ミッドチルダから離れた場所にある『ベルカ自治領・聖王教会本部』・・・・・・
「まず自己紹介からですね!・・私の名前は、ズルスル。ギル・グレアムの古い知り合いですよ!」
「グレアムさんの?」
一人の男が『聖王教会』を訪れていた。
「・・・・・・・ズルスルさん?・・・とりあえずカリムに用事なんはは分かったんですけど・・・用件は?」
そう切り出したはやてにズルスルは
「騎士カリムだけではないよ、あなた達にも関係ありますから・・・」
「『?』」
疑問に思うはやてたちにズルスルは更に続ける。
「クロノ・ハラオウン提督・・・『闇の書』、『夜天の魔導書』の主、八神はやてさんにも・・」
「『「!?」』」
「・・・さて、色々聞きたいことありますけど・・・とりあえず私達の求めてる情報をお持ちらしいですけど・・」
「そのとおりです、八神さん。・・・・・正確にはその中の一部ですがね。」
「それは、どんな・・・」
はやては慎重に聞き出そうとする。
「『竜族』と『女神』」
「それっ!」
ズルスルの答えに、はやてはつい声を上げてしまう。更にズルスルは続ける。
「つい最近の事ですが・・・『竜族』の生き残りが確認されたんですよ。」
「『「・・・・・」』」
その情報ははやて達が求めていたものだったが同時に預言が現実になり始めていることを示している、そのために言葉を失う三人。そしてズルスルは更にそれがなんなのかを語りだした。かつて世界を滅ぼそうとした竜族、そしてそれら狩る為に女神達によって生み出された『守護天使』。それを聞き終えたとき三人は絶望感に覆われていた。ズルスルの話が事実なら『竜族』は人の味方ではなく厄災の一部だということなのだから・・・。そんな彼女達にズルスルはこう続けた。
「先日、ウインディア王国の王女が誘拐されました。そしてその件に『竜族の生き残り』が関わっているようです。」
「ウインディアって・・・・・・あのウインディア?」
顔を上げたはやてに提示された資料には幾つもの違法研究所を壊滅して周る竜族の情報が記されていた。
「・・・もしかして、最近管理局が襲われているのはその『竜族』が関係してるんか?」
そう呟くはやてに
「そうです!少なくとも我々が調べた結果はそういう事ですね・・・他にも目的があるかもしれませんが、今は調査中です。」
その事実にズルスルがこう切り出した。
「さて・・・そろそろ私の商談についてなんですが・・・」
「え?・・ああ、そうやった・・・で?ズルスルさんは一体何を・・」
「大したことありませんよ・・ただちょっと・・『竜族に関する全権』を頂きたいんです!」
「・・・・・・・は?」
はやては男の言った意味がよく分からなかった。そして、カリムたちはそれを理解し絶句する。
「分かりづらかったですか?・・つまり、竜族の処遇、立ち位置、運用などの全ての権限がほしいんですよ」
ゆっくりと染み込むようにその意味を理解したとき、
「・・・って!そんなんできるはずないやないか!!・・・・あんたの言う竜族は全次元を崩壊させる存在や!それを一個人で所有して一体何を・・・」
「我々の目的に竜族がどうしても必要なんです!」
「いや!でも・・・・・・・」
「そういえば、あなた達は今部隊創設に行き詰ってるそうですね。」
「・・!?・・いきなり何を・・・・・・」
唐突な話題の転換にはやては勢いを削がれ、それを狙うように
「全権の代金は『部隊設立への全面協力』で、どうですか?」
「『「!?」』」
予想外の申し出に驚くはやてたち。
「設立に必要な資金、人材、設備。そして、今あなた達が悩んでいる部隊設立の『賛成意見』・・・私たちならこれを提供できますが?」
一体何処まで知っているのか・・・背筋が寒くなる感覚があるがそれを飲み込み考える。それを見透かすように、
「御心配なく、私たちは別に世界が滅んでもいいなんて考えていませんよ。」
そう言って、笑い掛ける。逃げ道が作られ、それが余計にはやてを追い詰める。考えて、考えて、考えて、・・・・そして・・
「・・・・・・・どっちも・・いる・・」
「・・・・はい?」
はやての呟いた答えに男が聞き返す。それにはやては首に下げていた剣十字のペンダントを握り締め言い放つ。
「どっちもいる!!」
「は・・はやて?」
「・・・・ちょっ!?」
はやての答えに目を丸くして驚くクロノとカリム。そんなはやてを鋭い目で見据えながら男は問いかける。
「八神さん・・・つまりあなたは竜族も・・援助も全部欲しいと・・・・・?」
「そうや!」
「・・・・あなたは交渉という言葉を理解していますか?」
そう言うズルスルに、
「・・・私がどんだけ厚かましい事言うとるかはわかってる・・・でも、どっちも必要なんや!全部守るのに!」
「・・・・・・」
そう告げるはやてをジッと見詰める。
「もし、あんたの援助で部隊創ってもそれで厄災に対抗できへんかったら意味がない・・・だから対抗できる力が必要や!・・・・それにあんたの言い様やと事が起こってから動く気やろ?それじゃ遅いんや!誰かが何かを失ってからじゃ・・遅すぎる・・・そんなん私は認めへん!」
子供の駄々のようにも聞こえるはやての言葉をズルスルは黙って聞いていが、
「・・・・八神 はやてさん・・・あなたは何故そこまで必死になるのですか?」
そう問い掛けた。それにはやては、
「・・・・私の命は・・グレアムおじさんが育ててくれて・・・守護騎士(うちの子)達が護ってくれて・・・なのはちゃん達に救ってもらって・・・・・そして・・」
そこまで言ってからはやては目を閉じる。そうして浮かぶのは失ってしまった大切な『家族』。『彼女』を看取ったときも自分に何度も問いかけ続けた。他になにかできたんじゃないか、本当に他の方法がなかったのか・・・・何度も、何度も・・・。それは今も心の奥底にある後悔・・・。
「『あの子』が残してくれた命や・・・・・あんな後悔も悲しみもこの世界の誰にもあったらあかん・・・私の命は、その為に使う・・そう決めたんや!だから必死になって当たり前や、私は命を懸けて厄災からこの世界を護ってみせる!・・・どんな手を使っても・・・!」
「『・・・・・・・・・・。』」
はやての壮絶な覚悟に絶句するクロノ達。
「・・・・それが・・あなたの答えですか?」
俯き肩を振るわせるズルスル。
「・・・はい・・・・・・・」
怒号を覚悟の上で返答するはやて。重い空気が漂い場の緊張が高まる中それを破ったのは、
「・・・・ぁしい・・・」
「「「?」」」
男の呟きだった。しかしよく聞き取れなかったはやて達が首を傾げた瞬間、
「すぅぅぅばらしぃぃぃい!!!!」
「『「!!?」』」
唐突に顔を上げ賞賛を始めたズルスル。
「ハハハハハハ!!やはり私の見込んだ通りですよ八神 はやてさん!!己の理想、夢、目的の為に全霊を持って全てを手に入れようとするその欲望!さすが『夜天の王』だ。実に素晴らしいです!!!」
「え?・・・え?」
いきなりの展開に着いて行けず混乱するはやて。そこに男は更なる拍車を掛ける。
「八神 はやてさん!竜族に関する情報の提供と竜族との直接交渉権、この二つを認めてくれるのなら我々は、あなた達を全面的にバックアップしましょう!!どうですか?」
「!!・・・・・は・・はい、お願いします!」
あまりの勢いについ返答してしまうはやて。それを聞き笑顔の男は、
「では契約は成立ですね!近いうちに正式に契約を交わしましょう・・・さて、そろそろ時間なので私は失礼します!」
そう言って立ち去ろうとするがその前に、
「ちょ・・ちょっと待ってズルスルさん!聞きたいことがあるんや!」
そう言うはやてにズルスルは振り返る。
「・・・ズルスルさんの目的って・・・何なん?」
そう尋ねると・・ズルスルはニコリと笑いそして、
「あなたと同じですよ。」
そう高らかに宣言し、去って行った。
後に、この出会いこそがこれから起こる悪夢の引き金であった。