そして数日後。
「郊外で中規模の次元震を観測!第六課局員は直ちに現場へと向かってください!」
シャーリーの緊急連絡を告げる声を聞きながら、なのははヘリの中で休憩時間の撤回に嘆くスバルやそれを叱りつけるティアナを見て笑みを零していた。次元震が起こったのは機動六課本局の北東、市街から十キロの位置にある森だ。
「でも、次元震なんて珍しいですよね。見る限りでは何もないところだと思うんですけど……」
赤髪の少年、エリオがデバイスを握りながら呟いた。その視線は送られてきた地形図に注がれている。そこには山々が延々と連なるばかりで、研究所や建物といったものは見受けられなかったからだ。
「そうだね、何があったんだろう・・・・・?」
彼の隣に座る十歳の少女、キャロが少し不安そうに呟いた。次元震といえばかなりの大事なので、そのことが気にかかっているのだろう。
「安心して。今捜査官を先行させてるし、もし戦闘になっても今回は私と現場に向かってるフェイト隊長が出るから。みんなはヘリの中で待機だよ。」
そう言うと、キャロはほっと安堵の息を吐いた。それに私は苦笑を零す。ずっとそれじゃ困るけど、心構えの時間くらい欲しいのは事実だからね。
と、そこにフェイトから通信が入った。
『なのは、こっちも現場に向かってる。あと十分くらいで着けそうだけど、状況はどう?』
その問いになのはは今ある情報を告げた。なのはの言葉にそう、と短く返し、必要な情報のやり取りをする。だが、分かっていることはほどんど同じような有様であった。原因は分からないが、何かが起こっていることは間違いない。
そんな感じで二人で唸っていると、操縦席にいるヴァイスが声を掛けてきた。表情には僅かな焦りが混じっている。
「なのはさん!先行してたヤツから今通信が入ったんですが、ちょいとヤバイことになってるようですぜ。結構な数のガジェットが集まってるらしいって話だ。」
その言葉にフォワード陣の顔が一斉に強張った。気持ちを切り替えてモニターを見やると、フェイトにも通信が入ったのか顔つきが仕事というか戦闘モードに切り替わっている。
と、そこでまたしてもヴァイスが、今度は先ほどより声を大きく荒げた。マイクに向かって、確かなのかと何度も確認している。
「どうしたの、ヴァイスくん」
「あ、えっと、先行してた局員の到着報告と現場情報の追加でさ。拙いことに、民間人がガジェットと交戦中だそうですぜ。それも五十を超える数に対してたった二人ってことらしい。」
「「「「!?」」」」
ティアナたちの顔がさらに強張り、エリオとキャロの顔が目に見えて青くなった。その反応も当然だといえる。ガジェットはまだ駆け出しとはいえ魔導師である自分達四人がかり、それも訓練で手こずった相手だ。それを五十という大群相手にたった二人など、生身の人間がどうこう以前の問題である。
この報告に私は少し焦りを抱いたが、それを表情には出さず努めて冷静を装いながら問いかけた。
「それでその人たちは? 無事なの?」
「いや、それなんですが・・・・なんと言いましょうか・・・・・」
いつもざっくばらんな彼が珍しく言いよどんだ。最悪の事態が一瞬頭をよぎったが、彼の反応はそれを否定している。なんだか現実を認めたくない子供のようだ。
『ヴァイス?』
いつもと違う彼の様子に通信を繋げてきたフェイトも首を傾げている。が、観念したように息を吐くと、車をはじめて見た御者のような顔をして口を開き、
「それが・・・・・その民間人たち、ガジェットを次々に落としてるって報告が来てるんでさ・・・・もう残りが半分にまで減ってるって・・・・・・」
「「「「え・・・・・・えええええっっ!?」」」」
今度こそフォワード陣が驚愕の叫びを上げた。なのはも一瞬その報告に危うくフリーズしかける。フェイトも同じく、画面の向こうで固まっていた。というより、さっきの報告からまだ三分も経ってないのに半分って・・・・軽く副隊長クラスだ。
「す、すごい人がいるんですね・・・・・・」
「規格外ってこと考慮すりゃ同意見だなぁ。なにせ聞いた限りじゃすげぇ素早い上に、刀と杖でガジェットを圧倒してるらしいぜ。磁場が安定してなくて映像が見れないのが悔やまれるってもんだ」
「ど、どんな人間よ、それ・・・・・」
スバルの賞賛に同意したヴァイスの言葉にティアナが口元を引きつらせながら言った。他の二人もそれに抱く感情は違えど、みな同じ感想のようである。