あと、アンジェラさんの見た目がイメージしにくい人は某L社の秘書AIの見た目そのままにちっさい版をイメージしていただければ。
……え?名前も同じだろって?
すまん、マジでそれは偶然なんだ。アンジェラさんの名前決めてから気付いたよね。
「ハァ、敵んん!? バカだろ!? ヒーローの学校に入り込んでくるなんて、アホすぎるぞ!?」
確かに、敵にとってヒーローの巣窟たるヒーロー養成校への侵入は、即座に捕まる可能性が高い愚策にも思える。しかし、今回の輩はそうではないと、アンジェラは考えていた。
「先生! 侵入者用センサーは!?」
「もちろんありますが……」
13号先生の口ぶりからすると、先生達もセンサーが何らかの要因で無効化されてしまったことに気付いているようだ。
「現れたのはここだけか、それとも学校全体か。何にせよ、センサーが反応しねぇなら? 向こうにそういうことができる“個性”が居るってことだろ。
校舎と離れた隔離空間、そこにクラスが入る時間割……
バカだがアホじゃねぇ……これは、何らかの目的があって用意周到に画策された、奇襲だ」
轟は比較的冷静さを保っているようで、状況の分析を行った。
そう。その目的が何であれ、相手は学校側の侵入者対策を頭に入れているような連中なのだ。油断することはできない。
「13号、避難開始! センサーの対策も頭にある敵だ。上鳴! お前も“個性”で連絡試せ!」
「ッス!」
相澤先生は指示を出しながら首に巻き付けた捕縛布を構える。
「……って、相澤先生、まさか一人で戦う気ですか!? 大多数の小物はともかく、正面戦闘じゃ危険な奴が数人混ざってますよ!? まして、相澤先生の戦闘スタイルじゃ……!」
アンジェラの頭の中に、警鐘が鳴り響く。
あの脳みそ剥き出し敵は、ヤバいと。
相澤先生では、勝ち目がないと。
アンジェラは、過去の経験からそう判断した。
しかし、相澤先生の意思は硬い。ヒーローとして、教師として、あの敵達を制圧するつもりでいる。
「一芸だけじゃヒーローは務まらん」
「……なら、ちょっとだけ待ってください」
アンジェラは、これ以上引き止めることは相澤先生に失礼だと思った。そして、自分に出来ることは相澤先生の生存確率を少しでも引き上げることだとも思った。
本当ならアンジェラも加勢したいが、それは相澤先生が許さないであろう。相澤先生にとって、アンジェラは守るべき生徒なのだから。
ならば、とアンジェラはウエストバックから幻夢の書を取り出し、手早くデータをソルフェジオに読み込ませ、詠唱を唱える。本来ならば詠唱を全部カットしたいのだが、如何せんアンジェラは他人にかけるタイプの補助魔法にはそこまで適正がなく、フルとは言わずともある程度の詠唱は必要としていた。しかし、最大まで詠唱は刻む。
「『我が乞うは、祝福の風。猛き意思を宿す者に、力を与える祈りの光と、その身を守護する鋼の護りを』」
アンジェラの足元に魔法陣が現出する。目の前に現るは、力と護りを与える魔力弾。
「
アンジェラはソルフェジオを振るってその魔力弾を相澤先生に与え、これが鋼の守りを与え、攻撃能力を底上げするものだということを伝える。
「効果は大体20分ほどです。これで、大抵のことは大丈夫だと思います」
「フーディルハイン……ありがとな。
13号、任せたぞ!」
相澤先生はアンジェラにお礼を言うと、セントラル広場へと飛び出していった。
セントラル広場で相澤先生は、次から次へと襲いかかってくる敵を容易く返り討ちにしていた。それは、たゆまぬ努力によって作り出された、洗練された戦闘スタイルだった。
しかし、それでも不利なことに変わりはない。相澤先生のためにも、早く避難をしなければならない。アンジェラは幻夢の書を仕舞い、ソルフェジオをペンダントに戻し、クラスメイト達と共に13号先生の指示に従って避難する。
しかし。
「させませんよ」
相澤先生の一瞬の瞬きの隙に、モヤがかった敵がアンジェラ達の前に現れた。
「はじめまして。我々はヴィラン連合。僭越ながら、この度ヒーローの巣窟たる雄英高校に入らせていただいたのは……平和の象徴、オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして。
本来ならば、ここにオールマイトがいらっしゃるはず……ですが、何か変更があったのでしょうか?
まぁ、それとは関係なく…………」
平和の象徴殺し宣言に皆が息を飲む中、13号先生は右手人差し指のキャップを外し、戦闘態勢を整える。あの黒モヤを吸い込むつもりのようだ。
アンジェラはそれを邪魔しないように、援護できるタイミングがあれば援護しようと、ソルフェジオを拳銃に変形させて懐に忍ばせる。
「私の役目はこれ」
13号先生が、黒モヤ敵を吸い込もうとしたその時。
「オラァっ!!!」
「その前に俺達にやられることは考えなかったのか!?」
爆豪と切島が、黒モヤ敵に向かって“個性”を放つ。
良く言えば勇猛果敢。しかし、この状況においてそれは悪手でしかなかった。2人が突撃してしまったせいで、13号先生は“個性”が使えなくなってしまう。
「危ない、危ない……そう、生徒とはいえ、優秀な金の卵」
「駄目だ、退きなさい二人共!」
13号先生が声を上げるも、時既に遅し。
アンジェラは咄嗟にケテルを抱きかかえる。
「散らして嬲り殺す……!」
次の瞬間、視界が闇に包まれた。
アンジェラが意識を取り戻すと、視界の先には水が溢れていた。
「っち、水難ゾーンかよ!
アンジェラの両足に、小さな光の翼が現れる。アンジェラは速度を出しすぎないように注意しつつ、一旦状況を整理しようと近場にあった船の上に飛び乗った。
アンジェラが船の甲板に降り、ケテルを放した丁度その時、水面から峰田を抱えた蛙吹が現れた。どうやら、水の中に落ちた峰田を救助したらしい。
「カエルの割に、中々どうして……おっぱいが……」
そんな戯言をのたまっていた峰田は、蛙吹の舌にまかれてテキトーに甲板の上に放り投げられていた。
「こんな状況で何言ってんだコイツは……。災難だな、梅雨ちゃん」
「それはあなたもでしょう、アンジェラちゃん。大変なことになってしまったわね」
蛙吹はそう言いながら船の壁に張り付いて甲板へと登ってきた。
「ったく、あのバカ共……考え無しに飛び出しやがって。あいつらはナックルズの親戚かっての。……と、こんなこと言ってる場合じゃなかったな」
「アンジェラちゃん、随分と落ち着いているみたいね」
「ああ、まー、色々あってな」
「……それについてはおいておくとして、今の状況、どう思う?」
「どうも何も、雄英のカリキュラムが外部に漏れて、そこから画策された奇襲だろ。見た感じ、水中にも敵が居るっぽいし、この感じじゃ他のゾーンにも敵が居るだろうな」
アンジェラはそう言いながら水面を覗き見る。そこでは、水中向きの“個性”の持ち主であろう敵がこちらの様子を伺っていた。水中に感じる気配から察するに、水中にうようよしているだろう。
「単純に考えれば、先日のマスコミ騒動は情報を得るために敵側が仕組んだってことになる。
轟の言うとおり、虎視眈々と準備を進めてたってことだな」
「でもよでもよ! オールマイトを殺すなんて出来っこないさ! オールマイトが来たら、あんな奴らけちょんけちょんだぜ!」
お気楽な考えの峰田にアンジェラとケテルは呆れ返る。蛙吹はただただ冷静に、言った。
「峰田ちゃん、殺せる算段が整っているから、連中こんな無茶してるんじゃないの? そこまで準備してきている連中に、私達嬲り殺すって言われたのよ。オールマイトが来るまで持ちこたえられるかしら? 仮にオールマイトが来たとして、無事で済むのかしら」
峰田の顔に怯えが全面的に出る。その顔は、とてもヒーロー志望の学生のものとは思えなかった。
「ふ、フーディルハイン〜! 何だよコイツ〜!?」
「いや、今のはお前が100パー悪い。梅雨ちゃんが居なかったら、お前多分死んでたぜ」
《ビビりだ、ビビりだー!》
アンジェラは苦笑い。ケテルに至ってはケタケタ笑っていた。
そんなことをしているうちに、いつの間にか船の周囲を敵に囲まれてしまっていた。騒ぎ出す峰田。アンジェラは溜息を一つ吐くと、峰田の頭を軽く殴った。
「痛っ! 何するんだよフーディルハイン!」
「アホ抜かせ。今すべきことを考えろ。今するべきはそうやって騒ぎ立てることじゃねぇだろ。奴さんの狙いが何であれ、今オレ達がするべきことは全員で生き延びること。戦って、勝つことだろうが」
「はぁぁぁぁ!? 何が戦うだよ! オールマイトぶっ殺せるかもしれない奴らなんだろ!? 雄英ヒーローが救けに来るまで大人しくが得策に決まってらぁ!」
「お前もう黙れよ」
アンジェラは冷ややかな声でそう言い放った。完全に呆れ返っている。
「あー、そんなことはどうでもいい。お前ら、彼奴等はどっからどう見ても水中戦を想定してるよな」
「この施設の設計を把握した上で人員を集めたってこと?」
「ああ。だが、それにしちゃあちょっとお粗末な点があるとは思わないか?」
「お粗末な点って何かしら?」
「いい質問だ梅雨ちゃん。それは、梅雨ちゃんがこの水難ゾーンに移動させられてるって点だ」
「だから何だよ!?」
「つまり、敵側はオレ達の“個性”は把握してないんじゃ、ってことだよ」
蛙吹の“個性”を知っていれば、間違っても水難ゾーンには放り込まない。そう考えての発言だった。
「確かに……カエルの私を知っていたら、あっちの火災ゾーンにでも放り込むわね」
アンジェラ達の“個性”の情報がないからこそ、敵達はバラバラにして、数で攻め落とすという作戦を取った、というか、取らざるおえなかったのだろう。いくら雄英生とはいえ、一年のこの時期に実戦経験などあるはずもない。敵の一人ひとりはチンピラ程度の小物でも、数で落とせば殺せると踏んで。
「勝利の鍵は、奴さんがオレ達の“個性”を把握してないってこと。ま、それはこっちにも同じことが言える訳だがな。
しかも奴さんは決してこっちに上がってこない。それは、奴さんがこっちを舐めてないってことになるがな」
どうやってこのピンチを切り抜けるか。それを話し合うために、アンジェラ達はまず自分たちの“個性”について互いに教えることにした。トップバッターは蛙吹だ。
「私は跳躍と、壁に貼り付けるのと、舌を伸ばせるわ。最長で20メートルほど。あとは、胃袋を外に出して洗ったり、毒性の粘液、といっても、多少ピリっとくる程度のを、分泌できる。……後半二つはほぼ役に立たないし、忘れていいかも」
アンジェラは蛙吹の“個性”がかなり強力なものであると感じた。変温動物らしい弱点は抱えている可能性が高いが、それを補えるレベルの機動力を蛙吹は持っている。峰田救出の際に、敵まみれの水中を泳いでいたことから水中機動力には目を見張るものがあるだろう。こと水難事故において、蛙吹ほど柔軟に動ける人材は、少なくともクラスには居ないだろう。
分泌、という言葉に反応した峰田は、ケテルのタックルを喰らっていた。
「ふむ……中々強力な“個性”じゃないか。
オレのは前話したよな。魔術っぽいことは大抵できるって」
「ま、魔術っぽいことならワープとか出来るんじゃないのか!?」
峰田の言葉に、アンジェラは一瞬言葉を詰まらせる。
アンジェラは一応召喚魔法などの空間魔法は使えるし、カオスエメラルドによるワープも出来る。
しかし、アンジェラが使うワープには、致命的な欠点があった。
「あー……そのことなんだけどさ。一応、ワープ技が使えないことはないんだけど、流石に入学して早々にこんな事態になるなんて想定してなかったから、この辺り一帯の『座標』がわからないんだよ」
「それがどうしたってんだよ〜!?」
峰田はこの状況も相まって冷静な判断が出来なくなっているのか喚くばかりだが、蛙吹はアンジェラの含みのある言い方に何かを感じたらしい。
「もしかして……アンジェラちゃんのワープ技は、その座標っていうのが分からないと使えないのかしら?」
「That's right……その上、座標の解析にはどれだけ急いでも丸一日はかかるんだよなぁ……」
そう。これがアンジェラがカオスエメラルドの力を使う上での制限であり、アンジェラの空間魔法のデメリットである。
世界には、位置情報を示す座標が存在するが、アンジェラが空間魔法を使うときはその座標を元に魔法式を組み替える必要がある。また、その座標はそのままカオスコントロールによる長距離ワープにも適応される。カオスコントロールの場合は、座標を頭に浮かべるだけでいい。
半径5メートルほどの短距離ワープなら、カオスコントロールの場合は座標の解析は必要ないのだが、アンジェラのカオスコントロールはそうポンポン何度も使えるものではないので、短距離を重ねがけして長距離に、なんてことはできない。しかも、USJから雄英校校舎までの範囲の座標の解析にはどれだけ急いでも丸一日はかかる。
余談だが、ソニックとシャドウは座標なんざなくてもカオスコントロールの長距離ワープが使える。アンジェラの場合は、アンジェラのカオスコントロールへの適正が「巻き戻すこと」に特化していることも関係しているのだろう。
「……ま、そういうわけだから、オレのワープ技は今は使えない、って思ってもらっていい。それ以外にも色々出来るから、頼るんならそっちを頼ってくれ」
アンジェラは自身の中途半端さに苛つきを覚えるも、それを表に出すことはなかった。
アンジェラが説明を終えると、峰田はボール状の髪の毛をもぎって船の壁にくっつけた。
「オイラの“個性”は、超くっつく。体調によっちゃ一日経ってもくっついたまま。もぎったそばから生えてくるけど、もぎりすぎると血が出る。オイラ自身にはくっつかずに、ぶにゅぶにゅはねる」
「なるほど……拘束特化型か」
にやり、とアンジェラの口角が上がる。
敵は多数。閉鎖空間。状況がいいとは口が裂けても言えない。
しかし、アンジェラの頭の中には、既にこの状況を打破する考えが浮かんでいた。
「…………よし。なんとかなりそうだな。お前ら、よく聞け」
アンジェラは自身の考えを蛙吹と峰田に話して聞かせる。峰田の顔は段々と更に青ざめていった。
「む……無理だって、オイラにそんな大役は……」
「腹ぁ括れ。プロになったらこんな状況ばっかだろうが。それにここに男は峰田だけだろ? 根性見せろよ」
アンジェラは峰田の背を叩き、不敵な笑みを浮かべた。やけに妖艶なその様に、峰田はおろか蛙吹ですら思わず見惚れてしまう。
「……ちっくしょう! やってやろうじゃねぇかぁ!!」
「アンジェラちゃん、随分磨かれた女の武器を持ってるのね」
「なんのことだ?」
まさか無自覚なんて……これは、自覚させてあげたほうがいいのかしら?
蛙吹はちょっとだけ、そんなふうに悩んでいたとか。
水中で、敵は円形に陣を構成して待ち構えていた。痺れを切らした敵によって船も破壊され、もうあと何分もしないうちに沈むであろう。
アンジェラは、ソルフェジオを杖形態に変形させて構えると、船の上から飛び出した。
「やるぞ、ソルフェジオ!」
『はい。我が主』
アンジェラの背後に魔法陣が現出し、ソルフェジオには4つの環状魔法陣が現れる。魔力を水面の中心に当たるように一点に集束させ、放つ。
「
放たれたのは、一本の空色の砲撃と、それに付随する大きな衝撃波。水面に叩き込まれたそれらは、広がる水の流れを作り出す。
アンジェラが
「なんだよ……フーディルハイン……カッケェことばっかしやがって……!!」
峰田の目には涙こそ溜まっているが、その顔は腹を括ったヒーローのものへと変貌していた。
「オイラだって……オイラだってぇぇぇぇぇぇ!!!」
峰田は頭のもぎもぎを水面へと投げ入れる。一度広がり、集束を始めた水の流れに流されるままの敵達は、峰田のもぎもぎボールによってくっつき、そのまま中心へと引きずり込まれていった。
「水面に大きな衝撃を与えれば、広がって、また中心に集束するから……」
「一網打尽、ってことね」
水中に居た敵達は、その全てが峰田のもぎもぎボールでくっついてしまったようだ。蛙吹は跳躍で、アンジェラは飛行魔法でなるべくその中心から離れる。
「取り敢えず、
アンジェラ達を追いかけてくる敵の姿はなかった。
ご観覧、感想、しおり、お気に入り等々、皆様ありがとうございます。作者のモチベーションに繋がります。ストックはまだまだあるので、暫くはこのペースで投稿を続けていく所存です。
新参者ですが、これからもよろしくお願いいたしますm(_ _)m