音速の妹のヒーローアカデミア   作:えきねこ

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グロ、ホラー描写注意です。


Execution

 あの日のことは、あの地獄のような日のことは、今でもはっきりと覚えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この世のものじゃないような、赤い仮想。されどそれは、その場にあったものにとっては現実で。それを纏った彼は、実に芸術的に、多くの人々を殺してみせた。

 

 血潮を絵の具のようにぶち撒けて、肉を粘土のように捏ねくり回して、肉や血液がこびり付いた骨を積み木のように積み上げて、出来上がったのは奇っ怪でグロテスクな芸術作品。腹の中からせり上がってくる気持ち悪さに耐えきれず、その場に吐瀉物を吐き出した。

 

 ああ、気持ち悪い。本当に気持ちが悪い。

 

 人の命をまるで画材道具のように浪費する彼も、ツンと鼻につくような、死体から放たれる金属のようなどこか甘い匂いも、

 

 

 

 眼の前で芸術作品に加工されて殺された両親を見て、悲しみよりも先に作品への称賛の感情がせり上がってきた自分自身も。

 

 

 

 

 ああ、本当に気持ち悪い。

 

 

 

 

 抉り出された心臓も、目玉も、脳味噌も、吐き気を催すほどのアカイロを、背筋をぞわりと凍らせるカタチを持っているはずなのに、実際に口から腹の中よりせり上がってきた吐瀉物を吐き出したはずなのに、どうしてこうも芸術的だと思ってしまうのか。

 

 気味が悪くて体中に悪寒が走る。赤い幻想に魅入られて、取り込まれてしまった狂人の思考回路は全くもって理解できないけれど、その赤い幻想の源さえなければ、あの人は優しいままだったことだけは分かる。

 

 

 

 

 

 自分の両親を、それ以外にもこの街の沢山の人を芸術的に殺した彼は、近所に住むごく普通の優しいお兄さんだった。

 

 血を見ることも怖がるような臆病な人だったけれど、お人好しで近所の人にもとても好かれていた。

 

 自分も、彼とよく遊んでもらった。子供の与太話を真剣に、興味深そうに聞いてくれる彼のような大人になりたいと、子供ながらに夢見ていた。

 

 

 

 

 それを、あの赤い幻想の源は一瞬にして破壊した。

 

 ふと、数日間、彼のことを見ない日があるなと思った矢先のことだった。

 

 数日振りに見た彼の瞳は、もう自分の話を聞いてくれた時のような優しさは消え失せ、ただただ深く暗く底のない狂気のみがのさばっていた。

 

 両親を芸術作品にされて、漠然と次は自分だと思った。次は自分が両親のように殺される番だと。

 

 抵抗するなど、考えてもいなかった。

 

 考えるつもりもなかったのだと、今なら分かる。

 

 彼の手が自分の首にかけられる。

 

 ああ、死ぬんだと、どこか他人事のように思った。

 

 手に力が込められる。

 

 意識がだんだんと遠ざかってゆく。

 

 もういいかな、とどことなく投げやりに考える。

 

 

 

 

 しかし、このままなくなると思っていた意識が、ふと大きく覚醒した。

 

 ああ、死なないのか、とやはり他人事のように思った。

 

 彼の顔を見る。

 

 その瞳には、狂気に混ざって狂う前の優しさが讃えられていた。

 

『あ…………俺は…………ごめ……アハハハハハハ………………!』

 

 まるで懺悔するかのように、ひたすらに笑う彼。気付けば、彼は刃物を手繰り寄せていた。自分はただただ、その様子を見ていた。

 

 刃物を手に持って、彼は彼自身の首にそれを宛てがう。

 

 

『ごめんな』

 

 それが、彼の最後の言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瞬間、刃物が彼の首を掻っ切って、そこから吹き出た血潮が自分にかかってきた。

 

 最早、動くことさえ億劫になって、そのまま気味が悪いはずなのに心地いい香りに包まれて眠りに堕ちたくなる。

 

 ああ、何故自分は狂ってしまえないのだろう。この光景を地獄だと認識することはできるのに、怖いとは微塵も感じなかった。

 

 その時点で、自分がもう既に狂ってしまっているのだと気付くことができれば、少しでも何かが変わったのだろうか。

 

 否、例えそれに気付いたところで、何かが変わるはずもない。あの時の自分は、無力でしかなかったのだから。誰も彼も、あの理不尽に対しては無力でしかなかったのだから。

 

 

 

 まるで、この世界に自分しかいないような感覚だった。どこまでもふわふわと輪郭がなく、終わりの見えない迷路を彷徨い続けているような、そんな夢だと思いたかった。

 

 それでも、再び目を開いても、眼の前の状況は何一つとして変わっていない。

 

 両親が芸術的に殺され、仲良くしてくれた彼は狂った挙げ句に喉笛を掻っ切って自殺している。

 

 何もかもが気持ち悪い。乾いた血は赤黒く染まり、固まっている。肉塊が視界のあちこちに点在し、その存在を主張している。死体に虫が集って、最高に気持ちが悪い。吐き気を催しそうになっても、自分の腹の中にはもう吐くべきものが何もなくて声が漏れるだけ。

 

 

 

 

 こんな状況にあっても、動揺こそすれ、一切の恐怖心どころか、不快感すら抱いていない自分が、一番気持ち悪かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後。凄惨な大量虐殺事件の唯一の生還者として、自分はGUNに保護されることとなる。その数年後、GUNのエージェントとして働くことになって、まず心に浮かんだことは──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ああ、自分は、誰のことも、とやかく言う資格などないのだ。

 

 

 

 ヒーローになんて、なれやしない。なってはいけない。

 

 そんな資格も、憧れも、塵となって何処かへと消え失せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「轟……!? そうか、あのメッセージ……! っていうか、左を使って……!?」

 

 アンジェラは思わず声を漏らす。体育祭で見せたとはいえ、未だに葛藤も多いはずなのに、轟は左の炎を使ってみせた。他ならぬ、救うために。ステインはその軽い身のこなしで轟の炎を躱す。

 

「今日は……本当によく邪魔が入る」

 

 幾度にも渡って自らが成さねばならぬことを邪魔されたことによる苛立ちからか、ステインの声色が少し低くなった。

 

「何でって……こっちのセリフだ。数秒意味を考えたよ。一括送信で位置情報だけ送ってきたから、意味もなくそういうことする奴じゃないからな、お前は。ピンチだから応援呼べってことだろ! 大丈夫だ、数分もすればプロも現着する!」

 

 轟は言葉を紡ぎながら氷結でアンジェラ達を押し上げてステインを炎で牽制しながら熱で氷を溶かして退路を作る。アンジェラ達は坂になった氷の上を滑り落ちた。

 

「情報通りのナリだな……こいつらは殺させねえぞ……ヒーロー殺し!」

 

 動けないアンジェラ達に代わって轟がステインに対峙する。普通ならば頼もしいと思うような状況だが、アンジェラは、ガジェットは知っている。

 

 ファントムルビーが、どれほど恐ろしい代物なのかを。いくら強い“個性”を持っているとはいえ、いや、それだけの未だ学生の身分でしかない轟が、敵う相手などではないと。

 

 しかし、動けない以上轟に頼るしかあるまい。アンジェラは顔を歪ませ、せめてと声を上げた。

 

「轟! アイツに血を見せるな! アイツの“個性”は血の経口摂取による相手の拘束だ! そして、どこからともなく本物に限りなく近い仮想を実体化させる兵器を持ってる! 絶対に接近戦をしようとか考えるな!」

「そうか……俺の“個性”なら、距離を保ったままっ……!?」

 

 瞬間、轟の頬に小型のナイフが掠り、轟はステインに一瞬で間合いを詰められる。

 

「いい友人を持ったじゃないか、インゲニウム!」

 

 轟はステインが左手で振りかぶったナイフを氷結で防いだが、ナイフと同時に上空に投げられたであろう日本刀に気を取られている隙きに頬の血を舐められかかる。咄嗟に炎を噴出させることでステインを退けさせ、難を逃れることには成功した。

 

 その後も轟に攻撃を仕掛けようとするステイン。轟は氷結で防護膜を張ったり、炎で牽制したりしてなんとか距離を置き、背後で倒れ付しているアンジェラ達を守るべく立ち回る。

 

「何故だ……皆、やめてくれよ……兄さんの名を継いだんだ……僕がやらなきゃ、そいつは、僕が……!」

 

 飯田の声に怨念が籠もる。轟はステインと対峙したまま、不思議そうな声で問いかけた。

 

「継いだのか、おかしいな……。俺の見たことあるインゲニウムは、そんな顔じゃなかったけどな……お前んちも、裏じゃ色々あるんだな」

 

 飯田と轟は、二人ともヒーローの家で生まれ育った。しかし、その環境には雲泥の差があると言えよう。

 

 優しい両親、敬愛できる憧れの兄に囲まれ、家族を心から誇りに思うことができる飯田と、父親に家族というものを引き裂かれ、ヒーローであるはずの父親に憎悪の念を抱き続けた轟。

 

 同じはず、それなのに大きくかけ離れた二人の家庭環境。轟はだからこそ、意外に思った。

 

 飯田がその目に宿している色が、かつての自分、憎悪だけに囚われていた頃の自分とそっくりだったから。

 

「己より素早い相手に対し自ら視界を遮る……愚策だ!」 

「そりゃどうかなっ……!?」

 

 轟が炎で攻撃しようとする前に、ステインが放った二本のナイフが轟の左腕に突き刺さる。轟の動きが鈍った隙きをついて、ステインは上空から手負いのヒーローに向かって日本刀を突き刺そうとしていた。

 

 しかし。

 

「させねえって言ってんだろうがっ!」

「……!?」

 

 その瞬間、空色の風がステインを大きく吹き飛ばす。アンジェラにかけられた“個性”の効果が切れたのだ。

 

「時間制限か……?」

「いや、あの子が最後にやられたはずだ……俺はまだ動けない」

「それもあるけど、血液型だ。オレ確かO型」

「血液型……正解だが、どこで知った?」

 

 ステインは疑問に思った。何故あの規格外の少女は情報が少ない中で自身の“個性”が血液型によって効果に差異が生じるかがわかったのか。

 

「相棒に教えてもらった。O、A、AB、Bの順番で効果時間は短いみたいだな」

 

 答えは単純明快、ソルフェジオの解析の結果である。ソルフェジオはアンジェラからの指示を遂行したあと、ステインの“個性”の解析を行っていたのだ。“個性”にかけられた、という事実さえあれば、ソルフェジオにとって“個性”の解析は朝飯前であった。ソルフェジオは飯食わねえだろとかいうツッコミは受け付けない。

 

 が、しかし。“個性”がわかったところでどうにもならないのが現状。ステインの武器は刃物と“個性”だけではない。ファントムルビーによる仮想現実。これが一番警戒すべきものである。

 

 仮想現実には実物よりも脆いという弱点はあるが、それ以外に明確な弱点は一つだけ。出現させられる個数に制限はなく、所有者のイメージするものならどんなものでも出すことができる。

 

 そう、やろうと思えば、USJで現れた脳無の大量生産なんかも出来てしまうのだ。

 

 アンジェラが復活したからか、ステインはファントムルビーで赤いブロックを生成する。アンジェラと轟は構えをとり、同時にガジェットが立ち上がる。

 

「すみません、アンジェラさん。お手数おかけしました」

「問題ねえよ、ガジェット」

「そこの赤い人は復活したか……さっさと2人担いで撤退してぇが……そんなスキ、見せらんねえな」

「相手はファントムルビーを使ってきます。恐らく、撤退しようとしたら仮想現実で退路を塞いでくるでしょう」

「……っち、アイツ(・・・)が来るまで耐久戦がベスト、ってとこだな。轟、お前は後方支援に徹しろ。接近戦はお前の場合じゃ不利がすぎる。接近戦はオレがやる。ガジェット、お前は仮想現実の対処に専念しろ。オレらの中じゃ、仮想現実に一番慣れている(・・・・・・・)のはお前だ」

「はい、アンジェラさん!」

「相当危ねえ橋を渡ることになるが……フーディルハイン、大丈夫か?」

 

 轟の言葉には若干の不安が混じっている。先程までの戦闘で、ステインがいかに強いのかは理解した。そこに更なる武器が追加されるとあっては、いかにアンジェラが強かろうが対処が間に合わないのではないか。

 

 アンジェラはそんな轟の不安を一蹴するように、自信たっぷりに言い放つ。

 

「危ねえ橋? 上等だ!」

 

 瞬間、アンジェラは駆け出した。ステインの動きをアンジェラが誘導し、轟が炎と氷で遠距離攻撃、仮想現実はガジェットが体術を駆使して即座に砕く。

 

 3人が戦う中、飯田の頭の中に反響する言葉があった。

 

 ステインの言葉、助けに来てくれた見ず知らずのヒーローでもない少年とステインの会話、アンジェラの不敵な言葉、轟の守るという言葉、そして、自身の胸の内から湧き出る殺意の叫び。

 

 感情の整理が追いつかない。飯田は思わず涙を零す。

 

「止めてくれ…………もう、俺は……!」

「止めて欲しけりゃ立て!」

 

 轟は叫ぶ。同じ色を瞳に宿し、しかしその理由は正反対のクラスメイトに対して、異国の地からやってきた少女に救われた身として。

 

「なりてえもん、ちゃんと見ろ!!!」

 

 ステインは仮想現実でアンジェラとガジェットを吹き飛ばす。コンマ一秒の反応の遅れで壁に打ち付けられたアンジェラは、闇の中に赤を見た。

 

「氷に、炎。言われたことはないか? “個性”にかまけ、挙動が大雑把だと!」

 

 轟の氷を切り裂いたステインは、直後放たれた炎を回避し、轟の左腕に斬りかかる。

 

「レシプロ……バースト!!」

 

 しかし、その瞬間。立ち上がった飯田がレシプロバーストを用いてステインに蹴りかかる。轟に迫っていた日本刀は折られ、飯田はその勢いのままステインを蹴った。

 

「飯田!」

「解けたか、意外と大したことない“個性”だな」

「大丈夫ですか、えっと、飯田さん?」

「大丈夫です……轟君もアンジェラ君もガジェットさんも……関係ないことで、申し訳ない」

 

 飯田は自らの暴走によって被害を被った3人に謝罪する。

 

「だから、最初に言ったろ? 関係ないねって」

「それでも……もう3人に、血を流させるわけにはいかない!」

 

 飯田は自らの過ちに気付いた。その上で謝罪の言葉を、決意の言葉を口にした。友に、関係ない通りすがりの人に血を流させたこと、憎悪に囚われて、兄の名を復讐のために使ったこと、ヒーローらしからぬ行為に走ったこと。それを今一度正すために、飯田はステインに対峙する。

 

 しかし、ステインは静かな怒りを顕にする。

 

「感化され取繕おうとも無駄だ……人間の本質はそう易々と変わらない。お前は私欲を優先させる贋物にしかならない……ヒーローを歪ませる、社会の癌だ。誰かが正さねばならないんだ!」

 

 ステインにとって、一度でも道を踏み外した者は全てが粛清の対象。しかし、ガジェットは違うと口を開く。

 

「一度過ちに気付いて、憎悪に囚われて、そこから這い上がって来た者は、そうでない者よりずっと強い! 人はキッカケ一つで変わることができるんです、それを否定するお前こそ、社会の癌と呼ばれるに相応しい!」

 

 憎悪、いや、それよりも深い暗い感情に囚われていた人を知っているガジェットの言葉は、ステインの言葉よりも重く感じた。しかし飯田は、ステインの言葉も正しいと首を振る。

 

「僕にヒーローを名乗る資格など……確かに無い。

 

 それでも、それでも……折れるわけにはいかない、俺が折れればーインゲニウムは死んでしまう!」

「……………論外」

 

 飯田の言葉が逆鱗に触れたのであろう。ステインの様相が恐ろしいものに変わる。ステインが襲いかかってくるよりも早く、轟は飯田を突き飛ばして炎で牽制する。

 

 同時に、周囲に出現する多数の赤い仮想現実。先程までとは数が段違いだ。数多のブロックが、まるで流星群のように上空から押し寄せてくる。アンジェラは迎撃しようとソルフェジオを杖形態にして構えるが、如何せん数が多すぎる。

 

 

 

 

 

 

 

「…………殺さねば………為さねば………………

 

 

 

 

 

 

ハハ、」

 

 

 

 と、突然アンジェラ達の耳をつんざくように声が突き抜けた。

 

「ハハハハ、アッハハハハハ!!」

 

 ステインは狂ったように笑い叫ぶ。先程までとは全く様子が違うステインにアンジェラ達は驚くも、同時に、ステインの胸に浮かび上がった赤い宝石を目にした。よく見ると、ステインの体を赤いオーラのようなものが覆っている。

 

「……食い潰されたか」

 

 アンジェラとガジェットは即座に理解した。してしまった。

 

 如何にしてステインが今までファントムルビーの精神汚染を受けながら、自らの正気を保っていたのかは分からない。しかし、飯田の言葉が逆鱗に触れ、その枷が外れてしまったのだろう。

 

 最早、アンジェラ達の眼の前にヒーロー殺しステインは存在しない。そこにあるのは、ステインの願望だけをわずかに残し、仮想現実を産む宝石に自我を、魂を食い潰された成れの果てであると、アンジェラとガジェットは気付いてしまった。

 

 アンジェラは舌打ちをしながらも上空から降ってくる仮想現実を機械的な熱線(テクノランチャー)で破壊する。もう、大した話を聞くこともできないだろう。アレは最早、抜け殻でしかない。

 

 ステインだったものは、自我を失いつつも飯田に向って仮想現実の刃を振りかざす。レシプロバーストの反動で動きが鈍っている飯田を守ろうと、轟は氷で防護壁を形成し、アンジェラは上空に砲撃を放ちつつ、遠隔から守りの意思(ディフェソート)を使った。

 

 仮想現実の刃が守りの意思(ディフェソート)に激突する。

 

 しかし、同時にステインが放った仮想現実は、一つ残らず霧のように消え失せた。

 

「なっ、消えた……!?」

「どうして……アンジェラ君、何かしたのかい?」

 

 轟と飯田は困惑する。飯田の命を狙っているステインが、そう簡単に刃を収めるとは思えない。

 

 反対にアンジェラは至極冷静だった。ガジェットも、ひと呼吸置いてこの状況を作り出した原因に思い当たる。

 

「アンジェラさん、呼んでくれたんですね」

「そうだな、ま、ガジェットが居るってことは、アイツも近くに居るんだろって思ったんだ」

 

 轟と飯田と手負いのヒーローの頭の上にクエスチョンマークが散乱する。アンジェラは路地裏の闇の中に目を向けて、言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来るのが遅えよ」

「間に合ったのだから文句を言うな」

 

 そこから現れたのは、胸元に赤い光を宿した黒いジャッカルの青年。

 

 ガジェットの上司たる、インフィニットだった。




…ここまで重くするつもりはなかったのに……何故だ……。
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