからの手番にて、クティーラが行なった手を見るぞ」
「ネタバレの通り、クティーラは切り札タイプの『龍の眼光』を使用。このスキルを含まず、3回の行動が可能になる」
「どういう理屈?」
「自動発動系のコマンダースキル*64とかの要領じゃね? 知らんけど」
「これによって、クティーラは『ロスト・サニティ』を三発放つ。その後にダゴンが『氷砕裂破』、『マハーブフラ』の連続攻撃だな」
「……ホント、腹立つわ」
「天衣様」
吐き捨てるように夜叉神殿が言い、それをルールー殿が諌める。
「この連撃に対してのカバー回しはおそらくこうだった」
| 蓄積ダメージ表 | ||
| 一発目 ロスト・サニティ 300 灰色、シロコをカバー | ||
| ALyCE | 万能耐性 | 150 |
| 耐性なし | 300 | |
| 灰色 | (2発分) | 600 |
| シロコ | (被カバー) | 0 |
| 二発目 ロスト・サニティ 300 | ||
| ALyCE | 万能耐性 | 150+150 |
| 万能耐性(2発分) | 150+300 | |
| 灰色 | (被カバー) | 600+0 |
友奈 | 耐性なし | 300+300 |
| シロコ(全対応) 150 | 全対応 | 0+150 |
| 三発目 ロスト・サニティ 300 ALyCE、灰色に『友愛の加護』 | ||
| ALyCE | 万能耐性(2発分) | 300+300 |
| 万能耐性 | 450+150 | |
| 灰色 | (被カバー) | 600+0 |
友奈 | 耐性なし | 600+300 |
| シロコ | 全対応 | 150+150 |
| 四発目 氷砕烈砕クリティカル 400(氷結貫通) | ||
| ALyCE 1000 (耐えてた) | 貫通 | 600+400 |
| 貫通? (魔法に強い) | 600+400 | |
| 灰色 1000(不屈の闘志発動?) | 不屈の闘志発動? | 600+400? →0 |
| カーマ (なんか生きてた) | 魔法に強い (80%耐性) | 900+320? |
| 友奈 (なんか耐えてた) | 全体的に強い 87.5耐性 | 900+350 |
| シロコ (おそらく死にかけ) | 全対応 | 300+200 |
| 五発目 マハーブフラ(氷結貫通) 300 | ||
| ALyCE 1300 食いしばり使用 | 貫通 | 食いしばり使用 |
| 貫通? | 食いしばり使用 | |
| 灰色 | ||
| カーマ 1460 食いしばり使用 | 魔法に強い (80%耐性) | 食いしばり使用 |
| 友奈 1600 食いしばり使用 | 全体的に強い 87.5耐性 | 食いしばり使用 |
| シロコ 650 食いしばり使用 | 全対応 | 食いしばり使用 |
「……いや、おかしくねぇか?」
「てか、こんなクライマックスでなんでデータがあやふやなんだよ」
「これについては私から説明が」
苦虫を噛み潰したような表情のフジワラが、口を開く。
「クティーラの使う『ロスト・サニティ』は、その余波でさえ情報汚染が異常値を示すスキルでした。頑丈に設計されているので1回、2回ならこちらのフィルターで対応できましたが、3回となるとフィルターで情報処理しきることができなかったのです」
「その結果、ぐちゃっと破壊されたフィルターがこちらになります」とフジワラが懐から機械を取り出す。ベルト型機材に取り付けて使う対応のカートリッジ型の機材だったが、情報汚染によって内部からうねうねとした触手が生えた謎生物と機械の中間のような存在になり果てていた。ダニーがガブっと殺したのでもう無害だけれども。
「なので、フィルター移行処理の処理時間たる数瞬についてはデータを残すことはできませんでした。ですので、ここの映像についてはこれまでの戦闘データを基にAIで作成したものになっています。申し訳ありません」
フジワラが深々と頭を下げる。「そういうことなら仕方ないか」と場の空気は変わってくれていた。やはり真面目(に見えているヤツ)の謝罪は効果あるよなー。
「……案外使えないのな、フィルターっていっても」
「馬鹿か、自分で処理したらあのうねうねが脳みそに生えるんだぞ? 死ぬわ」
「情報の汚染の影響って個人差あるから死ぬだけじゃないよー。悪魔化とかペルソナの暴走とか廃人化とかプラズマに目覚めたとかいろいろ見たよー」
「あ、わかる。威張ってただけの上役がそれで頭にアルミホイル巻き始めて逆にマトモに働くようになったし」
と、がやがやと話された話の中に耳よりの情報が入ってきた。
ダメな感じの連中を発狂させて人格ガチャを行えばたまに使えるようになるようだ。
つまり、通学路*65で浮浪者してる面々をうまいこと発狂させればワンチャン紹介できる人材になるのでは?
と、昔の己であれば思うところだが今はこの世界の住人としての自覚がある。ちゃんと己無実を
「さて、本日己が討論会などをふっかけた理由はまぁこの辺にあるのは分かってくれただろうか」
この、必殺が決まった! うぉおおお! という場面なのにデータが埋まっていなかったから微妙にもにょもにょと詳細が読み取れないこの腑に落ちない感じを! そして、情報汚染データだからネット共有して討論することもできず、装備情報や悪魔情報を集めることら即ち漫画殿との殺し合いゴーサインなので行えない悲しさを!
と、喚き散らかしたい衝動を抑え司会進行を行う。
「これ、単純に耐性データが間違っている可能性は?」
「威力データの数値化を間違えている可能性は十分にあります。いずれのスキルも見慣れないものなのは皆さん知っての通りなので」
と、そこでクズリュウ派ながらこの死闘に関わってない合体師のパピ♡ヨン殿が手を上げた。
「それについてなんだが、提供できるデータがある。……身内の恥を晒すような思いだがな」
「む?」
「クティーラの元となったであろう邪神について俺たちのアーカイブにデータが残されていた」
「名称は『クトゥルー』とデータは破損していたが、強靭な体力と絶大な力を持つ邪神*66だ」
「……え、そんなことある?」
強大な力を持つ、強靭な体力を持つ、という話は即ち“耐久と力に自身の能力値を割り振っている”と言い換えられる。言い換えられてしまう。
「ダゴンについても、ルールーに残ってた悪魔の残滓からのデビルアナライズでステータス傾向は見えてるわ。スピードは遅めで力と耐久がどっこい。──メインは魔法よ*67」
「え、そっちもであるか⁉︎」
いや、確定クリティカルと攻撃魔法振り分けてたから両方振れるのは知ってたけどさぁ!
「だから、あんたの300とか適当に割り振った数字は、実際にはこんなになるわけよ」
クティーラ 『ロスト・サニティ』 200
クティーラ 『山津波*68』400(消沈によりクリティカル期待値2倍以上)
ダゴン 『氷砕烈破』 100(クリティカル時250)
ダゴン『マハーブフラ』300
「……なんか増えてる」とか「マハーブフラの威力変わってなくない?」とか色々聞こえるが、ちょっと衝撃だった。
「え、つまりダメージ計算は……」
「合計1200、ラストのマハーブフラ抜きで850なので、普通に耐えれるライン……だな」
いや己なら死ぬけれど。耐久力高い漫画殿及びその仲魔たち、レベル99というステータスの暴力している高嶋殿ならまぁ耐える奴である。
砂狼殿は全対応の『カラミティスーツ』着ているとはいえワンチャン死ぬだろうが、死んで大勢に影響ないので問題はない。なんか耐えてたが。
「皆でこの謎を議論するつもりだったのに、秒で腑に落ちてしまった……ッ!」
「ぐだぐだ進行すぎない?」
「正直チープすぎるCGはともかく動きについては超参考になったけどね。カジャンダの20%ダメージ増減で耐えられるかを見るっての参考になったし」
己が悩みに悩んでいたことを秒で解決されてしまう、というオチこそあったものの。大まかな流れは終了した。してしまった。
「これでは、己が無駄にしゃべり散らかしていただけになってしまうではないか!?」
「事実としてそうだろうが」
「それよりさっき高嶋ちゃんへのカバーの動き出しもっかい見せてくれない? 予備動作ほとんどなかったように見えたんだけど」
「いや、まだ戦闘終わってないだろ。クティーラがどうボコされたのか確認したい」
「え、耐久ライン取れて敵に崩しの手がなかったらもう消化試合じゃん。見る必要ないって」
皆が思い思いに発言を始めてしまったので、録音しているダニーは右往左往してしまっている。
それを見てフジワラは「ひとまず最後まで流しますね」と映像を流しているが、クティーラの動きがあからさまに悪くなっているので、ガチに消化試合の空気であった。
ぱしんと両頬を叩いて意識を切り替える。
現在時刻と映像の残り時間を比較すると、見終わったあたりでちょうどいい時間になるようだった。というか、予定時間ジャストである。問題なくチェックテストもできるようだった。
前半に時間を取りすぎと後半の議論時間が消失がガッチャンコした結果、なんかいい感じになったらしい。
という事で、上映会は終了した。山もないオチもない、順当にクティーラが負けるだけの戦いであったので雑談交じりではあったが、皆戦い自体から目を離してはいなかった。有利を崩さず丁寧に詰め続けていく戦いには派手さはないが、強いものな。
「さて、時間も時間なので今回の討論会……のつもりだった上映会はこれにて終了だ。これより薬師丸先生監修の元チェックテストを行い、終わり次第自由解散となる。が、その前に2点連絡事項だ」
「まず、今回使った情報共有ソフトについてだ。映像データの処理をするソフト、処理された映像を再生するソフトについてはandr⚪︎id、i⚪︎sのアプリとして配信されている。課金要素は広告削除くらいなので、気軽にダウンロードしてくれ」
「もう一つは、今回の映像データの再視聴について。薬師丸先生はじめ、情報汚染への対応を熟知している方に話せば今回使った映像データの再視聴がでにるようにしている。ある程度時間経って誰にも問題が出なかった場合は、学園サーバーにて映像を公開する予定でもあるが、そっちの時期は未定だ」
若干落胆した声があったものの、スケジュール帳を確認していたりスマホを操作していたりなど、即座に動き出している者たちがそれなりに居た。反応は良好で何よりだ。
「その際は、今回皆が話したコメントやらが録画視聴した者たちにも伝わるように、このような工夫を用いてみた。録画視聴の者たちのコメントもこの形で追加するので、時間があれば再度の視聴をお勧めするぞ。一度見ただけで全てが理解できる戦いではないからな」
ということで、薬師丸先生に視界のバトンを渡しつつゆっくりと背筋を伸ばす。
いろいろ想定外ではあったが、疑問の解消などいろいろやれたので、終わりよければ全てヨシ!である。
ツッコミの声が大きくなり、薬師丸殿にやんわり怒られたのは言うまでもないことだった。
あとがき!
・ジエンくん
学園では名前が通ってきたので、実を売り出し始めた系主人公。『楽しいバカ』、『使えるバカ』と見られるように振る舞いを調整してはいるが、9割9分で素の動きしかしていない。
漫画さんたちのデータを見始めた当初は骨格だけのデータで戦闘を見ており、クティーラの攻撃力と漫画さんたちの耐久力との計算が合わずに大いに悩んだ。その時のヤケっぱちの発想の結果MMDモデル被せたり『好きな惣菜発表ドラゴン』を降臨させる結果となった。
なお、今回意図的にネタを仕込みまくったのは楽しく学んだ方がより身に着くという考えから。何事も楽しんだもの勝ち、というのがジエンくんの信条だからだ。
・フジワラちゃん
『好きな惣菜発表ドラゴン』のワードで連想される生徒No.1の座を奪い取った新進気鋭の転校生(予定)。スパコンに匹敵する演算能力を惜しみなく無駄な事に使う様は、さすが
レクのグループチャットに参加した生徒全ての個人情報に加え、討論会に参加した生徒の音声データを獲得してしまった。
AI技術にも長けているため、やろうと思えば学園内を疑心暗鬼の闇の中に叩き込める状態である事を多くの人は知らないでいる。やる気はないが。
・棗イロハさん
龍王砲イコール好きな惣菜発表ドラゴンという邪悪の方程式を破壊したいと思っているが、封魔管の術を学べば学ぶだけ『この戦法ダメでは?』と思ってしまい否定できないジレンマを抱えた系少女。
割とキャラ崩壊しているが、トンチキイベントに関わったからという事でどうか、ご容赦を……
以下駄文です。
なるべく早く書くつもりでしたが、普通に難産だったので遅れてしまいた。学園革命編は、コレにて完結です。長々と続かせてしまいましたが、ジエンくんここから次のセプテンまで動かせないという理由もあったりなかったり。
『新生塾とは因縁ゼロなので関わらない&対人戦なので大人が関わらせない』となり、混沌の奇禍は『学生なので普通に授業&技研がヤクザ関係なのでカチコミに回れない』でこれまた動けなかったりするのでした。
ほか本編絡みでやることはミスリルへの襲撃で死んでしまった人のお葬式くらいなのですが、多分セプテンでもっと死ぬのでその時やるのが次への流れがスムーズかな? と。まぁ葬式ができる環境なのかはセプテン戦次第なのですが。
即死無効を得る。
敵ターン開始時、連動効果が発動「1ターンの間、敵全体を【消沈】にする
消沈の敵に対して与えるダメージが30%増加する。
先攻でバトルを開始時、連動効果が発動
敵全体に対象の現在HPの10%の割合ダメージ(最大200ダメージ)を与え、MPを10%減少させる。
後攻でバトルを開始時、連動効果が発動「敵のプレスターンアイコンを2つ減少する。(合計2つまで)」
【プレスターンバトル以外の場合、ランダムに敵PT二名の行動手番を減少する」 D2出典
“消沈にする”効果をスキル等で受けた際に付与される特殊なステータス。
消沈になっているあいだは、各悪魔のステータス付近に専用のアイコンが表示される。
消沈になっているあいだは以下の効果が発動する。
・物理命中率、物理回避率、会心率、状態異常にする確率が20%減少する
・会心を受ける確率、状態異常になる確率が20%増加する
消沈のターン経過は自ターン開始時に行われる。1ターンのあいだ消沈になる効果の場合はつぎの自ターン開始時に解除される。
消沈は状態異常解除スキルで解除することはできない。
また、状態異常にかからなくなる効果を持つスキルや、バリア状態では防ぐ事はできない。
D2出典
氷結貫通を得る
自身の攻撃がクリティカルになったとき、でプレスターンアイコンを消費しないが、クリティカル率が100%減少する。
自ターン開始時と自身が悪魔を倒したとき、連動効果が発動
「自身を会心状態にし、1ターンの間、敵全体の防御力・回避と命中を20%減少」
自身が生存中、味方全体は次の効果を発揮
命中率が20%増加し、【クリティカル時に与えるダメージが40%増加】 D2出典
を超える場合は三分の活泉などのHP上昇スキル。マッスルドリンコなどによる最大HPの増加などがない限り超えることは稀である。(幻影異聞録#FE、D2、新約ラストバイブルなど超える作品がないとは言っていない)