音速の妹のヒーローアカデミア   作:えきねこ

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幼き幻影のエーデルワイス

『……ひっ!』

 

 子供は、恐らく産まれて初めて「恐怖」というものを明確に感じた。

 

 いや、それは恐怖などという生ぬるいものではなかっただろう。胸の奥から侵食するような、何かが壊れてゆくような、そんな錯覚を覚えた。

 

『ありがとう、君のおかげだ』

『……あの、博士……これ、は?』

 

 子供はそう言いながら、自身の胸元を指差す。博士は笑みを絶やさないまま、声の調子を変えないまま、言葉を紡ぐ。

 

『ああ、君も知っているだろう? ファントムルビーだよ』

『…………なん、で……ファントムルビーは、埋め込んだ相手を殺す、って……俺を、殺すつもりだった……のか……?』

 

 信じたくなかった。

 

 実験体として売り払われた時点で、痛みは覚悟していた。しかし、この研究所で暮らしていくうちに、子供はある思いに、思い込みに囚われていた。

 

 この博士は、自分を実験体にすることはあっても、痛みを残したり、少なくとも殺したりはしないのではないか、と。

 

 それは、子供ゆえの甘い幻想。何の根拠もない、甘すぎる理想論。だけど、この施設で暮らすうちに「幸せ」を筆頭とした一般人が持つ感情を少しずつ手に入れていた子供にとっては、受け入れ難い現実だった。

 

『まさか! 殺すつもりはなかったよ! もしかしたら死んでしまうかもしれない、とは思っていたけどね!』

 

 博士の言葉に子供の背筋は凍りつく。今まで、こんなにも狂気を滲ませて話しかけてくることなんてなかったのに。

 

『君は本当に素晴らしいよ、ファントムルビーをその身に宿しているにも関わらず、高いレベルの自我を保ったままの状態で居る、これは本当に凄い事なんだよ? 

 

 今までの子たちは、肉体が変容しなくても自我を失ってしまうばかりだったからね……処分が大変だったんだ』

 

 そうして語られたのは、信じたくもない残酷な現実。眼の前の優しいと信じていた博士が行ってきた、非道。

 

 彼は元から慈愛の心なんて持ち合わせてはいなかった。誰も彼も、実験のための道具としか思っていなかった。心優しく接していたのも、より効率的に実験を行うためでしかなかった。

 

 子供以外にも、実験体となっていた子供はいた。皆、親に、はたまた孤児院に、金でこの施設へと売り払われていた、捨てられた子供だった。

 

 その子供たちは皆一様にファントムルビーを埋め込まれ、自我を失い、狂気に堕ちた獣と成り果てた。人の姿を捨てたものがいれば、姿かたちだけは人間と変わらぬものも居た。

 

 そんな子供たちを、博士たちは屠ってきた。ファントムルビーに呑まれた不良品はいらないとばかりに、壊して、殺して、捨ててきた。

 

『……今までの子供たちも、皆、お前たちのことを信じていたのか?』

 

 子供は問いかける。虚ろな目で、ファントムルビーに手を当てたまま。

 

『ああ、皆僕のことを慕ってくれていた…………あまりにも滑稽で、笑ってしまったよ。所詮は使い捨ての実験体でしかないのに。ああ、でも、だからこそ人間の感情というものは本当に興味深い…………君たちからはいいデータを取らせてもらったんだ、感謝しているよ。本当さ』

『………………ファントムルビーを埋め込む実験のとき、子供たちにはそのことを隠していたのか?』

『ああ、皆ファントムルビーのことは研究所の中に居たせいか、情報が漏れていたからねえ……教えたら、実験に参加してくれなくなるだろう? 

 

 まったく…………教会も無茶なことを言うよね、一刻も早くファントムルビーの適合者を発見しろって。ファントムルビーに適合できるかどうかは、埋め込んでみないと分からないってのに。

 

 ああ、でも、君のおかげでもう教会の奴らを心配する必要はないのか!』

『そうか………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう、いい』

 

 子供は博士を見据える。もう、彼に対する親愛など湧かない。

 

 最初から、騙されていたのだ。利用されるために、使い捨てられるために。甘い蜜に浸されて、それに気付くことができなかった。なんて、滑稽なことだろう、なんて、無様なことだろう。

 

 だが、それは子供であれば当然の感情だ、当然の摂理だ、自然なことだ、当たり前のことだ。

 

 愛、今まで欠片たりとも与えられてこなかった愛という毒を、求めてしまうのは、自然なことだ。

 

『………………ははっ』

 

 子供はこのとき初めて、明確な殺意を、憎悪を、嫌悪を、

 

 そして、絶望を、抱いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はは、あっはははははははは!!!!!!!!!!!!!」

 

 子供の無垢な笑い声が響く。同時に、彼の周囲に仮想現実が現れる。博士は、何が起こっているのか理解するのに時間がかかり、立ちすくんでいた。

 

『な、何、を…………?』

『なぁ、お前が教えてくれたんだよな? 人間は、悪いことをしたら警察やヒーローってのに捕まるって』

 

 仮想現実はぐにゃり、とカタチを変える。それは、罪人を縛る赤い鎖。赤い鎖は主の望むがまま、博士をグルグルと縛り上げた。

 

 本当なら自分で手を下したい。だけど、それではすぐに楽にしてしまう。あいつには、できるだけ長く絶望してほしい。死にたいと思っても、死なせてやるものか、楽になど、させてたまるものか。

 

『や、やめろ! 今すぐに──────』

『……煩い』

 

 彼の煩わしい、忌まわしい、という感情に共鳴するかの如く、仮想現実が現れ、博士の口を塞ぐ猿轡となる。そのまま、主に耳障りな雑音を聞かせてたまるか、と、仮想現実は博士の声を封じた。博士は声を上げようと必死になって息を吸い込むが、猿轡に邪魔されて言葉を吐き出すことは叶わない。

 

『さて…………警察だかヒーローだかってのにコレを渡すには……どうしたらいいんだろうな?』

 

 現実を、社会を知らぬ子供にそんなことは分からない。取り敢えず、コレを引っ張りながら、外を歩いていればいいのだろうか? それとも、もっと情報を手に入れた方が、コレを絶望させられるだろうか? 

 

 子供は博士の鎖を引きずりながら机の上に置きっぱなしにしてある書類を持って、扉に手をかける。博士はやめろ、と言いたげな表情で子供を睨みつけていたが、あいにく子供は、それに付き合うほど優しくはない。

 

『…………幸せを教えられたあとに絶望に落とされた俺達の心なんて、お前には分からないだろう。

 

 なら…………俺も同じことをしてやる。姿かたちすら知らない同胞の分も、お前に復讐してやる。警察、とかなんかそんな奴らにここの情報をありったけ売り渡して、お前を絶望させてやる。その時のお前の顔が、楽しみで仕方がない。

 

 はは…………今までしてきたことが巡り巡って自分に返ってきただけだ。楽に死ねるとは思うなよ?』

 

 そう言うと、幸福を、絶望を打ち付けられた少年は、残酷なほど無邪気に、嗤った。

 

 

 

 

 

 その後、子供はありったけの資料を研究所から奪い、博士を鎖でグルグル巻きにしたまま研究所の外へと飛び出し、研究所から盗み出した地図を使って人里へと向かった。

 

 外はもう、夜の帳が下りていた。こんな時間に、子供が大の大人を鎖で引きずりながら歩いていたら、当然警察やヒーローが黙ってはいない。子供はすぐに保護された。

 

 博士を引き渡し、資料を全て渡し、研究所であったことを全て話した子供は、ファントムルビーについて追っていたというGUNに保護されることとなった。子供に植え付けられたファントムルビーは、無理に引き離したら逆に何が起こるのか分からないから危険であるということで、定期検査を受けることを条件にそのまま彼の胸に根付いている。

 

 後に分かったことなのだが、子供は元々ファントムルビーへの高い適合率を持つ特異体質であるらしい。だからファントムルビーを植え付けられても自我を食いつぶされなかったのだ。ただそれだけの理由で、子供は生き延びたのだ。

 

 また、件の博士は裁判を待たずして牢屋へと入れられることとなった。現在のGUNが持つファントムルビーに関する情報は、殆どがこの時子供が持ち込んだ情報であるという。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、この子供は、後にインフィニットと名乗ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………」

「……………………」

 

 語られたのは、想像もつかないほどの壮絶な過去。

 

 愛どころか関心もない家庭で産まれ、売り飛ばされた先で幸せを知ったと思ったらそれは全てまやかしで。最後には、自らを騙した男により深い絶望を与えるために、あえて殺したりせずに牢屋にぶち込んだ子供の物語。

 

 その、あまりにも現実離れしているのに自分が受けたものであると錯覚してしまうような話に、まだ子供の域を出ない飯田と轟の精神は軋む。

 

 前にこの話を聞いたことがあるアンジェラ達ですら、恐怖にも似た感情を抱かずにはいられなかった。いや、アンジェラの場合は、ファントムルビーに自我を呑まれた人物に、ファントムルビーによって無理矢理生み出された無垢なる狂気に、間近で触れたことがあるからこそ、戦慄するほどの恐怖を感じているのだろう。

 

「……ファントムルビーは、ただ敵の戦力を拡大させるために作られたわけではないらしい。というか、戦力拡大のために使うには、色々とリスクが大きすぎる」

 

 ファントムルビーを兵器として考えたとき、自我の喪失というのは決して無視出来ない欠点であった。確かに強力な力ではあるものの、下手をすれば味方にも大きな被害を及ぼす。自我を失っているので使用者は敵味方の区別もつかない。そのため、回収も困難を極め、実質使い切り状態。

 

 ファントムルビーを宿し、ファントムルビーに自我を呑まれずにその力を行使できるのはインフィニットだけ。

 それが、どれだけ特異なことであるだろうか。

 

「それは初耳なんだが……あんな危険物が元は兵器じゃないって? てっきり、何か似たようなモノを作ろうとした末の失敗作とばかり思っていたんだが」

「兵器としての用途よりも、「仮想現実」があること自体に意味があるらしいが……それ以上のことは分からない」

「確かに、仮想現実の力を使えばいくらでも兵器やら物品やらを量産できる……自我の問題さえ解決できてしまえば、今よりももっと危険な代物になりますね」

「いや、それはないな」

 

 飯田の言葉を否定したのはアンジェラだ。飯田はどういうことだ? と言わんばかりに首を傾げている。アンジェラがシャドウを見やると、シャドウは一つ軽いため息をついて口を開いた。

 

「ファントムルビーの能力は、厳密に言えば「仮想現実を実体化させる能力」ではなく、「本物に限りなく近い幻影を見せる能力」だ」

「本物に限りなく近い幻影? それって、映像みたいな?」

 

 轟の例えに、アンジェラはそれに近いものだ、と言葉を零して続ける。

 

「映像っちゃあ映像なんだが、見せられている本人にとっては本物だ。触れば触ったという感触が残るし、火の仮想現実を見せられてそれに触ったら火傷もする」

「……それって実体化と何が違うんだ?」

「実体化と違って、あくまでも映像だから実体としては「存在しない」。「存在しないものを存在していると、身体に誤認させている」んだ。だから実際にファントムルビーの力で干渉されているのは、生み出された仮想現実じゃなくてオレたちの身体の方、ってわけだ。理論的にはな」

「理論的には? 実際は違うのか?」

「それは……分からない」

 

 ファントムルビーはその殆どが正体不明の物質だ。何から造られ、何を目的としているのかすら分からない。GUNの技術部がファントムルビーの犠牲者の身体から取り出されたカケラを解析しているが、今のところ成果らしきものはあまりない。唯一判明したのは、ファントムルビーを埋め込まれた者からファントムルビーを無理に引きはがすと、その者は死に至るということだけ。アンジェラが行った、カオスコントロールを用いた肉体の巻き戻しくらいしか、犠牲者の身体からファントムルビーを引きはがす方法はない。

 

「だから、一概に物品がどうのこうの、って問題を解決できるとは限らないんだ。仮想現実はファントムルビーがなきゃ効果を発揮できないからな」

「なるほど……今更ですけど、その情報聞いちゃってよかったんですか?」

「いいわけないだろう」

 

 シャドウは冷たく言い放つ。先程までとは違い、僅かながら殺気を含ませたその声は、飯田と轟の背筋に薄ら寒いものを感じさせた。

 

「そもそも、ファントムルビーについてはGUNの機密事項だ。偶然とはいえ、その存在を知ってしまった君達をそのまま放っておくことはできない」

「あー、やっぱそうなる?」

 

 アンジェラはある程度は予想がついてたのか、特段慌てた様子もない。が、どことなく怯えた様子の飯田と轟の姿が目に入ったシャドウは、また一つ、ため息を吐いた。

 

「……別に取って食おうってわけでもない。飯田、君がステインに特攻を仕掛けたのは褒められたことではないが、ステインがファントムルビーを持っていたことは誰も予想ができなかったことだ。だから、君達がファントムルビーについて知ってしまったのは事故みたいなものだ……とはいえ、何もなし、と出来ないのも事実。箝口令は敷かせてもらうし、監視も付けることになる。それがGUNが出来る最大限の譲歩だ」

「ま、監視っつっても四六時中GUNのエージェントが張り付くわけじゃないさ。アンジェラ」

 

 ソニックに言われるまま、アンジェラははいはいと手のひらに魔力を集中させ、二つの青い宝石のようなものを作り出す。出来上がったそれを、アンジェラは轟と飯田に投げ渡した。

 

「これは?」

「エネルギーを練り固めて作った監視カメラ兼GPS、みたいなもんだ」

 

 アンジェラが作ったのは、魔力の結晶に各種探査魔法を組み込んだものである。ソルフェジオ経由でGUNのコンピューターへデータの送信が可能な代物だ。組み込んでいるのは探査魔法なので、ネット上の監視も可能である。ネット上の監視のときは、設定した特定のワードやそれに関わるワードに触れそうになったとき、自動でソルフェジオにデータが送信され、ソルフェジオの判断でGUNに送られる、という仕組みだ。

 

「それを肌見放さず持ち歩いておけ。勿論、プライバシーには最大限配慮するし、それ経由で手に入れた情報は許可がない限りファントムルビー関連の捜査にしか使わない」

「シャドウはこう言ってるけどな、お前らのためでもあるんだ。ステインにファントムルビーを渡した相手がどこの誰だか分からない以上、あの現場に居合わせたお前らが狙われないとも限らないからな」

「狙われないまでも、犯人やそれに連なる人物が接触を図ってくる可能性はあります。君達を守るためにも、それは大事に持っておいてください」

 

 口下手なシャドウの言葉をアンジェラとガジェットが補足する。轟と飯田もそういうことなら、と魔力の結晶を懐に仕舞った。

 

 

 

 

 

「そういや、色々ありすぎて聞くの忘れてたな……飯田、轟、お前ら診察結果どうだったんだ?」

「本来真っ先に聞くべきことですよね、それ」

 

 アンジェラの発言は今更感が漂うものだった。ガジェットのツッコミが的確で、どことなくどんよりとした空気の室内に爽やかな笑いがもたらされる。

 

「轟君はそこまで酷くない。数針縫ってもらって、ガジェットさんの“個性”も使ってもらって、もうすぐに完治するとのことだ。

 

 俺は……両腕ボロボロにされたが、中でも左腕の腕神経叢という箇所をやられたらしく、左腕に後遺症が残るそうだ。とはいっても、多少の動かしづらさと手指の痺れくらいなもので、手術で神経移植すれば治る可能性もあるらしい。

 

 だが……ヒーロー殺しが言った言葉は事実だった。俺はあのとき、マニュアルさんに指示を仰ぐべきだったんだ。だが、頭に血が上って……ヒーローにあるまじき行動をした。

 

 だから……俺が本当の「ヒーロー」になれるまで、この左腕は残そうと思う」

 

 飯田の瞳には、確かな決意が宿っていた。

 

「飯田さん、そのために僕の“個性”を使うことも遠慮したんです」

「そっか、ガジェットの“個性”使うと神経まで治っちゃうから……」

 

 ガジェットの“個性”の回復力は回復系“個性”の中でも群を抜いて高い。血を吐き、ボロボロになっていたアンジェラが輸血とガジェットの“個性”の合せ技でもう動けるようになっていることからも、その効力が分かるだろう。

 

「ったく……茨の道になるだろうが、その覚悟があるんならそれについては何も言わねえよ。オレが口出しすることじゃないだろうしな」

 

 アンジェラはだが、と前置きをして、鋭い光をその瞳に湛えて口を開く。

 

「言っておくが、ヒーローってのは神なんかじゃねえ。ヒーローもそこらに居る一人の人間で、出来ないことはあって当たり前だし、間違えることもある。だから周りの人間と助け合うんだ。手を取り合うんだ。

 

 いいか、本当のヒーローを間違っても「何でも一人で出来る存在」とだけは思うなよ。

 

 オールマイトがヒーローの理想像みたいなこと言われてるが、アレどっちかって言うとヒーローとして以前に人間として「やっちゃいけないやり方」代表みたいなもんだからな。

 

 別にオールマイトに憧れるなみたいな残酷なことを言いたいわけじゃないが……あの人のやり方を完コピしようとするのだけは止めとけ。あれはあの人だから出来てしまう(・・・・・・)だけで、お前らがアレ真似したら少なくとも(・・・・・)精神が壊れる」

「……下手したらじゃなくて、少なくともときたか。アンジェラ君にとってオールマイトのやり方は、そこまで言うほどのものなんだね」

「当たり前だ。ちょっと考えれば分かる……

 

 いや、オレが外人だからだろうな。日本から見たら外部の人間だから、あの人がどれほどの無茶を押し通しているのか分かる。お前らは身近にオールマイトが居るから、頭が麻痺してんだ。あの人に比べたら、オレの無茶なんてかわいいもんだろ」

 

 アンジェラの言葉に、ソニック達も同感の意を示す。諸外国でもオールマイトはナンバーワンヒーローとして扱われているが、日本ほど身近な存在というわけでもない。ということは、日本よりも冷静にオールマイトを見れる人が多いということでもある。アンジェラの言葉は、少なくともラフリオンでは共感者がわりと多い考え方であった。

 

「それには同感だが……アンジェラ、それは無茶をしていいと同義ではないからな?」

「へーへー、分かってますぁーな」

「それは分かってない奴の言葉だ」

「はぁい」

 

 アンジェラはテキトーな感じで返事をする。

 

「分かった……その忠告、心に刻んでおくよ」

 

 元々ヒーローとしての一番の憧れをオールマイトではなく実の兄に向けている飯田はすんなりとアンジェラの忠告を受け入れ、オールマイトを一番の憧れとして見ている轟は、少しだけ動揺した様子を見せたものの、意外とすぐに納得したようだ。曰く、

 

「俺はオールマイトに一番憧れているだけでオールマイトになりたいわけじゃない」

 

 とのことだ。轟らしいな、とアンジェラは苦笑した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




数話前のあとがきなどで、しつこく「適正があれば」と書いていたのはこのためです。“個性”と似たようなものです。偶然、彼にその適性があった。ただ、それだけなのです。
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