音速の妹のヒーローアカデミア   作:えきねこ

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連投します。アンジェラさんのリミッターについて深く掘り下げます。多分、轟戦だけじゃ何がなんだか分からないと思うので。色々ツッコミどころはあるかと思いますが、へぇ〜、くらいの感じで見ていただけると……あと、作者のガバ設定にツッコミどころがあれば、どうぞ優しく指摘してやってください。ゲッダンしながら喜びます。


マッハファイター

 かすり傷を回復魔法で治したアンジェラが観覧席に戻ると、隣の席からものすごい含みを込めた視線を感じた。言わずもがな、ナックルズである。ナックルズは飄々とした態度のアンジェラを見て大きくため息をついた。

 

「お前さぁ……リミッター解除させただろ」

「そーだな」

「帰ったら俺がソニックとシャドウにどやされるんだが?」

「ドンマイ」

「アンジェラ……お前なぁ…………」

 

 ナックルズは頭を抱えた。アンジェラは全く反省していないし、もしあのシスコン共にこのことが知られたらと思うと、背筋にぞっとするなにかが這い上がってくる。

 

「……え? アンジェラちゃんのリミッターって、そんなに解除するのが危険なものなの?」

「あー、これも言ってなかったか。肉体的にはあんまし問題ないんだが、長時間リミッターを解除してると強力なエネルギーで脳のキャパシティー超えちゃうんだよ」

 

 アンジェラのリミッターは、アンジェラの体内に宿る魔力を抑える役割を持っている。魔法の力に目覚めた頃とは違い、リミッターを解除しても肉体的な負荷は少なくなっている。これは、アンジェラの肉体が魔力に順応してきたのと、元々アンジェラがカオスエメラルド7つの力に耐えられるくらいには頑丈な肉体を持っていることが要因と考えられている。

 

 しかし、肉体面の負荷は問題ない範囲ではあるが、リミッターを解除すると、今度は脳のキャパシティーを超えてしまうのだ。

 

 アンジェラのリミッターには三段階の解除段階がある。今回の轟戦で見せた、両手のリミッターだけを一段階解除させる「ファーストリミット」、両手足のリミッターを全て一段階解除させる「セカンドリミット」、そして両手足のリミッターを取り外す「フルドライブ」だ。段階が進むに連れて抑えられていた魔力が解放され、魔法の出力が上昇する。リミッターを解除させなければ使えない魔法なんかも存在する。フルドライブ状態……つまり、アンジェラの魔力を全て解き放った状態は、その力が膨大すぎてソルフェジオの助けがあっても制御が不可能になってしまうが。

 

 ただし、長時間リミッターを解除した状態で居るとその膨大な魔力がゆえに脳に多大な負荷がかかり、吐き気、目眩、頭痛などの症状が現れる。それゆえに、アンジェラは常日頃からリミッターを着けているのだ。

 

 その負荷ゆえに、アンジェラは兄達にリミッターをむやみやたらに外すなと言われていた。ただ、アンジェラはその突拍子も無い考え方ゆえにむちゃくちゃをやらかすことが多い。今回もそれに近い類のものだろう。

 

 ちなみに、リミッターを解除した状態でも大人しく眠っていれば、脳にも肉体にもそれほど負荷はかからず軽いめまいくらいの症状で済む。リミッターを解除する状況なんてリミッターのメンテナンスや修理のとき以外では戦闘中くらいなので大人しくしているなんてできるはずもないのだが。

 

 ナックルズはもう一度ため息をつく。アンジェラは全く反省も後悔もしていない、と言わんばかりの笑みを浮かべて言った。

 

「ため息ばっかだと幸せ逃げるぞ?」

「誰のせいだと思ってんだっ!!」

 

 アンジェラ自身がよしとしていても、あのシスコン兄貴達がどう出るかは、かなり長い付き合いになる今でもよくわからない。

 

 ナックルズは割り切ってもう気にしないことにした。後のことを今考えても仕方ない、と。

 

 人それを、現実逃避と言う。

 

 

 

 

 

「……しっかし、なんで一段階とはいえリミッターを解除したんだ? そんなことしなくても普通に勝ててたと思うが」

 

 ナックルズのふとした発言にその場の空気が固まる。

 

 ただ、シスコン云々はともかく、ナックルズはそれが分からなかった。

 

 確かに、轟は高校一年生にしては強い。“個性”然り、その応用力や基礎身体能力然り。元々持って生まれた才能や、ナックルズは知る由もないが、幼い頃よりエンデヴァーの虐待に近い英才教育を受けていたことが理由だろう。

 

 だが、ナックルズからしてみればまだまだあらゆるものが荒削りでしかない。“個性”の使い方に関して言えば、元が強力であるがゆえに色々と大雑把だ。ソニックやシャドウとある程度互角に渡り合えるアンジェラが、リミッターを解除してまで相手をする必要性が感じられない。

 

 アンジェラはいたずらっ子のような笑みを浮かべて口を開く。

 

「んー、まあそうしなくても勝てたな。でもさ、オレ思うんだ。

 

 それ相応の覚悟を見せられたら、こっちも本気の一撃で相手しなきゃなって」

 

 天を穿つ咆哮(ディアスフォーウェイ)はファーストリミット以上の状態でなければ使用できない、一点収束型の超火力魔力ダメージ砲撃魔法だ。他の収束砲撃魔法と違い、効果範囲が極端に狭く、衝撃波なども収束砲撃魔法にしてはあまり飛び散らない代わりにチャージまでにかかる時間も極端に短い。アンジェラが使える攻撃魔法の中では、最も威力の高いものの一つである。

 

「……つまり?」

「良く言えば期待に応えた。

 

 

 

 

 

 

 悪く言えばなんとなく」

「なんとなくでリミッターを外すなっ!!」

 

 ナックルズの叫びは、それはそれは哀愁の漂うものだったそうな。

 

「…………」

 

 そして、クラスメイト達は会話のヤバさについていけなくなっていたとか。

 

 なんだ、リミッターを外さなくても勝ててたって。確かに轟自身は結局、アンジェラに傷ひとつとして付けることは叶っていないが、もしや、リミッターを解除しようがしまいが、結果は同じだったというのか。

 

「……じゃあ、アンジェラちゃんは無駄にステージを消し飛ばしただけ?」

「まぁ、結果だけ見ればそうだな」

 

 麗日のふとした疑問に答えたナックルズは、だが、と続ける。

 

「多分、アンジェラにそこまでさせる何かを、轟……だっけ? そいつがしたってことだと思う。アンジェラはむちゃくちゃやらかす奴だが、普段はそんな迂闊にリミッターを解除するようなことはしないんだよ」

 

 アンジェラとの付き合いが長いからこそ分かるナックルズの発言に、麗日達は首を傾げた。

 

《……?》

 

 そして、若干おつむが足りないケテルは最初から話についていけていないようで、ナックルズの肩の上でずっと首を傾げていた。

 

「……ま、ケテルは分かんなくていいだろ」

《そーなの?》

「……何言ってっか分かんねえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アンジェラと轟(主にアンジェラ)がステージを消し飛ばしたせいで遅れに遅れて始まった第二試合、塩崎VS飯田。

 

 開幕直後、塩崎は飯田を拘束しようとツルを伸ばしたが、飯田のレシプロバーストによる超加速を捕えることができず、そのまま肩を押されて場外まで押し出されて飯田の勝利。

 

 第三試合、芦戸VS常闇。ダークシャドウによる常闇の中距離攻撃に芦戸は酸を飛ばして迎撃しようとするも、ことごとく躱されてダークシャドウの一撃をあび、そのまま場外に出されて常闇の勝利。

 

 そして第四試合、切島VS爆豪。硬化した切島がいきなりのラッシュを仕掛け、爆豪は爆発でそれを迎撃するも掠めた拳で頬を切られる。だが、全身を硬くし続けていたせいで綻びが出始めた切島の隙を見抜いた爆豪が容赦のない爆撃ラッシュを仕掛ける。さしもの切島も耐えきることができずにダウン。爆豪の勝利とともにベスト4が出揃った。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、間髪入れずに始まる準決勝第一試合。アンジェラと飯田の戦いだ。

 

『準決勝第一試合! 

 ヒーロー一家出身のエンジンボーイ! ヒーロー科、飯田天哉! 

 VS

 ここまで勝ち上がってきた唯一の女子にしてまさかまさかのステージそのものを消し飛ばしたパワフルガール! 同じくヒーロー科、アンジェラ・フーディルハイン!』

 

 ステージ上でにらみ合う二人。アンジェラは軽くストレッチをしている。

 

「さて、挑ませてもらうぞアンジェラ君!」

「お、いいねェその気概! スピードなら負けねぇぞ!」

 

 アンジェラは構えを取る。左半身を前に据えたマーシャルアーツの構えだ。飯田はクラウチングスタートの姿勢を取る。

 

『スタート!!』

 

 プレゼント・マイク先生のコールと共に、飯田のエンジンが火を吹いた。

 

「最初から全力で行くぞ! レシプロ……バースト!!」

 

 飯田はレシプロバーストを全開にし、アンジェラに一気に近付こうとする。しかし、

 

「ヘェ……それなりに速いけど……

 

 

 

 遅い」

 

 アンジェラはそれを遥かに上回るスピードで飯田の背後に回り、その勢いのまま回し蹴りをかました。

 

「ぐっ!?」

『おおっと、飯田の驚異的な加速を、フーディルハイン予備動作なしで上回ったぁ!?』

『飯田はエンジンゆえに初動が遅れがちだが、フーディルハインはそもそも“個性”なしであのスピードだ……信じられないことにな。飯田の超加速を更に上回るスピード……フーディルハインは、その体格を除けば飯田の完全な上位互換と言っても差し支えない』

「誰がチビだ誰が!」

 

 アンジェラは相澤先生の発言に悪態を付きながらも、アンジェラに蹴り飛ばされた飯田からは目を逸らさない。

 

「残り10秒弱! うおおおおおおおおお!!!」

 

 飯田はエンジンがエンストを起こす前の勝負に出た。更にエンジンの回転数を上げ、さらなるスピードアップを計ったのだ。その勢いのままに飯田はアンジェラへ蹴りを仕掛ける。

 

 が、アンジェラはソニックやシャドウの動きを見切ることができる。対応できるかどうかは別として、音速を軽く凌駕するスピードを持つ義兄達の動きを、今までずっと、傍で見てきたのだ。

 

 

 

 そんなアンジェラにしてみれば、飯田の動きはまだまだ遅い。

 

「そして……直線的だ!」

 

 アンジェラは最小限の動きで飯田の蹴りを躱すと、警戒が薄れてがら空きの飯田の腹に思いっきり蹴りを入れる。飯田はその勢いのままふっ飛ばされ、場外まで飛んでいった。

 

「飯田君場外! フーディルハインさんの勝利!」

『フーディルハイン! その圧倒的なスピードで決勝進出! てか、もうあれ単体の“個性”じゃねえの?』

『病院でちゃんと検査してもらって、“個性”ではないと分かってるんだと。つまり、素の身体能力がアレだ』

 

 壁にぶつかった飯田は、なんとか気絶は免れたようだ。アンジェラは飯田の傍に近付いて手を差し出す。飯田はその手をとって、立ち上がった。

 

「アンジェラ君……やはり君は速いな」

「スピード勝負なら負けるつもりはなかったし、負けたくなかったからな」

「俺の分まで決勝、頑張ってくれ!」

「OK,スピード勝負ならいつでも受けて立つぜ!」

 

 二人の会話にミッドナイト先生が、「青いわ〜!」と興奮していたとかなんとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 準決勝第二試合、爆豪VS常闇。

 これまでは無敵にほど近い“個性”で攻めまくっていた常闇だったが、爆豪の爆発による光でダークシャドウが弱体化してしまい、今回は防戦一方に追い込まれてしまう。なんとか爆豪を捉えようとした常闇とダークシャドウだったが、爆豪の容赦ない爆撃と、その光でダークシャドウが更に弱体化。常闇自身も押さえつけられてしまいあえなく降参。爆豪の勝利と相成った。

 

 その様子を観覧席で見ていたアンジェラは買ってきたコーラを一口飲む。いつも買っているコーラ会社の新製品だが、かなり美味しい。

 

「さて、そろそろ……」

 

 アンジェラはコーラを座席に置いて立ち上がる。小休止が終われば次は決勝。アンジェラと爆豪の戦いだ。

 

「アンジェラちゃん、頑張ってね!」

「おう、麗日の仇を取ってやるよ!」

「ウチ、生きとるよ」

「麗日、アンジェラのボケにいちいち付き合わなくてもいいんだぞ……」

 

 そんなアンジェラと麗日の漫才じみた会話とナックルズの呆れたような声が響く中、どことなく悲痛そうな顔をした飯田がやって来た。飯田は先程いきなりかかってきた家族からの電話に出ていたはずだが……

 

 飯田は不安そうな声をにじませて言う。

 

「アンジェラ君……すまないが、俺は早退しなければならなくなった。アンジェラ君の決勝を見届けられないことを許してほしい」

「Why? 何かあったのか?」

「兄さんが……インゲニウムが敵にやられた。決勝前に不安なことを言ってすまない。それでも、アンジェラ君は気にせず戦ってくれ。俺たちの分も」

 

 飯田は今すぐにでも兄の容態を確かめたいだろうに、わざわざアンジェラにそのことを伝えたのだ。アンジェラは困ったような笑みを浮かべて飯田の肩に手を置く。

 

「んなこと、事後報告でいいっての。お前は早く兄さんのとこへ行ってやれ」

「アンジェラ君……ありがとう」

 

 飯田はそう言うと、会場の外へとかけて行った。飯田の兄、インゲニウムのことは心配にならないといえば嘘になるが、アンジェラは気持ちを切り替えて控室へと向かっていった。

 




アンジェラさんはリミッターを解除せずとも轟君に勝てていました。それでもリスクを背負ってまで解除したのは、アンジェラさんの「覚悟にはそれ相応の本気でもって対応するべき」という持論によるものです。流石にセカンドまではいきませんでしたが。セカンドでも轟君……というかプロ相手でも誤って殺してしまう可能性があり、フルドライブ状態はそもそも脳みそぐわんぐわんする上に本人にも制御が出来ないので。
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