音速の妹のヒーローアカデミア   作:えきねこ

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ここからオリジナル要素が大きく出てきます。いや、アンジェラの存在の時点で既にオリジナル要素満載だけど。


覚醒の唄

 ブラックドゥームとシャドウの接触とカオスエメラルドをブラックドゥームに取られることを防ぐため、ソニック達はシャドウの元へ急いだ。

 

 しかし、一歩遅かった。

 

 ブラックドゥームはアンジェラの予想通りカオスエメラルドをシャドウから掻っ攫い、カオスコントロールでブラック彗星を地球に寄生させた。やはり、ブラックドゥームの目的は地球侵略であった。

 

 記憶喪失状態のシャドウを言葉巧みに利用し、カオスエメラルドを集めさせたのは、全てカオスコントロールの力を最大限に引き出し、ブラック彗星と地球を接触させるためであった。

 

 ブラックドゥームが語るには、50年前、天才科学者であったジェラルド・ロボトニックは、ブラックアームズの生命力……細胞と引き換えに、50年後、7つのカオスエメラルドをブラックドゥームに引き渡すという取引をしていた。その取引の結果産まれたのがシャドウである、と。己の出生の秘密を知ったシャドウは絶望に満ちた瞳でその場に膝を付く。

 

 ブラックドゥームは地球の大気とブラック彗星のガスが化学反応を起こして発生した猛毒の神経ガスでソニック達の動きを封じた。ブラックドゥームとその細胞から産み出されたシャドウは、このガスに対する耐性を持っているので動くことができる。

 

 しかし、ここでブラックドゥームも予想外のことが起こる。

 

「……って、あれ?」

 

 その猛毒ガスは、何故かアンジェラにも効かなかったのだ。アンジェラは不思議そうに手を動かしている。

 

「ほう……この猛毒に耐えるか」

「アンジェラ、平気なのか……?」

「それがオレにも何がなんだかさっぱり……」

 

 ソニックですら耐えられずに影響を受けてしまった猛毒に、何故アンジェラが耐えられたのかはさっぱりわからない。しかし、この好機を逃すわけにはいかない。呆けていたアンジェラはハッと気を持って、ブラックドゥームに音速で拳を撃ち込む。

 

 しかし、その拳がブラックドゥームに当たることはなかった。カオスコントロールによる短距離ワープで、アンジェラの拳を躱したのだ。

 

「なっ!?」

「お前には、我の力に直接触れる権利をやろう……光栄に思うがいい」

 

 そう言いながら、ブラックドゥームは袖を振るう。瞬間、アンジェラの身体に凄まじい圧が襲いかかってきた。空中に居たアンジェラはシャドウの側に落下する。

 

 動きを封じるなんて生易しいものではない。力で無理矢理床に押さえつけられている。肉体へのあまりの負荷に、アンジェラは思わず声を漏らした。ブラックドゥームは腕を突き出して、そこにエネルギーを収束させ野球ボールほどの大きさの光弾を作り出し、動けなくなったアンジェラ目掛けて発射した。まずいと思っても、動けないために躱せない。アンジェラは光弾の直撃をモロに喰らい、大きなダメージを受けてその場に倒れてしまった。

 

「かはっ……!」

「そのままこの星が我が物となるまで大人しくしているといい」

 

 ブラックドゥームは不敵に笑う。アンジェラは歯をギリィ、と鳴らしながらブラックドゥームを睨みつけた。動けないソニック達にブラックアームズが迫る。

 

 自分は、なんて無力なんだ。

 その悔しさに、アンジェラは再び歯軋りした。

 

 その視界に、ブラックアームズを踏み潰すシャドウが映る。シャドウはアンジェラの頭を軽く撫でると、先程とは違う、決意の籠もった瞳でアンジェラをまっすぐ見据え、力強い声で言った。

 

「アンジェラ、あとは僕がやる」

「シャドウ……」

 

 アンジェラは漠然とした、しかし明瞭な安心感を覚えた。今は、シャドウに託すしかない。こんなボロボロな状態では、何も出来ないことは、アンジェラ自身が一番よく理解していた。

 

「ああ……まかせた」

 

 何とかその言葉を捻り出した直後、アンジェラの意識は闇へ呑まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 ……頭が痛い。

 

 知らない筈の知識が頭の中に入り込む感覚に、アンジェラは目を覚ました。

 

「ここ……は?」

 

 ……否、目を覚ましてはないない。周囲には宇宙空間のような闇が広がっている。アンジェラの深層意識が、ここは現実の世界ではないことを、アンジェラの心の奥深く、奥深くの部分であると言っている。夢に近いものだろうか、とアンジェラが考えていると、どこからか声が聞こえてきた。

 

『……め……ね…………ま……が……』

 

 沢山の声が組み合わさったような、不思議な声。ノイズが混ざっていて内容は分からなかったが、聞いたことがないはずの、何故か聞き覚えがある声だった。

 

「なに……?」

 

 アンジェラが内容を聞き取ろうと、その声に集中しようとしたとき。

 

『目覚めた。眠っていた力が』

「? ………………────ーッッッッ!!!?!?」

 

 アンジェラの脳裏に、様々な情報が雪崩込んできた。『自分』に眠っていた力と、その使い方に関する情報が。

 

 そして同時に、先程から聞こえる声の主が、アンジェラが身に着けている青いペンダントであることも理解した。

 

 彼女が、先程とは違う透き通った声で語りかけてくる。

 

『私は主たる貴女の手となり足となる杖。貴女が今傍受した記録は、貴女のものであって貴女のものではない』

「っ、なに、を……」

『貴女は、大切な人達の力になりたいと思っている。そうですね』

 

 その感情は嘘偽りなく自分のものだ。アンジェラが頭の痛みに耐え、悶絶の表情を浮かべながらその言葉に肯定の意を示すと、ペンダントは言った。

 

『私は、ずっと貴女の力が目覚める時を待っていました。貴女が今まで自覚していなかった力、私達の力、魔法の力を』

「まほ……う……?」

 

 何処のファンタジーだと言いたくなったが、断続的な頭痛と流れ込み続ける情報のせいでそんな暇もない。ペンダントは続ける。

 

『魔法とは、遠き宇宙にあった文明によって産み出された技術。私はその文明に造られた魔法の剣。貴女が知らない時からずっと、貴女の傍で待ち続けていました』

「待つ……?」

『貴女の力が目覚める時を。この深層心理の世界も、貴女が魔力で作り上げたものです』

 

 そんなことを言われても、アンジェラに思い当たる節は一切ない。ペンダントの言うことは現実味のない内容ばかりだが、流れ込んでくる情報が『これは嘘ではない』と言っている。否応なしに、これが現実であるとアンジェラに認識させにかかってくる。

 

 頭痛がスー……と収まる。アンジェラの中に流れ込んでいた大量の情報も、いつの間にか止まっていた。どうやら、全ての情報が無事にアンジェラの脳に刻み込まれたらしい。アンジェラは脳に刻まれた情報を整理しながら、ペンダントの名を呼ぶ。

 

「…………お前、は……ソル、フェジオ……」

『はい、我が主』

「……脳みそに入ってきた魔法に関する知識……オレには使えるかどうかが分からねぇ」

『大丈夫です、私がお手伝いします』

「そっか……大した初心者サポートもあるもんだな」

 

 いつの間にかアンジェラの表情に余裕が戻った。ペンダント……もとい、ソルフェジオの言葉に、流れ込んできた魔法に関する知識。突拍子もないことな上にこの状況。本来は信じろというのは無理があるだろう。しかし、アンジェラは信じることにした。魔法のような奇跡を、カオスエメラルドとその力を引き出す存在を知っているから。

 

 かくいうアンジェラも、多少の制限こそあれどカオスエメラルドの力を使うことができる。奇跡の力がどんなものなのか、身を持って知っているアンジェラだからこそ、ソルフェジオの話も、いきなり流れ込んできた魔法の知識も、信じようという気になれた。

 

 深層意識の外側から音が聞こえてくる。それは、シャドウの本当の出生の秘密を告げるプロフェッサー・ジェラルドの言葉。毒には、同じ毒をもって制するしかなかったというプロフェッサー・ジェラルドの決断と、シャドウが本当はブラックアームズから地球を守るための、希望の光として産まれたという事実。

 

 プロフェッサー・ジェラルドは元々は善人だったのだろう。しかし、50年前のアーク制圧によって孫娘のマリアを失ってしまったことで狂ってしまった。人類を守るために造られたシャドウやアークを、人類を滅ぼすための兵器にしてしまった。

 

 全ての悲しみの連鎖の元凶は、ブラックドゥームだった。

 

 アンジェラはスッと目を閉じた。

 

 これはシャドウの戦いだ。無駄な手助けは不要。

 

 しかし、アンジェラにもやるべきことはあった。

 

「それで……どうすればいい? オレの身体はエイリアンのせいでボロボロだぞ?」

『大丈夫です。魔力で無理矢理動かせます。もっとも、無理矢理動かした分の反動は重いですが』

「ここで動けるのに動かないって選択肢はねぇだろ」

『……そうですね。貴女はそういう人ですものね。分かりました。このソルフェジオ、全霊を持って我が主の力となりましょう』

「……おう、頼むぜBuddy」

 

 アンジェラとソルフェジオ意識がシンクロする。か細い糸を手繰り寄せるように、脳に流れ込んできた知識通りに体内に感じる力……魔力を操る。

 

 ……大丈夫。流れ込んできた知識(教わった)通りにやれば問題ねぇ。

 

 右手の掌にソルフェジオを乗せ、目を閉じる。そして、身体に魔力を流すようにイメージを固め、呪文を唱えた。

 

「イファラス・ザラス・イエザラス

 イファリス・ザリス・イエザリク……

 Ahrmzisn maiema meidjemskw kakenwm(風の元、星の光は集いて導となる)

 Anrksnskamwb maowndjsms maownwhdiem(月の元、夢は集いて力となる)

 Amrodmshsms maiendmzksls makwjwnwm(掲げ謳うは奇跡と知るか)

 Hskanrkd kwoejdnm kaIemsjakqm(夜に明星の目覚めを告げよ)

 Emusu tron zen fene el zizzl(祝福と呪いを掲ぐ、始まりの歌)

 

 それは、目覚めの祝詞。アンジェラの中に眠る力を解き放つための儀式。アンジェラから流れ込む魔力に反応して、ソルフェジオが青い光を放ち、アンジェラの足元に青い正五芒星形の図形を展開する。青い光がほとばしり、宇宙のような景色にヒビが入る。深層意識の世界が崩れ去る。アンジェラは、不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピリピリ、バチバチ、と、何かが蠢いている。

 

 その何か(……)が出す音を、その場ではソニックだけが聞き取ることができた。

 

「……!」

 

 その音の発生源は、今は地面に伏して意識を失っているアンジェラ。正確には、アンジェラの持つ青いペンダントだった。ペンダントからバチバチ、と電撃の音が聞こえる。その音はだんだんと大きくなり、青白い電撃のような光がアンジェラの身体から漏れ出す。ソニック達が奇怪に思っていると、その光と同じ色の、五芒星形の幾何学模様がアンジェラの真下に現れ、アンジェラが悪態をつきながらのそり、と立ち上がる。

 

「っててて……あんのエイリアン、思いっきりぶっ飛ばしてくれやがって……」

 

 その身体はブラックドゥームの力で無理矢理押さえつけられ、吹き飛ばされただけあってボロボロで、立ち上がることすら難しい筈。しかしアンジェラは、確かに立ち上がった。ペンダントが淡い光を放つ。ソニックは居ても立っても居られなくなって大声を出した。

 

「アンジェラっ!」

「ソニック……心配かけたな。オレは大丈夫だ」

「大丈夫って……そんなボロボロな状態で!?」

 

 アンジェラの姿を見て、その状態で動けることに疑問の声を上げたのはテイルスだ。確かに、身体は悲鳴を上げている。立っているだけでかなり辛いものがある。

 

「大丈夫だっての」

 

 しかし、アンジェラは軽く笑ってみせた。自分は大丈夫だと。こうして、立ち上がれると、示すように。

 

「……無理は、するなよ」

 

 だから、ソニックもこう言うしかなかった。こうなったアンジェラは意地でも、自分の気が済むまで、真っ直ぐに突き進む。兄のような存在であるソニックですら、止めることなど出来やしない。

 

 アンジェラは胸元のペンダントに触れる。すると、そのペンダントは青い光に包まれ、その光は機械的な魔法の杖のような形状になった。アンジェラはその杖の後先を足元の幾何学模様に向かってカン、と音を立てて突き立てる。すると、ソニック達は自由に動けるようになった。ソニック達の動きを縛っていたガスが無効化されたのだろう。

 

 アンジェラのするべきこと。それはソニック達にかけられた神経マヒを解除することだった。流れ込んできた魔法に関する知識とソルフェジオの力を合わせて、解毒作用を持つ魔法を発動させたのだ。

 

 アンジェラは神経マヒが解除されたことを確認すると、ソニックの方に向き直る。心做しか、アンジェラの顔色が悪い。

 

「悪い……説明は、後でいいか。今は……」

「分かってる。奴はシャドウが追ってる。急いでここから離れよう」

「ああ。話は聞いていた。……これは、アイツの戦いだ」

 

 アンジェラはソニックのもとに駆け寄ろうとしたが、直後ふらり、とバランスを崩してしまう。地面に倒れ伏す直前、ソニックがアンジェラを受け止める。触れた箇所が異様に熱い。ソニックがアンジェラの額に触れると、そこは確かに熱を持っていた。ガラン、とアンジェラの手にあった杖が床に落ちる。身体に力が入っていないのだろう。

 

「アンジェラ、お前……! 熱が出てるじゃないか!」

「ははは……大丈夫だって……」

「どこがよ! フラフラじゃない!」

「エミー……」

「無理しすぎて身体のほうが限界なんだろ……もうオレ達は動けるから大人しく寝てろ! 説明は後でいいから!」

「う……悪い……」

 

 ソニック達の言葉に諭され、安心するような暖かさを感じながら、アンジェラは大人しく意識を落とした。

 

 シャドウ……負けんじゃねぇぞ……。

 

 意識が完全に沈む直前、今ブラックドゥームと対峙しているであろうシャドウのことを思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ソニックは、知ってたの? アンジェラの、さっきの力……」

 

 ソニック達がブラック彗星から脱出している道中、エミーが神妙な面持ちでソニックに尋ねる。

 

「いや、オレもついさっき知った……というか、アンジェラの様子からしてアンジェラ自身も知らなかったんだろ」

「ワシもアンジェラとは長い付き合いになるが、あんな力を持っとる素振りなんて見せなんだ」

「土壇場で力が覚醒したのね……。そのせいで相当無理しちゃったみたいだけど」

 

 ルージュはそう言うと、ソニックが抱えているアンジェラの頭をそっとなでる。アンジェラは熱のせいで寝苦しそうにこそしているものの、安心しきったような表情をしている。

 

「あの力は僕らを蝕んでいた神経毒を除去した……多分だけど、それだけじゃないような気がするんだ」

 

 アンジェラの持っていた杖を握りしめながら、テイルスは思考する。

 

 アンジェラの足元に現れた幾何学模様、杖のような形に姿を変えたペンダント。

 

 あれは、まるで……

 

「“個性”ってことか? でもあいつは検査で……」

「……きっと、“個性“じゃない別のなにか……じゃないかな。それが、きっとアンジェラの中にはずっと眠っていたんだ。それが、何かがきっかけになって目覚めた……。そのきっかけは、おそらくだけどブラックドゥームの力に直接触れたことだと思う」

「何でだ?」

「カオスエメラルドの力を使っても目覚めなかったってことは、それしかないかなって……」

 

 ナックルズの疑問に、テイルスは思考を纏めながら答える。アンジェラは以前から平然とカオスエメラルドの力を使っていた。それでもアンジェラの中にあるあの謎の力が目覚めなかったのであれば、あとの原因はブラックドゥームの力に直接触れたことくらいしか思い浮かばなかった。

 

「……何にせよ、アンジェラに聞けば分かるだろ」

 

 ソニックは、未だに眠っているアンジェラを起こさないように抱き締める力を強めた。その光景を見ていたエミーは、羨ましい気持ちも多少は感じたが、アンジェラの変化になんとなく嬉しいような気持ちも感じていた。

 

 

 

 

 エミーはソニックが拾ってきた当初のアンジェラのことを知っている。このことは、ナックルズはおろかテイルスですら知らない。当時はそこまで関係は深くなかった、知り合い程度の関係であったものの、エミーはテイルスよりもソニックとの付き合いが長い。

 

 エミーは思い返す。出会ったばかりのアンジェラの様子を。

 

 

 

 

 

 

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