音速の妹のヒーローアカデミア   作:えきねこ

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今更ですが、作者はアニメ勢で原作漫画は未読です。期末の方式は原作に寄せているつもりではありますが、読んでいないので一部妄想で補完しているところがあります。おかしなところがあれば容赦なく指摘してやってください。

え?何でアニメと原作で期末の方式が若干違うことを知っているのかって?

A.二次創作の知識


勝利の種類

『一年A組、期末テスト、演習試験、レディ・ゴー!』

 

 試験会場に踏み込んだアンジェラと爆豪は、その放送を耳にした瞬間行動に移る。

 

「フーディルハイン、手筈通りまずは索敵だ!」

「OK,sir!」

 

 アンジェラはソルフェジオを杖に変形させると、足元に魔法陣を出現させ、数十基の索敵魔法……渡り鳥(サーチャー)を飛ばしながら、爆豪の飛ぶスピードに合わせて走る。

 

「……そのsirっての、何だ?」

「気分だよ気分。嫌なら止めるけど?」

「やめろ、むず痒い」

「ハイハイ」

 

 そんな会話をしつつ、アンジェラとソルフェジオはサーチャーから飛ばされてくる情報を捌く。と、一基の渡り鳥(サーチャー)がオールマイトの姿を捉えた。

 

『我が主、目標を発見しました』

「ああ、見えた。ゴール前で拳を構えてらぁ……爆豪、オレの後ろに来い、オールマイトと戦う前に無駄な怪我したくなけりゃ、な」

「ッチ、後ろに行くのは今回だけだぞ!」

「どうだか」

 

 軽口を叩き合いつつ、アンジェラは前面にソルフェジオを構え、防御魔法を展開する。しかし、守りの意思(ディフェソート)ではない。それよりも更に上位の防御魔法、確固たる拒絶(ディフェラドゥーム)だ。防御力は守りの意思(ディフェソート)の比ではないほどに高いが、消費魔力量も多く展開時に数秒タイムロスが出る。汎用性は守りの意思(ディフェソート)ほどではないが、今回のように大規模攻撃が来ると事前に分かっていれば、守りの意思(ディフェソート)よりも有用な魔法だ。

 

 水色の防壁が二人の前面に現れた瞬間、周囲の建物も道路も巻き込んだ衝撃波が二人を襲う。土煙が舞い、周囲が見えなくなってしまう。防壁のおかげで二人は足元の道路諸共飛ばされずに済んでいるが、直に食らっていたらひとたまりもないであろうことは予測できた。

 

「……面での攻撃、ビルを壊す程度の威力なら守りの意思(ディフェソート)でも十分だが……一点集中で放たれたら、確固たる拒絶(ディフェラドゥーム)でも保つか分からんな」

 

 アンジェラはオールマイトの一撃を冷静に推測する。アンジェラは特別防御魔法に秀でているわけではない。魔力量が多いがゆえに防御力は高いが、それだけだ。

 

 現に、確固たる拒絶(ディフェラドゥーム)はナックルズには一撃で簡単に破られてしまう。アンジェラは別に固定砲台ではない、むしろ戦闘スタイルはその真逆を地で行くので問題に上がったことはないのだが。

 

「……街への被害などくそくらえだ!」

 

 カツン、カツン、と靴の音。土煙は舞う中で、確かなプレッシャーを放ちながら、オールマイトが歩みを進めてくる。

 

「試験だなどと考えていると痛い目を見るぞ……私は敵だ。ヒーローよ、真心込めてかかってこい!」

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ」

 

 オールマイトが放った風圧を凌いでから確固たる拒絶(ディフェラドゥーム)を解除したアンジェラは、生返事しか出来なかった。

 

「フーディルハイン少女、ちょっとノリが悪いんじゃないかい? 真面目にやってる?」

「いや真面目ですよ? 大真面目ですけどね? そんな殺気とも呼べない生ぬるいもん(・・・・・・・・・・・・・・)浴びせられちゃこんな反応になりますって」

 

 ケテルが乗っていない方の肩にソルフェジオをかけながら、アンジェラは呆れたような声を出す。

 

「……まるで本気の殺気を知っているような言い方だね」

「だってシャドウのやつ、最初はガチで殺しにかかってきましたもん」

 

 アンジェラの口から出た意外な人物の名前に、オールマイトは一瞬動揺した。

 

 オールマイトが個人で貰ったGUNの資料では、アンジェラ達とシャドウは出会った当初は敵同士であったと書かれていた。

 

 シャドウは色々あって記憶が改変され、騙されていたがゆえのこととはいえ、アンジェラ達を始末しにかかったとは知ってはいたが……シャドウのことを、兄として純粋に尊敬し、歪んだ愛情にも似た感情を向けているアンジェラの口から、ハッキリとそんなことを言われるとは思ってもいなかった。

 

「それよりもオールマイト……オレにだけ注目してていいんですか?」

「!?」

 

 アンジェラがニヤリ、と笑いながら言った一言にハッ、となり爆豪の姿を探すオールマイト。一瞬の動揺の隙に、爆豪の姿がオールマイトの視界から消えていたのだ。

 

「どこ見てんだオールマイトォ!」

「! 上か!?」

 

 爆豪の姿はオールマイトの直上にあった。アンジェラの言葉で動揺した一瞬で、爆破による跳躍を行い、オールマイトの真上に移動したのだ。

 

 爆豪はオールマイトに手を向け、手のひらから爆破を連続して叩き込む。体育祭の切島戦で見せた、怒涛の絨毯爆撃だ。

 

「痛っ……痛いけど、それだけだね爆豪少年!」

「フーディルハイン!」

 

 オールマイトが爆豪の腕を掴もうとした瞬間、オールマイトにも視覚できないスピードでアンジェラが爆豪を回収し、そのまま戦線を離脱する。

 

「はは……してやられた。相変わらず、私の目でも追えないなぁ……フーディルハイン少女」

 

 オールマイトはそんなことを言いながら、アンジェラ達を探して走り回った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、作戦の第一段階は完了……本来なら、オレの射撃でオールマイトをこっちに誘導するつもりだったんだがなぁ。まさかあそこまで動揺されるとは……ま、結果オーライか。爆豪もナイスアドリブだったぜ」

「おい、フーディルハイン……それはそれとして、いつまで抱えているつもりだ! さっさと降ろせ!」

「いいのか? 降ろして。お前、こんな高さから落ちたら死ぬぞ?」

「……ッチ!」

 

 試験会場の上空、天を駆る翼(ローリスウィング)を使ったアンジェラが、爆豪を小脇に抱えながら渡り鳥(サーチャー)でオールマイトを監視していた。爆豪は心底嫌そうな顔をしているが、アンジェラの言うことも尤もなので暴れたりはせずに従っている。

 

「さて、実際にハンデありのオールマイトと対峙してみて、どう思ったよ、爆豪」

「…………半端な威力じゃダメージにもなりやしねぇ。あれじゃ、俺の最大威力でも動きを止めきれるか分からねぇ……

 

 

 

 予定通り、あの策で行くぞ」

「OK、任せな」

 

 アンジェラはそう言うと、ソルフェジオを一旦空中に浮かべてウエストバッグから幻夢の書を取り出す。そして、あるページを開き、ソルフェジオにデータを読み込ませた。

 

「オレはオールマイトの動きを止めるだけ……カフスをかけるのはお前だ」

「分かってらァ。まずはお前を使って勝たねぇと……オールマイトにタイマンで勝つなんて夢のまた夢でしかねえ」

「話が早いねェ、キライじゃないぜ、そういうの」

「勝手に言ってろ」

 

 アンジェラはニヤリと笑う。高い目標があるのなら、まずは一段ずつ登る。爆豪は今、それを成そうとしている。自分よりも遥かに高い壁が目の前に見えたとき、人は挫折するか成長するかの二択だ。

 

 アンジェラと爆豪は、そういった意味では似た者同士なのかもしれない。

 

 自身よりも先を行き続ける兄達の背中をずっと見てきたアンジェラと、幼い頃よりオールマイトのような「最後には必ず勝つヒーロー」に憧れてきた爆豪。

 

 両者とも、超えるにはとてつもなく厳しい壁。

 

 でも、だからこそ、本気で超えたくなる。

 少なくともこの二人は、今までずっとそうしてきた。

 そして、これからも。

 

「さて、探されてるみたいだし、読み込み終わったし、そろそろ行くか。

 

 

 

 ……ところで爆豪、お前、ジェットコースターは平気だよな?」

「……は?」

《ボクは大好きだよ!》

「うん知ってる」

 

 楽しげにアンジェラの肩の上でリズムを刻むケテルと、困惑気味の爆豪をよそに、ウエストバッグに幻夢の書を仕舞い、ソルフェジオを手に取ったアンジェラは、オールマイトめがけて事故らない程度に物凄い勢いで突っ込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、オールマイトは今だにアンジェラ達を探して駆け回っていた。

 

(もしかしたら、もうゴールに向かったか? フーディルハイン少女にゲート前まで運んでもらえば、試験のクリアは楽々だが……爆豪少年が、そんな選択を取るだろうか? フーディルハイン少女もそんな選択しないだろうし……)

 

 オールマイトが悶々と考え込んでいると、上空から何やら物音がする。そちらを向くと、何やら物凄い勢いでオールマイトに突っ込んでくるアンジェラと、小脇に抱えられた爆豪の姿が。

 

「……そうだ! すっかり失念してた! フーディルハイン少女は飛べるんだった!」

 

 アンジェラといえば、音速で地を駆け抜けるイメージが強すぎて、オールマイトはアンジェラが飛行できることをすっかり失念してしまっていたようだ。

 

 アンジェラの頭の片隅に、少し疑念が残る。オールマイトほどの場数を踏んだヒーローならば、そういう大事なことは覚えていそうなもの。まして、生徒のことだ。データは取って、確認しているはずだが……

 

 そんな違和感を感じつつも、アンジェラはそれどころではないと思考を切り替えた。

 

「さて、爆豪。こっからが正念場だ。気張っていけよ!」

「ハッ、誰に向かってそんなこと言ってんだ!? 最初から気張ってるわ!」

「ははっ、そうこなくっちゃ!」

 

 アンジェラは笑いながら、オールマイト目がけて爆豪を思いっきり投げ飛ばす。一応、拒絶の幕(ディフェラソプト)という、他者の身体を包み込む防御膜を与える魔法はかけているので、例え着地にミスっても死にはしない。

 

「味方をぶん投げるとは、ちょっと雑じゃないかい!?」

「うるせェ、同意の上だわ! スタングレネード!」

 

 爆豪はオールマイトに食らいつくように両手を向け、光量多めの爆破を浴びせる。あまりの眩しさに、オールマイトは思わず目を伏せた。

 

 それこそが、爆豪の作戦通りとは知らずに。

 

「今だ! フーディルハイン!」

「OK!」

 

 上空に留まっていたアンジェラが、データを読み込ませたソルフェジオをオールマイトに向けて構える。爆豪が作り出したほんの一瞬の隙。それが、二人の作戦には必要だった。

 

 アンジェラはソルフェジオをバトンのようにクルクルと回転させながら構え、オールマイトの足元に魔法陣を展開し、魔法を発動させる。オールマイトの動きを止めることができる力を持った、マリオネットを呼び出す魔法を。

 

「舞い踊れ、生者の形をした死踏人形共。

 

舞踏人形と死に踊る(アンデスアーミー)」!」

 

 オールマイトの足元の魔法陣から、次々に現れたのはツギハギの少女のお人形たち。アンジェラが己が魔力を使って作り出した、愛らしく、麗しく、歪な形をしたアンジェラ自身の映しである、死に踊る人形ども。

 

 人間の姿という体裁こそ守っているが、歪に嵌められた目には光なんぞ宿ってはいないし、ただでさえ病的に白いアンジェラの肌を更に白くしたような色の肌は、もはや色というものを認識することすらできない。腕や脚も辛うじて人のものだと分かる程度の歪な形をしている。

 

 表情も一切変わらず、パワーとスピードだけはアンジェラと同等のものを備える人形共は、ゾンビのような動きでオールマイトの四肢を掴んで離さない。オールマイトは何とか動こうと藻掻くが、数の暴力で一切身体が動かない。

 

 舞踏人形と死に踊る(アンデスアーミー)。つい最近アンジェラが使えるようになった、魔力でもって自身の写しの人形を創り出すゴーレム創生系魔法だ。創り出した写しは魔法こそ使えず、姿かたちも歪なものだが、パワーとスピードは使用者本人と同等のものを備えている。幻夢の書がなければ使えず、発動までにタイムラグがあるのがネックだが、今回は爆豪の爆破による目眩ましで時間を稼いだ。

 

「…………怖っ」

 

 爆風で一時オールマイトの元から離脱した爆豪は、ついそんなことを口走った。それは、まるで本能に訴えかけてくるような、嫌悪感、醜さ、美しさ、儚さ……あらゆる矛盾を内包したような、芸術作品とも言うべきものどもだった。

 

 前にも、こんなものを見たことがあるような…………

 

 

 

 

 

「爆豪! 今だ!」

 

 アンジェラの叫びで一瞬トリップした思考が戻った爆豪は、爆風でオールマイトに接近して、手に持ったカフスを人形共が掴んでいるオールマイトの手首に嵌めた。

 

『爆豪・フーディルハインチーム、条件達成!』

 

 それと同時に、会場全体に響き渡る放送。

 

 アンジェラと爆豪の実技試験は、オールマイトの捕縛による二人の勝利で幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 試験終了の放送が流れた直後、オールマイトが二人に声をかける。

 

「いやぁ! 素晴らしかったよフーディルハイン少女に爆豪少年! 色々話したいことはあるけれど…………

 

 

 

 

 

 その前に、このおっかないお人形さんたち、早く退かしてくれないかな?」

 

 人形共に身体を押さえつけられた状態のままで。

 

「あ、すんませーん」

 

 アンジェラは生返事をしながら地面に降り立ち両手をパン! と叩く。すると、人形共は淡い白い光となって消えていった。人形共が完全に消滅すると、オールマイトはよっこらせ、と立ち上がる。

 

「いやぁ、完封されちゃったね! まんまとお二人さんの策にハマっちゃったよ! 爆豪少年の爆破で時間を稼ぎつつ、フーディルハイン少女が私の動きを止める……二人共、いい作戦とチームワークだ!」

「いやぁ、褒められて悪い気はしねぇな。

 

 ……だけどよ、オールマイト」

 

 アンジェラは一呼吸置いて、爆豪を見やる。

 

「この策は全部、爆豪が考えた。オレはその指示に従っただけさ」

 

 アンジェラはあくまでもクールにそう言い放つ。アンジェラの言葉通り、この作戦はアンジェラが口を出した部分がひとつやふたつはあれど、それ以外は全部爆豪が考えた。アンジェラが口を挟んだのだって、時間稼ぎに関するちょっとした話くらいなもの。作戦の大筋を全部考えたのは、爆豪である。

 

「やったな、爆豪」

「ケッ、今回はお前を使ってやったんだ、当然だろ」

「でも、悪くはねぇだろ?」

 

 アンジェラはそう言いながら爆豪に拳を突きだす。爆豪は少し困惑しながら、

 

「……ま、悪くはねぇな」

 

 突き出された拳に、自身の拳を突き合わせた。




お人形の見た目は……………あれです、ネクロニカのドールみたいなやつです。
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