音速の妹のヒーローアカデミア   作:えきねこ

120 / 167
今日は連投します。ぶっちゃけて言うと仮免試験ははよ終わらせた(殴


一次試験

 機械音声による開始の合図が鳴り響いた瞬間、アンジェラ達の周囲に現れた他校生達が四方八方からボールを投げてきた。その中には傑物学園高校の生徒達の姿もある。

 

 アンジェラは義手を突き出し魔法陣を展開すると、自身へと投げつけられたボールめがけて無詠唱の魔力弾の群れを発射し弾き飛ばした。クラスメイト達も各々の方法で投げつけられるボールを迎撃、回避、ないし防御している。

 

 いつの間にやら、最初のボールの嵐は止んでいた。どうやら、防ぎ切れたらしい。

 

「この調子だ、締まってくぞ!」

『おう!』

 

 アンジェラが気合いを入れるように叫ぶと、クラスメイト達も応え気合いを入れ直した。

 

「ほぼ弾く、か……」

「やはり、こんなものでは、雄英の人はやられないな」

「けどまぁ、見えてきた(・・・・・)……」

 

 と、真堂が同じく傑物学園高校の生徒と話しているのが見えた。ガタイのいい彼はこねたボールを硬質化させ、それを同じく傑物学園高校の生徒である忍者のような位で立ちの男に渡す。

 

「任せた」

「任された。

 これうっかり、僕から1抜けすることになるかもだけど……そこは敵が減るってことで、大目に見てもらえるとありがたいな……

 

 ターゲット、ロックオン! シュワッ!」

 

 忍者のような位で立ちの男が投げたボールが、地中に潜りアンジェラ達に迫る。どこから来るのかと焦るクラスメイト達に、アンジェラは地面を指さして告げる。

 

「地面ごと割れ。オレがやるとうっかり死人が出かねないから頼む」

「了解、皆下がって、ウチがやる!」

 

 アンジェラの指示で動いたのは耳郎だった。耳郎は両手に取り付けたスピーカーにイヤホンジャックを挿し、地面に手の甲を付け大規模な高周波で地面を砕き割る。割られた地面から硬質化されたボールが飛び出し峰田に迫ったものの、芦戸が張った酸の壁、アシッドベールに溶かされた。

 

深淵闇駆(ブラックアンク)、宵闇よりし穿つ爪!」

 

 ダークシャドウを纏い傑物学園生に攻撃を仕掛ける常闇。しかし、常闇が狙いを定めた女子は“個性”で自分の身体を折りたたみ、攻撃を回避した。

 

『んー、現在まだどこも膠着状態……通過0人です。あ、情報が入り次第私がこちらの放送席から逐一アナウンスさせられます……』

 

 目良の眠そうなアナウンスが会場に響く。させられるとは、やらされている感が強い。

 

 と、アンジェラの身体を悪寒が走る。直感に従い目をやると、真堂が地面に手を当てて何かをしようとしていた。

 

「最大威力、振電動地!」

星の弾丸(ストライトベガ)!」

 

 この状況で敵に接近するのは危険だと判断したアンジェラは射撃魔法で真堂を食い止めようとしたが、星の弾丸(ストライトベガ)が真堂に命中すると同時に周囲が大きく振動させられ、地面がバックリと割られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……分断はされたけど、身は隠せたか。ソルフェジオ、警戒を怠るな」

『かしこまりました、マスター』

 

 先の真堂の攻撃の合間を縫い、アンジェラは岩陰に身を隠していた。あの騒ぎに乗じて攻撃を仕掛けなかったのは、アンジェラがあの場はまだ様子見の段階であると判断したからだ。力量も分からず、決定的な隙を見せない敵相手に無策で突っ込んでいくのは愚策。ましてや、今のアンジェラは本調子ではない。無茶苦茶をすれば身体に負荷がかかる。アンジェラは、いつも以上に慎重に動いていた。

 

 が、アンジェラの顔には、焦りなど微塵もなかった。

 アンジェラにとってこの状況は、焦るほどのことでもないのだ。クラスメイトと分断されようが、アンジェラは一人ではないのだから。

 

「さて、お前達の初陣といこうか。派手なパーティーにしてやろうぜ?」

 

 アンジェラが義手を掲げると、そこから緑と空色の粒子が湧き出し、緑色の粒子は子犬ほどのサイズの赤い犬……ミミックに、空色の粒子は二つに分かれ、片方は所々黄色く発光している黒いヒト型に、もう片方は全身を青や紫に輝く宝石のようなトゲに包まれた白いヒト型に、それぞれ形を成した。それに便乗するような形で、どこからともなくケテルが姿を現す。

 

 黒いヒト型はオブシディアス、白いヒト型はクリスタラック。この2体は、ミミックを参考にアンジェラが作り出した、アンジェラ自身の使い魔である。

 

『マスター、近くに瀬呂範太、及び麗日お茶子の生体反応を確認しました』

「よくやった。麗日と瀬呂か……よし」

 

 アンジェラはある策を思い付き、ケテル達に指示を与えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 麗日は、真堂に地面を割られクラスメイト達と分断された後、多対一を避けるべく、他校の生徒達に見つからないようにクラスメイト達を探していた。

 

(こういう時こそ、冷静に、慎重に……アンジェラちゃんなら、分断されたくらいじゃ慌てたりせん! 

 

 ……逆に、この状況を楽しんでそうでもあるけど……)

 

 麗日は内心で苦笑しながら、しかし一切の油断も隙も見せずに、隠れながらクラスメイトを探して移動する。恐らくだが、そこまで遠くに離れているわけではないはずだ。近くに、きっと誰かが……

 

 そう思考を巡らせながら麗日が静かに駆けていると、物陰から何かが飛び出してきた。麗日は警戒し、ボールを手に構える。

 

 ……しかし、彼女の心配は、端的に言ってしまえば無用の長物であった。

 

《居た!》

「えっ、ケテルちゃん?」

 

 麗日の眼の前に現れたのは、ケテルだったのだ。敵に見つかったわけではないと分かった麗日は安堵の息を吐く。

 

「ケテルちゃんが居るってことは、近くにアンジェラちゃんが?」

 

 麗日はケテルと視線を合わせてそう問いかけると、ケテルは麗日の腕をその小さな身体で一生懸命引っ張ろうとした。一瞬、ケテルの行動に疑問を抱いた麗日だったが、即座にケテルはついて来てほしいのではないか、と思考を巡らせる。

 

「ケテルちゃん、ついて来てほしいの?」

《うん!》

 

 ケテルは麗日の言葉に元気よく頷くと、麗日を先導するように何処かへと飛び去って行く。麗日が慌ててその後を追いかけると、そこには赤い子犬と、その子犬を前に疑問符が大量に飛んでいそうな顔をした瀬呂が居た。

 

「瀬呂君!」

「麗日!? ……と、フーディルハインと一緒に居る……」

「ケテルちゃん、だよ……そっか、ケテルちゃんは瀬呂君がここに居るって伝えたかったんだ」

『んにゃ、どっちかっつーとお前らに合流してもらいたかった』

 

 突然、この場には居ないはずの人物の声が響く。麗日と瀬呂が驚いていると、赤い子犬の前に仮想ディスプレイが出現し、そこに声の主……アンジェラが映った。

 

『よっす。無事で良かった』

「あ、アンジェラちゃん!? じゃあ、この子犬もアンジェラちゃんの……?」

「そういや、特訓の時犬出してたな……大きさが全然違うけど、もしかしてこいつか?」

『That's right! そいつはミミックってんだ。今はコイツを通して通信してる』

「ミミックちゃんか……よろしくね」

 

 麗日はそう言うと、ミミックの頭を撫でた。相手が主の友人であることは分かっているミミックは、特段抵抗することもなく麗日に撫でられている。

 

「それで、わざわざミミックを通して通信してきたのは何でだ? ケテルがここに居るってことは、フーディルハインも俺達の居場所は特定してるんだろ?」

『まぁな、でも、ちょっと思いついた策があって。お前らにはそれを手伝ってもらいたいんだ』

「……策?」

 

 アンジェラは、簡潔に麗日と瀬呂に自分の策を伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

『……ってわけだ。いけるか?』

「ラジャ」

「なるほど……分かった。でも大丈夫か? それ、お前が一番リスクを背負うことになるぜ?」

 

 瀬呂の言い分はもっともらしい。アンジェラが提示した方法では、アンジェラが一番危険に晒されるだろう。

 

 だが、アンジェラは一切の余裕も崩れていない笑みで、自信満々に口を開いた。

 

『オイオイ、誰に向かってんなこと言ってんだ? 確かに本調子ではないけどな……オレは、そう簡単に捕まったりしねぇよ』

 

 アンジェラの顔に油断はなく、しかし、その顔に浮かべている見る者を大丈夫だと思わせるような不敵な笑みは、瀬呂の中にあった僅かな不安をも搔き消した。

 

「……こういうのを、カリスマとかって言うのかね」

「確かに、アンジェラちゃんはカリスマあるよね」

『? どうした?』

「いや、何でも無い、こっちも準備するぜ!」

「そっちは任せたよ、アンジェラちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先程まで岩陰に身を隠していたアンジェラが、今は他校の生徒を相手に姿を現し大立ち回りを繰り広げている。他校の生徒たちは獲物がノコノコと表に出てきたとでも思っているのか、アンジェラに狙いを定めてボールを投げたり、“個性”を駆使して攻撃を仕掛けたりしているが、その全てがアンジェラの身体に掠りすらしなかった。取った、と思っても、紙一重のところで躱されたり、防壁で防がれる。他校生達は苛立ちを覚え、攻撃がどんどん単調に、雑になっていく。

 

白亜の鎖(フィアチェーレ)!」

 

 アンジェラは今が好機とばかりに背後に魔法陣を展開し、魔力の鎖を何本も現出させた。他校生達は拘束されると考えたのか、一転して逃げに転じる。

 

「ははっ、そう簡単に逃がしゃしねぇよ!」

 

 アンジェラは瓦礫の上を、まるで舞い踊っているかのように縦横無尽に駆け回りながら、他校生達へ白亜の鎖(フィアチェーレ)を投げつける。直線的な白亜の鎖(フィアチェーレ)の動きは当然読まれ、捕まる者は居ない。

 

 時に、アンジェラの背後から攻撃を仕掛けてくる輩も居た。しかし、アンジェラは一切慌てはしない。

 

「グアアアッ!」

「な、なんだコイツ……!?」

「け、結晶が飛んできて……!?」

 

 主の背後を取った者に掴みかかり、蹴落としたのはオブシディアス、周囲から結晶のようなものを生やして飛ばし、他校生の進路を塞いだのはクリスタラックだ。アンジェラの死角となっている場所をカバーするかのように動き、死角からアンジェラを狙おうと画策する者達を一掃することがオブシディアスとクリスタラックの仕事である。2体の猛攻を掻い潜り、アンジェラに死角から攻撃出来た者は居なかった。

 

 そして、他校生が意識してか無意識か、1箇所に集まった。

 

 他校生はアンジェラがノーコンだとでも思ったのだろう。ボールを構えている。

 

 

 

 

 今の状況こそが、アンジェラの狙いであると気付かぬまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今だ!」

 

 アンジェラはニヤリと笑い、叫んだ。

 

 他校生達が困惑に包まれる暇もなく、近くの岩陰から瀬呂が飛び出し、テープで他校生達を拘束した。一部、瀬呂のテープを避けた他校生も居たが、直後岩陰から現れた麗日に触れられて無重力にされ、その隙にアンジェラの白亜の鎖(フィアチェーレ)で拘束される。

 

「バカ正直に鎖なんか出してたら、そりゃ拘束を警戒するよな。飛ばしてたんなら尚更……その心理を突かせてもらった。オレは囮だよ」

 

 そう、アンジェラの立てた作戦は、アンジェラが白亜の鎖(フィアチェーレ)を見せつけながら他校生達を1箇所に集め、それを瀬呂と麗日で拘束する、というもの。早い話が囮作戦だ。

 

「よし……これでオレたちが突破できる分は確保したな」

「流石だぜ……これほどの数相手に、一回も攻撃を喰らわないとか……」

「アンジェラちゃんの囮作戦、大成功だね! ……ところで、なんか居るんだけど」

「それは後でな。まずは……」

 

 アンジェラは手にしたボールを他校生のターゲットに当てる。麗日と瀬呂も、自身のボールを他校生のターゲットに当てた。

 

 3人がそれぞれ二人ずつ脱落させると、3人が身につけているターゲットが青く発光した。それから程なくして、アナウンスが鳴り響く。

 

『現在42名通過、テンポ上がってきましたねぇ』

「レスポンス早っ」

 

 レスポンスの早さにツッコミを入れつつ、ターゲットから控室への移動を催促するようなアナウンスが流れてきたのでアンジェラ達は足早に控室へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オブシディアスとクリスタラックの元ネタを知る人とは是非仲良くしたいものです。原作絡みで関連性があるわけではありませんが、要素としてはちょっとだけ関連があるかも。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。